孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ ファーガソン黒人青年射殺事件 “ファーガソンが「癒える」までには時間がかかりそうだ”

2014-11-27 23:15:50 | アメリカ

(“flickr”より By Steve Rhodes https://www.flickr.com/photos/ari/15881103485/in/photolist-qcmNM4-qc51dS-pUCdou-qc14ZX-pURCzN-qckZKA-pURjsh-pfq13U-qcbKfv-pUniFk-pfEPLv-qc8swM-pURhzu-pUL9Zr-qcnwVT-pURDxu-pfqiKX-pUPRCL-pUNyUY-pUKGKH-pUzhH7-pUFW5Z-pfnpLR-pUHdZB-qbU588-q9TYsJ-pfqiLP-pUCcQL-pUJRAH-pUCcW7-pUPQgs-pUKGHD-pUKGRe-pUZbJH-pUUi6F-pfq25J-pUPTK1-pfm3gE-qckxvb-pUHu3L-pV1BCZ-pUcp2c-pU8zYb-pUXH8z-pUNtGU-pUQ5js-pfogGd-pfah3t-pfpQTS-pURb6s)

3日目の26日 抗議デモ規模は縮小
米ミズーリ州ファーガソンで黒人青年のマイケル・ブラウンさん(18)を射殺した白人警官に関する大陪審決定については、不起訴判断を受けて、事前から予想されていた混乱が生じています。

26日未明までに全米170都市以上に抗議デモが拡大し、ファーガソンでは州兵が増強され警察の支援などにあたりましたが、一部が暴徒化しパトカーへ放火、更にはスーパーやドラッグストアなど少なくとも17店舗が放火されたほか、数十店舗が破壊や略奪の被害に遭っています。

この暴動で、25日夜から26日未明にかけて44人が逮捕されています。

この事態に、マイケルさんの家族は「暴力に暴力で報復することは適切ではない。違いを見せるべきだ」とのコメントを発表しています。

また、オバマ大統領は「(略奪・放火は)犯罪行為であり、関わった者は起訴される」と断じた上で、「不満は法が公平に執行されていないという認識を持つ、多くの黒人社会に深く根ざしたものだ」と述べ、各地の黒人社会と警察当局の対話を通じて、信頼を構築する必要性も訴えています。

3日目の26日には、抗議デモの規模は縮小しています。

****<米黒人青年射殺>抗議デモ、規模縮小で継続 警官不起訴****
黒人青年を射殺した白人警官が不起訴処分になったことに対して全米各地で起きた抗議デモは、処分から3日目の26日も規模を縮小して継続した。

事件が発生したミズーリ州ファーガソンでは同日夜、数十人がデモをしたが、混乱はなかった。降雪で気温が低下したことや、州兵による警備体制の強化が影響したようだ。

平穏が戻りつつある中、前日までのデモで窓ガラスを割られた市役所や商店で修復作業が行われていた。

隣接するセントルイス市では、抗議行動をしていた約200人の一部が市役所に入ろうとし、少なくとも2人が逮捕された。

一方、ロイター通信によると、西部カリフォルニア州ロサンゼルスでは、交通妨害をしたとして50人以上が逮捕された。同州ではオークランドやサンディエゴでも200~300人の抗議活動が発生。この他、東部ニューヨーク、南部ジョージア州アトランタで小規模のデモがあった。【11月27日 毎日】
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黒人側の不信感 銃購入に走る白人
もちろん、問題がこれで終わる訳ではありません。
黒人側には、司法や警察への強い不満・不信感があります。

ただ、民主主義の根幹をなす選挙を通して、自分たちの声を政治に反映させていこうという意思は、あまり高まっていないようです。

****米ミズーリ州暴動 怒る黒人「人種戦争だ****
 ■窓ガラス割られた店、白煙上げる美容院…
窓ガラスが粉々に割られた中国料理店。放火されて崩れ落ち、白煙を上げる美容院。黒人少年を射殺した白人警官が不起訴処分となり、住民と警官隊が激しく衝突した米中西部ミズーリ州ファーガソンに25日、入った。

