孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ウクライナ  トランプ大統領の仲介は? プーチン大統領との思惑のズレも

2025-01-31 23:24:02 | 欧州情勢

(【1月29日 NHK】 ロシア軍侵攻開始から3年弱 東部でロシア軍の支配を許しているとは言え、大国ロシア相手にウクライナはよく持ちこたえている・・・・という印象も。一方のロシアはこの間、北欧のNATO加盟、アルメニアなど同盟国の離反、シリア・アサド政権崩壊等々、世界戦略的に失ったものが大きいです。)

【トランプ大統領 「24時間で」云々からやや慎重姿勢に】
トランプ大統領就任で世界が注目している問題の一つが中国やカナダ・メキシコ、更には日本を含めたその他の国々へに対する関税の扱い・貿易戦争の行方。

これについては、トランプ大統領は不法移民や薬物の流入を理由として、明日2月1日からカナダ、メキシコからの輸入品に25%の関税を課すとしており、その成り行きが注目されています。

もう一つ、トランプ大統領就任で大きな動きがあるのでは・・・と思われていたのがウクライナ問題。大統領選挙中は「私なら24時間で停戦させる」と豪語していましたので。

もし、本当に早期決着させるというなら、ウクライナへの武器供与停止を圧力にして、ロシア側が望む内容を丸呑みさせるつもりでは・・・との懸念も。

ただ、就任前からトランプ氏にはやや慎重姿勢も見え始め、就任後の今現在も大きな動きは表には出てきていません。

そうした状況で、トランプ大統領側からプーチン大統領への交渉に向けた圧力も出ています。

****トランプ氏、ウクライナ早期停戦へ仲介外交始動 交渉拒否すれば追加制裁とロシアに圧力****
トランプ米大統領は就任2日目の21日、ウクライナ侵略を続けるロシアのプーチン大統領が停戦に向けた交渉を拒否した場合、ロシアに追加制裁を科す可能性が高いと述べた。ロイター通信が伝えた。

プーチン氏との早期会談を目指す一方で、中国の習近平国家主席にも停戦へ協力を求めたという。侵略開始から丸3年となる2月を前に、圧力をちらつかせながら関係国に早期停戦を迫るトランプ仲介外交が始動した。

トランプ氏は「もうすぐプーチン氏と話す」とホワイトハウスで記者団に語った。追加制裁の詳細には言及しなかったが、トランプ氏に財務長官に指名されたベセント氏は、ロシアの石油産業を標的にしたものになる可能性を示している。

トランプ氏は同国に影響力をもつ中国に対しても、「(停戦への)取り組みが不十分だ」と習氏に直接圧力をかけたという。17日に習氏と電話会談している。

トランプ氏はまた、ウクライナに対する米国の武器支援の問題についても検討中だと指摘。武器支援を巡っては欧州連合(EU)がもっと努力すべきだと欧州にも注文を付けた。

当初、トランプ氏は昨年の米大統領選で、ウクライナ戦争について「私なら24時間で停戦させる」と豪語していた。これに対し、即時停戦はロシアによるウクライナの一部占領を固定化させるとの懸念が専門家から上がる中、今月7日になって「6カ月ほしい」と目標を修正。20日の就任演説でもウクライナについて言及しなかった。

ウクライナ戦争の長期化に伴うサプライチェーン(供給網)の混乱は、米国民が不満を募らせる物価高の一因で、来年に上下両院の中間選挙を控えるトランプ氏の懸念材料となっている。【1月22日 産経】
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【リークされた「ウクライナ戦争を終結させるための100日計画」なるもの】
トランプ大統領がどういう案を考えているのか・・・・“ウクライナにロシア側が望む内容を丸呑みさせる”のに等しいような「ウクライナ戦争を終結させるための100日計画」もリークされています。

****トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当ならロシアがほぼすべてを手に入れる****
<「停戦」だ「平和」だと言っても、トランプ2.0の世界では、やはり侵略者だけがトクをするのか>

ドナルド・トランプ米大統領がロシアとウクライナの戦争を100日で終結させるために検討中、とされる計画がリークされた。

1月26日、ウクライナの『Strana』紙が、数カ月で戦争を終結させるとする計画の詳細を発表し、ウクライナの「政治・外交界」で議論されてきたと書いた。

戦争終結に向けたトランプ大統領の100日計画とされるものをリークすれば、和平交渉の成功を危うくする可能性がある。ゼレンスキーかロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、交渉前から合意案の一部を拒否する可能性があるからだ。

トランプ大統領の「ウクライナ戦争を終結させるための100日計画」には、1月下旬〜2月上旬にプーチン大統領と電話会談を行い、2月か3月にプーチンとゼレンスキー両者と会談し、4月20日の復活祭までに停戦を宣言することが盛り込まれている。

