(秘密裏に行われる授業に出席するアフガンの少女たち【11月29日 WSJ】)
【タイムリーな支援がないと最悪の『大惨事』のフェーズに】
「アフガニスタンでは11月以降、人口の半分以上にあたる2280万人以上が深刻な食料不安に陥るおそれがあり、そのうち870万人が飢餓に直面する」(WFP10月25日発表)
タリバン支配のアフガニスタンが干ばつ、経済制裁などによって飢餓の危機に直面していることはこれまでも取り上げてきました。また、(現地住民にとっては「それどころではない」といったところでしょうが)新型コロナ感染も拡大しています。
****「草をとってきて食べている家も」 飢餓の危機に直面するアフガニスタンの窮状、現地NGO職員に聞く****
8月中旬、イスラム主義勢力タリバンが権力を掌握したアフガニスタン。長引く干ばつに海外からの経済制裁などが加わり、国民は深刻な食料危機に見舞われている。
いま、現地の事情はどうなっているのか。緊急食料支援を行うための資金を募るクラウドファンディングを立ち上げた国際NGO「ジェン」(JEN、本部・東京都港区)の現地事務所長が、アフガニスタンの国民が直面している窮状を、オンライン取材で語った。
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「国連世界食糧計画(WFP)のリポートによれば、アフガニスタン全34県のうち13県が、食料不安の度合いを示す5段階のうち3番目に厳しい『危機』の状況にあり、21県がさらに厳しい4番目の『緊急事態』のフェーズにあります。
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「国連世界食糧計画(WFP)のリポートによれば、アフガニスタン全34県のうち13県が、食料不安の度合いを示す5段階のうち3番目に厳しい『危機』の状況にあり、21県がさらに厳しい4番目の『緊急事態』のフェーズにあります。
私たちが主に活動しているナンガルハル県はもともと農業県なのですが、干ばつなどによって作物の収穫量が昨年より急減し、11月には『緊急事態』となりました。このままタイムリーな支援がないと最悪の『大惨事』のフェーズに入ってしまうおそれがあります」
アフガニスタン東部、パキスタンと国境を接するナンガルハル県で活動するジェン現地事務所長のムハンマドさん(仮名)はこう語る。
WFPは10月25日、「アフガニスタンでは11月以降、人口の半分以上にあたる2280万人以上が深刻な食料不安に陥るおそれがあり、そのうち870万人が飢餓に直面する」という報告書を発表。「世界最悪の人道危機の一つに陥っている」と警鐘を鳴らした。
ジェンは、2001年からアフガニスタンで学校建設や水衛生環境の改善などの支援活動を実施してきた。タリバン政権掌握後の現在も、28人の現地スタッフがナンガルハル県を中心に支援活動を続けている。(中略)
ムハンマドさんは11月末、首都カブールを訪問したときの驚きをこう話す。
「家財道具を売るための即席の市場ができて、それがどんどん大きくなっていきました。多くの人がここで食料を買うお金を得るために家財道具を売っているのです。道路には物乞いをする子どもの姿もありました」
■「ほとんどの家庭がパンとお茶だけ」
タリバンによる政権掌握後、アフガニスタン中央銀行の米国内資産が凍結されるなどの経済制裁によって経済が停滞。海外からの送金も途絶えた。ムハンマドさんによると、資金不足で国内42のダム建設プロジェクトがすべて止まり、企業、銀行、大学などの規模縮小も相次いでいる。
それに伴い、失業率が増加。さらに深刻な干ばつが追い打ちをかけ、食料などの物価は高騰している。国民は食料を買うお金を得るため、生活に必要な家財まで売る事態に陥っているのだという。
「8月中旬以降、食料価格は高騰しています。例えば、小麦1袋の値段は1500アフガニ(約1760円)から2500アフガニ(約2925円)に高騰しました。
アフガニスタン東部、パキスタンと国境を接するナンガルハル県で活動するジェン現地事務所長のムハンマドさん(仮名)はこう語る。
WFPは10月25日、「アフガニスタンでは11月以降、人口の半分以上にあたる2280万人以上が深刻な食料不安に陥るおそれがあり、そのうち870万人が飢餓に直面する」という報告書を発表。「世界最悪の人道危機の一つに陥っている」と警鐘を鳴らした。
ジェンは、2001年からアフガニスタンで学校建設や水衛生環境の改善などの支援活動を実施してきた。タリバン政権掌握後の現在も、28人の現地スタッフがナンガルハル県を中心に支援活動を続けている。(中略)
ムハンマドさんは11月末、首都カブールを訪問したときの驚きをこう話す。
