孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ミャンマー  民主派弾圧を強化する軍事政権、民主活動家4人を処刑 中国、ロシアとの関係強化

2022-07-26 22:53:36 | ミャンマー
(【7月26日 FNNプライムオンライン】 25日、ヤンゴン 民主活動家4人の処刑への抗議行動)

【弾圧を激化する軍事政権 スー・チー氏を刑務所に】
昨年2月のクーデターで実権を掌握したミャンマー軍事政権が対抗勢力への弾圧を激化させています。

軍部は、アウン・サン・スー・チー氏率いるNLDが圧勝した2020年11月の総選挙について結果を否定し、不正選挙だと主張してクーデターを起こしました。

スー・チー氏は自宅軟禁から今年6月には軍刑務所の独房に移送された。裁判では、扇動、汚職、新型コロナウイルス関連の規則違反、電気通信法違反など、さまざまな罪を犯したとされており、量刑は懲役150年以上になる可能性があります。

****ミャンマー軍政、スーチー氏審理を刑務所内の法廷に移管=関係筋****
ミャンマー軍事政権が何ら説明なく、民主化指導者アウンサンスーチー氏(77)に対する全ての法的手続きを裁判所から刑務所に移すよう命じたことが分かった。同氏の裁判に詳しい関係筋が22日、明らかにした。

スーチー氏は昨年初めのクーデターで拘束され、複数の汚職を含む少なくとも20件の罪で起訴されたが、全ての罪を否認している。これまでには扇動の罪などで有罪判決を言い渡されている。

一部メディアは、スーチー氏が22日に自宅軟禁からネピドーの刑務所に移されたと報じた。ロイターはこれらの報道を独自に確認できていない。

関係筋は匿名を条件に、審理はネピドーの刑務所の新たな特別法廷に移されると説明。「特別法廷のための新しい建物が完成したということが裁判官によって宣言された」と述べた。軍が設置した評議会からは今のところコメントを得られていない。

スーチー氏の裁判所での手続きは非公開で行われ、国営メディアでは限られた情報しか報道されない。同氏の弁護士にはかん口令が敷かれ、審理日のみ面会が許されている。【6月23日 ロイター】
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ASEANのミャンマー担当特使を務めるカンボジアのプラク・ソコン副首相兼外相が6月30日、ミャンマーを訪問しましたが、スー・チー氏と面会は出来ず、事態の改善は図られていません。

****ASEAN特使、スーチー氏と会えず=仲介に行き詰まり―ミャンマー****
東南アジア諸国連合(ASEAN)の特使として、6月末からミャンマーを訪れていたカンボジアのプラク・ソコン副首相兼外相が一連の日程を終えた。

クーデターで権力を握った国軍が拘束している民主化指導者アウンサンスーチー氏との面会は今回も実現せず、国軍と民主派の対話を仲介するASEANの取り組みは行き詰まりを見せている。

特使のミャンマー訪問は3月に続いて2回目。国軍トップのミンアウンフライン総司令官、国軍が外相に任命したワナマウンルイン氏らと会談し、暴力停止や遠隔地への人道支援を要求。また、刑務所敷地内の施設に移送されたスーチー氏を元の軟禁場所に戻すよう訴えた。【7月5日 時事】
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7月19日には、独立闘争の指導者で「建国の父」と慕われるアウンサン将軍が暗殺されてから75年となるのに合わせ、ミャンマーの最大都市ヤンゴンで軍事政権主催の追悼式典が開かれましたが、当然ながらアウンサン将軍の娘であるスー・チー氏の姿はありませんでした。

【民主活動家4人を処刑 ASEANも批判】
更に軍事政権は国際社会の批判に挑戦するがごとく、スー・チー氏率いた国民民主連盟(NLD)の元議員ら民主活動家2人を含む4人の死刑を執行しました。

地元メディアによると、政治犯の死刑執行は1976年以来で、それ以外の死刑執行も90年から行われていなかったとのことで、改めて軍事政権がその強硬な姿勢を世界にアピールした形となりました。

****ミャンマー軍政、民主活動家4人を処刑****
ミャンマーの軍事政権は、民主活動家4人を処刑した。国営メディアが25日に伝えた。同国での死刑執行は数十年ぶりとみられている。

軍政は今年6月に4人に対する死刑宣告を発表し、国際的に非難されていた。 処刑されたのは、ピョーゼヤトー元議員、作家で著名活動家のチョウミンユー氏(通称:コ・ジミー)、フラミョーアウン氏、アウントゥラゾー氏。

軍政は4人が「テロ行為」を行ったとして、テロ対策法のもとで起訴し、非公開の裁判で有罪とされた。いつ、どのような形で死刑を執行したのかは、明らかになっていない。

国営英字紙グローバル・ニュー・ライト・オブ・ミャンマーは、4人が「残酷で非人道的なテロ行為のため、指示と準備を重ね共謀した」と、処刑の理由を伝えた。 

昨年2月のクーデターで政権を掌握した軍政に対抗し、民主派や武装民族組織などが集まり樹立した「統一政府」は、4人の処刑に「衝撃を受け、悲しんでいる」と、軍政を非難した。