その時点でウクライナ軍はロシア領のクルスクから撤退し、国連の国際平和会議(IPC)が戦争終結のための両国の仲介作業を開始する。

合意された戦争終結の条件に関する宣言は5月9日までに発表し、その後、ウクライナ政府には戒厳令の延長や動員を行わないよう要請する。

合意案はウクライナのNATO加盟を禁じ、中立を宣言すること、2030年までにウクライナがEUの一員となること、EUが戦後の復興を支援することなどが盛り込まれている。

ウクライナは自国の軍隊の規模を維持し、アメリカから軍事支援を受け続けることができる。さらに「ロシアによる占領地を奪還しようとする軍事的・外交的試みを放棄」し、「占領地に対するロシア連邦の主権を公式に承認」する。

西側の対ロ制裁の一部解除についても言及され、終戦協定の遵守状況によっては3年以内に解除される可能性もある。ロシアの石油・ガスのEUへの輸出制限は解除される代わりに特別関税を課し、その収入はウクライナの復興に充てられる。

ゼレンスキーの事務所は、この和平案が合法的なものであることを否定している。ウクライナ大統領府のアンドリー・イェルマク室長はテレグラムで、メディアが報じた100日間の和平計画は「現実には存在しない」と書いた。また、このような報道はロシア人によって流布されたものであることが多いと付け加えた。【1月28日 Newsweek】
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占領地に対するロシア連邦の主権を公式に承認、ウクライナ軍はロシア領のクルスクから撤退、ウクライナのNATO加盟を禁じる・・・・ほぼロシアの望むところでしょう。

こうした内容の「ウクライナ戦争を終結させるための100日計画」なるものが本当に存在するのか、トランプ大統領がこうした内容での停戦を考えているのか・・・そこらはわかりませんが、これであればロシア側が交渉を拒むこともないように思えます。

あとは、ゼレンスキー大統領にどうやってこれをのませるか・・・だけ。

【長期的解決を図りたいプーチン大統領 とりあえずの停戦にしか関心がないトランプ大統領 思惑のズレも】
一方で、プーチン大統領はトランプ大統領との早期会談を望んでいるものの、問題の長期的解決を図りたいプーチン大統領と、とりあえずの停戦にしか関心がないトランプ大統領の間には認識・対応に差があるとの指摘も。

プーチン大統領にとってはシリア・アサド政権崩壊も大きく影響しているとも。

****トランプ氏との会談を切望するプーチン大統領のジレンマ すれ違う着地点と盟友の失脚****
(中略)盟友アサド氏の失脚はプーチン氏の心境を揺さぶり、激変する中東情勢は、ウクライナ侵攻をめぐるプーチン大統領とアメリカ・トランプ新政権との交渉にも影響を与えている。
  
トランプ氏は大統領就任直後にもプーチン氏との電話会談を行うと見られていたが、まだ実現していない。プーチン大統領は繰り返しラブコールを送るが、2人の間で目指す「停戦」のあり方は、決定的に食い違ったままだ。(ANN取材団)

■トランプ氏の停戦プランは「とりあえず止めるだけ」
「チャンスは一度きりだと思ってほしい。失敗は、より深刻なエスカレーションを招くことになる」
トランプ氏のアメリカ大統領就任を控えた1月初旬、ウクライナ問題についての協議にあたっていた ある米ロ外交筋はそうトランプ・チームに伝えた。

トランプ氏は、プーチン大統領を交渉のテーブルに着かせるため、ロシアに対してこれまでの西側諸国のスタンスから大幅に譲歩する姿勢を見せる。現在占領しているウクライナ東部の大部分の実効支配を認め、プーチン氏が神経をとがらせるウクライナのNATO=北大西洋条約機への加盟についても一定期間保留するなど、ロシアにとって悪くない条件を並べる。

ただ、ゼレンスキー大統領によれば、当初からプーチン氏が求めているのは、東部4州全域とウクライナのNATO非加盟の約束、ウクライナ軍の極端な削減、そしてゼレンスキー大統領の辞任などだから、トランプ氏の提案でさえもプーチン氏が納得できるものではない。

「細かい条件を詰めていくような煩雑な交渉にトランプ氏は、興味はない。互いの攻撃を止めたら、あとはロシアとウクライナや関係国で好きに話をまとめてくれという態度だ」
大統領就任前からトランプ・チームと接触を続けるクレムリンに近い関係者は、トランプ氏の姿勢をこう指摘する。

プーチン大統領を何としても交渉テーブルに着かせるためトランプ氏は、今度は経済制裁を強め、中国やインドなどロシアの下支えとなっている第三国からも停戦圧力をかける。まさしくアメとムチだ。