「家財道具を売るための即席の市場ができて、それがどんどん大きくなっていきました。多くの人がここで食料を買うお金を得るために家財道具を売っているのです。道路には物乞いをする子どもの姿もありました」
■「ほとんどの家庭がパンとお茶だけ」
タリバンによる政権掌握後、アフガニスタン中央銀行の米国内資産が凍結されるなどの経済制裁によって経済が停滞。海外からの送金も途絶えた。ムハンマドさんによると、資金不足で国内42のダム建設プロジェクトがすべて止まり、企業、銀行、大学などの規模縮小も相次いでいる。
それに伴い、失業率が増加。さらに深刻な干ばつが追い打ちをかけ、食料などの物価は高騰している。国民は食料を買うお金を得るため、生活に必要な家財まで売る事態に陥っているのだという。
「8月中旬以降、食料価格は高騰しています。例えば、小麦1袋の値段は1500アフガニ(約1760円)から2500アフガニ(約2925円)に高騰しました。
私たちが支援活動をしている地域の家庭を訪問して、食事の様子を見せてもらいましたが、ほとんどの家庭がパンとお茶だけの食生活でした。なかには、ふだん食べないような草をとってきて火を通して食べていた家庭もありました。
農村部には家畜を飼って生活している人もいますが、干ばつで家畜が食べる草もなくなってしまい、家畜を手放さざるを得ない人たちも増えてきました。これまで1頭8万アフガニ(約9万3600円)で売れていたものが5万アフガニ(約5万8500円)でしか売れなくなってしまいました」(ムハンマドさん、以下同)(中略)
500万人の子どもが「栄養失調に陥っている」(国連)といわれるが、ジェンが進める食料支援のプロジェクトは、授乳中の母親をサポートするための栄養補助食タイプのビスケットや粉ミルクなども含む。
■地域医療も崩壊の危機
農村部の医療を支えてきた世界銀行の資金がストップしたため、地域医療も崩壊する危機に瀕している。人びとは現金がないため処方薬も満足に買えない。医師から出された処方箋を薬局に持っていくと、まず聞かれるのが「現金を持っているか」。2週間分の薬を処方されても、1週間分のお金しかなければ売ってもらえないこともあるという。
「8月以降、新型コロナウイルスを気にする余裕もないのが現実ですが、11月中旬ごろから新型コロナの感染が再び拡大しているようです。発熱や体の痛み、頭痛などを訴える声が増えています。コロナ以外にも、干ばつで空気中に土ぼこりが舞っていることや、暖をとるために木材だけでなく古タイヤも燃やしていることも、体調不良に影響していると思われます」
ジェンでは食料のほか、子どもたちたちの就学や学校建設などの支援活動も行っている。就学支援では、地域の「シュラ」という自治組織や若者たちで構成される「ユースシュラ」、宗教指導者と連携して就学を促進し、鉛筆、ノート、ルービックキューブ、定規セットなどが入った就学キットを配っている。
500万人の子どもが「栄養失調に陥っている」(国連)といわれるが、ジェンが進める食料支援のプロジェクトは、授乳中の母親をサポートするための栄養補助食タイプのビスケットや粉ミルクなども含む。
■地域医療も崩壊の危機
農村部の医療を支えてきた世界銀行の資金がストップしたため、地域医療も崩壊する危機に瀕している。人びとは現金がないため処方薬も満足に買えない。医師から出された処方箋を薬局に持っていくと、まず聞かれるのが「現金を持っているか」。2週間分の薬を処方されても、1週間分のお金しかなければ売ってもらえないこともあるという。
「8月以降、新型コロナウイルスを気にする余裕もないのが現実ですが、11月中旬ごろから新型コロナの感染が再び拡大しているようです。発熱や体の痛み、頭痛などを訴える声が増えています。コロナ以外にも、干ばつで空気中に土ぼこりが舞っていることや、暖をとるために木材だけでなく古タイヤも燃やしていることも、体調不良に影響していると思われます」
ジェンでは食料のほか、子どもたちたちの就学や学校建設などの支援活動も行っている。就学支援では、地域の「シュラ」という自治組織や若者たちで構成される「ユースシュラ」、宗教指導者と連携して就学を促進し、鉛筆、ノート、ルービックキューブ、定規セットなどが入った就学キットを配っている。
学校建設では校舎、トイレ、太陽光パネルで発電した電気を使って井戸から水をくみ上げる貯水槽などを備えた学校建設などを進める。
「子どもが就学できない理由はたくさんあります。貧困で子どもを学校に行かせる余裕のない家庭が多いこと、学校の建物自体がないこと、女子用トイレが整備されていないこと、学校までの距離が遠いことなどです。
「子どもが就学できない理由はたくさんあります。貧困で子どもを学校に行かせる余裕のない家庭が多いこと、学校の建物自体がないこと、女子用トイレが整備されていないこと、学校までの距離が遠いことなどです。
