(PCR検査を受ける学生ら=25日、中国陝西省西安(共同)【12月29日 産経】)
【武漢から2年 「ゼロ・コロナ」政策のもとで、西安が再び「ゴーストタウン」に】
新型コロナについて武漢の医師、李文亮さんがその危険をネットに投稿してから2年が経過しました。
その後、日本でも、世界中でも、今にいたるまでコロナで大騒ぎしており、感染爆発、行動規制、ワクチン開発等々随分いろんなことがありましたが、李文亮さんの告発からまだ2年しかたっていない・・・そんな感じも。
中国においては、当局の処遇にかかわらず、李文亮さんの警鐘は今も敬意が払われているようです。
****武漢の医師告発2年 感謝や不安 SNSにあふれる数千のメッセージ****
新型コロナウイルスの発生について中国湖北省武漢市の医師、李文亮さん=2020年2月に死去=が警鐘を鳴らしてから2年を迎えた30日、李さんが残した中国の短文投稿サイト「微博(ウェイボー)」のアカウントには勇気ある行動への感謝や今なお続く感染症への不安をつづった数千のメッセージが寄せられている。
同市の病院に勤務していた李さんは市当局が集団感染を初めて公表した前日の19年12月30日、医師仲間のグループチャットで原因不明の肺炎について注意を呼びかけた。
メッセージは広く拡散されたが、公安当局からは「虚偽情報を流した」として処分を受け、自らも新型コロナに感染して死亡。告発者に対する当局の対応に批判が高まり、処分は取り消されている。
最後となった李さんの投稿には節目ごとにメッセージが集まり、その数は100万件以上に上る。30日のメッセージには「あなたの勇気で私たちは救われた」といった内容のほか、西安市での感染拡大を受けて「もう2年たったのに、まだ私たちは感染症から離れられないのです」と心情を吐露するものもあった。【12月30日 毎日】
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武漢での悲惨な経験、その後の情報公開の遅れに対する「中国のせいで世界に災いが広まった」との国際的非難・・・そういうこともあってのことでしょうが、中国政府は頑なに「ゼロ・コロナ」政策を続けており、コロナの感染拡大に苦しむ欧米を尻目に、「ゼロ・コロナ」政策の成果を共産党政治の欧米民主主義に対する優越性として誇っています。
そうした状況にあって、中国が苦慮しているのは上記記事最後にもある西安での感染拡大とロックダウンです。
かつての長安、古都西安(人口1300万人)は2年前の武漢の再現となっています。
****中国、「ゴーストタウン」再び コロナ初公表から2年 出口見えぬ強権措置****
中国湖北省武漢市の当局が、後に新型コロナウイルス感染症とされた「原因不明のウイルス性肺炎」について初公表してから31日で2年。
武漢で約2カ月半のロックダウン(都市封鎖)を行うなど強権的な手法で感染拡大に歯止めをかけてきたが、来年2月の北京冬季五輪を目前に控えて局地的な流行に直面。わずかな感染拡大も許さない習近平政権の「ゼロコロナ」の号令下で緊張が高まっている。
国家衛生健康委員会によると、症状のある新規感染者は25日に中国本土全体で206人確認された。海外からの入国者も含めたもので、200人を上回ったのは今年初めてだった。
陝西(せんせい)省西安市ではデルタ株の感染が急拡大し、9〜29日に確認された症状のある感染者は同市内だけで計1千人を突破した。西安では23日から実質的なロックダウンが実施され、生活必需品の購入も自由に行うことができない移動制限をとった。
西安は世界文化遺産「兵馬俑(へいばよう」がある観光都市だが、中国メディアによると街中ではPCR検査に向かう人など一部を除き人影がない。香港紙の明報(電子版)は「人口1300万の都市がゴーストタウンのようになった」と伝え、中国のインターネット上には「去年の武漢のようだ」という投稿もあった。
米欧などで多数の感染者の確認が続く中、習政権は「ゼロコロナ」政策を成果と位置付ける。今年、中国本土ではコロナによる死者は2人だけといい、市民からも「コロナ対策で共産党はよくやっている」(北京の40代女性)といった評価の声が少なくない。
世界ではコロナと共存しながら社会・経済活動を進める「ウィズコロナ」も議論されるが、中国では「ゼロコロナ」の出口は見えない。【12月30日 産経】
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【買い出しも制約される厳しい規制で食料不足も】
陝西省の衛生当局の30日の発表によると、29日に西安市で新たに155人の感染を確認。感染者が出た9日からの累計は1117人になっています。
