(がれきの街と化したガザ北部ジャバリアには、住民らが戻って来ている。
パレスチナ・ガザ地区の住民らは、停戦が実施されると、通りに出て喜びを表現した。しかし、自宅のあった場所に戻り、破壊の厳しい現実を目の当たりにする人が増えるにつれ、その喜びは薄れている。【1月20日 BBC】)
【組織大打撃、多大な住民犠牲も“抵抗の勝利”と主張するハマス ハマス壊滅を求め、停戦不承知のイスラエル右派 ガザ住民は?】
アメリカでのトランプ大統領就任のニュースの影に隠れた形になっていますが、パレスチナ・ガザ地区ではイスラエルとイスラム主義組織ハマスが合意し42日間(6週間)の停戦が、ハマスが解放する人質リストの提出が遅れた影響で停戦開始は当初予定から約3時間ずれ込んだものの、19日午前11時15分に始まりました。
イスラエル軍はこの遅れの間にもガザ北部などを空爆し、ロイター通信によると少なくとも13人(BBC報道では19人)が死亡したとされます。
****ガザ停戦、ハマスが人質3人解放 イスラエルも90人釈放へ****
パレスチナ自治区ガザでのイスラエルとイスラム組織ハマスの停戦が19日に発効し、ハマスに拘束されている人質のうちイスラエル人の女性3人が解放され家族と再会した。
ガザでは通りに出て停戦を祝うパレスチナ人の姿が見られた。住民らは攻撃でがれきと化した自宅に戻り始めた。
イスラエル軍が公開したビデオでは解放された3人の健康状態は良好に見えた。
イスラエル占領下のヨルダン川西岸では、イスラエルの収容施設から釈放されるパレスチナ人を待つバスが待機していた。ハマスによると、人質と引き換えに釈放される最初のグループには、69人の女性と21人の10代の少年が含まれている。
停戦は19日、予定より3時間近く遅れて発効した。
バイデン米大統領は「ガザの銃声が鳴りやんだ」と述べ、停戦を歓迎。「長い道のりだった。しかし、イスラエルが米国の支援を受け、ハマスに圧力をかけたおかげで、今日ここに到達することができた」と語った。
停戦はトランプ次期米大統領の就任前日に発効した。トランプ氏が国家安全保障担当の大統領補佐官に起用するマイク・ウォルツ氏は、ハマスが合意を破れば、米国はイスラエルが「やるべきことをやる」のを支援すると述べた。
「ハマスがガザを統治することはない。それは完全に受け入れられない」と語った。【1月20日 ロイター】
ガザでは通りに出て停戦を祝うパレスチナ人の姿が見られた。住民らは攻撃でがれきと化した自宅に戻り始めた。
イスラエル軍が公開したビデオでは解放された3人の健康状態は良好に見えた。
イスラエル占領下のヨルダン川西岸では、イスラエルの収容施設から釈放されるパレスチナ人を待つバスが待機していた。ハマスによると、人質と引き換えに釈放される最初のグループには、69人の女性と21人の10代の少年が含まれている。
停戦は19日、予定より3時間近く遅れて発効した。
バイデン米大統領は「ガザの銃声が鳴りやんだ」と述べ、停戦を歓迎。「長い道のりだった。しかし、イスラエルが米国の支援を受け、ハマスに圧力をかけたおかげで、今日ここに到達することができた」と語った。
停戦はトランプ次期米大統領の就任前日に発効した。トランプ氏が国家安全保障担当の大統領補佐官に起用するマイク・ウォルツ氏は、ハマスが合意を破れば、米国はイスラエルが「やるべきことをやる」のを支援すると述べた。
「ハマスがガザを統治することはない。それは完全に受け入れられない」と語った。【1月20日 ロイター】
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双方の合意では、停戦の第1段階でハマスが女性や高齢者、病人ら人質33人を解放し、引き換えにイスラエルが収監しているパレスチナ人を釈放することになっており、仲介国エジプトによると、釈放者は1890人以上に上るとされています。
ガザではこの停戦を歓迎しており、帰還の準備も始まっています。
****響く祝砲と歌声=帰還準備始まる―ガザ****
パレスチナ自治区ガザでは19日の停戦発効を受け、市街地に祝砲が響いた。路上に出た住民はパレスチナの曲を歌い、「神は偉大だ」と叫んで喜びを分かち合った。