今年8月の暴動直後を上回る惨状をさらす街で、黒人住民らは司法や警察への不信感を口にした。

「黒人少年が命を落としたのに、白人警官におとがめがないとは悲しいことだ。アフリカから奴隷として米大陸に連れてこられた黒人の悲しい歴史に、悲劇の物語が加わった」

損保会社経営のデオン・ロス氏(41)が語るように、白人9人、黒人3人という構成の大陪審が24日に下した判断への批判が渦巻く。宗教関係者のコリー・ベル氏(23)も、「私たち黒人への“人種戦争”に等しい」と、吐き捨てるように語った。

 白人の割合多い警察
不満の矛先は、黒人が街の人口の約65%を占めながら、白人の割合が多い地元警察にも向けられる。

BMWを運転していた3年前、盗んだと疑われて白人警官に停車を命じられ、銃を突き付けられたという40代の黒人男性は、「運転手が黒人男性なら盗んだと疑われ、黒人女性なら売春でもうけたカネで買ったと疑われる」と強調。「元警官だった私ですら屈辱的な扱いを受ける」と警察への不信感を隠さなかった。

警察署近くの商店で略奪が起き、5軒以上の建物が放火されたことには「絶対許されない」(音楽家のミリヤード・スミスさん)との意見もあるが、動員された700人もの州兵が阻止に動かなかったことについては、「一部の卑劣な黒人の悪行を、黒人全体の問題として世界に知らせようとしている」(女性市民)といぶかる向きもある。

米紙ニューヨーク・タイムズによれば、黒人少年を射殺した白人警官が同僚とひっそり結婚式を挙げていたことが最近発覚。ディオンネ・レイさん(33)は、「大陪審が方針を決定する直前の時期の結婚とは…。人命を奪ったことを何とも思っていない」と声を荒らげた。

現場周辺で、黒人少年を射殺した警官を支持する白人女性、ジャッキー・エドルマンさん(26)と出会った。少年が歩道を歩くよう注意された後に撃たれたのを受け、「市民は規則を守るべきだ」と話した。

「自ら努力し改善を」
黒人住民の生活を改善すべきだとの声が上がるが、選挙を通じて自分たちの要求を実現させようという機運は広がらず、今月の中間選挙が特に注目されることもなかったようだ。

地元の少年バスケットボールチームのフレッド・ロビンソン監督(54)は「黒人の親は子供のバスケの試合には駆けつける。だが学校のPTA会合には4、5人集まるだけだ。教育を大事にし、民主主義の重要性について学ぶ必要がある」と訴える。

エドルマンさんも「ここは共産主義国家ではなく自由主義国家。問題を解決するなら(投票などを通じて)自ら努力すべきだ」と強調した。【11月27日 産経】
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州兵が阻止に動かなかったのか、動けなかったのか・・・そこはわかりません。
確かに、治安当局としては、黒人住民を催涙ガス等で追い散らす映像よりは、暴徒の略奪行為の映像が流れた方が何かと都合がいい・・・という判断はありえない話ではないかも。

白人住民の間では、銃で自己防衛しようという動きが強まっているようです。

****米ファーガソン近郊で銃購入が急増、白人中心に1日20~30丁****
黒人青年を射殺した白人警察官の不起訴をめぐり抗議行動が続く米ミズーリ州ファーガソン近郊の射撃練習場で、白人を中心に銃を購入する人が急増している。これまで1日の銃の販売数は平均3~5丁だったが、最近は1日当たり20~30丁が売れるという。(後略)【11月27日 AFP】
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【「何があったか誰も分からないのが問題」】
黒人青年・・・・確かに彼も、8月9日の射殺事件前にコンビニエンスストアで商品を奪ったとされる防犯カメラの映像で見ると、相手に威圧感・恐怖感を与えるのに十分な体格・挙動のようにも見えます。

この丸腰の黒人青年を射殺した白人警官の言い分は以下のように報じられています。

****黒人少年を射殺した白人警官の言い分****
「ハルク・ホーガンと子どもみたい」だった格闘の末に
黒人少年マイケル・ブラウン(18)を射殺した白人警官ダレン・ウィルソン(28)の不起訴が決まった今週月曜の夜、ミズーリ州ファーガソンの街は抗議デモに参加する市民と警官や州兵の衝突で焼け野原になった。

