孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ソマリアなど東アフリカ  13万人近くが深刻な飢餓状態にあり、死に直面

2023-03-12 23:19:14 | 食糧・飢餓

(世界の食危料機はアフリカに集中しています【2022年12月21日 日本赤十字社】)

【「アフリカの角」 13万人近くが深刻な飢餓状態にあり、死に直面】
自分を含めて、人は他人の苦しみ・不幸には極めて鈍感です。(だからこそ、苦しみ・不幸が溢れているこの世を生きていける・・・とも言えますが)

まして、海の遥か彼方の異国の出来事となると・・・何らかの事情で、例えばウクライナのように一定の関心を持たれる出来事もありますが、多くはスルーされます。

東アフリカの干ばつ・飢餓もそうしたスルーされる多くの出来事のひとつでしょう。

*****アフリカの角一帯で13万人が餓死の恐れ WHO*****
世界保健機関は10日、「アフリカの角(アフリカ東端部)」と周辺地域では13万人近くが深刻な飢餓状態にあり、死に直面していると警告した。

WHOによると、ジブチ、エチオピア、ケニア、ソマリア、南スーダン、スーダン、ウガンダを含む「アフリカの大角」と呼ばれる地域の住人4800万人が、危機的レベルの食糧不安に陥っている。

このうち約600万人は緊急対策が必要な状況で、さらに12万9000人は最悪の状況に置かれている。12万9000人のうち、9万6000人がソマリア人、3万3000人は南スーダン人となっている。

また、同地域では今年、5歳未満の子ども約1190万人が急性栄養失調に陥る恐れがあると見られている。

アフリカ東端部は、気候変動に対して最も脆弱(ぜいじゃく)な地域の一つだ。過去5年間、雨期に十分な雨が降らず、家畜数百万頭が死に、作物は壊滅状態に陥った。こうした状況を受け、地域住民は水や食べ物を求めて移動を余儀なくされている。 【3月12日 AFP】
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多少なりともアフリカの状況に関心がある場合でも、東アフリカの食料危機についてはこれまでも何度も耳にしてきた話であり、「またか」「相変わらずだね・・・」といった感もあるかも。

しかしながら、「13万人近くが死に直面している」という状況を座視していいことにもならないでしょう。

この地域の危機的状況は以前から報告されています。

****ソマリア、栄養治療施設で子ども730人死亡 ユニセフ****
国連児童基金(ユニセフ)は6日、飢饉(ききん)の恐れが出ているソマリアで1月以降、約730人の子どもが栄養治療センターで死亡したと発表した。実際の死者数はこれを上回る可能性があるという。

ソマリアが位置する「アフリカの角」と呼ばれるアフリカ大陸北東部地域は過去40年間で最悪の干ばつに見舞われており、4期連続で雨期の降水量が不足したことにより家畜や作物が死滅。多数の人々が飢餓の危機に直面している。

ユニセフのソマリア代表を務めるワファ・サイード氏は、首都モガディシオからビデオ会議を通じスイス・ジュネーブで開いた記者会見で、「栄養失調は前例のないレベルに達している」と説明。1〜7月に全国の栄養治療センターで約730人の子どもの死亡が報告されたと述べた。

サイード氏によると、子ども約150万人が急性栄養失調の危機にあり、その半数近くが5歳未満。重度の急性栄養失調の治療が必要となる子どもは38万5000人に上る見通しとされる。

国連は5日、ソマリアがこの10年余りで2度目の飢饉に陥る可能性があり、人命を救うには一刻の猶予もないと警告していた。国連によると、同国では人口の半分に相当する約780万人が危機的な飢餓水準に達しており、約100万人が食料と水を求めて避難民化している。 【2022年9月7日 AFP】
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【ソマリア  国際支援を阻むイスラム過激派との戦い】
ソマリアでは、単に“過去5年間、雨期に十分な雨が降っていない”という干ばつだけでなく、長年続く紛争で政治の対応がほとんどなく、イスラム武装勢力のテロによって国際支援も滞るという状況があります。

南部中心のシャバブの支配地域のほか、政府の支配地域でも繰り返しシャバブによるテロ攻撃が行われており、援助物資の輸送が極めて難しくなっています。

イスラム武装勢力のテロなどについては、以下のようにも。
“ソマリア首都で車2台爆発 100人死亡、300人負傷”【2022年10月30日 AFP】
“ソマリア首都中心部のホテルに過激派武装勢力が立てこもり 治安部隊と銃撃戦 民間人8人死亡”【2022年11月29日 TBS NEWS DIG】