特に教員の数が圧倒的に足りません。ある学校では1人の教員が2クラス160人の生徒を教えている学校もあるほどです」
ムハンマドさんたちはユースシュラの人たちと協議し、地域社会が教員の給料を支払う形で3人、さらにボランティア教員6人を雇用することができたという。
厳しい冬を迎えているアフガニスタン。ムハンマドさんは国際社会、特に日本からの支援に期待していると話す。
「アフガニスタンにとって日本は友好国です。一般の国民も日本にとてもいい印象を持ち、国連などを通じた日本の支援に感謝しています。国連だけでなくNGOなどを通じた支援もぜひお願いしたいと考えています」【12月9日 AERAdot.】
ムハンマドさんたちはユースシュラの人たちと協議し、地域社会が教員の給料を支払う形で3人、さらにボランティア教員6人を雇用することができたという。
厳しい冬を迎えているアフガニスタン。ムハンマドさんは国際社会、特に日本からの支援に期待していると話す。
「アフガニスタンにとって日本は友好国です。一般の国民も日本にとてもいい印象を持ち、国連などを通じた日本の支援に感謝しています。国連だけでなくNGOなどを通じた支援もぜひお願いしたいと考えています」【12月9日 AERAdot.】
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人権を尊重しないタリバン支配に対する経済制裁を課す国際社会ですが、人道支援については制裁とは別物ということで行うことを表明しています。
****国連 アフガン人道支援を協議 各国が計1200億円余の拠出を表明****
混乱が続くアフガニスタンへの人道支援について話し合う国連の会合が開かれ、これまでに各国から合わせて1200億円余りの資金の拠出が表明されました。
一方で、武装勢力タリバンとの関わり方をめぐっては、各国の立場の違いも表面化しました。
スイス、ジュネーブの国連ヨーロッパ本部では13日、アフガニスタンに対する人道支援について話し合う会合が開かれ、各国の閣僚級の代表が参加しました。
冒頭、グテーレス事務総長が「長年にわたる戦乱と苦しみを経て、アフガニスタンの人々は、今、最も厳しい状況に置かれている。この会合は私たちが何かを与えるためのものではない。責任を果たすためのものだ」と述べ、国際社会に支援の継続を求めました。(中略)
アメリカの代表は、新たに6400万ドル、70億円余りの追加の支援を表明しましたが「タリバンが支援物資の配達を妨げているという報告もある」として、タリバンの支配への不信感ものぞかせました。
これに対して中国の代表は「アフガニスタンの主権を尊重することで、国際社会は国の平和的な再建に貢献できる」と述べ、タリバンを全面的に支援する姿勢を強調し、食料やワクチンなどの物資を送ると表明しました。
一方日本は、新規に6500万ドル、71億円を拠出する用意があると表明しました。
各国とも人道支援の継続では足並みをそろえたものの、タリバンとの関わり方をめぐっては立場に隔たりもあり、アフガニスタンの安定に向け今後国際社会が一致した対応をとれるのかが、問われることになります。(後略)【9月14日 NHK】
冒頭、グテーレス事務総長が「長年にわたる戦乱と苦しみを経て、アフガニスタンの人々は、今、最も厳しい状況に置かれている。この会合は私たちが何かを与えるためのものではない。責任を果たすためのものだ」と述べ、国際社会に支援の継続を求めました。(中略)
アメリカの代表は、新たに6400万ドル、70億円余りの追加の支援を表明しましたが「タリバンが支援物資の配達を妨げているという報告もある」として、タリバンの支配への不信感ものぞかせました。
これに対して中国の代表は「アフガニスタンの主権を尊重することで、国際社会は国の平和的な再建に貢献できる」と述べ、タリバンを全面的に支援する姿勢を強調し、食料やワクチンなどの物資を送ると表明しました。
一方日本は、新規に6500万ドル、71億円を拠出する用意があると表明しました。
各国とも人道支援の継続では足並みをそろえたものの、タリバンとの関わり方をめぐっては立場に隔たりもあり、アフガニスタンの安定に向け今後国際社会が一致した対応をとれるのかが、問われることになります。(後略)【9月14日 NHK】
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【一定に融和的な発言と裏腹に、抑圧される女性の権利】
しかし、タリバン幹部の表だった融和的な発言の裏で、女性の権利が認められない事例が相次いで報告される事態では、人道支援が結果的にタリバン支援にもなりかねず、各国の支援体制の拡充も難しいのが現実でしょう。
