孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

日本の入管施設の長期収容問題 「仮放免」を求めるハンスト、「餓死」も 東京五輪に向けた治安対策

2019-10-02 23:01:00 | 難民・移民

(大村入国管理センター。廊下側(手前)も窓側も鉄格子でふさがれている。左奥の小窓のついた一画はトイレ【2016年12月31日 withnews】)

 

【オーストラリアの難民収容施設での長期収容 「われわれが相手にしているのは人間だ」(パプアニューギニア首相)】

難民認定希望者をいつになったら出られるのかわからない状況で施設に長期間“押し込めておく”ような扱いは、人道上の問題もあって、オーストラリアが国外に設置している施設でときおり問題になります。

 

****パプア首相、豪に難民認定希望者引き受けの期限求める 施設では自殺未遂頻発****

パプアニューギニアのジェームズ・マラペ首相は19日、祖国を逃れてオーストラリアにたどり着いた後、パプアニューギニアのマヌス島に数年にわたり留め置かれている難民認定希望者数百人について、再定住の期限を定めるようオーストラリア側に求めた。同首相が豪公共放送ABCに述べた。

 

オーストラリア政府は6年前の7月19日、海路で同国を目指し拘束されたすべての難民認定希望者をパプアニューギニアのマヌス島と、同じく太平洋上の島国ナウルへ送還する強硬な難民政策を開始した。

 

その結果、数千人の難民認定希望者が劣悪な環境の施設に収容され、国連や人権団体が非難の声が上がった。

 

来週、オーストラリアの首都キャンベラでスコット・モリソン豪首相と会見するマラペ首相は、今もマヌス島に収容されている人々について、「再定住の期限」を定めるよう求めたいと語った。

 

マラペ氏はABCに対し、「われわれが相手にしているのは人間だ。彼らの将来について真剣に考えることなく、彼らを不安定な状態のまま放置しておけない」と述べた。

 

首相就任から2か月とたっていないマラペ氏はこの難民問題について、オーストラリアの移民政策を握っている強硬派のピーター・ダットン内相とすでに協議したと述べた。

 

難民認定希望者の多くは最終的には再定住を遂げているが、マヌス島に残留している約450人は絶望感を強めており、ここ数週間は自殺を試みる例も相次いでいる。また、ナウルにも約350人の難民認定希望者がいる。

 

オーストラリアのモリソン政権は、ナウルや旧領だったパプアニューギニアから難民認定希望者を引き受ければ、さらに多くの人々が海を渡る危険なルートでオーストラリアを目指すようになるとして、引き受けをかたくなに拒んでいる。 【7月19日 AFP】

******************

 

刑務所のように刑期が定まっておらず、いつになったらでられるかわからない・・・ということが、入所者を不安にさせるところともなっています。

 

【大村入国管理センター 仮放免を求めてハンストの男性「餓死」】

施設での待遇は異なるにしても、不法滞在外国人の長期収容の問題は、かねてより日本でも指摘されています。

 

****外国人の収容****

不法滞在などで強制退去処分を受けた外国人は、出国まで全国17カ所の入管施設に収容される。うち出国のめどが立たないケースは東日本入国管理センター(茨城県)か、大村入国管理センター(長崎県)に移送される。

 

大村の収容者数は2018年末時点で100人。在留を特別に認める「仮放免」制度などがあるが、ここ数年は収容期間の長期化も指摘され、大村では収容者の94%が半年以上に及ぶ。

 

法務省によると記録がある07年以降、全国の施設で収容中に亡くなった外国人は15人。うち自殺者は5人。【7月18日 西日本新聞】

*****************


入管施設の居住環境等については、以下のようにも。

 

****収容長期化、数年間も 大村入国管理センター 強制退去処分の外国人 法と人権、問われるバランス****

(中略)12畳半の畳敷きの部屋が廊下に面して5つ並ぶ。各部屋にはテレビと個室トイレ、炊事場が備えられ、窓や廊下は鉄格子と透明のアクリル板で仕切られている。夜間、ドアは外から施錠される。

 

大村入国管理センター内の居住区。5部屋を1区画とし、計16区画。各部屋の定員は10人で、日中は部屋を出て、シャワーや公衆電話がある廊下で過ごすこともできるが、原則、行動は区画内に制限される。食事は弁当。パソコンや携帯電話の持ち込みは禁止されている。

 

