孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

米ロ首脳会談  ウクライナ問題での解決道筋は未だ見えず 中国の台湾進攻問題も連動

2021-12-08 23:22:54 | 欧州情勢
(ロシアのソチで7日、バイデン米大統領とのビデオ電話協議に臨むロシアのプーチン大統領=AP【12月8日 朝日】)
聞)
【ロシア、米国との対決姿勢を崩さず 米の制裁警告も緊張緩和につながる保証はない】
ロシア・ウクライナ双方が軍を終結させているということで緊張が高まっており、「年明けにもロシア軍が進攻」といった話も一部に流れているウクライナ東部情勢をメインの議題としたものと推測されるバイデン・プーチン両首脳のオンライン会談が7日に行われました。

会談前の状況については、以下のようにも。

****米露首脳会談へ プーチン氏、ウクライナ国境の部隊撤収応じるか****
(中略)最大の焦点はウクライナの後ろ盾となっているバイデン氏との会談により、プーチン氏が国境付近からの部隊の撤収に応じるかどうかだ。(中略)
 
国境付近にいるロシア軍の兵力について、ウクライナのレズニコフ国防相は3日、計9万4300人に上るとしたうえで「(ロシアが)緊張を激化させようとする可能性が最も高いのは1月末」と指摘。AP通信は4日、ロシアの部隊が今後17万5000人に増大し、2022年初めにも軍事侵攻が始まる可能性があるとする米情報機関の見方を伝えた。
 
一方、ロシアはウクライナ軍が親露派武装勢力との紛争が続く東部周辺に部隊を集結させていると主張。「ウクライナ指導部は武力で紛争を解決する可能性を排除していない」(ペスコフ氏)と非難を強めている。プーチン氏は米国などからのウクライナへの兵器の供給も批判しており、緊張緩和の方策を巡るバイデン氏との激しい応酬が予想される。【12月5日 毎日】
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もとより、会談でプーチン大統領が部隊撤収を明言するとは考えにくい状況ではありましたが、双方が立場を主張し、相手を牽制する形で会談は終わったようです。今のところ、ロシアからも、ウクライナ・アメリカからも、会談を受けた具体的変化・行動は公表されていません。

****露、米への対決姿勢崩さず ウクライナ緊張継続へ****
ロシアのプーチン大統領は7日のバイデン米大統領とのオンライン首脳会談で、軍事衝突の緊張が高まるウクライナ情勢について「危機を拡大しているのは北大西洋条約機構(NATO)側だ」と主張し、米国との対決姿勢を崩さなかった。

バイデン氏はロシアがウクライナに侵攻すれば制裁を発動するとプーチン氏に警告したが、緊張緩和につながる保証はないのが実情だ。

露大統領府によると、バイデン氏はプーチン氏に、ウクライナ国境付近でのロシアの軍備増強を「脅迫的だ」と批判。ロシアによる侵攻を念頭に、情勢が悪化すれば同盟国と協調して制裁を発動する−とした。

これに対し、プーチン氏は「NATOこそがウクライナ領土を私物化しようと試み、国境周辺で軍備を増強している。ロシアに責任を転嫁すべきではない」と反論。

NATOはウクライナが模索する将来のNATO加盟を認めず、露国境周辺への兵器配備もしない−という「法的に明文化された保証」をロシアに与えるべきだとも主張した。

露政権は現時点で侵攻の意図を否定している。今回の軍備増強は、ウクライナ東部で続くウクライナ軍と親露派武装勢力との紛争の和平合意で、ロシア側に有利な「ミンスク合意」の履行をウクライナに迫るとともに、バイデン氏との会談を実現させてロシアの安全を保証させるための「交渉カード」だとする見方も露専門家らの間では強い。

しかし、米国側によると、バイデン氏はプーチン氏の要求を拒否し、ウクライナ支持を改めて表明した。このため、ロシアが増強した兵力を即座に撤収させる可能性は低い。

ウクライナ東部紛争が激化し、ロシアが「自国民保護」などの名目で軍事介入に踏み切る可能性も残っている。【12月8日 産経】
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【米、欧州との協調が必要 「ノルドストリーム2」の扱いで独と協議】
アメリカ側が制裁発動の“条件”を「軍事侵攻」に絞ったことは、「軍事侵攻以外の方法での浸透は黙認する」とのメッセージと受け取られかねないとの指摘も。

****米方針、露「ハイブリッド戦」には効果薄****
米露首脳会談は、ウクライナへの威圧を強めるロシアへの刺激を避け、欧州諸国と足並みをそろえることに汲々とするバイデン政権の性格が色濃く表れたものとなった。

「露側が軍事侵攻に踏み切った場合は強力な経済制裁を発動する」との言明は、裏を返せば「軍事侵攻以外の方法での浸透は黙認する」とのメッセージと受け取られかねず、プーチン露政権が推し進める「ハイブリッド戦」を抑止する効果は期待しにくい。(中略)

