孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン  イスラム主義による厳格・抑圧的な統治を強めるタリバン政権

2022-11-15 22:37:06 | アフガン・パキスタン
(治安部隊の女性たち(タリバン暫定政権の内務省)【11月5日 日テレNEWS】)

【タリバン政権 イスラム主義による厳格・抑圧的な統治を強める】
政権掌握時には旧政権時代より穏健な統治も示していたアフガニスタンのイスラム原理主義組織タリバンですが、次第に(彼らが信じる)イスラム主義による厳格・抑圧的な統治の色合いを濃くしています。

****タリバン、イスラム法の完全執行命令 アフガン****
アフガニスタンの実権を掌握するイスラム主義組織タリバンの最高指導者ハイバトゥラ・アクンザダ師は、同国の裁判官に対し、公開処刑や石打ち、むち打ち、窃盗犯の手足の切断など、シャリア(イスラム法)のすべての側面を完全に執行するよう命じた。ザビフラ・ムジャヒド報道官が13日夜、発表した。

同報道官はツイッターへの投稿で、アクンザダ師が裁判官と会談後に「義務的」命令を出したと説明した。同師は、昨年8月にタリバンが政権を掌握して以来、公の場に姿を見せておらず、同組織発祥の地である南部カンダハルから法令を出して同国を統治している。

タリバンは1996〜2001年に政権を握った際、抑圧的な支配体制を敷き、競技場でのむち打ちや公開処刑などを定期的に行っていた。昨年の政権掌握時にはより穏健な統治を約束していたが、徐々に国民の自由と権利の締め付けを強化している。

ソーシャルメディアでは1年間以上にわたり、タリバン戦闘員がさまざまな犯罪の疑いで人々にむち打ちの刑を執行する動画や写真が拡散している。タリバンはまた、銃撃戦で死亡したとされる誘拐犯の遺体を何度か公の場にさらしている。農村部では、金曜礼拝の後、不倫をした人がむち打ちの刑に処されているとの報告もあるが、真偽は不明だ。 【11月15日 AFP】
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国内でのタリバン統治への不満、タリバン政権を承認しない欧米との軋轢、IS(イスラム国)系のテロ活動などによる安定しない治安状況・・・等々へのタリバン政権の苛立ちを示すもののように思われます。

****アフガン首都の自爆攻撃、死者35人に ハザラ人女性が抗議デモ****
アフガニスタンの首都カブールで9月30日、大学入試の模擬試験会場が自爆攻撃を受けた事件で、国連は1日、死者が35人に達したと発表した。

国連アフガニスタン支援団によると、最新情報では少なくとも35人が死亡、82人が負傷した。うち20人以上が少女と女性だという。(筆者注:国連は10月3日、死者が53人に増えたと発表。うち46人は少女や若い女性とのこと。)

模擬試験の会場となった教育施設があるカブール西部のダシュテバルチは、イスラム教シーア派の住民が多く、中でも長年迫害されてきた少数民族ハザラ人が居住している地区。

1日にはハザラ人女性約50人が、イスラム主義組織タリバンの集会禁止令を無視し、地元での惨事を受けて抗議デモを実施。黒いヒジャブとスカーフに身を包み、「ハザラ人虐殺を止めろ、シーア派教徒であることは罪ではない」などと叫びながら、負傷者が入院している病院の前を行進した。

目撃者はAFPに対し、攻撃の実行犯は、男女別のホールのうち女性用のセクションで自爆したと語った。

デモに参加していた女性はAFPに、この攻撃は「ハザラ人とハザラ人の少女たちに対するもの」だと述べ、「こうした大量殺害をやめるよう求める。私たちは自分たちの権利を要求するために抗議している」と語った。 【10月2日 AFP】
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“犯行声明を出している組織はないが、シーア派を異端視するイスラム過激派組織「イスラム国」は過去に同地域で少女や学校、モスク(イスラム礼拝所)を標的とした攻撃を繰り返してきた”【10月4日 AFP】

