孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ロシア  重罪受刑者ら動員合法化、自軍の逃亡兵士を「射殺する」監視部隊 「人間の餌」「使い捨て兵士」

2022-11-06 22:30:24 | ロシア
(動員により幼い息子に別れを告げるロシア兵士(9月29日、ボルゴグラードで)=AP【10月12日 日経】)

【ウクライナ支持を維持するための「計算された試み」?】
ウクライナにおけるロシア軍の苦境がしきりに報じられています。

ただ、そうは言ってもロシア軍が広範な地域をまだ占拠している状況であり、このままロシア軍の態勢立て直し、軍事行動がとりにくい冬の到来、欧米の支援疲れ、昨日ブログで取り上げたような共和党が優勢となったアメリカの支援から距離を置く方針への転換などによってウクライナの攻勢にブレーキがかかり、戦線が膠着することになれば、ウクライナとしても不本意な事態ともなります。

****バイデン政権 ウクライナに対し「ロシアとの交渉に前向きな姿勢を示すよう非公式に促している」 米メディア報道****
ウクライナ侵攻をめぐり、アメリカ政府がウクライナに対し、ロシアとの交渉に前向きな姿勢を見せるよう水面下で促しているとアメリカメディアが報じた。

ワシントン・ポストは5日、情報筋の話として、バイデン政権がウクライナに対して、ロシアとの交渉に前向きな姿勢を示すよう非公式に促していると伝えた。この要請はウクライナに交渉のテーブルにつくよう強制するものではなく、各国のウクライナ支持を維持するための「計算された試み」だとしている。

交渉について、ウクライナ側はこれまでロシアのプーチン大統領が権力を維持し続ける限り、応じないという姿勢を崩していない。記事では、あるアメリカ政府関係者が「一部の支援国にとって『ウクライナ疲れ』は現実的なものだ」と指摘し、バイデン政権はウクライナを支持する各国の離反を防ぐ必要性を認識していると報じている。【11月6日 ABEMA NEWS】
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「計算された試み」? バイデン政権の真意はよくわかりません。

【プーチン大統領の健康不安説  真偽は不明】
一方のロシア。
国内の苦境を伝える報道は多々ありますが、まずはプーチン大統領の健康問題。
ウクライナは“プーチン大統領が権力を維持し続ける限り・・・”としていますが、プーチン大統領に万一のことがあれば状況が大きく変わります。

****プーチンは「癌とパーキンソン病が進行」との記載が...ロシア政府関係者のメール流出か****
<「謎の注射痕」動画で重病説が再燃していたプーチンだが、英紙が入手したメールには「すい臓癌とパーキンソン病と診断された」と書かれているという>

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の健康不安説が取り沙汰される中、同氏が「すい臓がんとパーキンソン病の診断を受けた」とするメールの存在が明かされた。

プーチン「重病説」は長くささやかれており、ウクライナ侵攻後には血液のがんなどを患っているとの噂も飛び交った。最近ではロシア国防省が公開した動画内で、プーチンの手の甲に「静脈注射の痕」のようなシミが見えたとして疑惑が再燃していた。

ロシア政府は以前から、うわさは真実ではないと主張してきた。だが、イギリスのタブロイド紙ザ・サンは11月1日、ロシア政府に近い人物のメールを入手し、その中にはプーチンがすい臓がんと早期のパーキンソン病と診断されたと書かれていたと報じた。メールには、プーチンの病気は「すでに進行している」とも書かれているという。

同紙によると、ロシア情報筋はメールで、「プーチンは、最近診断されたすい臓がんの転移を抑えるため、あらゆる種類の強力なステロイド剤と、革新的な鎮痛剤注射を定期的に投与されている」と説明。「それが強い痛みを引き起こしているだけでなく、プーチンには顔のむくみや、記憶障害を含むその他の副作用の症状が出ている」と述べている。

情報筋はまた、すい臓がんとパーキンソン病に加えて、プーチンが前立腺がんを患っているとのうわさが浮上していることも明らかにした。「彼の側近の間では、転移が徐々に進んでいるすい臓がんに加え、前立腺がんも患っているとうわさされている」