チョウミンユー氏(53)は1988年のミャンマー民主化運動を機に作られた市民組織「88世代学生グループ」のベテラン・メンバーだった。その活動のためたびたび刑務所に収監され、2012年に釈放されていた。しかし、ヤンゴンのアパートに武器を隠していたとして昨年10月に再び逮捕され、統一政府の「顧問」だと軍政に攻撃されていた。 

ピョーゼヤトー氏(41)は、国民民主連盟(NLD)の元議員で、現在収監中の元指導者アウンサンスーチー氏の側近だった。ヒップホップ・アーティストでもあり、軍政を批判するその歌詞は、しばしば軍部の怒りを買っていた。昨年11月に、テロ行為を理由に逮捕されていた。 

フラミョーアウン氏、アウントゥラゾー氏は、軍政の密告者だとされた女性を殺害した罪で、死刑判決を受けていた。 

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は軍政に対し、4人への死刑宣告は「生命、自由、安全という権利に対する甚だしい侵害」だと非難していた。(中略)

軍政による逮捕や殺害の動きを監視するミャンマー人団体「政治犯支援協会(AAPP)」によると、クーデーター以降、1万4847人が逮捕されており、推定2114人が軍部に殺害されているという。【7月25日 BBC】
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国連グテーレス事務総長の非難は上記にもありますが、一貫して軍事政権を厳しく批判してアメリカも更に態度を硬化させています。

****米、従来通りの対ミャンマー関係はあり得ず 民主活動家処刑で****
米国務省のプライス報道官は25日、ミャンマーの軍事政権が民主活動家4人を処刑したことを受け、同国との関係は「これまで通り」ではあり得ず、あらゆる選択肢を検討していることを明らかにした。

プライス報道官は定例記者会見で、各国に対し、ミャンマーへの軍事装備の売却を禁止し、軍事政権に国際的信用を与えるような行動を控えるよう呼びかけた。(後略)【7月26日 ロイター】
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ASEAN内には、ミャンマーとの関係が深い中国の影響力が強いカンボジアや、同じクーデター・軍事政権由来のプラユット政権のタイなど、比較的ミャンマーに宥和的な国もありますが、ASEANとの合意事項である暴力の即時停止など5項目が宙に浮いた形になっており、特使もスー・チー氏や民主派と面会できないなど、仲介が無視されたような状況を受けて、今回処刑実施を批判しています。

****ASEANもミャンマー軍政非難、民主活動家処刑で****
東南アジア諸国連合(ASEAN)は26日、ミャンマー軍事政権が民主活動家4人を処刑したことについて、「非常に非難されるべき」とする声明文を出した。

ASEANは「今回の死刑執行に非常に当惑し、深く悲しんでいる」と表明。今年の議長国を務めるカンボジアは「この危機の複雑さはよく認識されており、ミャンマーの至る所から極端な好戦的ムードが感じられるが、ASEAN全体として最大限の自制を呼びかけてきた」と、異例の強い声明となった。ASEANにはミャンマーも加盟している。

また「第55回ASEAN閣僚会議のわずか1週間前に死刑判決が執行された」と非難。国連が支援するASEANの和平計画を支持する意思がミャンマー軍政には「全くない」ことを示しているとした。【7月26日 ロイター】
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ミャンマー国軍は、民主活動家4人の死刑執行について「国民の正義」のためだったと説明、国際社会の批判を一蹴しています。

****ミャンマー軍「死刑執行は正義のため」 国際社会の批判に反論****
ミャンマー国軍のゾーミントゥン報道官は26日、民主活動家4人の死刑執行について「国民の正義」のためだったと説明、国際社会の批判を一蹴した。

報道官は定例会見で、死刑は適切な手続きを経て行われたと主張。処刑されたのは民主活動家ではなく、処罰に値する殺人者だったと述べた。

「国民の正義のためだった。犯罪者には弁護する機会が与えられた。批判が出るのは承知していたが、これは正義のためだ」と述べた。

処刑の方法や場所は明らかにされていない。親族によると、事前に通告はなく、遺体の引き取りも認められていないという。【7月26日 ロイター】
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【軍事政権との関係を維持する中国 ロシアの関係も強化】
欧米・国連はもちろん、ASEANとも距離を置くミャンマー軍事政権ですが、国内に多くの権益を有する中国は国軍との関係を維持しています。

****中国 王毅外相がミャンマー訪問 クーデター以降初めて****
(中略)ミャンマーの国営テレビは3日、ミャンマーを訪問した中国の王毅外相が、軍が外相に任命したワナ・マウン・ルウィン氏と中部のバガンで会談したと伝えました。王外相がミャンマーを訪れたのは去年2月のクーデター以降、これが初めてです。

会談では、ミャンマーから中国への留学生の派遣や農産物の輸出拡大などについて意見が交わされたということで、ミャンマー軍としては国際的な孤立を深める中、中国との関係強化を内外にアピールするねらいがあるとみられます。