統治を厳格・抑圧的なものにするタリバンの姿勢を反映したものには、以下のような動きも。

****“全身黒ずくめ”ヘルメットに盾を持つ女性たち タリバンが女性治安部隊を創設 その狙いは****
アフガニスタンで実権を握るタリバンは、今週、治安部隊に元警察官の女性約100人を採用したと明らかにした。女性への抑圧が懸念される中、その狙いは何なのか。
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目以外の全身を黒い服で覆った女性たち。頭にはフェイスシールド付きのヘルメットを装着し、盾を持っている。
タリバン暫定政権で国内の治安維持を担う内務省は、今週、女性による治安部隊の創立を明らかにした。元警察官の女性100人を再雇用したのだという。

治安部隊の女性(タリバン暫定政権の内務省)女性隊員らは「暴動を防ぐための訓練は有益だった」「仕事を離れていた女性警察官たちに、職務に戻るようお願いしたい」などと話していた。

タリバン復権後、多くの女性が役所などの公的な仕事につきにくくなったと指摘される中、元女性警察官の職場復帰は、歓迎すべき動きにも見える。

しかし、タリバンは、いまも、女性の権利を訴えるデモなどを許さず、厳しい取り締まりを続けている。今週も、記者会見場にタリバンがやってきて、女性活動家が逮捕されるということがあった。

治安部隊の女性たち(タリバン暫定政権の内務省)女性治安部隊は、警備や暴動鎮圧のための訓練を受けているとされ、女性たちの抗議デモを取り締まる目的があると指摘されている。

女性治安部隊が、力づくで、女性の権利を訴えるデモを取り締まる状況が訪れるのか、懸念が広がっている。【11月5日 日テレNEWS】
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****タリバン、公園・遊園地への女性の入場禁止 アフガン首都****
アフガニスタンの実権を掌握するイスラム主義組織タリバンは今週、首都カブールの公園や遊園地への女性の入場を禁止した。

タリバンは実権掌握以来、男性の付き添いなしで旅行するのを禁止し、外出の際には常にヒジャブやブルカの着用を義務付けるなど、女性の公共の場での権利を制限してきた。女子中等教育機関も、ほぼ全国で1年以上閉鎖されている。

勧善懲悪省の報道官は9日夜、AFPの取材に応じ、「われわれはここ1年3か月、問題解決に最善を尽くしてきた」「しかし、いまだ一部の場所、いや、実際には多くの場所で規則が破られている」と語った。
「(男女が)分けられておらず、ヒジャブの着用も守られていないため、今回の判断に至った」

ある女性は、公園で遊ぶ子どもたちを近くの飲食店の窓から見守りながらこう話した。「学校も、仕事もない。少なくとも私たちも楽しめる場所が欲しい」

その隣のテーブルでは、姉妹と一緒に1日を過ごそうと公園に来た、大学でイスラム法を学ぶ女性が「家にいるのに飽き飽きしていたので、楽しみにしていたのに」とがっかりした様子で言った。「イスラム教では外出して、公園に行くことは明らかに認められている。何の自由もないのなら、この国に住む意味があるのだろうか」

女性だけではなく、施設開発に多額の投資をしてきた公園管理者らも落胆を隠せない。
数キロ先にあるザザイ遊園地では、入場者数があまりにも少ないため、観覧車などほとんどの乗り物を突如運休にした。

ハビブ・ジャン・ザザイ氏は、1100万ドル(約16億円)を投じ、遊園地を共同開発した。250人の従業員がいるが、遊園地を閉鎖しなければならないのではないかと心配している。

ザザイ氏は「女性が来なければ、子どもたちも自分たちだけでは来ない」と訴える。今回の決定により、国外在住のアフガニスタン人は投資を避けるようになり、税収にも影響が出るだろうと警告する。
「政府は税金で運営されている。投資家が税金を払わなければ、どうやって国を運営していくつもりなのだろう」 【11月10日 AFP】
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首都カブールの遊園地では今年4月以降、男性と女性で入場できる曜日を分けて対応していましたが、今月に入って女性の入場は認められなくなったとのこと。