手に静脈注射の跡? 腕は震えが止まらず
ソーシャルメディアに先月投稿された映像では、プーチンの手の甲に静脈注射の跡のようなものが映されていたため、ユーザーの注目を集めた。クレムリンはその後、この映像を削除し、プーチンの手の跡を隠すような透かしを入れた映像と、彼の手が映っていない映像を新たに公開している。

6月には、プーチンがロシア国営企業ロスナノのセルゲイ・クリコフCEOと会談した際の動画で、むくんだ手でテーブルをつかんでいると、英メトロ紙が報じた。

4月に行われたベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領との会談では、プーチンは腕が震えているように見え、震えを止めるために腕を胸元に引き寄せるような姿が捉えられた。プーチンは、ルカシェンコに向かって歩くのも困難な様子だった。【11月5日 】
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プーチン大統領に限らず、最高権力者に関するこの種の情報は常にありますが、その多くはフェイクに近いようにも。プーチン氏に関してはどうでしょうか?・・・わかりません。“静脈注射の跡”だけでは何とも判断できないし・・・。

【混乱する動員の実態】
健康不安説の真偽はわかりませんが、動員が大きな混乱を招いたのは事実です。
プーチン大統領は動揺した国内をなだめようと、バラマキも。

****プーチン大統領、動員兵らに3200ドルの一時金支給へ****
ロシアのプーチン大統領は3日、部分動員令で招集された兵士らに対し19万5000ルーブル(3200ドル)の一時金を支払うよう命じた。大統領府(クレムリン)が発表した。

大統領府のウェブサイトに掲載された法令によると、プーチン大統領は、一時金の支給は招集された兵士らに「社会的支援の追加措置を提供する」ためのものという。それ以上の詳細には触れていない。

兵士らに提示された最低賃金は月額16万ルーブル(2700ドル)。これは全国平均賃金のほぼ3倍に相当する。【11月4日 ロイター】
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気前のいい話にも聞こえますが、実態は異なるような情報も。

****動員ロシア兵100人超の「反乱」発生...報酬の不払いに不満を爆発させる様子が動画に****
<訓練センターの屋外に集結して報酬の支払いを叫ぶ100人以上の兵士たち。約束の金銭が支払われず不満が爆発するケースが続発しているようだ>

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領による部分動員令によって招集された兵士たちが、政府から報酬が支払われていないとして「実力行使」に出る事態が相次いでいる。

SNSには、新兵用の訓練センターの敷地内で100人以上が集まって抗議のスローガンを叫ぶ姿を映した動画のほか、仲間たちが見守る中で上官と対峙して報酬の支払いを訴える兵士の動画などが次々に投稿されている。

ロシアの独立系ニュース機関「7x7 Horizontal Russia」によると、大規模な抗議活動を起こしたのは、中部ウリヤノフスクの訓練所にいるチュバシ共和国出身の兵士らだったという。兵士らは同メディアに対し、19万5000ルーブル(約46万円)の支給を約束されたが、いまだに受け取っていないため、戦闘に参加するのをやめるストライキを実施すると語った。

7x7は2日付のテレグラムの投稿で、ストライキの参加者の1人は、動員兵は全員「だまされて」おり、「二束三文で戦地に送られる」と話したと伝えた。

別の動員兵は、ロシア当局が兵士の親族による訪問を禁止し、休暇の取得も認めなかったと明かしたという。ストライキはその後、機動隊によって中止させられた。(中略)

ロシアは「密かに」兵士動員を継続中との情報も
ロシアの動員兵らによる抗議の声は、相次いで伝えられている。2日にツイッターに投稿された動画では、ロシア軍に加わることで支払われると約束された30万ルーブル(約71万円)が家族に支払われていないと兵士らが上官に訴えている。

「ロシアのモビク(動員兵)は、『約束された』30万ルーブルを一括で支払うよう求めているが、軍の代表は彼らに約束はしていないと主張している」と投稿者は述べている。それを聞いた兵士からは、それなら「議員たちが自ら戦地に行け」との声が上がった。

ロイター通信は、ロシアの2023年の予算には、ウクライナとの戦闘のために兵士約30万人を動員する費用や、自国の領土と主張するウクライナ4州を併合する費用が考慮されていないと報じた。