入管施設には刑務所のように強制される作業はなく「保安に支障がない範囲で自由に過ごせるようにしている」(総務課)。ただ、刑期と異なり収容期間に制限はない。(後略)【2018年9月9日 西日本新聞】

*********************


 現代日本で「餓死」というのは、そうそうあるものではありませんが、国外退去処分を受けた外国人を収容する入管施設では事情が異なります。

 

****入管でハンスト「餓死」 長崎で6月、仮放免求めた男性****

大村入国管理センター(長崎県)で今年6月、仮放免を求めてハンガーストライキをしていた40代のナイジェリア人男性が死亡した問題で、法務省出入国在留管理庁は1日、死因を「餓死」とする調査結果を公表した。

 

同庁は「対応に問題はなかった」としているが、支援者からは批判の声が上がった。収容の長期化が進むなか、「医療体制の限界」も浮かび上がった。

 

 ■「強制的な治療は困難」 入管庁

調査結果によると、男性は2000年に入国し日本人女性と結婚。窃盗罪などで実刑判決を受け、4年余り服役した後に仮釈放され、国外退去処分となった。16年から同センターに収容されていた。

 

「自由がありません。ここから出してください」

センターは今年5月末、男性にそう告げられ、男性のハンストを把握した。6月初旬までは外部の病院を受診させるなどしたが、男性はその後、センター内外での治療を拒否。

 

非常勤医師は「意識を失うか、衰弱し治療拒否できない状態になったら救急搬送するしかない」と判断していた。男性は職員が異変に気づいた同24日に病院に運ばれたが、死亡した。

 

身長171センチの男性の体重は3週間で約13キロも減り、死亡時は約47キロ。入管施設収容中に餓死した事例は初めてだった。

 

センターでは、断続的に常勤医師が確保できない時期があり、13年からは非常勤の医師しかいなかった。普段は職員が毎朝男性の血圧や脈拍、体温、体重などを測り、必要に応じて医師の指示を受けていた。

 

食事を拒否する収容者には医師の判断で強制的に治療できるとの法務省通達もあったが、センターは非常勤医師に知らせていなかった。

 

同庁は調査結果で、本人が強く治療を拒否していたことや常勤医師の不在を挙げて「強制的な治療は困難だった」とした上で、対応に「問題はなかった」と結論付けた。

 

 ■「常勤医確保を最優先に」 支援者

「対応に問題はない」とする出入国在留管理庁の調査結果に、支援者らは憤りや不安を口にした。

 

大村入国管理センターで支援活動を続ける柚之原(ゆのはら)寛史牧師(51)は、今回の調査結果について「間違っていなかったとするのなら、また死者が出てしまう」と批判。「職員の数も足りておらず、収容者への配慮が足りないのではないか」と危機感を募らせた。

 

イラン人男性2人が同センターからの「仮放免」を求めた福岡地裁での訴訟で代理人を務める稲森幸一弁護士は「餓死するまで方法はなかったのか」と疑問を呈した。「長期収容は、個人の尊厳を侵害している。収容のあり方を考え直す時期にきている」と指摘する。

 

入管問題を多く手がける児玉晃一弁護士は「男性の仮放免を早くに認めるべきだった」とした上で、医療体制の不十分さも批判。職員が男性の脈を測るなどしたことが調査で明らかになっており、「医師が毎日診ていれば早く異変に気づけたのではないか。常勤医師の確保を最優先すべきだ」と話した。(田中瞳子、角詠之)

 

 ■収容者の7割、国外退去拒否

全国の入管施設では国外退去処分を受けた外国人の収容が長期化し、一時的に外に出られる「仮放免」を求めて収容者が食事を断つハンガーストライキで抗議する事例が相次ぐ。

 

出入国在留管理庁によると、9月末時点でも36人がハンスト中だ。支援団体などは仮放免を増やすよう求めているが、入管庁は「犯罪に関わった収容者も多く、安全確保の点からむやみに認められない」との立場だ。

 

1日の入管庁の発表によると、全国17施設に6月末時点で収容中の外国人1253人のうち、約7割にあたる858人が国外退去命令を拒否。本人が裁判で難民認定や在留許可を求めたり、当該国が受け入れを拒否したりしており、これが半年~数年に及ぶ長期収容の主な要因とみている。

 

退去命令を拒否した人を国籍別にみると、最多はイラン(101人)、次いでスリランカ(82人)、ブラジル(75人)だった。

 

