孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アイスランド  英蘭預金保護を反対93%で否決 関係強化をはかる中国

2010-03-08 21:54:38 | 国際情勢

(アイスランドで行われた国民投票の様子 “flickr”より By jakonja
http://www.flickr.com/photos/47787954@N04/4412604580/)

【反対93.2% 賛成1.8%】
アイスランドでは、リーマン・ショックの影響で08年10月に経営破綻した大手銀行のイギリス、オランダの預金者を公的資金で保護する法律の是非を問う国民投票が7日行われましたが、予想されたように否決されました。しかも、93.2%が反対という圧倒的な結果でした。

金融自由化を極端に進めて海外からの巨額の資金を集めたアイスランドは、世界的な金融危機の直撃を受け、08年9~10月、国内大手3行を次々と国有化しました。3行の負債総額は国内総生産(GDP)の10倍以上にのぼっています。

アイスランド政府は国有化した国内2位のランズバンキ銀行の系列ネット銀行「アイスセーブ」を閉鎖。イギリスとオランダに約34万人の預金者がいたため、昨年10月、アイスランド政府が公的資金でこの預金を保証することで合意していました。

これを受け、アイスランド政府は、英蘭両国の預金者を保護するため、公的資金で約50億ドル(約4500億円)を支払う法案を議会に提出、議会は昨年12月末、小差で可決しました。
しかし、イギリスやオランダがアイスランド政府に対し、各口座の預金を5万ユーロまで保護し、5・5%の金利をつけるよう求めたことに、「外国を優遇するのか」とアイスランド国民が猛反発。
グリムソン大統領は今年1月、国民の反対が強いとして、法案への署名を拒否、今回の国民投票実施となったものです。

もともと、イギリスとアイスランドは漁業権をめぐる「タラ戦争」(50~70年代に漁業権をめぐり、両国の艦艇が砲撃や体当たりを繰り返した対立)があったように、あまり友好的な関係とは言い難いところがあったこともベースにあるのかも。
なお、英蘭両国政府は、すでに預金の払い戻しを肩代わりしており、アイスランド政府にその支払いを求めています。

今回の否決によって、アイスランドは国際的信用を失い、国際通貨基金(IMF)などからの支援や、EU加盟が暗礁に乗り上げる可能性が高いとも見られています。
アイスランド政府は法律の練り直しを迫られ、預金返済の条件緩和を求めてイギリス、オランダ両政府と再交渉する方針で、シグフスソン財務相は7日、今年5月の実施が有力視されるイギリスの総選挙までに合意を目指す考えを示していますが、見通しは立っていません。

【中国 北極圏対策でアイスランドへ接近】
一昨日のブログで取り上げたギリシャの財政危機に関するドイツとギリシャの感情的な対立も同様ですが、欧州にはEUという共同体の理念が存在はしますが(アイスランドは加盟申請中)、いったん事あると、国家を超えた救済・協力にはまだ高い壁があります。

そうした欧州各国間の対立の一方で、中国が着実にアイスランドとの関係強化を進めていることが報じられています。
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アイスランドと欧州の関係悪化を横目に中国は、地球温暖化による北極海航路開通に備え、アイスランドに最大級の大使館を建設するなど着々と関係を強化している。(中略)
各国とも金融危機の事後処理に追われる中、“厄介者”扱いのアイスランドに近づいているのが中国だ。
地球温暖化で2030~40年には夏の間、北極海の氷がなくなると予測されている。中国は、国内総生産(GDP)の半分の経済活動を海上輸送に依存しているが、ベーリング海峡を通って太平洋と大西洋を結ぶ北極海航路が開通すれば、上海~ドイツ・ハンブルク間が、スエズ運河経由の航路より6400キロも短縮できる。しかもマラッカ海峡やインド洋の海賊に悩まされる心配もなくなる。
北極圏は石油、天然ガス、ニッケル、金、コバルトなど海底資源も豊富だ。
こうした北極圏への中継地として中国が注目するのがアイスランドである。

中国は同国と自由貿易協定(FTA)の交渉を始めるとともに、首都レイキャビクに5~6階建てで、約30台の駐車が可能な大使館を建設した。中国の在外公館の中でも最大規模。人口約30万の小国に設ける大使館としては異例の大きさで、レイキャビクでも話題を集めている。
中国はまた、アイスランドの口利きで、北極圏の開発・環境問題を協議する政府間組織「北極評議会」に暫定オブザーバーとして参加している。アイスランドの港湾建設のため資金提供したとも伝えられる。
スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の報告書は、中国がハイテク技術を結集した新型砕氷船の建造を決定するなど北極圏への関心を強めているとし、中国が北極海沿岸国と同盟を結ぶ可能性を指摘する中国人専門家の声を紹介している。【3月8日 産経】
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中国の、国際世論に構うことなく自国利益をひたすら追求する外交姿勢は、問題視されることも少なくありませんが、それにしても、先を見越しての抜け目ない外交努力です。
昨今の世界における中国の存在感の急速なたかまりは、単に中国経済の急成長というだけのものではないように思われます。
国内の足の引っ張り合いに終始し、外交無策の感もある日本外交は見習うべき点も多いのでは。

コメント
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