(スラム街(手前)の背後にはショッピングセンターなどのビルが立ち並んでいる【12月14日 朝日】)
【一人当たりGDP(購買力平価)で日本を超えた・・・というのも事実】
日本ではすこぶる評判が悪い韓国ですが、経済面で見ると、賃金がまったく上がらない「失われた30年」まっしぐらの日本よりはましで、数字を見る限り一人当たりGDP(物価水準を勘案した購買力平価)ではすでに2018年に韓国が日本を抜いています。
****韓国に1人当たりGDPを追い越されて久しい日本の浮上は可能か****
日本経済に依存しているとして無視するか、謙虚に改革を進めるか
IMF(国際通貨基金)が公表している1人当たりGDP(2017年の物価水準で見た購買力平価<PPP>)で、日本は2018年に韓国に追い抜かれた後、その差は拡大している。
実は、2017年の段階で欧米中の経済専門家(日本人も韓国人も含まない)は韓国が日本を追い抜くことは難しいと見ていた。その後、2019年にIMFが「2023年に1人当たりGDPで韓国が日本を追い抜く」との予想を出した時も、ワシントンで日本を研究する学者からは「何を馬鹿な」との声が上がった。だが、結果を見れば、もっとひどくなっている。
2019年時のIMF予想では、2023年の日本の1人当たりGDPが4万1253ドルなのに対して韓国は4万1362ドルだった。この時の予想では、2024年に日本が4万1666ドルで韓国が4万2392ドルと、その差は徐々に開いていくという流れだった。だが、現実を見れば日本の成長力の停滞は続き、韓国の成長力が増して両国の差は拡大した。
なお、1人当たりGDPを単純計算したドルベースでは、2020年で日本は4万416ドルと韓国の3万1496ドルを大きく上回っている。2021年も、ドルベースでは日本が4万2927ドル、韓国が3万4865ドルと日本の方が高い。
日本では、この数値を見て安心している人が多いようだが、世界はPPPベースを見ている。(後略)【9月4日 小川 博司氏 JBpress】
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今後も輸出を中心とした伸びが予想されています。
****韓国の輸出額が過去最高を記録、3年後には世界6位に?=韓国ネットは歓喜「文政権のおかげ」****
韓国の輸出額が、2024年に7000億ドル(約79兆5592億円)を超えるとの見通しが発表された。11月30日、韓国・国民日報が報じた。
記事によると、韓国の全国経済人連合会(全経連)は30日、韓国の今年の輸出額は現在までに6450億ドル(約73兆3081億円)に達しており、過去最高を記録すると予想した。(中略)
今後、韓国の輸出額が過去5年間(2017〜21年)と同様の平均増加率(2.97%)で伸び続けた場合、24年には7000億ドルを超える計算になるといい、19年基準で年間輸出額が7000億ドルを上回る国は、中国、米国、ドイツ、オランダ、日本の5カ国のみとのこと。
記事は「韓国企業は二次電池やバイオ・ヘルス、有機発光ダイオード(OLED)、電気自動車などの成長分野に対し積極的に先行投資を行っているため、今後も増加が期待できる」とし、「25年までにはコロナ禍が終息し、世界全体の貿易額も3%台の成長が見込まれている」と説明。(後略)【12月1日 レコードチャイナ】
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もちろん、こうした数字に対する評価はさまざまあるでしょうが、ひとつの現実です。
【「物質的な幸せ」に拘る韓国社会の特異性】
その韓国も、社会状況に触れる際に今や「枕詞」的にもなっていますが、「パラサイト 半地下の家族」や「イカゲーム」に見られるように厳しい格差・競争・貧困が存在しています。
(日本も、そういう視点で見るなら、直視すべき問題は多々ありますが、今日は韓国の話題)
韓国の厳しい社会状況とも関連した調査のように思えて興味深かったのが下記。
****韓国人が「人生で最も価値があると思うもの」調査で、「物質的な幸せ」をトップにあげた理由****
日本は1位に「家族」を選んだ
米国の世論調査機関「ピュー研究所(ピュー・リサーチ・センター)」が世界17カ国の先進国を対象に「人生で最も価値があると思うものは何か」という問いにどう答えるかについて調査した(11月18日発表)。
その結果、17カ国のうち14カ国が、他のどの要因よりも人生で価値があるものとして「家族」をあげた。一方で韓国人だけが「物質的な幸せ」を1位に挙げたという。この調査から透けて見える彼らの考え方や行動原理について、現地在住・羽田真代氏が考察する。(中略)
日本の場合、1位:家族、2位:物質的な幸せ、3・4位(同率):職業/健康、5位:趣味で、1・2位だけを見ると、オランダ、ベルギーと同じだった。