また、拒否した人の約4割(366人)は収容前に事件を起こし、有罪判決を受けていた。罪名別では、薬物が約34%と多く、窃盗・詐欺が約18%、性犯罪(約2%)や殺人・殺人未遂(0.5%)もあった。【10月2日 朝日】

********************

 

【収容期間が長い人ほど精神的に追い詰められている】

上記ナイジェリア人男性の死亡については、7月当時、以下のようにも報じられていました。

 

****サニーさんの死なぜ 大村入管のナイジェリア人 収容3年7ヵ月****

強制退去処分を受けた外国人を収容する西日本唯一の施設「大村入国管理センター」(長崎県大村市)で6月下旬、収容中の40代のナイジェリア人男性が死亡した。男性は施設内で「サニーさん」と呼ばれ、慕われていた。

 

収容期間は3年7カ月に及び、亡くなる前は隔離された状態で衰弱していたという。センターは死因や状況を明らかにしておらず、支援者からは第三者機関による原因究明を求める声が上がっている。(中略)

 

(やはりハンガーストライキをして、その後「仮放免」が認められたクルド人男性の話では、隣室のサニーさんは食事をとっておらず)最後に見た時はやせ細り、骨と皮ばかりになっていたという。

 

支援者によると、サニーさんが収容されたのは2015年11月。日本人女性との間に子どもがおり「出国すると子どもに会えなくなる」と帰国を拒んでいたという。(中略)

 

支援者や収容者によると、サニーさんはこれまで仮放免の申請を4回却下されていた。ハンストしていたとの情報もあるが明確な証言はない。その最期は覚悟の上だったのか。それとも‐。

 

「3C」(と呼ばれる居住区)にはサニーさんや、後に仮放免されたクルド人男性など、食事を取らなかった複数の外国人が各部屋に隔離されていたという。

 

その理由についてもセンターは「個別事案には答えられない」(総務課)と公表していない。サニーさんの死亡について、出入国在留管理庁は調査チームを設置。福岡難民弁護団は第三者機関による原因究明と調査結果の公表を求める声明を発表している。

   ◇    ◇

ハンスト後絶たず

強制退去処分を受けた外国人の収容の長期化が指摘される中、全国の入管施設では仮放免の要求や長期収容への抗議のためのハンガーストライキが後を絶たない。

 

大村入国管理センターで外国人との面会活動を続けている牧師の柚之原寛史さん(51)によると、同センターではサニーさんの死後、ハンストがさらに広がっているといい「収容期間が長い人ほど精神的に追い詰められており、このままでは第二、第三の犠牲者が出かねない」と危機感を募らせる。

 

サニーさん死亡を受け、山下貴司法相は2日の閣議後会見で「健康上の問題などで速やかな送還の見込みが立たない場合は、人道上の観点から仮放免制度を弾力的に運用する」と説明。

 

これに対し、全国難民弁護団連絡会世話人で外国人収容問題に詳しい児玉晃一弁護士(東京)は「命を懸けたハンストが広がる背景には、理由の説明もないまま長期間収容する入管側に問題がある」と指摘。

 

「ハンストすれば仮放免の道が開けるという情報が収容者に広がれば危険だ。難民申請中などで早期の出国が見込めないケースなどは原則として仮放免を認めるべきだ」とし、場当たり的な対応ではなく根本的な政策の見直しを訴えている。【7月18日 西日本新聞】

*******************

 

【長期化はここ数年の現象 背景に東京五輪に向けた治安対策】

日本の入管施設で「長期化」が問題となったのは、ここ数年のことです。背景には「仮放免」が非常に厳しくなったことがありますが、2020年の東京オリンピックに向けた治安対策のための措置とも。

 

*****「急増する長期収容 高まる批判にどうこたえるか」(時論公論)*****

日本からの退去を命じられ法務省の入管施設に収容されている外国人が、1年以上、人によっては2年、3年と長期にわたって収容されるケースが急増し、抗議のハンガーストライキが各地の収容施設に広がっています。長崎県では、ハンストで命を落とす人も出ています。

 

収容期間の長期化は人権侵害だといった批判の声が内外で上がり、政府はこの問題への対応を迫られています。(中略)

 

かつては収容期間は長くても半年ほどでしたが、去年末には全国で収容されている外国人およそ1250人のうち55%が半年以上収容されている人たちでした。茨城県牛久市にある東日本入国管理センターではその割合が9割にも上っています。収容期間がこれほど長期化しているのはかつてなかったことです。