ロシア軍高官は先月21日、動員された兵士約1万人が「様々な理由」で帰国させられたと発表したが、米シンクタンク軍事研究所(ISW)によると、ロシア軍は兵士を「密かに」動員し続けている。【11月4日 Newsweek】
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動員したものの、装備も自前で用意せねばならず、訓練も十分にされないまま前線に送られる・・・ということは、かねてより報じられているところ。

****装備は自腹、訓練不足で前線へ… ロシア動員の混乱嘆く家族****
ロシア人美容師のタチアナさんは、同国がウクライナ侵攻の兵力増強のために行った予備兵動員は「完全な恐怖」だと怒りをあらわにした。

タチアナさんのおいは先月初旬、首都モスクワの北西にあるクラスノゴルスクで招集された。動員に際して必要なものは、衣料品から救急用品まですべて家族が自費で購入しなければならなかったという。

報復を恐れて姓を伏せることを条件にAFPの取材に応じたタチアナさんは「制服、防寒下着、薬、食料など、すべて自分たちで買わなければならなかった」と憤る。「(動員兵が)到着しても誰も待っておらず、何も準備されていなかった」。当局者も突然の動員令に不意を突かれた様子だったという。(中略)

モスクワの北東20キロに位置するイワンテエフカに住むウクライナ出身の美容師アンナさんは、義理の息子が動員されたことに今もショックを受けている。「親戚がドニプロで爆撃されているのに、義理の息子は私たちの生まれ故郷で人を殺しに行かなければならない」と涙ながらに語った。

本人は戦争に反対していたが、「前線に行くか刑務所に入るか」以外に選択肢はなかったという。義理の息子は防弾チョッキや制服、防寒着、ブーツなどを買うのに、ロシアで最低賃金として定められている月給の7倍に当たる10万ルーブル(約23万円)近くを費やした。

ソーシャルメディア上では、新兵が使う基本的な装備の購入資金を募る投稿が拡散している。

■訓練不足のまま前線へ
動員をめぐる問題の深刻さは、政府支持派のジャーナリストでさえ警鐘を鳴らすほどだ。
複数の記者がソーシャルメディアへの投稿で、モスクワとその周辺地域から招集された新兵たちがまともな訓練も受けずにウクライナの前線に送り込まれたと指摘している。新兵が配属された第27自動車化狙撃旅団では、多数の死者が出た。

死者の中には、オーストリアのライファイゼン銀行ロシア支社でIT技術者として勤務していたチムール・イズマイロフさんもいた。

イズマイロフさんは本来なら兵役を免除されるはずだったが、9月23日に招集された。代理人弁護士のコンスタンチン・エロヒンさんがメッセージアプリのテレグラムへの投稿で明らかにしたところによると、イズマイロフさんは10月7日に戦線に送られ、13日に迫撃砲による攻撃を受けて死亡。

前線に送られたのは、中央銀行が作成した動員免除対象の銀行員名簿が軍司令部に届くのが間に合わなかったからだとされる。 【11月5日 AFP】
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“ロシア、北朝鮮から軍服や靴の調達検討か…厳冬期迎えるウクライナ戦で不足”【11月5日 読売】といった話も。

そうした一般国民の動員だけでは足りずに、殺人、強盗など重罪を犯した者もかき集めるとか。

****ロシア、重罪受刑者ら動員合法化 兵員不足で窮余の策****
ウクライナへの侵攻を続けるロシアで、殺人、強盗など重罪を犯した人の軍への動員を合法化する法改正が6日までにプーチン大統領の署名を経て発効した。軍事作戦が8カ月以上続き、戦況悪化に直面するロシア軍の兵員不足を補う窮余の策といえそうだ。(中略)

ロシアメディアなどによると、これまで動員が禁じられていた「重罪を犯した者」のうち、殺人や強盗、麻薬犯罪で有罪となった受刑者や犯歴のある人は禁止の対象から外れた。【11月6日 共同】
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【士気が期待できない兵士をどのように使うのか?】
上記のような動員の実態、ましてや犯罪者を・・・ということでは、まともな“士気”は期待できません。
実際、ロシア軍兵士の士気の低さは以前から指摘されているところですが、今後はますます問題になります。
そこで、ロシア軍は・・・