前述の関係者は続ける。
「トランプ氏は、『解決』を目指してはいない。とにかく互いの攻撃が止まれさえすればいいという考え方だ」
交渉の間、短期間でも戦闘が止まりさえすれば良いと考えているというのだ。

■プーチン大統領は対話を急ぐも目指すは「長期的解決」
プーチン大統領は盛んにトランプ氏に対話を呼びかける。
トランプ氏の就任式を数時間後に控えた1月20日には国家安全保障会議を開き、冒頭でわざわざトランプ氏を持ち上げた。

「新しいアメリカの大統領とそのチームは、前任者(バイデン氏)によって中断されたロシアと直接的な接触を回復したいという」
「この姿勢を歓迎し、次期大統領の就任を祝福します。私たちは、ウクライナの紛争に関してもアメリカの新政権との対話に前向きだ」

トランプ氏とウクライナを巡り協議したいと前のめりの発言をする一方で、プーチン大統領はトランプ氏が想定している「短期的な停戦」については、強い拒否感を示す。

「最も重要なのは根本的な危機の原因を排除することだ。何度も話してきたが、それが最も重要だ。私はもう一度強調したい。目標は、短期間の停戦や、その後の紛争継続を目的とした軍備再編のための一時的停戦ではなく、長期的な解決であるべきだ」
「我々はロシアとロシア国民の利益のために戦い続ける。それが『特別軍事作戦』の目的だ」

■トランプ氏の“方針転換”―アサド政権崩壊で「ロシアは弱っている」
当初、トランプ氏は大統領就任したらウクライナへの支援を止め、ロシアの主張を全面的に認め、制裁も解除するのではないか、トランプ氏の「停戦」とは事実上ロシアの勝利を意味するという楽観的な(ウクライナにとっては極めて悲観的な)見方さえ一部であった。

しかし、そうではないことが明確になりだしたのは昨年末あたりからだ。

去年12月7日、ロシアのプーチン大統領が後ろ盾となってきたシリアのアサド政権の崩壊を目の当たりにしたトランプ氏は翌日、「ロシアは弱っている」とSNSに投稿した。ウクライナへの侵攻で「ロシアの兵士60万人近くが死傷した」とも指摘していて、弱ったプーチン氏にもう一押しすれば「短期的な停戦」を受け入れざるを得ない絶好のチャンスだと直感したのだろう。

アサド政権の崩壊にはクレムリンに近い関係者も焦りを見せる。
「トルコは、シリアの『トルコ化』を進めている。それだけではない。周辺国への影響力もますます強めていて、ロシアは中東から押し出されている」
シリアにあるロシア軍基地の行方も懸念される。「フメイミム空軍基地」と「タルトゥース海軍基地」はロシアにとってアフリカへの重要な拠点だ。

(中略)ロシアとしては仮にウクライナ東部を占領できても、同時に中東とアフリカへの影響力を失えば、総合的にはマイナスだ。

経済面でも今年に入ってすぐに「ガスプロム」や「ズベルバンク」といったロシアで最大規模のエネルギー会社や銀行が大量解雇を始めている。

クレムリンに近い関係者によれば、今後の経済情勢を憂うエリート層の多くはウクライナについては早期の交渉を望んでいるという。プーチン大統領も条件次第では、少しでも早く停戦に持ち込みたいのが本音だろう。

■国家はもろい…若きプーチン氏のトラウマ
では、追い込まれているにもかかわらず、なぜプーチン氏は頑なに「短期的な停戦」拒否するのか。
最大の理由は、ウクライナ軍によるロシア西部クルスク州の一部占領だ。

欧米の情報によれば、ロシア軍は、大量の北朝鮮兵士を投入しているが、ウクライナが高台を制圧しているため、容易には奪還できないとみられている。

この状況で交渉テーブルに着き、前線を凍結することは、プーチン氏にとってリスクが大きい。第二次世界大戦以来80年間ではじめてロシア領を外国に軍事占拠されるという事態を固定化しかねない。土地を追われた住民たちも、「ロシアは私たちのために何をしているのか?」と連日声を上げ、不満は限界に達しつつある。

また、プーチン氏はある「トラウマ」を抱えている。
KGBのスパイだった1989年に赴任先の東ドイツで「ベルリンの壁」の崩壊を目の当たりにし、「東ドイツがなくなることなど想像もしていなかった」と当時を振り返っている。(中略)

プーチン氏にとって「国家」はかじ取りを誤ればすぐに崩壊してしまうもろい存在だ。アサド政権の崩壊は、このトラウマを再び呼び起こしたようだ。(中略)

