孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イエメン  早婚を禁止する法改正に女性たちが抗議集会

2010-03-23 20:32:54 | 世相

(イエメンの首都サヌアで、早婚を禁じる法案に抗議する女性たち 3月22日AFPより
http://www.afpbb.com/article/life-culture/religion/2712046/5523840

【「口減らし」や金品目当てに、幼い娘を強制結婚させる風習】
イエメンの児童強制結婚については、2008年11月14日ブログ「イエメンの児童強制結婚 日本女性の社会的地位」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20081114)で取り上げたことがありますが、このときの主人公ナジュード・ムハンマド・アリさん(ちゃん?)の話題が先月また報じられていました。
記事によって年齢が微妙に異なりますが、08年当時のAFP記事では、“8歳のとき28歳男性と強制結婚させられ、10歳で離婚を勝ち取った”とされていました。
この少女が話題になったのは、8歳で結婚させられたからではなく(このこと事態はさほどまれではないようです)、離婚が困難なイエメンで、10歳の少女が離婚を裁判で勝ち取ったからです。

****イエメン、幼妻の悲劇…慣習の若年結婚で論議*****
国際テロ組織アル・カーイダの拠点となるなど政情不安が続く中東のイエメンで、8歳の少女の離婚訴訟を発端に、古くからの慣習だった女性の若年結婚に関する議論が高まっている。
弁護士など若いインテリ層は、身体に危険を及ぼすなどとして反対の声を強める一方、慣習に固執する保守層の声も根強く、結婚年齢を制限する法律は宙に浮いたままだ。

「毎日、暴行され、地獄の日々だった」――。2008年4月に裁判所から8歳で離婚が認められたナジュード・ムハンマドさん(9)は首都サヌア東部の自宅で目に涙を浮かべて振り返った。
同年2月、父親に連れて行かれたサヌア北方約100キロ・メートルのハッジャ県。段々畑が広がる山間の寒村に着くと、結婚式が準備されていた。「だれの結婚式なの」といぶかしげに思っていると、運送業の男(30)と自分の結婚式だった。
通例は身体的に成長するまでは、結婚後も別居するなど一定の配慮が行われるが、ナジュードさんの夫は「結婚の日から性的暴行を加え、従わないと殴った」。2か月後に家から逃げ、裁判所に駆け込んだ。
イエメンでは結婚年齢を定めた法律がなく、貧困な家庭では「口減らし」や夫側からの金品目当てに、幼い娘を強制結婚させる風習が広く残っている。
推計約25%の少女が15歳以下で結婚する同国で、ナジュードさんの結婚の形式は珍しくなかったが、耳目を集めたのは、離婚がまれな同国で、しかも8歳の少女が離婚したという異例の事例だったためだ。
ナジュードさんの訴訟を引き受けた人権派の女性弁護士シャダ・ナセルさん(45)は、報道各社に実態を知らせ、「若年結婚の悲惨な実態を掘り起こすきっかけとなった」。

国連児童基金(ユニセフ)は、若年結婚は少女の教育の機会を奪う上、身体に危険を及ぼす妊娠を招き、貧困層の拡大にもつながると批判している。海外事情を知る知識層の中に若年結婚をやめるべきだという見方が広がりつつあるのも議論沸騰の背景だ。
若年結婚を問題視する声を受け、国会は昨年2月、結婚の最低年齢を17歳に制限する法案を通過させた。しかし、イスラム教の預言者ムハンマドが8歳のアーイシャと結婚したとされることから、保守的なイスラム主義者らが反発。法案は憲法調査委員会に回され、1年後の今年2月になってもたなざらしのままだ。
被害者を保護するシェルターはなく、両親や元夫を罰する法律もないのも問題視されている。「大人になったら結婚したいか」と問われたナジュードさんは、首を横に強く振った。【2月16日 読売】
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内容的には08年当時の記事と特段の差異はありませんが、この記事を再度取り上げたのは、下記の記事を見たからです。

【「アラーが許したことを禁ずるな」】
****早婚を禁じる法案に反対するイエメン女性たち******
イエメンの首都サヌアで21日、全身を覆う黒いベールのアバヤ姿の女性たちが議会前に集結し、17歳未満の女性の結婚を禁じる法案に抗議した。
女性たちは、法案に反対するイスラム教聖職者の呼びかけに応じて、バスに乗って集団でやってきた。AFP記者によると、「アラーが許したことを禁ずるな」、「人権や自由をたてにシャリア(イスラム法)を侵害することは止めろ」などと書かれた横断幕をかかげていたという。 

2009年8月に提出された婚姻法の修正案は、17歳未満の女性、18歳未満の男性の結婚を禁止する内容だが、反対派の激しい抗議にあい、棚上げ状態となっている。
中東の貧困国イエメンでは、農村地域を中心に子どもの結婚は珍しいことではない。両親が極貧なため8歳の女児が嫁に出される例もある。
前年に12歳の既婚少女が出産時に母子ともに死亡した事件は、海外でも報じられ衝撃を与えた。

婚姻修正法案の抗議運動に参加した女性の1人は、イエメンの人権団体に属する女性の多くが40歳以上で結婚もしていないと皮肉る。氏族社会の慣習が根強いイエメンでは、一定の年齢を過ぎた独身女性を見下す傾向がある。この女性は、「大学に通う女性にも結婚できない者は多い」と主張する。
この日、議会前には修正案を支持する人権団体の女性グループもいたが、反対派の女性グループの圧倒的な多さに退散を余儀なくされた。
イエメンの女性権利団体「Women National Committee」のHouriya Mashhour副委員長は、「8歳や9歳の少女たちを結婚させるのは理不尽で、イエメンの重要な問題だ」とため息をついた。【3月22日 AFP】
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Houriya Mashhour氏ならずとも、思わずため息をついてしまう記事です。
口にすべきではない暴言を吐きそうにもなりますが、宗教・伝統が絡むと、部外者には理解できない結論になってしまうのでしょう。
そうしたことは、別にイエメンの女性だけのことではありません。
アフガニスタン・タリバンの女性の権利を無視した対応、東エルサレムの“聖地”をめぐる争いなどもその一例ですし、世の中に掃いて捨てるほどある宗教対立を背景にした残忍な殺し合いなどもそうした類です。

“アラーが許したこと”というのは、“イスラム教の預言者ムハンマドが8歳のアーイシャと結婚したとされること”を指すのでしょうが、こうした児童強制結婚が女性を傷つけることも少なくないはずなのに・・・、当の女性がそれを支持するのは・・・と、つい考えてしまいます。

もちろん、軽々しく欧米や日本の価値観で判断するのではなく、現地の文化・歴史・社会環境などを考慮して考えるべきことなのでしょうが・・・。
女性たちが自分で考えてそう判断するのならまだしも、おそらくこうした運動の背後に、彼女らを扇動する宗教的保守派の男性が存在するであろうことを考えると、やり場のない憤りを感じてしまいます。

コメント
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