だが双方ともこれで終わるつもりはない。同州知事のジェイ・ニクソンは再度の衝突に備え、追加で1500人の州兵の出動を要請。「昨夜のような無法状態は決して繰り返さない」と、火曜の記者会見で語った。「もっと徹底して抑え込む」

人々の怒りの的になっているウィルソンは、なぜ丸腰のブラウンを射殺したのか。捜査対象者を起訴するかどうかを判断する大陪審を構成する12人の市民はなぜ、ウィルソンを不起訴にしたのか。ウィルソンが9月に大陪審に語った88ページにおよぶ証言から、その言い分を取り出してみよう。

まずウィルソンは、今年8月の事件当時の様子を「ハルク・ホーガンと対決する5歳の子どものようだった」と語っていた。

証言によれば、道路の中央にいたブラウンに脇に寄れと命じたウィルソンに対し、ブラウンが「オマエの言うことなんかクソ食らえだ」と応じたことから事態は悪化していったという。

ブラウンはパトカーに近づき、さらに命令し続けるウィルソンを殴り始めた。
「もう一発顔面にパンチを食らったら、やられるんじゃないかと本気で思った。(ブラウンは)自分よりも明らかに大きかったし、強かった」。
「顔に2発(パンチを)受けていたので、3発目をまともに受けたら致命的かもしれなかった。最低でも気を失って、その後はどうなるかわからなかった」

ウィルソンはまた、殴られたり引っかかれてできた首の傷跡が病院で撮影された写真に写っていたと主張した。「見えにくかったが、そこに写っていた」

この後2人は取っ組み合いになり、ブラウンは「オマエみたいな弱い奴にオレは撃てない」と言ったという。
ウィルソンは銃を取って2発撃ったが、ブラウンにはあたらなかった。

「(ブラウンは)自分を見上げ、おそろしく攻撃的な顔をした。本当に悪魔のようだったとしか言いようがない。そんな怒り方だった」

ウィルソンはブラウンに「地面に伏せる」よう命じたが、ブラウンは体を向けて「大きなうめき声をあげた」。そしてウィルソンのシャツに手を伸ばした。

この時ウィルソンは、「護身のために」6発の銃弾をブラウンに浴びせた。ブラウンは武器を持っていなかった。

大陪審の決定の理由は明らかにされない。警察側は「身長190センチ以上あるブラウンが迫ってきたので、命の危険を感じた」と主張しているが、ブラウンは「降伏しようとして両手を上げていた」という目撃証言もある。【11月26日 Newsweek】
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“おそろしく攻撃的な顔をした。本当に悪魔のようだった”・・・・白人が黒人に感じる一般的恐怖感に過ぎなかったのかも。
“「護身のために」6発の銃弾”・・・そこまでの対応が必要だったのか?
“降伏しようとして両手を上げていた”・・・実際のところはわかりません。

おそらく、射殺された黒人青年が決して“善良な若者”のような外見・行動ではなかったのも事実でしょうし、白人警官側にも普段から黒人住民への差別感・嫌悪感があったのも事実でしょう。

そうした状況で起きたトラブルでの銃の使用が正当防衛だったのか、憎悪・恐怖にかられたものだったのか・・・・わかりません。

確実に殺さないと自分が危なくなるという銃社会アメリカと日本の常識は全く異なりますが、日本的な感覚からすれば“6発の銃弾”というのはちょっと・・・・という感はあります。

****<米黒人青年射殺>「何があったか誰も分からないのが問題****
 ◇米ロサンゼルスのガルセッティ市長が会見で指摘
米カリフォルニア州ロサンゼルスのエリック・ガルセッティ市長が26日、東京都内の日本記者クラブで記者会見し、米ミズーリ州で黒人青年を射殺した白人警官の不起訴を受け抗議デモが拡大していることについて「実際に(事件で)何があったのか誰も分からないところが問題だ」と指摘した。

ロサンゼルスでは1992年、前年の白人警官らによる黒人男性への暴行とその裁判結果をきっかけに、53人の死者を出す暴動が起きた。

ロスではこれを機に、警官にカメラを装着させるなどの改革が進んでいる。ガルセッティ氏は「(ミズーリ州にも)それ(カメラ)があれば今回のような事態は防げた」と指摘。警察による最新技術の採用や、事件の背景にある貧困問題への対処が必要だと強調した。(後略)【11月26日 毎日】
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難しいオバマ大統領の対応
州レベルでの司法判断は今回の大陪審判断で事実上終了しましたが、司法省は8月9日の事件発生直後から独自の捜査を開始しています。