改めてシリアの現状を目の当たりにしたプーチン氏が「中途半端な停戦は命取りになる」と考えたとしてもおかしくない。だからこそ「根本的な危機の原因を排除すること」が重要だと繰り返し、「短期的な停戦」に拒否反応を示す。(後略)【1月31日 テレ朝news】
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上記記事の指摘があたっているなら、ウクライナ軍によるロシア西部クルスク州の一部占領は効果があったということにもなります。

ウクライナ軍のロシア領への侵攻当初、この作戦は非常に不評でした。「いったいいつまでウクライナが持ちこたえられるというのか?」「戦力分散でウクライナ国内の東部戦線が更に悪化するのでは?」と。私個人もそうした印象。

実際、後者の東部戦線は現在極めてウクライナ軍に不利になっています。
ロシア西部クルスク州の方は、自らの命を顧みない北朝鮮兵士の投入もありましたが、ロシア軍の奪還作戦で支配地を狭めながらもなんとか持ちこたえています。

このまま持ちこたえることができれば、ロシアとの今後の交渉で重要なカードにもなりえます。

プーチン大統領の「トラウマ」・・・そういう心の内、頭の中まではわかりません。シリア・アサド政権崩壊がロシアにとって手痛いものであるのは間違いないですが、「トラウマ」云々はどうでしょうか?

【本気でノーベル平和賞望む? そのためにはウクライナ停戦は必須】
ところで、オバマ元大統領への対抗意識もあって、トランプ大統領は本気でノーベル平和賞を欲しがっているようです。

パレスチナ・ガザ地区がとりあえずの停戦に至った今、次はウクライナ停戦。
実績を作るためには短期のとりあえずの停戦でも何でもかまわない・・・あとはロシア・ウクライナで話し合ってもらえば・・・といったところでしょうか。

****ノーベル平和賞を意識? トランプ大統領の「平和」への本気度は?****
23日、ダボス会議にオンラインで参加し、「ガザ地区の停戦は、我々なしには実現しなかった」と“自らの重要な役割”を強調したトランプ大統領。 

CNNによると、来月4日にホワイトハウスでイスラエルのネタニヤフ首相との会談が予定されているという。  これまで一貫してアメリカファーストを掲げてきたトランプ大統領だが、2期目を迎え、平和への意欲を見せ始めている。 

「非常に重要なことの一つはプーチン大統領とすぐに会って、(ウクライナとの)戦争を終わらせたいということ。それは経済やその他の観点からではなく、何百万人もの命が無駄になっているという観点からだ」(トランプ大統領) 

アメリカとロシアの間では核軍縮条約「新START」が結ばれていたが、2023年、ウクライナへの侵攻が長期化するなかでロシア側が履行停止を表明。2026年に失効を迎える中、トランプ大統領は「非核化が可能か見極めたい。十分可能だと思う」と意欲を見せている。  

一方、ロシアのプーチン大統領は24日、国営メディアのインタビューで、トランプ大統領とは「仕事上の事だけではなく信頼関係も築いてきた」と述べ、ウクライナ問題や経済問題などあらゆることを話したいと語っている。ノーベル平和賞を意識した動きではないかという声もある中、トランプ大統領の真剣さに注目が集まっている。  

アメリカ現代政治外交が専門の前嶋和弘教授はガザ地区の停戦について「『ガザ地区の停戦は“我々なし”には実現しなかった』というセリフは間違ってはいない。というのも、バイデン前大統領がお膳立てをして、その後、トランプ大統領の就任に合わせてネタニヤフ首相が停戦という“プレゼント”をしたからだ。とはいえ恒久的な停戦はなかなか難しいだろう」と説明。  

ロシアの思惑については「ロシアとしてはトランプ大統領とうまく話し合って、自分たちに有利なように進めたいのだろう。ゼレンスキー大統領のことは頭にないのでは」と分析した。  

核兵器削減については「中国がポイントになる」と指摘した。 「核兵器はアメリカ・ロシアが多いが、制限条約に入っていない中国が特に中型核兵器を増やしている。そのため、停止中の新STARTを戻し、さらに中距離核兵器の制限条約にも加入させる。これはぜひやってほしい」  

民主党政権では実現しなかったがトランプ大統領ならばできるのか? 「力技でやってほしい。ウクライナ侵攻でロシアとアメリカの関係は悪くなっているため難しいが、ウクライナがうまく動いていけば可能性はある。実はダボス会議ではウクライナと核の話がリンクしたのだ」  

トランプ大統領がノーベル平和賞を受賞する可能性については「ノーベル委員会はトランプ大統領のような人は大嫌いだが、核問題はどんどん進めてもらいたい。世界が平和になるのはすごく良いことなので、ノーベル平和賞でも何賞でもあげていい」と述べた。 【1月31日 ABEMA Times】
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