現地の住民によると、停戦発効に先立ち避難先で暮らしていた人々は自宅に帰還するため荷造りを始め、避難しなかった住民らも壊れた建物の修理に取りかかった。
午前11時15分に停戦が正式に発効すると、中部ブレイジの難民キャンプでは、イスラム組織ハマスの戦闘員が小規模な行進を行った。(後略)【1月19日 時事】
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2023年10月以来の戦闘の印象としては、ハマスは壊滅的・・・に近いような大きな打撃を被り、イスラエルは多大な民間人犠牲を出しながらハマスを徹底的に叩いた・・・・というものですが、少なくとも表向きの当事者の主張はそうした印象とは異なるものもあります。
TVニュースで見ると、ハマス構成員は自分たちの抵抗がついに勝利した・・・と総括しています。上記記事の“ハマスの戦闘員が小規模な行進”というのもそうした主張のあらわれでしょう。
一方、多大な犠牲を強いられたガザ住民がどのように考えているのか・・・以前からハマスの支持率はガザ地区ではヨルダン川西岸地区より低いといったこともありますが、TVニュースでの住民インタビューではハマス支持の声もあります。
日本的な感覚では、これだけの犠牲を出したことの批判がなぜハマスに向かわないのか不思議でもありますが、そこは長年のイスラエルによって強いられてきた苦難もあっての話でしょうから、なかなか外部の人間には難しいところでもあります。
もう少し時間がたてば、ガザ住民のハマスへの「評価」も明らかになってくると思われます。
イスラエルにあっても、人質の家族、ハマス奇襲犠牲者の遺族など、立場によって今回停戦への評価は異なりますが、国内右派にはハマスを根絶やしにすることなく停戦に応じたことへの批判が強く、極右政党「ユダヤの力」を率いるベングビール氏は「ハマスへの降伏」と評し、政権を離脱しています。(ネタニヤフ政権の崩壊には至っていません)
****プラカードには「大虐殺」…道路に座り込み 停戦合意反対デモ エルサレム****
エルサレム中心部。座り込んで道路をふさぐ若者たちを警官隊が抱えて運び出す。
イスラエルとイスラム組織「ハマス」が停戦合意したことに対し抗議するため、若者を中心におよそ300人が集結した。
掲げるプラカードには「テロリストの解放 大虐殺」と書かれている。停戦合意にはハマスの人質解放と引き換えにイスラエルが拘束しているパレスチナ人の釈放が含まれている。【1月18日 ABEMA Times】
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****ガザ「6週間の停戦合意」歓喜の中、右派や遺族は屈服同然と抗議****
<イスラエルとイスラム組織ハマスが停戦で合意した。人質解放に各地で人々が歓喜に沸くなか、エルサレムでは右派や犠牲者遺族、残る人質の家族らが抗議活動を展開>
(中略)ガザとイスラエル各地で人々が歓喜に沸くなか、エルサレムでは右派や犠牲者遺族、残る人質の家族らが「屈服同然」「犠牲者の命を軽んじるな」と抗議し、警察に取り押さえられる場面も。【1月20日 Newsweek】
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****イスラエル極右閣僚、停戦合意発効前に辞任 残りの人質の解放は「武力」で****
イスラエルとイスラム組織ハマスとの間で成立したパレスチナ自治区ガザ地区に拘束されている人質の解放と停戦をめぐり、イスラエルのベングビール国家安全保障相は19日、停戦合意が発効する直前に辞任を表明した。
ベングビール氏は残りの人質について「武力行使」によって解放すべきだと述べた。 ベングビール氏はイスラエル人3人の解放を歓迎しつつ、人質の解放につながった取引を「降伏」に例えた。
ベングビール氏はX(旧ツイッター)への投稿で、イスラエル人3人の解放を喜びつつ、「我々は降伏ではなく、武力行使や燃料供給の停止、人道援助の停止によって、残りの人質が戻ってくることを期待する」と述べた。