他方、韓国人が選んだ「人生で最も価値がある」順序は、1位:物質的な幸せ、2位:健康、3位:家族、4位:一般的な満足感、5・6位同率:社会/自由だった。
“絶対悪の日本”を韓国内から排除すれば
物質的な幸せとイコールではないが、一般的に韓国人のブランド信仰は強く、自分の好みでなくても流行り物には手を出しがちだと言われる。
クルマは国産よりも輸入車に乗っている方が何かと丁寧に扱われるから、カネに余裕がなくても背伸びをして輸入車に手を出す傾向がある。物質的な幸せへの渇望を物語る事例は枚挙にいとまがない。
今回の調査結果は韓国側のメディアにもいくつか取り上げられており、そこに寄せられたコメントには、「今の(経済が不安定な)状況を見てみろ。こう回答するしかないじゃないか」「現政権は先進国入りを宣言したが、それはインチキで全く意味がない」などとあった。(中略)
家の修理を業者に頼んでも工具を持参しない
ところで、17カ国の中で1・2位に最も多かった回答が「家族」「健康」で、それをあげたのは9カ国にのぼる。17カ国のうち14カ国が、他のどの要因よりも人生で価値があるものとして「家族」をあげた。
「家族」の次に回答率が高かったのは「職業」で、イタリアで43%と最多(イタリアのみ1・2位が同率で家族/職業)。一方、韓国で「職業」を選んだのはたったの6%で、調査国の中で最低の数字だった。
韓国で働くことに対して誇りや生きがい、こだわりや高い倫理観を大事にしている人はそう多くないということなのだろうか。
日本から来ると違和感をおぼえる光景に出くわすことがある。韓国ではバスやタクシーの運転手らに会社が制服を支給することはほぼない。社名がきっちり入った配達のオートバイが歩道を走行することは日常の光景だ。「会社の名に傷がつく」といったことは考えないのか、心配になる。
家の修理を業者に頼んでも工具を持参しないケースもしばしばで、勤務中なのに携帯電話で友達らとオンラインでしゃべっている社員の姿もよく見かける。よく言えば自由、ということになるのだろうか……。
かねて韓国では若者の就職難が指摘されてきたが、意図的に就職しない若者も少なくない。男性の場合、特に軍隊や留学で就職が遅れがちなのだが、30歳を過ぎても資格取得などを理由に正規職に就いたことがない人も多い。
こうした環境で育まれた職業観が今回の調査結果に反映されたとも言えそうだ。【12月1日 羽田真代氏 デイリー新潮】
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【予想より早まる人口減少】
一方、厳しい社会状況の結果、結婚・出産を控える若者が多く、韓国の出生率は0.84(不動産価格の高いソウルは0.64)と驚くほど低く、このペースで進むと激しい人口減少に見舞われます。
この問題は日本も同じですが、韓国の現状は日本以上に深刻な数字になっています。
****韓国総人口が21年に初の減少 70年までに1400万人減も****
韓国統計庁は9日発表した2020〜70年の人口推計で、21年の韓国総人口(国内に住む外国人を含む)は5175万人で前年比9万人減少すると明らかにした。韓国の人口が20年をピークに21年から減少し始めることを意味する。死亡数が出生数を上回る人口の自然減が起きているなか、新型コロナウイルスの影響で外国人の流入も急減していることによるものだ。
人口は20年に初めて自然減となったが、国内に暮らす外国人も勘案した総人口の減少は21年が初めて。統計庁は19年3月に人口のピークを28年(5194万人)と予測したが、それから3年もたたずにピーク時点が8年も早まった。
人口、中でも生産年齢人口(15〜64歳)が減る現象は、次第に深刻化する。
統計庁は、向こう10年間は人口が年平均約6万人ずつ減少すると見込んでいる。人口の自然減は続く見通しだが、減少幅は大きくなく、国際間移動が多ければ人口が前年比で増加する可能性もある期間だ。
30年の総人口は5120万人、40年は5019万人と減少は比較的緩やかだが、50年は4736万人、60年は4262万人、70年には3766万人に急減する見通し。20年に比べ、50年間で1418万人も減ることになる。
統計庁は、合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの推定数)が20年の0.84から24年に最低水準の0.70に落ち込んだ後、46年には1.21に回復するという仮定の下でこうした試算を行った。
同庁が推計した最悪のシナリオでは、30年の人口は5015万人、70年には3153万人となる。50年後には人口が2031万人激減することになる。(中略)
死亡数から出生数を引いた自然減は20年の3万人から30年は10万人、70年は51万人と、減少幅が拡大を続ける見通しだ。最悪のシナリオの場合、30年の自然減は20万人、70年は55万人と予想される。【12月9日 聯合ニュース】
