(本分とは関係ありませんが、トレードマークの三つ編みを巻いた髪型を解いてリラックスしたティモシェンコ前首相 彼女の登場機会が減るのは残念です。
“flickr”より By BeSun4myHeart
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【悪魔祓い】
ティモシェンコ前首相との激戦を制し、ロシアと敵対したユーシェンコ前大統領に代わって親露派のヤヌコビッチ大統領が誕生したウクライナ。
新首相に就任したアザロフ氏は首相官邸に神父を呼び、いまだに徘徊するティモシェンコ前首相の霊を追い払う儀式をとりおこなったとか。記者団に対し「呼吸が苦しかった」「エクソシズム(悪魔祓い)をしてもらい、ようやく呼吸も楽になった」と語ったそうです。【3月20日 AFP】
また、新内閣に女性閣僚がいないことについて「今日、我が国は困難な状況にある。1日16~18時間働いて改革を遂行できる人々を選んだのだ。これは女性の仕事ではない」とも語っています。
【プーチン首相、関係改善に柔軟姿勢】
欧州全体にかかわる話題としては、ロシアとの天然ガス問題。
これまでもたびたび、ロシア・ウクライナ間のトラブルで、パイプラインの川下にあたる欧州全体に供給が止まるなどの大きな影響が出ていました。
親露派政権ということで、ロシア・プーチン首相も柔軟姿勢を見せています。
****ロシア首相:ウクライナ首相と会談 ガス値下げ交渉に同意*****
ロシアのプーチン首相は25日、同国を訪れたウクライナのアザロフ首相と会談し、ウクライナが求める天然ガス価格の値下げ交渉に応じる用意があることを表明した。アザロフ首相は就任後、初めての訪露。交渉は難航が予想されるが、ヤヌコビッチ大統領と同首相の親露派政権に代わったウクライナとの関係改善に向け、プーチン首相が柔軟さを見せた形だ。
インタファクス通信によると、プーチン首相は会談後、あらゆる問題を協議する用意があると表明、ガス価格の交渉についても「行うだろう」と述べた。
ロシアと敵対したユーシェンコ前政権は、ガス代金の未払いで頻繁にロシアにクレームをつけられ、06年と昨年にはガス供給停止で欧州への供給にも影響が出た。ティモシェンコ前首相は昨年、プーチン首相とガス価格交渉で合意して危機を乗り切ったが、新政権はこの合意に不満で価格設定の見直しを求めている。【3月26日 毎日】
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また、ヤヌコビッチ大統領は英BBCとのインタビューで、ロシアから欧州へのガス輸送を年間2千億立法メートルへと倍増させるため、ロシア・欧州・ウクライナの3者による輸送施設の共同運用を提案しています。
この発言は、ウクラウナを通過する既存のパイプラインルートを前提とするもので、ロシアが進めるウクライナを回避する新パイプライン“サウスストリーム”には否定的な考えを示しています。【3月24日 朝日より】
【供給源が決まらない“ナブッコ”】
ウクライナにとって、ロシアから欧州へのパイプラインは、欧州・ロシアに対して自国の重要性を認知させるものですから、その安定運用・拡大のアピールは当然のところでしょう。
ただ、これまでさんざん振り回されてきた感もあるロシアは、ウクライナ経由の既存ルートではなく、ウクライナを回避するルートを計画しており、そのひとつの南ルートが“サウスストリーム”。
一方、欧州も、ロシア依存度を下げるため供給源の多角化を計画しており、上記“サウスストリーム”と競合する形で進めているのが“ナブッコ”。
“ナブッコ”は、エネルギー供給における欧州のロシアに対する依存を減らす目的で、総工費79億ユーロ(約1兆50億円)をかけて建設、2014年に開通予定で、1日当たり310億平方メートルの天然ガスを、カスピ海からトルコ、バルカン半島を経由し、オーストリアから欧州各国に供給する計画です。
昨年の09年7月13日には、EU加盟4か国とトルコの5か国首相が建設の政府間協定に調印しました。
しかし、その後の話を最近聞きません。
“ナブッコ”の最大の課題は、どこからガスを供給するのかという問題です。
“供給源としてアゼルバイジャンが有力視されているが、同国は2010年からロシアにガスを輸出する合意に調印したばかりで、欧州とロシアをてんびんにかけている。トルクメニスタンのベルドイムハメドフ大統領は10日、ガス提供の用意を示唆したが、カザフスタン、ウズベキスタンなどの動向は不明だ。
このため、ナブッコ関係国はイラクやエジプトなど中東のガスを運ぶ可能性も視野に入れている。トルコのエルドアン首相は13日、イラン産ガスを輸送したい考えを表明したが、米国は、核問題を抱え断交中のイランの参加に反対している。”【09年7月13日 毎日】
トルクメニスタンには、すでに中国がパイプラインを建設しています。
最も実現性が高いと見られていたアゼルバイジャンについても、領土紛争で対立するアルメニアに、トルコが昨年9月頃から急接近したことで消極姿勢になったも言われています。
トルコの動き自体について、“ナブッコ”潰しのためにロシアが仕掛けた・・・との憶測も欧米業界筋にはあるとか。
【“ナブッコ”と“サウスストリーム”の“合体”案】
供給源が決まらないまま計画が進むというのは、素人には理解できないところですが、ロシア産の天然ガスを加えて事業の実現を目指す案も昨年から公表されています。
“ロシアに対する依存を減らす”という目的からすると奇妙なことではありますが、事業を実現させるためには一定割合ロシア産をとりこんでも・・・というところのようです。
これによって欧米の進める“ナブッコ”とロシアの進める“サウスストリーム”の、“無意味な競合”も避けられることになります。
この考えを更に進め、“ナブッコ”と“サウスストリーム”の“合体”を求める声も出てきています。
“サウスストリーム”をロシアのガスプロムとともに進めるイタリアのガス企業「ENI」のスカロニ社長は今月半ば、“ナブッコ”と“サウスストリーム”の“合体”を提案。
もともと両ルートはブルガリアで交差したのちともにオーストリアに向かうため、「経費節約にもなり効果的」とのこと。
“ナブッコ”にとっては、供給源が確保できます。“サウスストリーム”にとっては欧州から“公認”を受けられます。
しかし、ロシアはこの提案に「検討の余地はない」と反発しています。
供給源を持つロシアろしては、“ナブッコ”に先立つ運用開始で市場を押さえられるとの“勝算”があるとか。【3月24日 朝日より】
【ロシアの本命“ノルドストリーム”】
もっとも、ロシアの“サウスストリーム”については、「ナブッコを狙った当て馬」(業界筋)との見方もあるようです。
ロシアの本命は、北ルート(バルト海経由でロシアから欧州に天然ガスを運ぶパイプライン)の“ノルドストリーム”だとか。
EU 諸国の天然ガス需要は、2005 年から20 年間で16%(約1,950 億m3)増加すると見られていますが、 容量年間550 億立法メートル の“ノルドストリーム”はこの3 割弱を担います。
“ノルドストリーム”が稼働すると、ロシアからEU への輸出の約1/4 を担い、これまでロシアからEUへの
ガス輸出の2/3 を占めていたウクライナ・ルートが1/2 まで劇的に低下すします。
このことはEU への供給
の安定化を意味すると同時に、パイプライン通過国であるウクライナの影響力は低下します。
しかも、“ノルドストリーム”は確実に実現に向けて進展しています。
****バルト海経由送ガス管、4月着工へ=沿岸5カ国が建設許可*****
バルト海経由でロシアから欧州に天然ガスを運ぶパイプライン「ノルドストリーム」計画について、フィンランド当局は12日、同国の排他的経済水域での建設を許可したと発表した。これに伴い、沿岸5カ国の許可がすべて出そろい、同パイプラインは4月に着工される見通しになった。
計画によると、総延長1223キロの海底パイプラインを建設し、合計で年間550億立方メートルのガスをドイツやフランス、オランダ、英国などに供給する。建設費は74億ユーロ(約9030億円)。沿岸5カ国のうち、スウェーデン、デンマーク、ドイツ、ロシアが建設を許可し、フィンランドが最後まで残っていた。【2月12日 時事ドットコム】
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住友商事などの企業連合が総額10億ユーロ相当のパイプ供給契約を受注したことも報じられており、着工に向けて動いています。
“ノルドストリーム”が稼働すると、プーチン首相のウクライナに対する笑顔も若干変わってくるかも・・・・。