【“不公平”な温暖化の影響】
また、天候不順は地球温暖化の影響が指摘されています。

米カリフォルニア大サンタバーバラ校気候災害センターでディレクターを務めるクリス・ファンク氏は、南米ペルー沖の太平洋の水温が平年より低くなる「ラニーニャ現象」について地球温暖化が要因となっていること、「ラニーニャ現象」が起きると、アフリカ東部で干ばつが発生しやすくなることを指摘しています。

更に問題なのは「(温室効果ガスの排出が少なく)最も温暖化に加担してこなかった国々が、最も苦しめられている」(ユニセフ・ソマリア事務所のワファ・サイード代表)こと。

この“不公平”は常に指摘されるところです。温暖化に加担して経済的に優位な地位を得た国々の対応責任は免れないでしょう。

【グッドガバナンスこそが、社会を繋ぎ、人財育成を促し、経済の発展や繁栄につながる鍵】
食料危機に瀕しているのは東アフリカだけではありません。その原因は、紛争、経済ショック、気候危機、肥料の価格高騰・・・等々。

****世界的な食料危機****
紛争、経済ショック、気候危機、そして肥料の価格高騰が重なり、かつてないほどの食料危機を引き起こしています。世界では8億2800万人の人びとが飢餓に苦しんでいます。

今すぐに行動を起こし、命を救い、食料安全保障、安定、平和をもたらす解決法に投資するか、それとも世界の人びとが拡大する飢餓に直面するのをただ見ているのか、今、世界は選択を迫られています。

2023年:食料の確保が困難な家庭にとって、極めて危険な状態が継続
79カ国において、過去最高となる3億4900万人が深刻な飢餓(急性の食料不安)に苦しんでいます。この数は2021年の2億8700万人から拡大し、新型コロナウイルスのパンデミック前からは2億人も増加しています。

90万人以上は飢餓の中でも最も深刻な飢きんにほぼ近い状態にあり、こうした人びとは5年前と比較して10倍となり、憂慮すべき割合で急増しています。緊急の支援が必要です。国際社会は2030年までに飢餓と栄養不良をなくすという約束を反故にしてはなりません。

国連WFPは次のような複数の課題に直面しています。食料や燃料価格の高騰により食料支援を届けるための活動費が過去最高となる中、支援のための資金が追いつかないほど急性食料不安の人びとが増え続けています。

ニーズに対応できなければ飢餓や栄養不良の危険が高まります。必要な資金が確保できなければ、命が失われ、苦労して得た開発の成果が失われてしまいます。

飢餓と饑きんの要因
なぜ飢餓がかつてないほど増えているのでしょうか? 飢餓は危険な要因が重なり引き起こされています。

紛争は依然として飢餓の最大の要因で、世界の飢餓に苦しむ人びとの約6割は戦争や暴力の影響を受けた地域に住んでいます。ウクライナでの危機は紛争がいかに飢餓を引き起こし、避難民を発生させ、収入源を断ってしまうかということを示しました。

気候危機は世界的な飢餓の急増の要因の一つです。気候ショックは命を奪い、作物や生活を破壊し、人びとが食べ物を確保するのを困難にします。世界が気候危機に対する緊急の行動を取らなければ、飢餓を止めることはできません。

世界的な肥料価格は、過去10年で最高値に推移している食料価格の高騰を上回る勢いで上昇しています。
天然ガスの価格高騰など、ウクライナでの戦争の影響によって、世界的な肥料生産と輸出に混乱が生じました。供給が減少し、価格の上昇につながり、収穫の減少が懸念されています。

肥料価格の高騰によって、2022年には、トウモロコシや米、大豆、小麦の生産が減少しており、現在世界が直面する食料価格の危機(food affordability crisis)がいずれ、食料供給の危機(food availability crisis)に発展することが懸念されています。

国連WFPの活動費も過去最高となっています。(中略)ナイジェリア、南スーダン、イエメンなどで国連WFPは、より多くの人へ支援を届けるため、一人当たりの配給量を削減するなどの厳しい選択を迫られています。つまり、すでに飢えに苦しんでいる人びとから、食料を餓死寸前の人びとへ振り分けることを余儀なくされているのです。