欧米の万単位の感染状況に比べたら問題にもならない数字ですが、「ゼロ・コロナ」政策をとる中国にとっては許されない事態で、上記記事にもあるように厳しい外出規制・都市封鎖が行われています。
”習近平指導部の号令の下、展開される「ゼロコロナ」政策では、感染者が一人でも出ると、その居住区を封鎖して全住民のPCR検査を実施するなど厳格な措置が取られる。
またスマートフォンで、ワクチン接種の有無やPCR検査の陰性証明、感染地域での行動歴等を記録・管理するなど徹底した防疫措置が講じられている。
感染が拡大した西安市では23日から住民ら約1300万人の外出を原則禁止にする都市封鎖を開始。政府も空軍の医療チーム150人を派遣するなど、必死にコロナの封じ込めを図る。”【12月30日 毎日】
厳しい外出規制で食料購入もままならず、住民からは批判も。
(西安市内での食料配布、29日撮影【12月30日 ロイター】)
“西安市では23日以降の都市封鎖によって供給網や物流が混乱。住民らは食料などの必需品不足に陥る事態となっている。
30代の女性会社員は毎日新聞の取材に「西安で今深刻なのはコロナではなく、食料の問題だ」と訴える。政府は「十分な供給量がある」と発表して沈静化を図るが、コロナの震源地となった武漢市の都市封鎖の際に問題となった食料不足が繰り返された形だ。”【同上】
****中国、コロナ対策のロックダウン拡大 食料不足の訴えも****
中国北部で28日、新型コロナウイルス対策として、新たに住民数十万人に対し外出制限が課された。同国では新型ウイルスの感染がここ1年9か月で最悪の水準に拡大。ロックダウン(都市封鎖)下に置かれた住民は、ソーシャルメディアで食料不足を訴えている。
中国は現在、来年2月の北京冬季五輪に向けて多数の外国人の受け入れ準備を進めており、厳格な入国制限と長期間の隔離、局所的なロックダウンによる「ゼロコロナ」戦略を取っている。
しかしこの数週間で感染者数が再び急増。28日には209人の感染が発表され、中部・武漢で新型ウイルスが猛威を振るった昨年3月以降の1日の新規感染者数としては最多となった。
感染がまん延している欧米と比較すれば中国の感染者数は少ないが、人口1300万人の西安では当局が「最も厳格」な規制を導入。住民は複数回の検査を受け、食料品の買い出しのため外出できる人数は1世帯で3日ごとに1人のみに制限されている。
西安の近隣都市でも、感染が増加。約300キロメートル離れた延安でも28日、商店が閉鎖され、1地区の住民数十万人が外出を禁じられた。
西安のロックダウンは、同規模の都市である武漢が封鎖されて以来、同国で最大規模のものとなった。外出制限が6日目に入る中、ソーシャルメディアには食料などの必需品が調達できず助けを求める投稿が相次いでいる。
ある住民は、中国版ツイッターの微博(ウェイボー)に「餓え死にしそうだ」と投稿。「食べ物はないし、集合住宅は外に出してくれないし、即席麺も無くなりそうだ……助けて!」と訴えた。 【12月29日 AFP】
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さすがに中国当局も必需品の供給に支障をきたしていることを認めたようです。
****中国当局、ロックダウン下の西安市での食料不足認める****
中国当局は29日、新型コロナウイルスの感染拡大によりロックダウン(都市封鎖)を実施している北部陝西省西安市で、人手不足と物流の問題により、必需品の供給に支障をきたしていることを認めた。食料不足を訴える声が住民から上がっていた。
人口1300万の西安市では、外出制限が続いている。衛生当局はここ数か月で最悪の感染状況だとして、さらなる対策の強化を求めている。
28日にはソーシャルメディアで、食料などの必需品が調達できず助けを求める市民の投稿が相次いだ。中には食料が尽きそうなのに集合住宅から外へ出られないと訴える人もいた。
市幹部は記者会見で、企業を動員して地域ごとの配給を強化しており、市職員が卸売市場やスーパーを監督していると説明した。
だが、一部地域ではまだ物資が不足している。
ある住民は、中国版ツイッターの微博(ウェイボー)に「何日か前は食品を買いに行けたが、それもできなくなった」「オンラインの食品通販アプリはどれも売り切れか、配達範囲外だ」と投稿した。
西安市では今月9日以降、960人以上の感染者が確認されている。当初は買い物のための外出が3日に1回許可されていたが、27日に外出制限が強化され、検査以外の外出を禁じられた住民も多い。【12月30日 AFP】
