
(移民制度改革に関するスピーチについてスタッフと協議するオバマ大統領 TVドラマ「ザ・ホワイトハウス」(The West Wing)そのままの光景です “flickr”より By South Bend Voice https://www.flickr.com/photos/126015850@N02/15836500291/in/photolist-q8qcNt-pRpgyk-pbyh37-pQYWj4-pR1rAG-pbsvoY-q8fW8c-pRcyQu-pRaV5m-pbBZPN-q8pwik-pR29Zm-pQZeEt-pQZeDB-pQWguX-q8t91J-pbAefP-pbBUX2-q6gqLN-pQZJ2r-q8uBoC-pQYefG-pQYccy-q8uAjo-q6gp5G-q8FRgf-pQVZqJ-q8saGw-pQY9i9-pR7oYy-q8ke5g-q8ke2F-pbMx7E-q6ngds-q8MtvP-q6Fh3h-pRf6A3-q8CLxJ-q8CKX5-pR8UEK-pRaoDb-pR8V3Z-pbL4NH-q8CLRu-q8CLGG-pRaopd-pbL57i-q8kdKi-pR7oPf-pbL58R)
【国民は我々に政策を進めるよう望んでいる・・・・だろうか?】
自身の不人気が大きく影響する形で中間選挙において与党・民主党が敗北し、“レームダック化”も囁かれるアメリカ・オバマ政権が、上下両院で多数を握った野党・共和党との間で、どのような政権運営を行っていくか注目されています。
大統領・共和党双方が対決姿勢を強め、これまで以上に議会の機能不全が深刻化するのか、大統領・共和党双方が歩み寄る形で議会の機能が回復するのか。
オバマ大統領としても最初からけんか腰という話もありませんので、まずは、当然ながら協力を模索することから始めています。
****<オバマ米大統領>共和党と協力模索 雇用創出など****
オバマ米大統領は5日、与党・民主党の惨敗となった中間選挙を受けてホワイトハウスで記者会見し、「(任期残りの)2年をできる限り生産的なものにするため、新たな議会と協力したい」と述べ、野党・共和党との協力を模索すると表明した。
雇用創出など考え方の近い分野から協力を目指す。ただ、オバマ氏は議会が可決した法案に対する拒否権行使に言及し、主要政策では対立が続く可能性もうかがわせた。
オバマ氏は会見で共和党下院トップのベイナー下院議長、上院トップのマコネル院内総務と電話で協議したことを紹介。
「国民は我々に政策を進めるよう望んでいる。両党の全員がその気持ちに応える責任があり、私は大統領としてそう努める特別な責任がある」と述べ、議会に協力を呼びかけて政策を実現する考えを強調した。(後略)【11月6日 毎日】
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7日には、野党共和党幹部ら議会指導者をホワイトハウスでの昼食に招き、中間層支援など一致できる政策に協力を求めましたが、オバマ大統領が重視している移民制度改革案について、これ以上議会でのたなざらしを認めない強気の姿勢を見せる大統領と、あくまで反対の立場の共和党の歩み寄りは得られませんでした。
****オバマ氏、共和指導者と口論 移民制度改革、溝は埋まらず・・・・****
オバマ米大統領は7日、中間選挙で勝利した野党共和党幹部ら議会指導者をホワイトハウスでの昼食に招き、中間層支援など一致できる政策に協力を求めた。
ただ、オバマ氏は共和党が反対する、不法移民の市民権取得に道を開く移民制度改革を大統領令で実行する考えを示し、与野党の溝は埋まらなかった。
共和党から上院の多数党指導者となるマコネル院内総務、ベイナー下院議長ら、民主党からはリード上院院内総務らが出席した。
オバマ氏は共和党指導者に「民主党か共和党かでなく、政策が機能するかどうかを考えたい」と述べて協力を呼び掛け、エボラ出血熱やイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」に対処するための追加支出を承認するよう求めた。
また、オバマ氏は共和党が過半数を握る下院で移民制度改革法案がたなざらしになっていることを挙げ、大統領令を念頭に「行動をとる」と述べた。
これに対し、共和党指導者は強く反発。AP通信によると、オバマ氏は移民制度改革でベイナー氏と口論となり仲裁に入ろうとしたバイデン副大統領を怒った様子で遮ったという。【11月9日 産経】