飢餓のホットスポット
中央アメリカの"ドライ・コリドー(乾燥回廊)"地域やハイチから、サヘル地域、中央アフリカ共和国、南スーダンを抜け、東へ向かってアフリカの角、シリア、イエメン、そこからアフガニスタンにいたる地域では、紛争や気候ショックが、何百万人もの人びとを餓死の瀬戸際に追いやっています。

昨年、未曾有の世界的食料危機に対応するため、国連WFPだけでも140億米ドルという記録的な資金が世界から集められました。飢きんの危機にさらされているソマリアなどの国では、国際社会が結集し、最悪の事態を防ぐことができました。しかし、生き延びるための支援では十分とは言えません。飢餓の根本原因へ対処する必要があります。

レジリエンス(強靭性)を高めるための活動に投資しなければ、その影響は国境を超えて広がるでしょう。コミュニティがショックやストレスに耐えうるだけの強靭性を持っていなければ、移住の増加や政情不安、紛争に繋がりかねません。

近年の歴史はまさにこれを示しています。2015年に国連WFPによるシリア難民への食料支援の資金が枯渇した際、難民はキャンプを出て、支援を求めて移動しました。これが欧州の近年の歴史上最大の難民危機を引き起こしたのです。(中略)

今こそ行動する時
国連WFPの生活を変える支援は、人財を育て、社会保護プログラムを強化するため政府を支援し、特に脆弱な地域にあるコミュニティーを安定化させ、人びとがすべての資産を失うことなく、突然の危機を生き延びることができるように後押しをしています。

サヘル地域におけるレジリエンスプロジェクトの拡大では、わずか4年の間に国連WFPと地域コミュニティーは、サヘル地域の5カ国で15万8000ヘクタールの荒廃した土地を農地や牧草地に変えました。250万人を超える人びとが総合的な支援を受けています。

人びとは季節的なショックに耐えられるようになり、彼らが働く土地などの重要な自然資源へのアクセスが改善しました。家族や家屋、所有財産や農地は気候の危機から守られるようになりました。人びとを結びつけ、社会的なセイフティーネットを作り、生産的な土地を維持し、雇用の機会を生み出すことで(すべては飢餓のサイクルを断ち切ることに寄与)、支援は不安定な状況に対する緩衝材としての役割を果たしています。

国連WFPの旗艦プロジェクトであるマイクロインシュランスの事業(R4 Rural Resilience initiative)はバングラデシュ、エルサルバドル、エチオピア、フィジー、グアテマラ、ケニア、マダガスカル、ジンバブエを含む14カ国で農業や牧畜を営む36万世帯を作物や生活を脅かす気候災害から守っています。

同時に、より多くの人びとに緊急の食料支援を届けられるように、国連WFPは83カ国の政府と協力し、国家のセーフティーネットや、栄養に配慮した社会保護の強化や構築を行っています。

しかし、人道的な支援だけでは不十分です。政府、金融機関、民間セクターやパートナーとの連携によってのみ、2023年におけるさらなる危機を防ぐことができるのです。また、グッドガバナンスこそが、社会を繋ぎ、人財育成を促し、経済の発展や繁栄につながる鍵となります。

飢餓ゼロを達成するためには、より強固な政治的エンゲージメントが必要です。政治的な意思によってのみイエメンやエチオピア、南スーダンといった地域での紛争を終わらせることができます。そして、パリ協定に盛り込まれているように、強い政治的コミットメント無くしては、飢餓の主な要因である地球温暖化を食い止めることはできません。【1月23日 WFP】
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単に人道支援だけでなく、“グッドガバナンスこそが、社会を繋ぎ、人財育成を促し、経済の発展や繁栄につながる鍵となります”・・・・長年の内戦状態でそのガバナンズの基盤がないソマリアみたいな地域では事態はより深刻です。

世界の紛争をなくしていくことが、“世界では8億2800万人の人びとが飢餓に苦しんでいます”という状況を改善していくために不可欠です。

【ウクライナをめぐる穀物輸出合意延長にロシアが異論】
ウクライナ戦争のように紛争が現地だけでなく、世界中に影響することもあります。

****東アフリカ、食糧難1300万人 ウクライナ危機が拍車****
ソマリアなど東アフリカ各国が干ばつで食糧危機に陥っている。国連は1300万人が深刻な食糧難に直面していると明らかにした。ロシアのウクライナ侵攻による穀物の値上がりのしわ寄せが貧困国に真っ先に及んでおり、異常気象がもたらした苦境に拍車がかかっている。