ロシアはすでにウクライナに対し、親露派武装勢力などを通じた非正規戦やサイバー攻撃、世論操作や攪乱(かくらん)を狙った情報戦を駆使したハイブリッド戦略を展開している。

制裁圧力で正規軍による侵攻を思いとどまらせることができても、ウクライナを勢力圏下に置こうとする工作活動を抑止することには直結しない。

そうした中でバイデン政権が今回、制裁発動の〝条件〟を「軍事侵攻」に絞ったのは、当面の緊張緩和を優先したためだ。ノルドストリーム2の稼働に期待するドイツをはじめとして、エネルギー面で対露依存を深める欧州諸国への配慮もあるとみられる。

バイデン政権は、中国との競争をにらみ、ロシアとは安定的な関係の構築を目指すとしているが、その交渉姿勢には野党・共和党を中心に「弱腰」との批判がつきまとっている。【12月8日 産経】
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ロシアの天然ガスをドイツに送る海底パイプライン「ノルドストリーム2」について“バイデン政権が、輸入側のドイツに配慮する形で建設を容認していたが、サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は7日、ロシアがノルドストリーム2を稼働させたいなら、「ウクライナ侵攻のリスクを冒したいとは思わないだろう」と述べた。”【同上】とも

この扱いは、メルケル退陣で発足したばかりのドイツ・ショルツ政権にとっても厄介な問題です。米独で足並みを揃えることができるのか・・・米独間で協議も行われているようです。

****コロナとロシア…独新首相、国内外で早くも試練****
(中略)ショルツ氏は会見で、ロシアがウクライナ国境に部隊を集結させていることにも触れ、「ウクライナが脅威にさらされるのは、容認できない」と懸念を表明。ノルドストリーム2稼働については明言を避け、メルケル政権の方針を踏襲するとのみ述べた。

新政権では、ノルドストリーム2稼働について与党間に姿勢の違いがある。ショルツ氏はメルケル政権の副首相兼財務相として、計画を推し進めてきた。メルケル政権は、ロシアがガスを「地政学的な武器」にすれば制裁も辞さないとしながら、パイプライン建設を進める「あいまい政策」をとった。

これに対し、新政権の第2与党、緑の党はロシアの人権侵害を重くみて、計画を批判した。新政権の連立合意はノルドストリーム2に言及していない。

ノルドストリーム2は9月に完成が発表され、ドイツの認可後に稼働する予定。バイデン政権は対独関係を重視し、建設を容認してきたが、ウクライナ国境の緊張で、対独圧力を強める可能性がある。

ロイター通信によると、ヌーランド米国務次官は7日、ロシアへの対応でドイツと「集中的に協議中」だと述べた。バイデン米大統領は7日、プーチン露大統領との会談で、ロシアがウクライナに侵攻すれば同盟国とともに制裁措置をとると警告しており、米独間の協議はノルドストリーム2をめぐるものとみられている。【12月8日 産経】
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“ロシアが軍事侵攻に踏み切れば、独ロ間を結ぶ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」を止める確約を米国はドイツから得ている”とも報じられています。

【米「14年にはやらなかったことを現在は準備」 露への対応を誤れば、中国の台湾進攻を促すことにも】
その「ノルドストリーム2」の他、銀行決済取引網「SWIFT」からのロシア排除など、アメリカは「14年にはやらなかったことを現在は準備している。バイデン氏はプーチン氏に直接そう伝えた」とのことですが、これでロシアを思いとどまらせることができるのかは不透明です。

また、アメリカのロシアへの対応如何では、「その程度のものか」ということで、中国の台湾への侵攻を決意させることにもなりかねないとの懸念も。

アメリカが制裁発動の“条件”を「軍事侵攻」に絞ったのは、前出「ハイブリッド戦」云々はともかく、軍事的手段ではなく外交で問題解決を測るようにロシアに促したということでしょう。

****緊張緩和への道筋見えない米ロ 米国が促した「別の選択肢」****
(中略)軍事衝突という最悪の事態を防ぎ、いかに外交手段でロシアを沈静化に向かわせるか。今回の首脳協議は、今後の展開を左右する重要な対話の場となった。
 
ロシアは米国に対し、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟や、ロシア近隣国へのNATOの軍事展開をやめるよう求めている。
 