 

そもそも入管に収容される外国人は、在留資格を持っていなかったり、資格の更新が認められなかったりしたため不法滞在となり、日本から退去を命じられた人たちです。

 

退去を命じられた人の多くは自費で速やかに出国していますが、問題は、祖国に戻れば身の危険にさらされかねないという人や、10年も20年も日本で暮らし、送還されれば妻や子供と引き離されてしまうという人など、国に帰ることのできない事情を抱えた人たちです。

 

東京入管では収容されている人の4割が難民認定の申請者や難民認定をめぐって裁判で争っています。(中略)

法務省は、退去を命じられた人は速やかに本国に送還する方針で、退去を拒む人がいるために収容が長期化しているとしています。

一方、日本弁護士連合会は今月8日、会長声明を発表し、必要性や相当性のない収容をやめるとともに、再び収容された人を速やか仮放免するよう要請しました。(中略)

 

なぜ、収容期間が長期化しているのか、被収容者の弁護団は、2015年以降法務省が、仮放免の運用を厳しくしたことや、難民認定の申請者や不法滞在者の取り締まりを強化したことが背景にあるのではないかと話しています。

 

これは3年前に当時の法務省入国管理局長から全国の入管あてに出された通知です。「安全・安心な社会の実現のための取組について」と題され、東京オリンピック・パラリンピックまでに不法滞在者や、本国送還を拒んでいる人を日本の社会に不安を与える外国人だとして、大幅に削減するよう求めています。

 

治安対策のために強制送還を積極的に進め、仮放免も容易に認めない方針がうかがえます。法務省は、オリンピック・パラリンピックは長期収容者の増加とは関係がないとしていますが、この数年、収容される人の数が増える一方で仮放免される人が大幅に減っていることは事実です。

 

帰るに帰れない様々な事情を抱えた人たちの収容が長期化していますが、こうした人たちは皆社会の脅威なのでしょうか。

弁護団や市民団体は、収容の長期化は「人権侵害だ」と指摘しています。本来は送還までの一時的な措置であるはずの収容が事実上無期限となり、中には5年以上も拘束されている人がいること、家族と引き離され刑務所のような場所に閉じ込められていること、さらに一人の人間の処遇を裁判所ではなく入管の職員が決めてしまうことなど、問題が多いと言います。

国連機関からも日本の長期収容について、たびたび懸念が示されています。国連自由権規約委員会や国連人種差別撤廃委員会は、「収容は最短期間であるべきで、他の手段が十分検討された場合にのみ行われるように」日本政府に求めています。

これに対して法務省は、収容の長期化は問題だとして改善の必要性を認め、対策を検討中だとしています。健康上問題のある人などに対しては仮放免を弾力的に運用しているとも説明しています。

 

ただ、長期収容を解消するためには、速やかに本国に送還することが重要だとしていますが、難民認定の審査中は強制送還が認められず、迫害のおそれのある本国に送還することも難民条約で禁じられているため現実的ではありません。

 

それだけに内外の批判が高まる中で、この問題をこれ以上放置せず、早急に取り組む必要があります。もちろん理由なく本国への送還を拒む人には断固たる姿勢で臨むべきでしょうが、人道上の配慮が必要な人に対してはより柔軟な対応が求められます。

 

収容期間に上限を設けることも1つの方法ではないでしょうか。収容中の待遇の改善も国連などから迫られており、施設の整備とともに喫緊の課題です。

 

訪日する外国人旅行者が急増し、過去最高を更新し続ける日本は、東京オリンピック・パラリンピックを控え、外国人への「おもてなし」をアピールしてきました。

 

しかし、一方で、拷問のような扱いだとして抗議のハンストを続ける外国人が少なからずいるのも事実です。そうした人たちの声にも耳を傾け、苦痛を和らげられるよう配慮する姿勢が、国際社会での日本の評価につながるのではないでしょうか。【8月21日 二村 伸 解説委員 NHK】

*****************

 

仮放免の適用はセンター長が判断することになっています。

 

収容者が「仮放免」を申請して国外退去を拒否する理由は、「日本に残る家族と会えなくなる」「未払い賃金を受け取っておらず、帰国すると借金を返せない」「母国では宗教的な理由で迫害を受ける」「難民として出国したので戻れない」などです。【2018年9月9日 西日本新聞より】

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする