
(ブルンジの首都ブジュンブラで、ピエール・ヌクルンジザ大統領が追放されたとのラジオ放送を受け、通りに出て祝う人々(2015年5月13日撮影)【5月14日 AFP】)
アフリカ中部のブルンジで、大統領選挙をめぐる混乱で不穏な情勢になっていることは、4月27日ブログ「アフリカ中部ブルンジ 大統領選挙を巡る混乱 蘇る虐殺・内戦の記憶」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20150427)で取り上げましたが、事態は一部軍部によるクーデターの様相を呈しているようです。
****ブルンジ軍、暫定政権樹立宣言 大統領側は否定****
アフリカ中部ブルンジで3期目の大統領選に立候補表明したヌクルンジザ大統領に対し、軍幹部は13日のラジオ放送で、大統領を政権から追放したと演説。「国家の団結を取り戻す」として暫定政権の樹立を宣言した。
一方、大統領側は「クーデターは失敗した」と主張しており、不透明な状況が続いている。AFP通信などが伝えた。
軍幹部は「(クーデターは)多くの軍や警察の高官の支持を得ている」と主張。暫定政権を設立し、「公平で平和的な選挙の実施を目指す」と述べた。
現地からの報道によると、すでに首都ブジュンブラの空港や周辺国との国境は、クーデター軍によって占拠・閉鎖されている模様。
一方、大統領府を含む主要政府機関は大統領を擁護する軍部隊で守られているという情報もある。【5月14日 朝日】
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混乱のきっかけは、前回ブログでも触れたように、現在2期目のヌクルンジザ大統領が3期目の大統領選に立候補表明したことです。
****ブルンジ大統領、3選へ出馬表明 混乱が拡大****
アフリカ中部ブルンジのヌクルンジザ大統領は6日、テレビ演説で、「信任が得られるのであれば、私の最後の任期になる」と述べ、3期目の大統領選に立候補する意思を表明した。AP通信などが伝えた。
ブルンジの憲法は大統領の再選を1度と定めている。しかし政権与党は「同氏は1期目は議会に選出されたため、民選大統領としてはもう1期可能だ」と主張。
「3期目への立候補は憲法違反だ」と反発するデモ隊と警官隊との衝突により、少なくとも10人が死亡。約3万人が混乱の拡大を恐れて隣国のルワンダなどに避難している。
同国の憲法裁判所は5日、「同氏の立候補は憲法に違反しない」との見解を示したが、副長官が「私は憲法や和平合意に反することはできない」と反対してルワンダに逃げたため、市民らは「政治的な圧力で、憲法の解釈を変えるべきではない」と裁判所の見解に強く反発。混乱が拡大している。【5月8日 朝日】
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一部軍部によるクーデターが成功したのかどうかについては情報が錯綜しており、現段階では判然としません。
****ブルンジ軍参謀長、クーデター失敗と発表 軍分裂か****
アフリカ中部ブルンジで軍高官がピエール・ヌクルンジザ大統領政権の転覆を宣言した問題で、国軍のプライム・ニヨンガボ参謀長は14日未明、クーデターの企ては失敗に終わったと発表した。
ただ、反大統領派はこの発表を否定している。
ブルンジではヌクルンジザ大統領の3選立候補に抗議する激しいデモが数週間にわたって続いていた。こうした中、大統領の任期延長に反対して今年2月に解任されていた前情報機関長官のゴドフロア・ニヨンバレ少将が13日、クーデターを宣言。首都の空港と国境の閉鎖を命じる一方、「多数」の軍や警察高官の支援を受けていると主張した。
しかし、ニヨンガボ参謀長は国営ラジオで「ニヨンバレ少将によるクーデターの試みは阻止された」と表明。大統領と大統領府は大統領派の管理下にあると明言し、「反逆者に投降を呼び掛けている」と述べた。
だが、反大統領派のベノン・ヌダバネゼ警視総監の報道官は、ニヨンガボ参謀長の主張は虚偽だと反論するとともに、首都の空港をはじめとする複数の施設を反大統領派が掌握していると主張している。