人口は20年に初めて自然減となったが、国内に暮らす外国人も勘案した総人口の減少は21年が初めて。統計庁は19年3月に人口のピークを28年(5194万人)と予測したが、それから3年もたたずにピーク時点が8年も早まった。
人口、中でも生産年齢人口(15〜64歳)が減る現象は、次第に深刻化する。
統計庁は、向こう10年間は人口が年平均約6万人ずつ減少すると見込んでいる。人口の自然減は続く見通しだが、減少幅は大きくなく、国際間移動が多ければ人口が前年比で増加する可能性もある期間だ。
30年の総人口は5120万人、40年は5019万人と減少は比較的緩やかだが、50年は4736万人、60年は4262万人、70年には3766万人に急減する見通し。20年に比べ、50年間で1418万人も減ることになる。
統計庁は、合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの推定数)が20年の0.84から24年に最低水準の0.70に落ち込んだ後、46年には1.21に回復するという仮定の下でこうした試算を行った。
同庁が推計した最悪のシナリオでは、30年の人口は5015万人、70年には3153万人となる。50年後には人口が2031万人激減することになる。(中略)
死亡数から出生数を引いた自然減は20年の3万人から30年は10万人、70年は51万人と、減少幅が拡大を続ける見通しだ。最悪のシナリオの場合、30年の自然減は20万人、70年は55万人と予想される。【12月9日 聯合ニュース】
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【非正規で家も持てない若者 結婚を諦め出生率も低下】
元駐韓国大使の武藤正敏氏は、出生率が極端に低下した最大の理由は、文政権の経済政策の失敗によって若年層にしわ寄せが及んでいることにあると指摘しています。
****韓国・文大統領の失策で「国家自然消滅の危機」、元駐韓大使が解説****
未来への議論がない次期大統領選挙
文在寅政権になってから韓国の合計特殊出生率は急減している。このまま進めば、韓国の人口は最悪の場合、50年後には現在の60%ほどに低下するとの予測もある。
韓国にとって今が人口減を食い止める最後の機会のはずであるが、文政権は人口問題を回避する一方、国内政治的には分断を一層深化させ、経済的には韓国経済を支える財閥企業をたたき、労働組合に肩入れして経済の弱体化を進めている。
さらに、不動産政策に失敗し、若者の良質な雇用を奪って、若者に将来への夢を失わせ、晩婚化を進めている。外交的には米中間にあって本来の友好国である日米との関係を疎遠にし、中国や北朝鮮に歩み寄っている。
このような文在寅大統領の政策を進めていけば、韓国はいずれ自然消滅しかねない。
文大統領に人口減少を止める政策が期待できないとすれば、次期大統領に期待せざるを得ない。しかし、次期大統領選の主要な争点が、どちらがより多くの不正を働いているかに集中し、韓国の未来に関する議論がほとんど行われていない。
本来、次期大統領選挙の重要なテーマは、いかに人口減を食い止め、韓国社会を安定成長の軌道に戻すかであるべきであろう。次期大統領は、国民統合に向けた政策を取り戻す、経済成長を実現して若者の良質な雇用を増やしていく、不動産の高騰を抑制しつつ、バブル崩壊を防ぎながら国民の持ち家政策を進めていくという点に集中して国家運営をするべきである。(中略)
100年後の人口は6割減 最悪の場合は8割減
(中略)(韓国統計庁発表によれば)2120年の生産年齢人口(15~64歳)の比率は48%(1005万8000人)で半分にも満たない。14歳以下の人口は8.9%で185万9000人だ。他方、65歳以上の高齢者人口は903万7000人で43.1%を占め、ほぼ生産年齢人口に匹敵する。まさに「高齢者国家」である。
ただ、これはまだいい方の予測である。最悪の想定では2120年の人口は1214万人(76.5%減)になるという。この予測では高齢者人口は生産年齢人口を上回っている。これはもはや持続可能な社会とはいえないだろう。(中略)
韓国にとって、現在の最大の国益は、出生率を高めて人口減を食い止めることである。そのためには国民の生活水準を引き上げること、人々が結婚して子供を持とうという意欲をよみがえらせること、生活水準を引き上げて子供を持てる社会に再生することである。
しかし、文政権は国内的に政治闘争を繰り返し、北朝鮮との間で無駄な労力を費やしており、その結果、韓国が再生する最後の機会を失いつつある。
経済政策の失敗により出生率が急速に低下
文政権になってから韓国の合計特殊出生率は減少幅を拡大している。
2020年の合計特殊出生率0.84という数字は少子化が問題となっている日本の1.34(2020年)と比べても格段と低い。特に不動産価格の高いソウルは0.64%である。(中略)
合計特殊出生率が極端に低下した最大の理由は、文政権の経済政策の失敗によって若年層にしわ寄せが及んでいることにある。