女性が禁止されれば、子供も連れて来られない・・・ほとんど利用する人のいない公園・遊園地、髭面の男だけの遊園地といった奇妙で愚かしい光景になるのかも。

タリバンは、基本的に人々が娯楽を楽しむことが気にいらないのでしょう。(旧政権時代は、音楽も、演劇も、凧あげも、闘犬も“娯楽”は全て禁止されました) 人々は家でおとなしくコーランを読んでいればいいという発想でしょうか。 もっとも、政権奪取直後、遊園地で嬉々として遊ぶタリバン一般兵士の姿などが報じられていましたが・・・。

【強権支配政権との付き合い方】
こうした抑圧姿勢を強めるタリバンとの付き合い方は難しいところ。
日本を含め、タリバン政権を政府承認した国は現在もありませんが、日本は首都カブールで大使館の一部業務を再開させました。

****アフガン タリバン暫定政権 日本大使と会談 業務の再開を歓迎****
アフガニスタンのイスラム主義勢力、タリバンの暫定政権はハッカーニ内相代行が首都カブールで大使館の一部業務を再開させた日本の大使と会談し、関係の強化につながるとして歓迎したことを明らかにしました。

アフガニスタンのイスラム主義勢力タリバンの暫定政権は、治安対策などを担当するハッカーニ内相代行とアフガニスタンに駐在する日本の岡田隆大使が、23日に首都カブールで会談したことを明らかにしました。

アフガニスタンの日本大使館は、前の政権が崩壊した去年8月以降、一時閉鎖されていましたが、先月から業務を一部再開させています。

タリバン側の発表によりますと、会談でハッカーニ内相代行は、日本が大使館の業務を再開させたことについて「関係強化につながる効果的な一歩だ」として歓迎し大使館の安全を守ると約束したということです。

一方、日本大使館によりますと、会談ではタリバンが認めていない日本の中学校と高校にあたる学校に通う女子生徒に対する授業の再開など、国際社会が抱いている懸念についても、意見を交わしたとしています。

タリバンの暫定政権をめぐっては、女性の権利を制限しているなどとして、国際社会からの批判が強く、これまで承認した国はなく、日本がどのような関係を築いていくかが課題です。【10月24日 NHK】
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欧米諸国がどういう対応をしているのかは知りません。
ただ、日本はかつてのスリランカやミャンマー軍事政権など、欧米諸国が人権抑圧を理由に関係を断つ政権と、経済関係優先、あるいは中国との影響力競争などの視点から宥和的な外交をする傾向もありますので、今後のタリバン政権との関係が注目されます。

アフガニスタンと日本のつながりでは、公益財団法人ジョイセフによる「思い出のランドセルギフト」事業という活動も。

****思い出のランドセルギフト」とは****
日本で役目を終えたランドセルをアフガニスタンに寄贈し、子どもたち、特に教育の機会に恵まれない女の子の就学に役立てる国際支援活動です。2004年の開始以来、およそ26万個のランドセルが贈られました。

ランドセルを贈ることで、子どもたちが学校で学ぶ機会が得られ、読み書きができるようになり、自分自身や家族を守る知識や情報を身につけられるようになることを目指しています。この活動は、小学校4年生の国語や中学校の英語の教科書といった教材にも取り上げられています。9,360個のランドセルがアフガニスタンに届きました

2021年8月に起きたタリバンの全権掌握により不安定な情勢が今なお続くアフガニスタンに2021年11月〜2022年7月までに寄贈された9360個のランドセルをナンガハール州のヒスラク郡とシェルザッド郡の小学生1年生から3年生の子どもたちへ配付しました。

配付は10月に開始され、11月も配付が続けられます。ヒスラク郡は昨年の政変までタリバンの支配下にあったため、20年間、国際支援が届けられなかった地域です。ヒスラク郡もシェルザッド郡の子どもたちにも今回初めて日本のランドセルと学用品を届けることができました。(後略)【11月4日 公益財団法人ジョイセフ】
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こうした活動を行うためにはタリバン政権との一定のパイプが必要にもなります。
より広範な話としては、飢餓に苦しむタリバン国民への食糧支援の問題もあります。

人権抑圧政権を無視すればいいというものでもありません。さりとて、人道支援が強権支配政権を利することにつながるのも釈然としない・・・ということで、悩ましいところです。


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