(グリーンランドでは、氷が解けた地域が急速に拡大しています。
“flickr”より By onthetower
http://www.flickr.com/photos/onthetower/218536145/)
【“氷の島”もしくは“宝の島”】
ご存知のように、グリーンランドはデンマーク領です。
子供の頃から世界地図を眺めるのが好きでしたが、“グリーンランド”という馬鹿でかい島をどうしてデンマークなんて“小国”が持っているのか不思議でした。
(メルカトル図法だかミラー図法だかの地図では、高緯度のグリーンランドは実際以上に大きく描かれていましたので、余計にそんな感じを強く持ちました。)
また、氷の島らしいのに“グリーンランド”という名前も奇異に感じていました。
ウィキペディアによると、島の81%を氷床が覆い、氷の重さで島の中央部の地面は海面より300mも低いとか。
また、もしグリーンランドの氷床が全て融けたならば、現在よりも7.2mほど海面が上昇するそうです。
巨大な氷の塊ですが、分厚い氷の下に多くのお宝が眠る島でもあります。
亜鉛、銅、鉄、氷晶石、石炭、モリブデン、金、プラチナ、ウランなどの鉱物資源が存在し、特に、石油の埋蔵量は中東地域に匹敵する量だとか。【ウィキペディア】
ただ、これまでは厚い氷のために採掘は不可能でしたが、温暖化のせでしょうか、北極圏の氷は急速に溶け出しており、グリーンランドを含めた北極圏の資源は採掘可能性とういう点では、次第に利用可能な資源となりつつあります。
そのため、北極圏はロシア・カナダ・デンマーク、アメリカなどの思惑がぶつかり合う地域ともなっています。
【独立への第一歩】
で、話をグリーンランドに戻すと、この巨大な“氷の島”もしくは“宝の島”に住む人口は、56,385人。
79年に自治政府が発足していますが、昨年11月の住民投票の結果、自治権の大幅な拡大が支持され、今般その自治権拡大の法律が施行されました。
****グリーンランドの自治権拡大、完全独立への鍵を握る天然資源*****
デンマーク領グリーンランドで21日、08年11月に行われた住民投票で賛成75%の圧倒的多数で承認された自治権拡大に関する法律が施行された。これにより、グリーンランドはデンマークによる300年にわたる統治から、新たな自治の時代に入った。
今回の自治権拡大で石油などの豊富な天然資源の権利もグリーンランド側が握ることになり、デンマークからの独立へさらに一歩近づいたと言える。(中略)
デンマークは1979年にグリーンランドの自治権を認め、限定的な自治を認めていた。だが今回、数年間にわたる交渉の結果認められた新たな自治権の下では、グリーンランドに天然ガスや金、ダイヤモンドなどの天然資源に関するより広い権利が認められることとなった。
米科学者らによると、グリーンランドの北端には、特に石油や天然ガスが豊富に埋蔵されているとされ、地球温暖化によって厚い氷に覆われている未開発の天然資源へのアクセスが可能になり、自立経済に向けた確固たる基礎を築くことが可能になると見られている。
デンマークのオーフス大学の歴史学者Lars Hovbakke Soerensenによると、こうした天然資源がグリーンランド経済を支えるだけの規模であることが確認されれば、グリーンランドはデンマークからの完全独立へ進むことになるとの見方を示している。
世界の淡水資源の10%が存在する人口5万7000人のグリーンランドは、地球温暖化の脅威に最もさらされている地域の1つである。地球温暖化により、主力産業である漁業が大きな影響を受けるものと見られている。
こうしたことから、グリーンランドの政治指導者たちは、経済の多様化とデンマーク依存からの脱却に向け、天然資源に目を向けざる得ない状況になってくるだろう。【6月22日 AFP】
******************************
今回の措置で、天然資源管理や司法、警察活動など、これまでデンマーク政府に依存していた分野にも自治権が拡大されます。
また、外交においても一定の部分が自治政府に託されることになります。また、グリーンランド語が島の公用語として承認されます。
現在は、グリーンランド経済はデンマークからの補助金に頼っており、政府補助金は域内総生産の3分の2に相当する32億クローネに上っています。
また、地下資源開発も期待通りには進んでいません。
地下の“お宝”開発が軌道にのってくれば、経済的自立も可能で、将来的な“独立”という方向も見えてきます。
自治政府のエノクセン首相は昨年の住民投票に関し、「そう遠くない将来に完全独立が実現するよう望んでいる」と語っていました。
デンマーク本国も、ある程度そうした方向は織り込んでいることでしょう。
ただ、デンマークも今回の自治権拡大でこの“お宝”を手放す訳ではなく、これまで自治政府とデンマーク側と二分していた地下資源収入について、7500万デンマーク・クローネ(約12億円)までを自治政府の取り分として、残りの超過分をデンマーク側と折半することになっているようです。【08年11月25日 毎日】
地下資源収入を自治政府に今まで以上にまわす代わりに補助金は削減して本国負担を軽減し、将来的な資源採掘についてはその権利を維持している・・・とも見受けられます。
何分人口57000人程度ですから、自治だ独立だとは言っても、本国デンマークの支援なしには何も始まらない・・・というところでしょう。
【温暖化の行方は?】
もっとも、グリーンランドや北極圏の地下資源が本格的に利用可能になる頃には、この地域の氷の溶解によって、全地球的規模の影響が出ているかと思われますし、どこよりもグリーンランドが一番強い影響を受けることになるでしょう。
それが、グリーンランドにとって、吉と出るか凶と出るか・・・。