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「国民は我々に政策を進めるよう望んでいる」(オバマ大統領)・・・・当然のことのようにも思えますが、共和党支持者についてみると、必ずしもそうとは言えないところもあります。
****それでもアメリカの右派はオバマ弾劾にこだわる****
保守の政策課題の実現を後回しにしても、オバマの歴史的評価を下げたいという欲求
上院でも多数派になった今、民主党の一部も巻き込んでどんどん法案を通そう・・・・共和党のミッチ・マコネル上院院内総務はそラ考えているだろう。
だが共和党を支持した有権者が求めているのはそんなことではない。
ピュー・リサーチセンターが共和党員と支持者を対象に中間選挙後に実施した調査では、共和党はさらに保守色を強めるべきだと答えた人が57%。より穏健な路線に舵を切るべきだと答えた人は39%にすぎなかった。
一般の共和党員は議会が機能するかどうかには関心がない。
法案の成立を後回しにしてでも、オバマ大統領と「対決」してほしいと答えた党員は66%に上った。共和党が上下
両院を制した今、彼らが望むのは数の力でオバマを倒すことだ。
中間選挙であぶり出された反オバマの民意の高まり。下院民主党でナンバー3の地位にあるジェームズ・クライバーンはこの状況をにらんで衝撃的な予測をする。「(共和党は)何らかの理由を見つけて、大統領弾劾決議案を出すだろう」
クライバーンによれば、共和党支持者の望みは「オバマの名前が脚注付きで歴史に残る」ことだ。「罷免できなくてもいいから、オバマを任期中に訴追された史上3番目の大統領にする。それが彼らの計画だ」
もっとも、共和党指導部の視野に弾劾は入っていないようだ。
ジョン・ベイナー下院議長は7月末の記者会見で、「大統領弾劾の計画は今も今後もいっさいない」と明言。中間選挙の直前にも広報担当が重ねてこう断言した。「ベイナーは弾劾の可能性を選択肢から外した。その姿勢は変わっていない」
右派で鳴らすポール・ライアン下院予算委員長もオバマの行動は弾劾要件の「重大な犯罪にも軽罪にも当たらない」と言い切っている。弾劾手続きに入れば重要な役割を担うはずのボブ・グッドラットド院司法委員長や、共和党の大統領候補の1人と目されるランド・ポール上院議員も同様の立場だ。
それでも、クライバーンの警告はまんざら的外れではない。(後略)【11月25日号 Newsweek日本版】
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【「法案を通せ」との大統領 「王か皇帝のように振る舞っている」と共和党は批判】
大統領弾劾はともかく、支持者の間で“法案の成立を後回しにしてでも、オバマ大統領と「対決」してほしいと答えた党員は66%に上った”という状況では、共和党指導部としても、妥協は弱腰批判に曝されるだけですので、どうしても対決姿勢が前面にでます。
オバマ大統領としても、共和党側の妥協が期待できない状況では、座して待つだけではいよいよ“レームダック化”が進行するだけですから、強行突破してでも・・・・という話にもなります。
対立の焦点となっている移民制度改正について、オバマ米大統領は20日夜、一定条件を満たす約500万人の不法移民に対し、身元調査や税金支払いなどを条件に強制送還を猶予することを柱とする移民制度改革を大統領令で実施すると発表しました。
****<オバマ大統領>強制送還500万人猶予…移民改革を発表****
オバマ米大統領は20日夜、ホワイトハウスでテレビ演説し、米国の市民権を持つ子供の親など約500万人の不法移民に対し、身元調査や税金支払いなどを条件に強制送還を猶予することを柱とする移民制度改革を大統領令で実施すると発表した。
レーガン政権下の1986年移民法で約300万人の不法移民に法的地位を与えて以来の大改革だ。ただ、野党・共和党は猛反発し、対抗措置を検討している。
オバマ氏は演説で「問題解決に最も良い方法は、このような良識的な法を通すために(与野党が)協力することだ。しかし、そうなるまで私は大統領権限を使って行動する」と決意を表明。
(1)国境警備を強化する(2)高度な技術を持つ人たちがより移民しやすくする(3)条件を満たした不法移民に一時的な滞在許可を与える、と説明した。
具体的には、米国在住が5年以上で、子供が米国の市民権や合法的な永住権を持っている親は、犯罪歴など身元調査の通過や税金納付の意思などの条件を満たせば、強制送還が猶予され、「(社会の)闇から出て、法に基づく権利を得ることができる」制度を提案。
最近や将来の不法入国者には適用されず、市民権や永住権の付与ではない。社会保障などの恩恵を得られるものでもない、とした。