ネタニヤフ政権からはベングビール氏のほかにも2人の閣僚が離脱した。こうした動きは、ネタニヤフ首相の連立政権を著しく弱体化させるとみられるが、必ずしも政権崩壊につながるわけではない。
これとは別に、やはり極右のスモトリッチ財務相は、人質解放と停戦をめぐる合意には反対する姿勢を示してきたものの、人質3人の帰還については「喜びでいっぱいだ」と述べた。
スモトリッチ氏は辞任していないものの、停戦合意の第1段階が終わった後に戦闘を再開しない場合には辞任すると強硬な姿勢を維持している。【1月20日 CNN】
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アメリカ・トランプ大統領は就任前からイスラエルに停戦を求めていましたが、停戦でパレスチナを安定させ、そのうえでイスラエルとサウジアラビアの関係を正常化させ、対イランの戦線を強化する・・・という目論みでしょう。
ネタニヤフ首相は、停戦を求めるアメリカのトランプ大統領と、反発する政権内の極右勢力との板挟みになり、苦しい状況が続きます・・・その停戦後のパレスチナ情勢の不安定さについては、1月16日ブログ“パレスチナ 19日から6週間の停戦合意 今後については不透明”でも取り上げたところです。
“ネタニヤフ氏は治安閣議で、安全保障の要求が満たされず、第2段階の交渉が決裂した場合、米国の協力の下で戦闘を再開できると述べた。”(米ニュースサイト「アクシオス」報道)【1月18日 毎日】
【救援物資搬入が本格化 遺体捜索もこれから】
とりあえず現状ではガザ救援が本格化しています。
****「ガザを助けろ」 トラック数百台、イスラエルとハマスの停戦合意で支援物資搬入が本格化****
イスラエルとイスラム原理主義組織ハマスの停戦合意が発効した19日、パレスチナ自治区ガザに人道支援物資を搬入する動きが本格化した。ガザとエジプトの境界にあるラファ検問所には物資を積んだトラックが長蛇の列を作った。運転手らは「早くガザの人々に届けたい」などと、入域許可を待ちきれない様子で話した。
産経新聞助手が19日、エジプト政府主催のプレスツアーに参加してラファ検問所を訪れ、取材した。
首都カイロからバスで8時間超走り、検問所の前に到着した。ゲートの前には確認できただけでも150台以上のトラックが並び、みな燃料や毛布、食料、おむつなどを満載していた。
「エジプトの非政府組織(NGO)による支援物資の小麦粉40トンを積んで、10日前から待っている」。検問所の近くで会った運転手のアハメドさん(26)はそう話し、「1年以上も流血の侵略に苦しめられ、困窮しているパレスチナ人に必要な物資を運べることを、エジプト人として誇りに思う」と続けた。
ガザと境界を接するエジプトはイスラム教スンニ派が人口の9割を占め、ガザの人々への同胞意識が強い。イスラエルのガザ攻撃を受け、米国企業の製品に対する不買運動も起きた。
エジプト政府によると、この日は330台のトラックが、ラファからイスラエルの管理するケレムシャローム検問所に向かった。ロイター通信によると、バイデン米大統領は「トラック数百台が市民を助けるためにガザに入った」と述べた。
ガザの人口は推定220万人。報道によると、戦闘期間中には10日間でトラック9台しか入域できないときもあった。国連は一時、必要な物資の9%しか届いていないと推計した。
ガザに向かった運転手は電話取材に、「イスラエルは以前、車体や積載物資をすべて検査していたが、きょうは簡易になっている」と話した。
負傷してエジプトの病院で治療を受けていたというガザ出身のカメラマン、アリさん(30)は「両親と2人の兄弟はイスラエル軍に爆撃されて死亡した。ハマスは今もガザでは人気がある。ハマスに拘束されていた人質の居場所を住民が漏らさなかったことが、それを証明している」と話した。【1月20日 産経】
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最後の話は、ハマスを支援しているからか、ハマスの報復が怖いためかはわかりません。