深刻さが際立つのが「アフリカの角」と呼ぶ大陸東端にあるソマリアだ。同国で人道支援を調整する国連のアダム・アブデルムーラ氏は3月末、5歳以下の140万人の子どもが栄養不足だとし「対処しなければ35万人が夏までに命を落とす」と訴えた。(中略)

ソマリアでは降水不足の雨期が続いており、(中略)国連世界食糧計画(WFP)は「アフリカの角は1981年以来で最も乾燥した状態にある」と指摘した。(中略)

追い打ちをかけるのが、ロシアのウクライナ侵攻による穀物などの価格上昇だ。国連食糧農業機関(FAO)が8日発表した3月の世界の食料価格指数(2014~16年=100)は159.3と前月比17.9ポイント上昇した。穀物や植物油が大きく値上がりし、2カ月連続で過去最高を更新した。

ロシアとウクライナの小麦輸出は世界全体の3割を占め、アフリカには両国に依存する国が多い。FAOによるとソマリアは輸入小麦の9割、アフリカ東部のエリトリアは全量をロシアとウクライナに頼っている。(中略)

国際非政府組織(NGO)オックスファムは、ウクライナの戦闘による食糧供給の混乱について「最も貧しく弱い人々が真っ先にひどい打撃を被る」と指摘。「東アフリカに時間の猶予はない」と国際社会の支援を訴えた。

東アフリカではかねて食糧不安を高める混乱があった。エチオピアは20年からの反政府勢力との戦闘で、北部ティグレ州への食糧供給が著しく滞った。ケニアでは21年にかけてサバクトビバッタが大量発生し、農作物を食い荒らした。ソマリアでは政情の混迷が長引き、イスラム過激派の活動も活発になっている。

ただでさえサハラ砂漠以南のアフリカ諸国は、新型コロナウイルスで落ち込んだ経済の回復が鈍い。WFPは3月下旬に「世界的な供給不足で食糧の国際価格はさらに8~22%上がる可能性がある」との見方を示しており、輸入国の財政や家計をいっそう圧迫する可能性が高い。【2022年4月18日 日経】
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その後の合意でウクライナからの穀物輸出は再開されましたが、その合意延長にはロシアから異論も出ています。

****ロシア高官、穀物輸出合意「半分しか実施されず」 延長を疑問視****
ロシア高官は9日、ウクライナ産穀物の黒海経由での輸出を可能にした国際合意は「半分しか実施されていない」との見方を示した。

国連とトルコが仲介した「黒海穀物イニシアチブ」は昨年7月、ウクライナの3つの港から穀物を輸出することを可能にした。この合意は11月に120日間延長され、反対がなければ3月18日に延長されるが、ロシアはすでに、ロシアの輸出に影響する規制が解除された場合にのみ、延長に同意すると表明している。

ロシア大統領府(クレムリン)のペスコフ報道官は「最終的な受益者についてまだ多くの疑問がある。穀物の大半がどこに行くのかについての疑問もある」とした上で、ロシアの食料および肥料の輸出を促進する国連との覚書に関する疑問も「周知されている」と述べた。

ロシアのラブロフ外相は9日の記者会見で、ウクライナ産の穀物を安全に輸出することとロシアの輸出に対する障壁を取り除くことは「表裏一体」と指摘。前者は実施されており「われわれはトルコと共にこの点に関するあらゆる義務を果たしている」一方、後者は「全く実施されていない」とし、「半分しか実施されていないのであれば、延長に関する問題は非常に複雑化する」とした。(中略)

国連のグテレス事務総長は8日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)を訪問し、穀物輸出合意の延長を巡りゼレンスキー大統領と協議。国連貿易開発会議(UNCTAD)のレベッカ・グリンスパン事務局長は来週、ジュネーブでロシア高官と会談し、同合意の延長について協議する。(中略)

国連によると、ウクライナは同合意の下、これまでにトウモロコシと小麦を中心に2300万トンを超える穀物を輸出。主な輸出先は中国、スペイン、トルコ、イタリア、オランダとなっている。【3月10日 ロイター】
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