(写真は私が住んでいる奄美大島の海岸。
島では旧暦の3月3日、初節句の女の子を海へ連れて行き、その足を海水にひたすことで健やかな成長を祈願する風習があります。)
先日「人口動態統計」が発表され、2006年の合計特殊出生率が“1.32”と、6年ぶりに上昇したことが報じられました。
久々の上昇の原因は「景気回復」で、5年ぶりの結婚数の増加、12年ぶりの第3子以降の増加などが見られたそうです。
政府の少子化対策の効果か・・・と言えば、どうもそうではなく、少子化の基本線は変わっていないようです。
出生率は“生涯未婚率”と“夫婦完結出生児数”(結婚した女性が実際に産んだ子供の数)によって大きく左右されます。
未婚率については70年代後半から急ピッチで上昇しており、人口問題研究所は2006年12月推計で、1990年生まれの女性の生涯未婚率(中位推計)を23.5%(4人にひとりは結婚しない)と上方修正しました。
1955年生まれの女性の現在の未婚率が5.8%ですから、23.5%という数字は現在レベルの4倍にもなります。
その結果、2055年の出生率は中位推計で1.39から1.26に下方修正されました。
この未婚傾向はいまのところ特段の変化はみられていません。
“夫婦完結出生児数”というのは、結婚後15~19年を経過した“子作りを終了したと推察される”夫婦が調査対象で、実際に何人子供をもうけたかという指標です。
この値は戦後の4人超から1972年には2.20人まで減少、その後30年間ほぼ2.2前後の安定した数値が続いていました。
2005年にはこの“夫婦完結出生児数”が2.09に低下傾向を示しました。
更に詳しく見ると5年後に調査対象となる“結婚後10~14年経過”、10年後に調査対象となる“結婚後5~9年経過”の夫婦も過去に比べて低い値をすでに示していますので、私の個人的判断ではありますが、少なくとも今後10年間はこの減少傾向が続くのではないかと思います。
資料:「第13回出生動向基本調査」(国立社会保障・人口問題研究所)
http://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou13/doukou13.asp
出生率を決める二つのファクター、“生涯未婚率”と“夫婦完結出生児数”を見る限りは今後も少子化の流れは止まらないようにも思えます。
話が少しそれますが、上記の出生動向基本調査というのは非常に面白い調査です。
結婚に至るまでの交際期間、結婚の契機(恋愛か見合いか)、どこで知り合ったかなど、「こんなことまで調査しているんかい!」という調査項目が並んでいます。
私が生まれた頃は5割を越えていた見合い結婚は2005年には6%程度にまで一直線に減っています。
ところで、上記調査に「結婚・家族に関する妻の意識」という大項目があります。
結果の概要を抜粋すると以下のとおりです。
前回まで減少していた「①生涯独身という生き方」をよくないと考える割合は、今回は増加している。前回までみられた「②同棲より結婚」の支持割合の減少も、「③婚前の性交渉はかまわない」の支持割合の増加も、今回はみられない。
「⑩離婚をよくない(図省略)」と考える割合は1992~97年の間で大きく減少したが、その後は変化がみられない。
「⑤結婚しても自分の目標を持つべき」への支持は前回まで増加していたが、今回はそれがみられない。
「⑥結婚したら自分の生き方を犠牲にするのは当然だ」という考え方は、1992年から1997年の間に減った後、増加に転じている。
というように、若干これまでの推移とは異なる動向が見られます。
“結婚・家庭を重視する伝統的価値観への回帰”とも言えそうな動きです。
このような価値観の変化がひょっとすると出生率にも影響してくるかもしれません。
「⑧結婚したら子どもを持つべき」という考えについては、賛成意見もこれまで同様減少していますが、これまで増加していた反対も減少し、不詳(わからない)が増加しています。