米国側は「要求は受け入れがたい」(ヌーランド国務次官)というのが立場だ。ただ、ロシアが事態の沈静化に応じれば、「欧米はロシアの戦略的な懸念について対話する用意がある」(サリバン大統領補佐官)とも言及。バイデン氏はプーチン氏に対し、軍事行動ではなく外交という「別の選択肢」をとるよう促したという。

残された影響力のある「切り札」
ただ、首脳協議を経ても両国の主張は平行線をたどっている。そこで、バイデン政権がロシアの軍事行動を抑止するための手段として検討しているのが、「強力な経済措置」による圧力だ。

バイデン政権はすでに、ロシア国内の人権問題やサイバー攻撃などをめぐって、関与を認定した政府高官などを対象とした経済制裁を科しているが、影響力のある「切り札」は残している。
 
米政府は具体策を明かしていないが、プーチン氏の側近らや大手銀行への制裁▽ロシア国債の米国人による購入禁止▽ルーブルから米ドルなどへの通貨交換の制限――など様々な可能性がメディアでは報じられている。
 
さらに強力な制裁案として、世界の銀行が国際送金で利用するSWIFT(国際銀行間通信協会)からの締め出しの可能性も伝えられる。国際送金は石油や天然ガスなどの決済にも利用されている。もし、これが実際の措置として取られれば、輸入側の欧州諸国への余波も大きいと懸念されている。
 
経済制裁の威力を高めるには、各国が足並みをそろえることも欠かせない。ロシアは欧州各国と経済的な結びつきが強く、同盟・友好国から制裁への賛同を得る必要があるためだ。
 
バイデン大統領は米ロ首脳協議の前日の6日、仏独伊英の首脳と電話協議を実施。さらに7日にプーチン氏との協議を終えると、直後にまた4カ国の首脳と電話をつなぎ、結果を報告するとともに「NATOやEUの同盟・友好国との協議も含め、緊密に連絡を取り合う」ことで合意した。

バイデン政権の「本気度」を占う試金石
ロイター通信によれば、ロシアが軍事侵攻に踏み切れば、独ロ間を結ぶ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」を止める確約を米国はドイツから得ているという。
 
ただ、経済制裁で本当にロシアを踏みとどまらせることができるかには疑問も残る。2014年にロシアがクリミア半島を併合した際にも、米国はロシア政府関係者へのビザ発給制限や資産凍結などで対抗したが、ロシアの軍事行動を阻むことはできなかった。

7日の記者会見でその点を指摘されたサリバン大統領補佐官(安全保障担当)は「14年にはやらなかったことを現在は準備している。バイデン氏はプーチン氏に直接そう伝えた」と強調した。

緊迫化するウクライナ情勢への対応は、バイデン政権の「本気度」を占う試金石にもなる。
米上院の外交委員会では7日、ウクライナ情勢を「台湾有事」と関連づけた質問が出た。
 
「西側諸国が(ロシアの)軍事侵攻に対して制裁程度の対応しかしないのなら、中国は台湾侵攻に米国が軍事力で対抗する可能性が低いと判断する。これを非常に懸念している」
 
ケイン上院議員から問われたヌーランド国務次官は「いま米国は試されている。権威主義国家も友好国も、世界中が米国の行動を注視するだろう」と答え、ウクライナ情勢をめぐる米国の行動が米外交全体に長期的な影響を及ぼすとの見方を示した。
 
また同日の記者会見では、ロシアによるウクライナ侵攻と、中国の台湾侵攻が同時進行となる「悪夢のシナリオ」を想定しているか、との質問も出た。サリバン氏は「抑止と外交の両方によって、そうしたシナリオが起きないようにしている。それが現在の政策目標だ」と答えた。
 
バイデン政権は米軍のアフガン撤退で混乱を招いたことで、国際社会からの信用力を落としたと指摘される。加えて、最大の競争相手である中国に集中したいなかで、ロシアとの「二正面作戦」を強いられる苦しい展開となっている。
 
ウクライナを守るために実効性のある対応をとれるかどうか。バイデン政権にとって正念場となりそうだ。【12月8日 朝日】
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ロシアによるウクライナ侵攻と、中国の台湾侵攻が同時進行となる「悪夢のシナリオ」・・・・中国・ロシアからすれば、「やるなら一緒にやろうぜ。その方がアメリカも対応しづらいだろう」ということでしょうが・・・アメリカとしても「二正面作戦」は現実としてはとれないので、どちらかは黙認するしかない・・・もし、両方に軍事対応すれば、まさに世界戦争状態に・・・人類存亡の危機にもなる「悪夢」です。

【露 「約束を破ったのは米 露はNATOの脅威にさらされている」との認識からNATOに圧力】
プーチン大統領もそこまでは考えていないでしょう。ただ、中国に専念したいアメリカに圧力をかければ譲歩を引き出せるかも・・・とは考えているかも。

