孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ミャンマー  スー・チーさん「政党登録は、受け入れられない」 しかし、それでどうするのか?

2010-03-24 22:25:32 | 世相

(スー・チー ミャンマー民主化運動の象徴ではありますが・・・ “flickr”より By vincentdewolf
http://www.flickr.com/photos/vincentdewolf/4356985772/

【除籍か解党か】
ミャンマー軍事政権が11日発表し政党登録法では、有罪判決を受けた人物及び拘束中の人物は政党メンバーになることはできず、この規定に従わない政党は解散とすると定められています。
これにより、民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさん率いる国民民主連盟NLDは、スー・チーさんを党から除名するか、解党するかの二者択一を迫られる事態となっています。
しかも、総選挙に参加するためには、政党登録法が成立した今月8日から60日以内に登録を行うことが必要となるため、NLDは今月29日に中央執行委員会を開いて決定することとしています。

このスー・チーさんの除籍か解党かをタイムリミット付きで迫る軍事政権側の強硬な姿勢は、スー・チーさんや、彼女を支援してきたアメリカの期待を裏切る厳しいものでした。
発表直後には、弁護士との会談で、「動揺はしていないが、このような弾圧的な法律になるとは思わなかった」と述べていました。【3月12日 読売より】

【「受け入れられない」】
NLD幹部は、この後の対応について、「白黒つきかねている」と困惑の状態です。
そんななかの23日、スー・チーさん個人の意見としてですが、「不当な法の下での(総選挙参加のための)政党登録は、受け入れられない」という明確な拒絶の意向が伝えられています。

*****ミャンマー:スーチーさん、NLDの総選挙参加に反対*****
ミャンマー民主化運動指導者、アウンサンスーチーさん(64)は23日、書記長を務める最大野党「国民民主連盟」(NLD)の総選挙への参加に反対の意向を表明した。この日スーチーさんと面会した弁護士が、AP通信などに明らかにした。「個人的な意見」と断ったものの、スーチーさんがNLDの選挙参加について自身の意向を示すのは初めてで、NLDの意思決定に強い影響を与える可能性がある。
弁護士によるとスーチーさんは「不当な法の下での(総選挙参加のための)政党登録は、受け入れられない」と述べ、軍事政権が今月制定した選挙関連各法の下でのNLDの選挙参加はあり得ないとの考えを示した。一方で「NLDに指図しているわけではない」と強調。「NLDは民主的に(選挙参加の是非を)決定すべきだ」と語ったという。

制定された政党登録法によると、有罪判決を受けたり服役中の人物は、選挙に参加する政党の党員になれない。NLDが選挙に参加するためには、米国人自宅侵入事件で有罪判決を受け自宅軟禁中のスーチーさんを排除して、5月上旬までに政党登録する必要がある。一方で、これを拒んで選挙に出なければ、政党として存続できない規定だ。
米国など国際社会は「公平、公正で誰もが参加する」選挙と認める条件として、最低でも前回90年の総選挙で圧勝したNLDの選挙参加を求めている。軍事政権は政党法で「スーチーさん抜きでのNLDの選挙参加」を狙ったとみられる。

民主化運動のシンボルのスーチーさんは、NLDの事実上の最高指導者。国の独立の父アウンサン将軍の娘として国民の人気も高く、スーチーさん抜きでNLDがどこまで選挙戦を戦えるかは未知数だ。政党法の規定でNLDの選挙参加は「困難になった」との見方が強まっている。
一方で、選挙に参加しなければ軍部主導とはいえ、その後の「民主化プロセス」に政党として一切関与できない。NLDはあえてスーチーさんを「切って」でも選挙に出ざるを得ないとの観測もある。
NLDは15日、中央執行委員会を開いて選挙参加の是非を協議したが結論が出ず、29日に再び会合を開いて最終的に態度を決定する予定だ。【3月23日 毎日】
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朝日記事では、スー・チーさんの発言は「不当な法律下での(総選挙に向けた)政党登録は考えることすらできない」と報じられており、彼女の怒りが伝わってきます。
いくら「個人的な意見」「NLDに指図しているわけではない」とはいっても、文字通りNLDを率いるカリスマである彼女の意見ですから、NLDの意思決定に強く影響することは間違いありません。

【「スー・チーさん抜き」で闘うしかないのでは?】
しかし、スー・チーさんを“切らない”ことが、総選挙への不参加、NLDの解党になるのであれば、ミャンマー民主化の今後について、スー・チーさんやNLD幹部はどういう展望を持っているのでしょうか。
非合法活動を許すような国家ではありません。

たとえ、軍事政権を実質的に維持するための“民政移管”であったとしても、議会において一定の数を得て発言権を確保していく以外に道があるのでしょうか?
もちろん、いくら議会で発言しても認められない・・・という事態は容易に想像されますが、そうした事態を国内・国際社会にアピールしていくしかないのではないでしょうか?

ミャンマー民主化の運動はスー・チーさんのためにあるのではなく、ミャンマー国民のためにあることは言うまでもないことです。
これまでがそうであったように、スー・チーさんの問題にこだわる限り、今の状況では民主化運動自体が一歩も先に進めません。

軍事政権は、03年にスー・チーさんを拘束した際に閉鎖を命じた地方支部の再開を許可しています。
この措置はNLDの参加を促す狙いがあると言われています。
軍事政権側も、NLD参加によって“民主選挙”の体裁を整えようとしています。

選挙に出たくてもいろんな制約で選挙に出られない政党は世界中にたくさんあります。
NLD参加を促す軍事政権側の意向を逆手にとるぐらいの気概で、ここは、スー・チーさんを「切って」でも選挙に打って出て、「スー・チーさん抜き」で闘う姿勢をNLDに見せてもらいたいものです。
コメント
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