ホワイトハウスによると、制度に基づく猶予期間は3年間で、今後半年以内に申請受け付けを開始する。2009年末までに子供として入国した人も3年間の猶予を得られる。
共和党が「不法入国者への恩赦だ」と批判していることについて、オバマ氏は「私の行動に疑問を持つ議員たちに対する答えは『法案を通せ』ということだけだ」と反論した。
米国には約1100万人の不法移民がいるとされる。オバマ氏は、昨年上院を通過した包括的な移民制度改革法案が共和党の反対で成立の見通しが立たないことから、議会を迂回(うかい)する大統領令で法案の一部を実現させる考えだ。
一方、4日の中間選挙で上下両院の過半数を制した共和党は、「『我が道を行く』という大統領のやり方は、米国国民との信頼構築を難しくする」(ベイナー下院議長)など、大統領令での改革に強く反発している。【11月21日 毎日】
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オバマ大統領が就任当初から移民制度改革を重点課題として取り組んできたのは、人道上の理由に加え、能力のある移民を受け入れることは米国の活力を高めるという考えからとされています。
「権利を得られない労働者に私たちの果物を摘ませ、ベッドメーキングをさせるような偽善を許容する国家なのか」とも述べています。
移民制度改革がたなざらしになっていることに、改革実現を望むヒスパニック系は大統領不信を強めています。大統領・民主党支持傾向が強いヒスパニック系ですが、中間選挙では大統領批判も出ていました。その点でも、これ以上は・・・というところでしょう。
一方、野党・共和党は、メキシコとの国境から中米の子供が不法入国する問題が深刻化した事態を、オバマ大統領が不法移民に市民権を付与しようとしていることが“誘因”だと中間選挙で民主党を攻撃しました。
「かつて彼は、大統領は『王でも皇帝でもない』と述べたが、王か皇帝のように振る舞っている」(ベイナー下院議長)【11月21日 産経より】
【また“シャットダウン”に“デフォルト”か】
移民制度改革法案については、共和党重鎮のマケイン上院議員も共同提案者になっているように、上院では一定のコンセサスが得られた問題ではありますが、大統領が強硬姿勢を鮮明にしたことで、大統領と共和党の対立が深まっています。
“大統領令で移民制度改革を強行すれば、12月11日に期限が切れる暫定予算案の可決や、次期司法長官に指名されたロレッタ・リンチ氏ら高官人事の承認に影響が出るのは確実だ。”【11月19日 産経】
今後も“シャットダウン(政府機関閉鎖)”とか“デフォルト(債務不履行)”という言葉が、飛び交う展開となりそうです。
まあ、経済状態が良好な分、日本よりはましと言えるでしょうが、イラン核開発問題、「イスラム国」対応、ウクライナ問題などでの大統領の指導力も大きく制約されそうです。
このほか米上院では、大統領・民主党議員の多数が反対するカナダのオイルサンド(油砂)から取られた原油をテキサス州の精製施設に運ぶパイプライン「キーストーンXL」の建設を承認する法案(下院では可決)、及び野党共和党の多くが反対するアメリカ国家安全保障局(NSA)による不特定多数の電話通信記録の収集を禁じた法案の審議打ち切り動議が、それぞれ賛成59票と58票と議事妨害(フィリバスター)阻止に必要な60票にとどかず、年内の成立が不可能になっています。
日本のように必ずしも所属政党で賛否が決まっている訳ではなく、法案ごとに議員の判断で動く部分があることも、日本の議会制度に比べたら“まとも”とも言えます。
大統領制と議院内閣制の違いはありますが、アメリカ議会の機能不全以上に、日本の国会審議の形骸化は深刻とも言えます。
大統領・共和党の対決があらわになるなかで、与党・民主党の下院トップであるペロシ下院院内総務が19日、オバマ米大統領が催した同党指導者との夕食会を断り、歌手のビリー・ジョエルさんの「ガーシュイン賞」受賞を記念するコンサートに出席したことが話題となっています。
大統領令による移民制度改革の実行を発表する前の根回しの意味もあった夕食会ですが、ペロシ氏の事務所は、ホワイトハウスからオバマ氏の案について事前説明を受けたとしています。
ビリー・ジョエルさんはこれまでもオバマ支援コンサートなどを行っています。
単に「どうしてもビリー・ジョエルのコンサートに行きたかった」という話ならそれだけのことですが、大統領の不人気で中間選挙に敗北した民主党トップとして、大統領との間で何か含むところがあるとしたら今後にも影響します。真相は知りません。