この捜査の第1の焦点はウィルソン氏がブラウンさんの公民権を侵害したかどうか、第2の焦点はファーガソン警察全体が人種に基づく捜査対象の選別(レイシャル・プロファイリング)や過度な武力行使を行っていなかったかどうか、とのことです。

しかし、連邦レベルのこうした司法手続きについても、現実問題としてはかなり難しいようです。

****司法省、別容疑で捜査継続 州刑法による手続き終了へ****
警察官を不起訴とした大陪審の決定は覆されそうになく、州の刑法による訴追手続きは終わる見通しだ。

大陪審は起訴するかどうかを判断するだけで、有罪か無罪かを決めるわけではない。同じ事件で再び大陪審にかけることも理論上は可能だが、実際にはまれだ。米メディアは検察官が再度、大陪審を招集する可能性は低いと伝えている。

一方、米司法省は公民権法違反の容疑などで警察官の捜査を続けている。

ロサンゼルスで白人警察官グループが黒人男性に暴行を加えながら、1992年に州法に基づく裁判で無罪となり、大規模な暴動が起きた事件では、翌年に2人の警察官が公民権法違反の罪で有罪となった。

ブラウンさん側の弁護士らはこの前例などを挙げて「闘いはまだ終わっていない」と強調している。

しかし、判例などでは、公民権法違反で有罪とするには、憲法で定められたブラウンさんの権利を警察官が意図的に侵害した、と証明する必要がある。立証は難しいとされ、ホルダー司法長官も24日の声明で「ハードルは高い」と語った。【11月27日 朝日】
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今回の問題は、オバマ大統領にとっても難しい対応を強いています。
自身が黒人であるだけに、不用意な発言は全米を二分する大混乱を惹起しかねませんので、人種絡みの問題には慎重な対応をとってきていますが、それで済むのか・・・という声もあります。

****オバマ米大統領の対応に焦点移る-ミズーリ州警官不起訴で暴動****
オバマ米大統領は24日夜、ミズーリ州ファーガソンの住民に冷静な対応を呼びかけたが、聞き入られなかった。

今後は白人警官が丸腰の黒人少年を射殺した事件をめぐる緊張を沈静化するため、大統領に何ができるかに焦点が移る。

オバマ大統領は黒人指導者から同事件への関与を強めるよう圧力を受けていることから、ファーガソン訪問の可能性を残している。(中略)

射殺事件およびミズーリ州大陪審がウィルソン警察官を不起訴とした後の暴動は、米国初の黒人大統領であるオバマ氏がこれまで対応に及び腰だった人種的偏見に関わる問題だ。

ただ、これは今後は避けるのが難しい問題でもある。
オバマ大統領が国民に大陪審の判断を尊重するよう求め、デモ参加者や警察に自制を呼び掛けても、ケーブルテレビのニュース局は画面の一角でファーガソンで煙が吹き出す映像を流しているからだ。【11月26日 Bloomberg.co.jp】
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“中間選挙で勝利した野党共和党は、政権を追及する構えだ。同党のピーター・キング下院議員はFOXテレビで「警官は国家指導者やメディアにより有罪扱いされた」と非難。オバマ氏に対し、ホワイトハウスに警官を呼んで職務遂行に謝意を示すよう求めた。”【11月27日 産経】といった動きも報じられています。

人種問題という敏感な問題を政治利用しようという良識を欠いた動きですが、一部の強硬な共和党支持者にとっては人種間の対立が先鋭化するのは、むしろ都合がいい政治環境なのでしょう。
国際問題で対立を煽る“強硬派”と呼ばれる勢力がいるのと同じです。

なお、ミズーリ州のニクソン州知事は事件後、ファーガソンが抱える社会、経済的な問題を分析する「ファーガソン委員会」を設置しました。

“メンバーには警察官や黒人の活動家らも含まれる。来年9月までに是正策を勧告する予定で、ファーガソンが「癒える」までには時間がかかりそうだ。”【11月27日 毎日】とも。

時間がかかっても「癒える」ならいいのですが・・・・。
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