****タリバン、女性尊重を命令 結婚で、国際承認が狙いか****
アフガニスタンで暫定政権を樹立したイスラム主義組織タリバンは3日、アフガン国民が女性の意思を尊重し結婚を強要しないよう周知するために、政府の各機関に対応の徹底を命じた。
アフガンでは部族間対立の解決のためなどに強制婚が行われてきた。女性の権利を重視する姿勢を示し、暫定政権の国際承認などにつなげる狙いがあるとみられる。
タリバン旧政権は女性の権利を大幅に制限したため、国際社会の懸念が強い。制裁解除も訴えるタリバンは11月下旬、米政府代表団と中東カタール・ドーハで会談し、女性教育の機会確保に向け国際社会と関わっていく考えを表明した。【12月4日 共同】
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しかし、現実には職業・教育などで女性の権利が侵害される事例も多々報じられています。
****タリバン「恐怖政治」の象徴、勧善懲悪省が女優出演ドラマの放映禁止****
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバンの暫定政権は21日、テレビ番組や映画の放送に関する指針を出し、テレビで女優が出演するドラマを放送することを禁じた。またニュース番組などに女性が出演する際は、髪を隠す「ヘジャブ」を着用することも求めた。
指針は、旧タリバン政権下(1996〜2001年)で女性の権利を抑圧したなどとして批判された勧善懲悪省から出された。
指針は8項目あり、イスラム法(シャリーア)やアフガンの価値観に反する映画を放送しないこと▽「不道徳」を広める外国文化を紹介する国内外の映画を放送しないこと▽男性出演者が身体を過度に露出しないこと――などを求めた。
勧善懲悪省は事実上の宗教警察で、旧タリバン政権下では「恐怖政治」の象徴とされた。01年の旧政権崩壊に伴い廃止されたが、9月に発足した暫定政権下で復活。それまで女性問題省だった建物に、勧善懲悪省が置かれた。
タリバンの暫定政権下では、女性の権利制限に対する懸念が広がっている。閣僚に女性が含まれていないほか、地域によっては女子の中等教育も再開されていない。国際社会は、タリバンに対して女性の権利を擁護するよう求めている。【11月23日 毎日】
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女性のテレビドラマ出演を禁止・・・これではドラマも成立しませんので、実質的に娯楽番組も禁止ということにも。
女性をドメスティックバイオレンスから保護する施設も閉鎖されています。
****タリバン、女性保護施設を閉鎖 人権団体「死の危険に直面」****
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは8日までに、アフガニスタンのイスラム主義組織タリバンが、夫からのドメスティックバイオレンス(DV)に遭った女性らを収容する複数のシェルターを閉鎖しており「女性が暴力や死の危険性にさらされている」と発表、シェルターの再開を求めた。
2001年に崩壊したタリバン旧政権は女性の権利を大幅に制限したことから国際社会の懸念が強い。暫定政権の承認や制裁解除のためタリバンは権利擁護を主張しており、報道担当シャヒーン氏はアムネスティに対し「女性や少女への暴力は許されず、裁判所が対応する」と答えたという。【12月8日 共同】
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こうした厳しい状況で、女子教育を続ける試みも行われているようです。
****タリバンに抵抗 アフガン女子教育の火を絶やさず****
タリバンがアフガニスタンを制圧してから3カ月が経過したが、首都カブールなどの都市では、6年生より上の女子生徒が公立学校に通うことは許されていない
10代の少女が次々とファウジアさん(56)の自宅に静かに入っていき、靴を脱いで居間に集合した。秘密裏に行われる歴史の授業を受けるためだ。
教師のファウジアさん(名前のみの表記を希望)は、アフガニスタンの名高い秘宝(古代バクトリアの黄金の装飾品)や、歴代の王や女王について解説した。彼女はこの新たな極秘任務が不可欠なものだと考えている。
イスラム主義組織タリバンは同国を制圧した後、9月に公立学校を再開した。その際、6年生より上の女子の通学を禁止した。それ以降、少数の州で女子の通える中学・高校が再開されたものの、首都カブールをはじめとする大半の地域では閉鎖されたままだ。
「少女たちは自宅にいるだけでは、気分が落ち込んだり、携帯電話に依存したりする」とファウジアさんは言う。「いつかまた学校に通えるという希望を与えるべきだ」