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市民生活が支障をきたすぐらいですから、当然に経済活動にも支障が出ています。
“西安市は感染経路を追うため市内全域で検査を実施しており、30日には6度目の検査に着手した。市当局者は29日、記者会見で「新型コロナとの闘いで、生きるか死ぬかの段階に来ている」と語った。”【12月30日 ロイター】
【規制違反者を「さらし者」にする地方当局も】
「ゼロ・コロナ」のもとで感染拡大を許せば市当局もその責任を中央から問われますので、市当局も必死でしょう。
****中国、コロナ新規感染者が過去4カ月で最多、西安市当局者26人処分―独メディア****
独ドイチェ・ヴェレの中国語版サイトの25日付報道によると、中国本土で新型コロナウイルスの新規感染者(無症状感染者除く)が過去4カ月で最多となる中、感染が拡大している陝西省西安市では、十分な対策を怠ったとして市の当局者26人が処分された。(後略)【12月27日 レコードチャイナ】
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そうした「必死さ」と人権への認識欠如から、感染対策規則違反者を「市中引き回し」の見せしめにする地方当局も。さすがに「文化大革命のよう」との批判も。
****容疑者を市民の前でさらし者に 動画拡散を受け「文化大革命のよう」SNS上で批判の声 中国****
新型コロナウイルスの流入に警戒を強める中国当局が、密入国を斡旋した容疑者を市民の前でさらし者にし、ネット上では「文化大革命のようだ」と批判の声が上がっている。
ベトナムと国境を接する広西チワン族自治区で28日に撮影された映像では、防護服を着た警察官が、同じく防護服を着た容疑者の男らを引き回す。自分の顔写真をぶら下げ、集まった市民を前にさらし者としている。
地元警察が国外からのウイルス流入を警戒して水際対策の強化を発表した直後の出来事で男らはベトナムからの密入国を手引きした疑いで拘束されたということだ。
この動画が拡散するとSNS上では「文化大革命のようだ」「法律にこんな刑罰があるのか」などの批判が相次いだ。地元警察は「処罰の一環」で問題ないとの認識を示している。【12月30日 ABEMA TIMES】
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中国では2010年、人権団体による長年の反対運動により、犯罪者に対し公に辱めを与えることが禁止されています。
“こうした強圧的な措置には、中国共産党系のメディアやソーシャルメディアから批判の声が出ている。
中国共産党系の大衆紙新京報は29日、国外からの新型コロナの流入を阻止するよう靖西に対し「重圧」が掛けられているとした上で、「こうした措置は法の支配の精神に著しく反しており、再発は許されない」と指摘した。”【12月30日 AFP】
【市民監視も一段と厳しく】
一般市民についても、コロナ対策を理由に、監視の目がこれまで以上に厳しくなっています。
****中国、進む「コロナ独裁」 14億人に精緻な監視網****
中国当局が「原因不明の肺炎」として新型コロナウイルス感染症の発生を初公表してから31日で2年。習近平指導部は「ゼロコロナ」の掛け声の下、住民組織やスマートフォンを通じて14億人を徹底的に監視、管理する体制を築いた。
新変異株「オミクロン株」の感染拡大で世界では収束が見通せない中、強権的な共産党の一党支配をコロナ禍が加速させている。
「日本や欧州の大使館の行事に招かれたようですね。何をするんですか」。北京市の30代男性は今月、居住区ごとに設置された「社区」の居民委員会に呼び出され、説明を求められた。自分の行動が全て把握されていると知った。【12月29日 共同】
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強権的措置を伴いつつ中国の「ゼロ・コロナ」政策は当分続くと見られています。
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来年2月には北京冬季五輪、秋には5年に1度の共産党大会を控えており、北京の外交筋は「当分は『ゼロコロナ』でいくのではないか」との見方を示す。
中国国内での感染拡大は、他国に比べコロナ対策の行動規制が成果を上げているとアピールしてきた習近平体制の「制度的優位性」が揺らぐことになるため、当局は厳しい規制を続ける見通しだ。【12月30日 毎日】
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