ヌクルンジザ大統領は、クーデター宣言後に周辺国首脳との会談のため訪問していたタンザニアから帰国しようとしたが、空港が反大統領派に掌握されていたため着陸できないまま、現在所在が分からなくなっている。【5月14日 AFP】
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多くのクーデターは権力者が国外に出ているときに起きていますが、今回の“クーデター”もヌクルンジザ大統領が東アフリカ首脳会議に出席するためタンザニア訪問中に起きています。
首脳会議を欠席することで政情不安を内外にさらすことを恐れたのでしょうが・・・・。
“AFP特派員と複数の目撃者によると、大統領官邸と国営放送局を含む主要施設は現在も同大統領支持派の部隊の管理下にあるという。同大統領支持派の部隊は警告射撃を行い、デモの参加者らがテレビ・ラジオ放送局の建物に向かうのを阻止した。”【5月14日 AFP】
このまま行くと、大統領派と反大統領派の間で武力衝突が起きそうな情勢ですが、更に懸念されるのは、その混乱に住民同士が関与するような事態です。
ブルンジには、隣国ルワンダ同様に、ツチ・フツの対立などを背景にした内戦・虐殺の歴史があり、しかも、その混乱がおちついてまだ数年しかたっていません。
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“1972年、少数民族のツチ族による支配に不満をもつフツ族の反乱で、1万人のツチ族を殺害されると、その報復として同年、4月から10月にかけてツチ族系の軍隊がフツ族10万人を殺害するという事件につながった”【ウィキペディア】
その後も、ツチ・フツの報復合戦、更にはフツ内部の抗争が絶えず、ヌクルンジザ大統領(フツ系)の政権とフツ系の旧反政府組織の民族解放軍の停戦合意が実現したのが2006年3月、正式和平と権力分担で合意がなされたのが2008年12月ということで、それほど昔の話ではありません。【4月27日ブログより再録】
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それだけに、情勢が注目されていたのですが・・・・
ヌクルンジザ大統領は元々フツ系武装組織の指導者で、“93~05年の間、両民族の対立から内戦に陥り、約30万人が死亡したとされる”【5月13日 毎日】とも。
今回の大統領派・反大統領派の抗争と、過去の内戦・対立がどのようにリンクしているのか、あるいは、新たな対立なのか・・・そのあたりはよくわかりません。
よくわかりませんが、大量の火薬の上での火遊びのように危険なものを感じます。
混乱が軍部内部の争いにとどまり、速やかに決着することを願います。
【追記】
****クーデター発生のブルンジ、首都で兵士らが激しい戦闘****
軍高官がクーデターを宣言したアフリカ中部ブルンジの首都ブジュンブラで14日、ピエール・ヌクルンジザ大統領支持派とクーデター派の部隊との間で激しい戦闘が起きた。
軍関係筋と目撃者の情報によると、大統領支持派の部隊は、国営テレビ・ラジオ局の複合施設に対する攻撃に応戦している。隣国タンザニアの当局者によると、13日のクーデター発生時に同国を訪問中だったヌクルンジザ大統領は現在、ダルエスサラーム市内の非公表の場所に滞在している。
ブジュンブラのAFP記者によると、市内では自動小銃の音や爆発音が夜通し鳴り響き、明け方にかけて激化した。市街から民間人の姿はほぼ消え、市の各地から散発的に戦闘の音が聞こえ、煙が上った。
クーデター派のスポークスマン、ベノン・ヌダバネゼ氏は、戦闘が中断した朝方にAFPの取材に応じ、「われわれは実質的に市全体を掌握している。動員されている兵士らはわれわれの側についている」と語った。
大統領支持派もまた、同市の独立系放送局に攻撃を行っており、ブルンジで影響力の大きいラジオ局「アフリカ公共ラジオ」の建物はロケット弾で砲撃され炎上した。【5月14日 AFP】
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