停戦合意では1日当たりトラック600台分の支援物資を搬入するとされていますが、ロイター通信は21日、19日からの3日間で人道支援物資を積んだ2400台以上のトラックが入ったと伝えています。
食糧に加え、住宅、医療、インフラ・・・問題は山積です。そもそも、遺体の捜索すらこれからです。
一連の戦闘で約4万7000人が死亡したとされていますが、停戦が成立して捜索が始まれば数字は更に増えると予想されます。
****ガザ、約4万7000人死亡 2092世帯が家族全員殺害 現地当局****
パレスチナ自治区ガザ地区の広報当局は21日、2023年10月に始まった一連の戦闘での被害をまとめた統計を発表し、約4万7000人が死亡したほか、約1万4000人が行方不明だと明らかにした。犠牲者の7割は女性と子供で、2092世帯は家族全員が殺害されたとしている。
発表によると、戦闘が始まってから生まれた子供のうち214人が死亡した。栄養失調では子供44人が死亡したほか、3500人の子供が今後、死亡する恐れがある。また、子供7人を含む計8人が凍死した。両親もしくは片親がいない子供は3万8495人に上るという。
死者のうち1155人は医療関係者で、報道関係者も205人に上った。ガザ地区の88%が破壊され、被害額は380億ドル(約6兆円)以上と推定している。
ガザ地区では19日、42日間の停戦が始まり、がれきに埋もれた行方不明者の捜索も始まっている。戦闘継続中は探せなかった遺体が続々と見つかっており、死者数は今後も増える可能性が高い。(後略)【1月22日 毎日】
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【イスラエル軍、ヨルダン西岸地区での攻撃開始】
ここにきて「事態の不安定さ」が露見しているのが、ヨルダン川西岸地区です。
****イスラエル軍がヨルダン川西岸で「大規模作戦」50人近く死傷 西岸での軍事作戦激化か****
イスラエル軍は、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸で大規模な軍事作戦を行い、これまでに少なくとも9人が死亡しました。イスラエル軍は今後、ヨルダン川西岸での軍事行動を強めるとの見方も上がっています。
イスラエルの首相府は21日声明を出し、「テロ撲滅のため」としてパレスチナ自治区ヨルダン川西岸のジェニンで「大規模かつ重要な軍事作戦を開始した」と発表しました。
中東アルジャジーラによりますと、これまでに少なくとも9人が死亡、40人がけがをしたということです。
ジェニンには、イスラム組織ハマスやイスラム聖戦などの拠点があるとみられ、イスラエル軍は今後、こうした拠点の掃討に向けて軍事行動を強める可能性が指摘されています。
イスラエル軍はこれまでも占領するヨルダン川西岸全域で軍事作戦を行っていて、おととし10月のハマスによる奇襲攻撃以降、800人以上のパレスチナ人が死亡したとみられています。【1月22日 TBS NEWS DIG】
イスラエルの首相府は21日声明を出し、「テロ撲滅のため」としてパレスチナ自治区ヨルダン川西岸のジェニンで「大規模かつ重要な軍事作戦を開始した」と発表しました。
中東アルジャジーラによりますと、これまでに少なくとも9人が死亡、40人がけがをしたということです。
ジェニンには、イスラム組織ハマスやイスラム聖戦などの拠点があるとみられ、イスラエル軍は今後、こうした拠点の掃討に向けて軍事行動を強める可能性が指摘されています。
イスラエル軍はこれまでも占領するヨルダン川西岸全域で軍事作戦を行っていて、おととし10月のハマスによる奇襲攻撃以降、800人以上のパレスチナ人が死亡したとみられています。【1月22日 TBS NEWS DIG】
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“西岸での作戦開始に際し、イスラエルのネタニヤフ首相は各地の親イラン勢力に対し、「組織的に断固として立ち向かう」と述べた。ハマスは西岸にも戦闘員を有しているとされ、西岸でのイスラエルとの闘争拡大を呼びかけた。(後略)”【1月22日 産経】