タリバン指導部は今のところ、1990年代に同国を支配した時と比べ、女性や少女に対して穏健な態度を示している。タリバンの当局者は、適切な男女別学制度が整えば、カブールなどで年長の女子向けの学校が再開されると話している。
だが、タリバンの権力掌握から3カ月が経った今、多くのアフガン人はその約束が守られるかどうかを疑問視している。
「女子教育をどう思っているかは、過去の行動から明らかだ。教育を通じて女性の地位を高めることは望んでいない。彼らの目標は女性を家庭に閉じ込めることだ」。アクサナ・ソルタンさんはこう語る。
幼少期にタリバン支配下にあった同国を脱出し、現在は米国でアフガン女子教育を推進する非政府組織(NGO)を運営している。
5人の子どもを持つファウジアさんは1990年代、長女や他の子どもたちに自宅で勉強を教えていた。現在は10代の少女のために秘密の授業を行っている多くの教師の一人だ。また、年下の生徒に紛れてこっそり授業を受ける10代の少女たちもいる。教師たちはタリバンがこれに気づかないようにと願っている。
タリバンが課す事実上の教育禁止令に対し、親や教師、生徒らが抵抗をいとわない現実は、アフガンが過去20年間にどれほど変化したかを浮き彫りにしている。特にカブールのような都市部では、タリバンが過去の厳しい社会規範を復活させれば、強い反発が起きることが予想される。
タリバンは1990年代にテレビを禁止したが、現在はアフガン人の大半がインターネットにアクセスでき、オンライン授業も可能だ。また人々の期待も変化してきた。
「タリバンが最初に権力を握った20年前、この国の教育水準は非常に低かった。多くの女性は基本的な読み書きを習うだけで満足していた。だが今や、教育水準は高くなっている」。ファウジアさんの娘ファルハットさん(22、名前のみを希望)はこう話す。
母親のファウジアさんが妹を含む10代の少女たちに居間で勉強を教えるのを手伝っている。だが「このような少人数の授業では問題を解決できない」と彼女は言う。「学校を再開しなければならない」
タリバンは、イスラム教の枠組みの中で女性の権利を尊重すると述べている。だがどのように制限するのかは明言していない。多くの店舗では外に掲示された女性の写真が塗りつぶされてしまった。また女性は全ての政府職員を含め、多くの職場から締め出されている。
「われわれは少女に教育を受ける権利を与えるべく尽力している。イスラム教はその権利を与えている。ただ、人々の慣習やイスラムの価値観に反する問題がいくつかある。それらが解決されれば、女子の通学を認める」。タリバンが新設した「勧善懲悪」省の報道官はこう述べた。「できる限り早く実現するよう努めている」
タリバンは男性教師が女子生徒を教えてはならないとしている。つまり女性教師の採用を増やす必要がある。また、10代の少女を学校に送り届ける交通手段が必要だとしている。だがタリバン暫定政権にはその資金がない。他の公務員と同様、同国の教師の多くは数カ月前から給料を受け取っていない。
タリバンがいかに女子教育を行うかは、国際支援の判断基準と見なされている。一方、タリバンは米国が保有する90億ドル(約1兆0230億円)余りのアフガン中央銀行の資産凍結解除を求めている。(後略)【11月29日 WSJ】
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【連行・処刑される元警察官や元兵士らも】
タリバンの言行不一致は、元警察官や元兵士への暴力・処刑でも。
****タリバン100人超殺害か連行 元警察官ら標的、人権団体報告****
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は30日、アフガニスタンのイスラム主義組織タリバンが実権を掌握した8月15日から10月末までに、元警察官や元兵士ら100人以上がタリバンによって殺害されたか、連れ去られたとする報告書を出した。
アフガン駐留米軍の撤退完了から30日で3カ月。米軍によって20年前に政権の座を追われたタリバンは復権後、全国民に「恩赦」を与えると発表したが、指導部の命令が末端まで行き渡っていない不安定な統治を浮き彫りにした。
HRWは「国連による継続した人権監視が必要だ」と訴えた。【11月30日 共同】
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“タリバンの報道官はHRWの報告書を拒絶。(中略)一部の元治安要員が危害を受けた例はあると認めたものの、件数は報告書に挙げられているほど多くないと述べ、原因はタリバンの政策ではなく個人的な恨みだとしている。”【12月1日 CNN】