ウクライナの問題は、ロシア・プーチン大統領からすれば、約束を破って状況を悪化させているのはアメリカ・NATOの側で、ロシアは脅威にさらされている・・・という認識になります。

****米国が破った約束。プーチンがウクライナ国境に軍を展開する意図****
(中略)国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、ソビエト崩壊から現在に至るまでのロシアと欧米諸国の関係性を分析しつつ、プーチン大統領が「大軍をもって脅迫している相手」について考察しています。

ウクライナ国境にロシア軍が集結、プーチンの動機は?
(中略)プーチンにいわせると、現在の欧米とロシアの対立の根源は、「アメリカが約束を破り、NATOを東方に拡大していること」 どういうことでしょうか?

プーチンから見た「アメリカの裏切り」
(中略)1989年、ベルリンの壁崩壊から、東欧民主化革命が起こりました。しかし、ゴルバチョフは、この動きを静観します。さらに1990年になると、「東西ドイツを再統一したい」という動きが加速化していきました。

アメリカは、東ドイツの実質的支配国だったソ連の指導者ゴルバチョフに許可を求めます。ゴルバチョフは、一つだけ条件をつけました。それは、「NATOを統一ドイツより東に拡大しないこと」

アメリカは、約束しました。そして、東西ドイツ統一は、ソ連の抵抗なく進められたのです。
しかし、アメリカは約束を破りました。1999年、東欧に位置し、かつてソ連の実質支配下にあったポーランド、チェコ、ハンガリーがNATOに加盟。2004年には、スロバキア、ルーマニア、ブルガリア、スロベニアが加盟。ちなみに、この時は、すでにプーチンがロシア大統領です。

そして、2004年には、プーチンを大激怒させる出来事が怒っています。それは、バルト三国、つまりリトアニア、エストニア、ラトビアがNATOに加盟したこと。

東欧は、「実質ソ連の支配下」にあったといっても、名目上は他の国々です。しかし、バルト三国は、「ソ連構成共和国」だった。つまり、プーチンから見ると、「自国の一部が、反ロシア軍事同盟に入ってしまった!」ということなのです。

「アメリカが、東西ドイツ統一時の約束を破り、NATOを東方に拡大しつづけていることに、プーチンは激怒している」 プーチンからいわせると、これが、欧米とロシア関係がよくならない根源的理由なのです。
これ、どうなのでしょう? 私は、全然親プーチンではないですが、彼の主張は理解できます。

NATO加盟国は、30か国。そして、NATOは、「対ソ連軍事同盟」だった。ソ連崩壊後は、「対ロシア軍事同盟」になっている。少しロシア大統領の立場に立ってみてください。「30か国の対ロシア軍事同盟」が存在している。そして、その世界最大最強の軍事同盟は、「さらに拡大しようとしている」のです。

これ、日本だったらどんな状況でしょう。中国が、韓国、北朝鮮、全東南アジア諸国と共に「反日本軍事同盟」をつくったと想像してみてください。どれほどの脅威でしょうか?

その後の欧米とロシア
(中略)2019年、お笑い芸人のゼレンスキーが(ウクライナ)大統領になります。彼は当初、「ロシアとの対話」を主張していました。しかし、私たち日本人はよく理解できますが、「プーチンとの対話は疲れる」のです。というのも、条件を提示してくるだけで、自分が妥協することは決してないからです。ゼレンスキーは、「プーチンとの対話は無理」と理解し、最近は、EU、NATOに接近しています。

ロシアの隣国ウクライナがNATOに入る。これは、ロシアにとって「レッドライン」で「悪夢」です。だから、大軍を集結させて、脅迫している。

そして脅迫しているのは、ウクライナではありません。脅迫すればするほど、ウクライナはNATOに走る。しかし、欧州の国々はどうでしょうか?ウクライナがNATOに入れば、欧州は関係ないウクライナを守るためにロシアと戦争になるかもしれない。だから、ロシア軍が集結すると欧州の国々は、「ウクライナをNATOに入れるのは、リスクが大きすぎる」となる。

アメリカはどうでしょうか?バイデン政権は、中国との戦いに集中するためにアフガン撤退を急ぎました。そう、中国と戦うバイデンは、プーチンと戦う時間も金も惜しいのです。だから、バイデンには、プーチンと和解したい動機があります。

プーチンの条件は、「ウクライナをNATOに加盟させない」こと、「ウクライナにNATOの軍事インフラを置かないこと」などでしょう。そして「中国問題で忙しいバイデンは、妥協するかもしれない」というのが、プーチンの読みなのです。【12月8日 MAG2NEWS】
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