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(台湾統一地方選 国民党の牙城・台北で無所属新人にリードを許す異例の展開を強いられている連勝文候補(写真中央 連戦名誉主席の長男) 左隣は馬英九総統のようです。 “flickr”より By Lin Li Hsuan https://www.flickr.com/photos/lihsuanlin/15793127881/in/photolist-q4zUGi-8XwQ9y-91kx19-4yHg8v-4yMzKQ-4yHhqz-4yMAmQ-4yMz9j-4yMxk7-4yHi3p-8XwQE9-8XtEHi-8XtJpB-8XwR8E-8XtKC8-8XwJho-8XwNzE-8XwSRA-8XtJU2-8XtLo8-8XtL2B-eLAFRB-pcs2YT-oYZxQx-p2Lo75-oxcrcz-v4par-v4iMm-8WjQLi-bWH9QM-641MbC-pyHKSJ-oMxBC1-8X7tpm-soJHp-8XyJuT-4PziEi-4Pzdxk-4Pzgax-4PzaS2-pFaXBJ-oZsBqy-oJEL2Z-5nWXgi-owXJAr-95456q-dcf1P9-4E7LTV-4n9jne-pKXUJo)
【台湾しか知らない世代】
台湾では今年3月~4月、中国との経済関係強化を目指す「中台サービス貿易協定」をめぐり、中国への警戒感からこれに反対する学生が立法院議場を占拠する騒動(いわゆる「ひまわり運動」がありました。
こうした状況への馬英九政権や中国側の苛立ち、習近平国家主席の「一国二制度」へのことさらな言及などについては、9月27日ブログ“台湾・馬政権の苛立ち 香港で問われる「一国二制度」の実態”(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140927)で取り上げました。
その後、馬英九総統は習近平主席の「一国二制度」発言を受ける形で、9月28日、更に中華民国の誕生につながった辛亥革命を記念する10月10日の「双十節」の式典で、重ねて香港の普通選挙を求める学生ら運動への支持を表明しています。
馬英九総統の香港学生運動支持発言は、“多くの台湾人にとって、香港は今や「悪い前例」になっている。それは、中国が真の民主主義を容認せず、自治の約束を守るとは思えず、洗練された住民たちとその政治的な願望に対応するために必要な柔軟性に欠けることを示す証しだ。”【10月10日 WSJ】という台湾側の認識の表明でもあります。
こうした経緯や、台湾側の意識において世代間のギャップが大きくなっていることは、10月14日ブログ“台湾 香港での抵抗運動を受けて、中国が主張する「一国二制度」への批判が鮮明化”(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20141014)で取り上げました。
このような最近の流れからするとやや異質とも思える、国民党の連戦名誉主席の発言が報じられています。
****「脱中国化教育」が若者の精神をねじ曲げ台湾社会を不安定にした=国民党・連戦名誉主席****
国民党の連戦名誉主席は16日、台北市内で開催された「中国人反独立護国動員大会」に出席し、台湾で2000年ごろから始まった「脱中国可化教育」が、台湾の若者の価値観をねじ曲げ、現在の台湾社会の不安定さを招いたと述べた。中国新聞社などが報じた。
「中国人反独立護国動員大会」は「台湾人半独立護国大同盟」が主催。「分裂逆流を阻止せよ。中華文化を発揚せよ」などと宣言した。
大会は、「台湾海峡の両岸の同胞は近年になり密接に行き来し、次第に心も解け合ってきた」と、大陸人と台湾人が融和しつつあると主張。
さらに「大陸は過去数十年にわたり平和発展をとげ、すでに昂然とそびえたち、世界が感服する富強の国になった」と中国大陸側を絶賛し、「たとえば大陸側は現在、世界の1000カ所以上で孔子学院を設立し、全人類のあいだで中華文化を推進する実質的な役割りを果たしている」と、文化面でも大陸側の取り組みを賞賛した。
さらに、「中華文化の発揚は、(伝説上の中華社会の支配者である)炎黄の子孫のひとりひとりの天職であり、分裂逆流を阻止することは、権力をになうものの責任だ」などと宣言した。
国民党の連戦名誉主席は同大会で、「2000年以降に、台湾の教科書では『脱中国可教育』が始まった。当時の一部の12、3歳の生徒がこの種の教育を受け、倫理道徳観と歴史観がねじ曲げられてしまった。
これらの生徒は今では青年となり、インターネットで意見を発表する際、事実をねじ曲げ、社会の不安定さを招いている」と主張した。【11月17日 Searchina】
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「中国人“反独立”護国動員大会」と「台湾人“半独立”護国大同盟」・・・・“半独立”というのは誤記でしょうか?
台湾の現状からすれば、“半独立”というのはなかなか微妙な表現です。
更に一方が“中国人”で、他方は“台湾人”・・・・なぜ使い分けたのか、非常に意味深でもあります。
国民党・連戦名誉主席の発言は、“40歳以下の若者は、台湾の民主化プロセスの真っ只中、台湾しか知らない世界で成長しており、中国への心情的な愛着やアイデンティティは皆無であるが、40歳以上の人々は、国民党の「偉大な中国」教育を受けて育ち、中国人であるとはどういうことかについて、一定の理解がある。”【10月10日 WEDGE】という世代間の意識ギャップに対する高年齢層側の苛立ちでもあります。
ただ、途中まで読んできて、「これは大陸側主催の大会だろうか?」と改めて文頭を確認したぐらい、中国を賞賛するものです。
連戦名誉主席と言えば、野党時代の2005年、中台分断後初めて中国を訪問して胡錦濤国家主席(当時)との会談を行い、野党のトップとはいえ、1945年の蒋介石・毛沢東の重慶会談以来の国民党と共産党の首脳会談を60年ぶりに実現させた政治家で、その後もたびたび中国を訪問しています。
陝西省西安生まれの、いわゆる「外省人」です。
若い世代との意識ギャップはもちろん、台湾全体の意識ともかなり差があるのではないでしょうか。
先述の“中国人”と“台湾人”の話にもなりますが、2013年8月初旬に実施された「台灣指標調查研究股份有限公司」(「台灣指標民調」、TISR)による台湾の世論調査によると、「台湾人と呼ばれたいか、それとも中国人と呼ばれたいか」という質問に対して、82.3%が「台湾人」と答え、「中国人」と回答したのはわずかに6.5%でした。
「台湾人」と答えた者は、2003年には61.5%であったのが、2013年は上記のように82.3%に増加したとのことです。(2月6日 「平和外交研究」 美根慶樹氏 http://heiwagaikokenkyu.blog.fc2.com/blog-entry-237.html より)
この一点においても、「中国人反独立護国動員大会」なるものは全体意識から乖離したものとなっています。
一方、こうした全体意識から乖離した意識を持つ連戦名誉主席などが、たびたび訪中して胡錦濤氏などと会談を重ねてきたことが、中国側の認識を誤らせることにもなっているように思われます。
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サービス貿易協定締結に対する台湾側の反発については、共産党側も“想定外”だったという。
頼(台南)市長によると、台湾の野党・親民党の宋楚瑜主席が5月に北京を訪問して中国共産党の習近平総書記(国家主席)と会談した際、習総書記は「国民党は事実と異なるメッセージを送ってきていた」と述べたという。【9月16日 Searchina】
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8割以上の人が「台湾人」と考えることからすれば、「一つの中国」というのも“虚構”ではありますが、中台の現状を穏便におさめるためには、この“虚構”を維持さざるを得ない・・・というのが現実政治です。
****「一つの中国」めぐる中台「コンセンサス」堅持で一致 習主席と台湾・前副総統が会談****
台湾の蕭萬長前副総統は9日、北京の人民大会堂で中国の習近平国家主席と会談、「一つの中国」をめぐる中台間の共通認識「92年コンセンサス」を堅持することで一致した。台湾の中央通信社が中国国営新華社通信の報道として伝えた。
92年コンセンサスは、1992年に中台双方の窓口機関が確認したとされる。双方が「一つの中国」を認めつつ、台湾側が「中国とは中華民国」と主張する余地を残している。台湾の馬英九政権が中台関係を改善する際の基礎となった。
習氏は9月末、台湾からの訪中団との会談で、「一国二制度」による台湾統一に言及。その際、92年コンセンサスに触れなかったことから、台湾側で中国の対台湾政策が変更されたのではないかと憶測を呼んでいた。(後略)【11月9日 産経】
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「中台サービス貿易協定」をめぐる混乱、香港学生運動への馬総統の支持発言などで、中台関係には停滞感が漂っています。そんな状況で、敢えて「交流加速」を打ち出す会談も。
****<中台閣僚>北京で非公式会談 交流加速を表明****
アジア太平洋経済協力会議(APEC)の台湾代表団に同行していた台湾の対中政策を主管する行政院大陸委員会の王郁※(おう・いくき)主任委員(閣僚)は12日、中国の対台湾政策を主管する台湾事務弁公室の張志軍主任(閣僚級)と北京市内で非公式に会談した。
終了後、双方は、関係改善の基礎と位置づける「1992年合意」を堅持し、交流を加速させると表明した。(※は王ヘンに奇)
92年合意は、「一つの中国」を認めつつ、その解釈は中台各自に委ねるとの内容。
主管官庁トップの会談は今年2月、6月に続き3回目だが、今回は非公式会談のみが行われ、停滞期にある中台関係を象徴した。「交流加速」は対外的に広がる停滞感を払拭(ふっしょく)させ、体面を維持する狙いがあるとみられる。
2月の初会談では非公式の場で中台首脳会談実現に向けて話し合うなど双方が積極的な姿勢を見せた。
だが、春には台湾で中国とのサービス貿易協定に反発する学生らによる立法院(国会)議場占拠を機に台湾住民の反中警戒感が噴出。同協定の承認は頓挫したままだ。8月には実務を取り仕切る大陸委ナンバー2の高官が中国に対する「情報漏えい疑惑」により更迭された。
さらに9月には、中国の習近平国家主席が「(高度な自治を保障する)『1国2制度』が台湾問題を解決する基本方針」と述べた。従来の台湾政策とは変わらないが、馬英九政権と関係改善を進めてきた中国側は同制度に触れてこなかっただけに、馬総統は「受け入れられない」と強く反発した。
台湾メディアによると、中国の張主任は会談後、中台首脳会談について「今回は話していない」と述べた。【11月12日 毎日】
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【国民党が台北や台中を落とせば、民進党に勢い】
台湾は国内的には、今月末に統一地方選挙が予定されています。
野党側が優位に選挙戦を展開していると報じられており、“2016年の総統選に向け、台湾の政治地図が塗り変わる可能性が出てきた”とも。
国民党に比べて中国に対して距離を置く野党側が勝利し、更に次期総統選挙も・・・という話になれば、当然に中台関係も大きく変わります。
台湾統一地方選は、日本の都道府県知事に当たる直轄市や県の首長から町内会長まで、九つの選挙を同時に行いますが、中でも「五都」と呼ばれる台北、新北、台中、台南、高雄の直轄市の市長選が大きな注目を集めています。
なお、国民党の牙城・台北で苦戦しているのは、前述の連戦名誉主席の長男・連勝文氏です。
****国民党、地盤で苦戦 台湾統一地方選、29日投開票*****
11月29日投開票の台湾統一地方選で、政権与党の国民党が苦戦している。同党が地盤にしてきた台北と台中の市長選で、野党系候補が優位に立つ。「最後は与党が巻き返す」との見方も根強いが、2016年の総統選に向け、台湾の政治地図が塗り変わる可能性が出てきた。
「情勢はかなり厳しく、危急を告げている。あらゆる友人の力を借りて票を掘り起こし、支持を広げていきたい」
台北市長選の国民党候補、連勝文(リエンションウェン)氏(44)は4日、劣勢が伝えられる選挙戦に危機感をあらわにした。
対立候補の無所属の医師、柯文哲(コーウェンチョー)氏(55)が、連氏に対し、42%対29%(台湾紙・聯合報)となるなど各種世論調査で軒並み差をつけているのだ。
台湾の政界は、国民党や同党に近い政党の「青」勢力と、最大野党の民進党を中心とする「緑」勢力に二分される。
国民党が長く一党独裁で政治経済の中枢を押さえていたため、首都機能を持つ台北には国民党支持者が多く集まった。
市長選では、国民党重鎮の連戦元副総統の長男で、同党次世代ホープの連氏が優位という事前予測が強かった。
伸び悩む最大の原因は、「権貴」(特権階級)とのイメージだ。
連家は金持ちで知られ、民進党の台北市議らは父親の連戦氏の資産は少なくとも786億円と指摘。連勝文氏も台北随一の豪華マンションに自宅を持ち、庶民の生活とかけ離れている、との受け止めが広がった。
連氏は「いくら政策を訴えても響かない。メディアや有権者は関心がないようだ」と嘆く。
対立候補の柯氏は女性蔑視とも取れる失言などもあるものの、率直な物言いで有権者の共感を集める。学生らが立法院(国会)を占拠した3月の「ひまわり学生運動」など、有権者が政治に関与しようという「公民運動」を意識し、「市政府の開放」などを訴える。
柯氏は「緑」系だが、政党対立の図式を嫌い、民進党入党を断った。民進党はそれでも「国民党に勝てる候補」選びを最優先。独自候補の擁立を見送り、柯氏を支援する。
国民党と民進党の二大政党が激突する構図が崩れ、無所属候補が善戦するのは台湾の主要選挙では極めて異例だ。(中略)
■逆風下の政権、内部に亀裂
連、胡両氏にさらに重しとなっているのが、支持率が低迷する馬英九(マーインチウ)政権への逆風だ。
最近、食品大手が飼料用油を食用油と偽って売る大規模な食品安全問題が発覚。「当局が機能していない」と批判が渦巻く。
党の亀裂も深刻だ。馬総統は昨夏、党内ライバルの王金平・立法院長(国会議長)を更迭しようとして失敗。支持基盤の軍人や公務員らの年金削減を進め、反発を招いた。国民党支持者の投票意欲が低いのも、今回の特徴だ。
今回の選挙は総統選に向けた「中間選挙」の意味合いもある。台北市長選で国民党候補が落選したのは、同党が分裂した1994年の選挙だけだ。
また、台湾北部では国民党が、南部で民進党が強いが、台中より南の濁水渓がその境目とされてきた。国民党が台北や台中を落とせば、民進党の勢いが増すことになる。(後略)【11月5日 朝日】
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