若者の良質な雇用の減少が出生率を低下させた
韓国の若者の雇用の現状は悲惨である。これを認めないのは文大統領とその周辺くらいであろう。文大統領は、財政支出で高齢者向けの短期アルバイトを増やすことで、見かけ上の失業率は低く抑え、その数字をもとに韓国経済の就業状況は良好であると発言している。
しかし、今年だけで非正規職が64万人増加するなど、雇用が改善したとは到底いえる状況ではない。
青年失業率は5.4%と昨年より3.5ポイント改善している。しかし、これは数字のトリックにすぎない。就業者の内訳を見ると、20~30代の30.1%(243万人)が非正規職であり、その比率は60代よりも高い。しかも若年層の勤務時間を2年前と比較すると、週36時間に満たない人が10.3万人増加する一方、36時間以上の人は13.9万人減少している。
この間、良質な製造業の雇用は減少している。それは反企業的な文政権の政策が原因であり、その代表例が、最低賃金の無計画な大幅引き上げ、規制改革と労働組合寄りの労働政策である。あまりにも労働組合の力が強くなり、不況時にも解雇できないこと、賃金の上昇幅が大きいことが良質な雇用減少の大きな要因である。(中略)
非正規労働者の増加による晩婚化で出生率が低下
韓国の30代の人々の未婚比率は2010年が女性20.4%、男性37.9%であったが、2020年には女性33.6%、男性50.8%と大幅に増えている。それは初婚年齢の高まりを反映しており、2020年の初婚年齢は男性33.4歳、女性30.8歳と、20年前と比較して男性で3.9歳、女性で4.3歳高まっている。
晩婚化の原因については、適当な相手と巡り合う機会にめぐまれないことが33.8%と高い。所得や持ち家などの経済的な基盤がしっかりしていない男性が、結婚相手を探すのは難しい。
文政権は非正規職を正規職に格上げすることを公約して大統領になったが、逆に非正規職が増えているのが現実であり、それが結婚の障害となっている。(中略)
生活の質の低下に歯止めがかからない
文大統領は、韓国は国民1人当たりGDPで世界十大経済大国の仲間入りを果たしたというが、国民生活にはその実感は広がっていない。
グローバル統計サイト「Numbeo」によると、2021年の韓国の「生活の質」指数は130.02となり、評価対象国83カ国中42位となった。文政権1年目の2017年には67カ国中22位だったから、大きく悪化したことになる。
生活の質が低下した主な要因は、非正規労働者の増加に加えて、不動産価格の高騰が挙げられる。
ソウル市内の不動産価格は文政権の4年間で倍増した。
文政権はこの間で20回以上、大々的に不動産対策を発表しておきながら、価格上昇を抑えることができなかった。その結果、若者がマンションを購入することは遠い夢になってしまった。韓国の男性が婚姻するときには家を用意しなければならない。家を持てないということは、恋愛、結婚、出産、育児を放棄することになる。
さらに、20~30代の調査では、「一生懸命働いても金持ちになれない」と答えた人が70.9%に上った。そして、69.5%は「希望する職場に就職する可能性は低い」、62.9%は「今後も若年層の雇用環境は悪化する」と答えている。
これでは晩婚化の解消や合計特殊出生率の改善にはつながらないだろう。(後略)【12月14日 武藤正敏氏 DIAMONDonline】
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【スラムの実態】
なお、成長から取り残された人々の暮らすスラムについては、以下のようにも。
****イカゲームよりリアルな貧困 スラム街が象徴、韓国の格差****
■1部屋5平方メートル「チョクパン」
スラム街はソウルの永登浦(ヨンドゥンポ)駅の近くにある。古くからの交通の要所で、朝鮮戦争が1953年に休戦した後、多くの売春宿ができた。建物が老朽化して売春宿が近くの地区に移ると、貧困層が移り住んだ。
2001年に支援団体が現地に設立され、その翌年から所長を務める金炯玉(キムヒョンオク)さん(51)に案内してもらった。「ここはイカゲームの縮小版。いや、現実はドラマよりリアルだ」
狭い路地を入ると、平屋や2階建ての古いモルタルの住宅が密集している。屋根が崩れ、灰色のシートで覆った家も。韓国語で「チョクパン」と呼ばれる地区だ。「間数を多くとった狭苦しい小部屋」という意味だ。
廊下は1人が通れるほどの狭さ。両側に小さな部屋がウナギの寝床のように並ぶ。平均で1・5坪(約5平方メートル)、狭いもので0・5坪(約1・7平方メートル)。(後略)【12月14日 朝日】
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繰り返しになりますが、格差も、貧困も、人口減少も、韓国だけでなく日本が抱える問題でもあります。有効な対策を講じなければ、日韓ともに「国家消滅」です。