****ロシア兵の逃走防ぐため、監視部隊を派遣か 士気低下が背景 英分析*****
英国防省は4日、ウクライナに侵攻するロシア軍が、前線にいる自軍兵の退却や逃走を防止するための監視部隊の派遣を始めた可能性が高いとの分析を公表した。銃撃も辞さない強い姿勢で臨んでいるといい、ロシア兵の士気が低下し、規律も乱れていることが背景にあると見ている。

英国防省によるとロシアは過去の紛争でも同様の部隊を派遣した。ロシア軍幹部は警告を無視した脱走兵の殺害を容認している可能性があり、兵士に対しては防衛陣地を死守するよう求めているという。(後略)。【11月5日 毎日】
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“旧ソ連の独裁者スターリンが、第2次世界大戦のナチス・ドイツとの戦闘で「一歩もひくな」をスローガンに導入した手法として知られる。”【11月6日 読売】とも。

オスマントルコのメフメト2世による世界最強の城壁を誇るコンスタンティノープル攻略(1453年)を活写した塩野七生氏の著作「コンスタンティノープルの陥落」に似たような場面が。

難攻不落の城壁を前にオスマントルコ軍兵士の中には戦線を離脱する者も・・・しかし、オスマン軍の背後にスルタン直属の最精鋭部隊イエニチェリ軍団が逃げる自軍兵士を切り殺すべく抜刀して控えていたとか。
兵士は逃げることもかなわず、城壁に突撃するしかなかった・・・。

こんな士気の低い動員兵が“使い物になるのか?”と誰しも考えるところでしょうが、現実は“冷酷”です。
ちゃんと“使い道”があるようです。血も凍るような冷酷非道な話ですが。

****東部前線で戦うワグネルの「使い捨て兵士」 ウクライナ****
「そこにあるのは恐怖だ。地面はアスファルトのように真っ黒で、すべてが破壊された。遺体があちこちに散乱していた」

AFPの取材に応じたウクライナ兵のエウヘンさんは、ロシア軍が撃ち込む砲弾が付近でさく裂する中、地下トンネルに退避した。そして、わずか1キロしか離れていない東部ドネツク州バフムートの前線の状況を振り返った。(中略)

軍事専門家やウクライナ軍によると、暗躍しているのはロシアの民間軍事企業ワグネルだ。
ワグネルの創設者は、ウラジーミル・プーチン大統領に近い実業家のエフゲニー・プリゴジン氏。ロシアによるウクライナ侵攻を機に存在感を強めており、政治的野心を抱いている可能性があるとの見方も出ている。

ウクライナ当局者によると、プリゴジン氏はロシア国内の受刑者に対し、報酬や恩赦という条件を提示してワグネルの兵士として採用し、数千人を前線に送っているという。

数人のウクライナ兵は、こうした元受刑者が「人間の餌」のような使われ方をしているとAFPに証言した。

ウクライナ軍第93旅団に属するアントンさんは、「暗くなる午後6時前後から、経験のない兵士たちがわれわれの陣地に向けて前進を命じられ、ある地点で数分間とどまる」と説明する。こうした兵士が毎晩7、8人前後、ウクライナ部隊に向かってやって来るという。

第53旅団の少佐セルヒーさんは、「一行の任務は、前進してわれわれが発砲せざるを得ない状況を生み出し、陣地の場所を探り当てることだ」と話す。その後、「ロシア側は(われわれの陣地に向けて)大砲を撃ち込み、より経験豊富な精鋭部隊を送り込んでくる」という。

■ワグネル創設者に政治的思惑
ウクライナ側の説明によると、このようなロシア軍の「使い捨て兵士」の大半が戦死する運命にある。中には、負傷したり、拘束されたりする者もいる。(後略)【11月1日 AFP】
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正規軍ではなく、悪評高い民間軍事会社ワグネルの部隊の話のようですが・・・。
ただ、訓練もされておらず、装備も不十分で、士気も低い動員兵の前線での使い道は限られてくるでしょう。「使い捨て」的なものとして。
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