一方、中国外務省によりますと、王外相は会談の中で「両国関係は国際的な情勢の変化に影響されず、常に盤石だ」と述べたうえでミャンマーの国内情勢が早期に安定することに期待を示したということで、中国としてもミャンマーへの影響力を強め、巨大経済圏構想「一帯一路」などをさらに推し進めたい思惑がありそうです。【7月4日 NHK】
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経済協力などでスー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)政権と緊密な関係を築いた中国は、クーデター後、国軍と民主派の双方に配慮する立ち位置をとってきました。

この日も王氏は「各勢力が国家の大局と人民の利益を重んじ、理性的な協議を続け政治的和解を実現することを期待する」と表明。中国側によると、ワナ・マウン・ルウィン氏は「民主的な転換プロセスを進める」と述べたとのこと。

ただ、市民の間では、中国がクーデターを黙認し国軍の統治を認めているとして反中感情が高まっています。クーデター直後に中国製品の不買運動が起きたほか、中国に天然資源を送るパイプラインの警備員3人が殺害され、ミャンマー進出中国企業の懸念材料になっています。

そうしたことからも、中国としても、ASEAN合意事項である「暴力の停止」など5項目の合意の履行による社会の安定を軍事政権に求めています。ワナ・マウン・ルウィン氏は王氏に「実現に努める」と述べたとか。

中国と並んで、軍事政権が関係を強めているのがロシア。

****ロシア、ミャンマーと防衛協力強化で一致=国防省****
ロシア国防省は12日、同省高官がミャンマー国軍のミンアウンフライン総司令官と11日にモスクワで会談し、防衛協力の強化で一致したと発表した。

同省によると、ミンアウンフライン氏は私的にロシアを訪問した。

国連人権理事会でミャンマーの人権状況を担当するアンドリュース特別報告者は2月に、ロシアがミャンマー軍政にドローン(無人機)、戦闘機、装甲車を供与したと述べていた。ミャンマーでは昨年2月に起きた軍事クーデター以降、情勢不安が続いている。【7月13日 ロイター】
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ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、2001年~21年のミャンマーの武器調達先はロシアと中国がそれぞれ4割余りを占めています。こうした軍事的なつながりを背景に、ミャンマー国軍報道官はロシアのウクライナ侵攻について「支持」を表明しています。

ミンアウンフライン総司令官はこのロシア訪問で軍事や農作物輸出だけでなく、ロシア関係機関と宇宙開発や原子力平和利用についても協議したとか。その意図はよくわかりませんが・・・。

国際社会の圧力をかわしたいミャンマーにとって、国連安全保障理事会の常任理事国でもあるロシアや中国との関係維持がいっそう重要になっているとも。

【来年8月までにやり直し選挙 NLDは拒否】
今後については、軍事政権は来年8月までにやり直し選挙を行うとしています。

しかし、軍事政権への抗議は力で封じ込まれ、国民民主連盟(NLD)はスー・チー氏をはじめ幹部が軒並み収監されたり、拘束されたりしています。逮捕されれば“死刑”も。
この状況で“まともな”総選挙が実施されるとは思えません。

****スーチー氏のNLD、選挙拒否 ミャンマー国軍が来年実施予定****
ミャンマーの民主化指導者アウンサンスーチー氏が率いた国民民主連盟(NLD)は9日、クーデターで全権を握った国軍により実施される総選挙を拒否するとの声明を発表した。国軍はNLDが圧勝した20年の総選挙を巡り、大規模不正があったと主張し、来年8月までにやり直し選挙を行うとしている。

NLDは声明で、再選挙は「国民や国際社会をだますために実施される」と非難。国軍が新たに組織した選挙管理委員会による手続きは違法で、全く受け入れられないと強調した。

21年2月のクーデター後、NLDはスーチー氏をはじめ幹部が軒並み収監されたり、拘束されたりしている。【7月9日 共同】
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この厳しい状況でも、ゲリラ的な抗議を続ける人々も。

****それでも...命がけのデモ 民主派処刑受け ミャンマー****
カメラの前で顔を隠し拳を突き上げる人たち。黒い横断幕を掲げ、声を張り上げる。
25日、ミャンマー最大の都市ヤンゴンで撮影された抗議デモの様子。

2021年2月の軍事クーデター以降、市民と国軍との衝突が幾度となく起きているミャンマー。

この日、アウンサンスーチー氏の側近など、4人の死刑が執行されたと報じられ、市民が抗議の声を上げた。
デモの最中には参加者たちへ向かって、近くの住民が拍手を送っていた。

小さな規模であっても、デモを行えば逮捕される危険と隣り合わせ。動画は、参加者たちが急いで立ち去ろうとする姿を映し、途切れた。

今も緊張が続く中で彼らが訴えていたことは...。横断幕には「わたしたちは決して恐れることはない」と書かれていた。

クーデターからもうすぐ1年半。勇気ある抗議行動は今も続いている。【7月26日 FNNプライムオンライン】
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