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昨日TVで中国の一人っ子政策のひずみを取り上げた番組をやっていました。
地域によっては、特に農村部においては、生まれる子供の男女が女1に対し男が1.3を超える異常な数値になっているとか。
地方では男の“跡取り”を希望する風習が根強く、出産前に女とわかると中絶してしまう、生まれてからでも“捨ててしまう”といったようなことが横行している結果だそうです。
女性の人権というか生存権の問題ですが、このような男女比のアンバランスは一方で成人後は今度は男性にとっては嫁不足をもたらし、人身売買や誘拐で女性をよそから連れてくるといった事態にもつながるようです。
中国政府は女性しか子供がいない場合、親を扶養する負担を援助するなどの措置もとっているようですが、農村部・地方ではなかなか事態は好転しないようです。
一人っ子政策については、いびつな人口構造がもたらす将来の深刻な高齢化社会の問題、一人っ子が甘やかされて育つ“小皇帝”の問題、二人目以降を戸籍にいれず隠れて育てる“黒孩子”(闇っ子)の問題等が以前から指摘されています。
広西チワン族自治区で起こった一人っ子政策にからむ暴動も広く伝えられているところです。
それまであまり一人っ子政策が厳しく行われてこなかったこの地域で、上層部からの指摘もあり地方政府が強権的・暴力的に女性の不妊手術、年収を大きく超えるような違反金の取立てを住民に迫ったそうです。
不妊手術のために力づくで女性を連れ去る。
罰金が払えないときは家財道具・家畜を持っていくようなことも日常茶飯事だったそうです。
これを怒った住民数千人が役所を包囲し、放火するなどの騒ぎになり、またこの鎮圧に武装警察部隊が出動し住民を殴打しているなど・・・。
一人っ子政策とは関係ありませんが、重慶で花を売っていた夫婦を立ち退かそうと市職員がスコップで夫の頭を殴り、これがきっかけになって数千人規模の住民と警官隊の衝突があったことも昨日新聞に掲載されていました。
政策云々の以前に、まるで三国志か水滸伝の世界みたいで溜息が出ます。
長い歴史的視野で眺めれば、専制国家の圧政、外国列強の侵略、軍閥の割拠、全土を覆う戦乱等の困難のもとで長く食うや食わずの生活を余儀なくされていた中国の民衆が、現在の国家体制になって、大躍進政策や文化大革命といった問題を経験しつつも、とにもかくにも十数億の民が食べられるようになったこと、都市部・沿岸地域では日本などと遜色ない消費文化が見られるようにまでなったことは評価すべきかと思います。
しかし、急速な経済発展の裏では深刻な闇がまだ多く残されていると思わずにはいられません。
中国は何回か旅行したり立寄ったりしていますが、公共道徳とかサービスの精神とか、確かに以前に比べれば改善されてきたように感じます。
しかし、最近報道された医薬品・食品の安全性の問題や、いわゆる拝金主義的風潮の広まり、今回のような地方での騒乱などを見ると、経済・社会の発展に伴うべき精神的なモラルみたいな面が欠けているように感じられます。
日本で言えば仏教の教える慈悲の心、儒教的な秩序など、さらには物質的なものに対する無常感、恥や名誉を重んじる風潮など、西洋世界で言えばキリスト教の影響・・・でしょうか。
社会の一人ひとりの行動を規律するなんらかの価値観・規範が存在しないと、経済的発展・社会の変化は「自分さえよければ」「拝金主義」「弱肉強食」といった世界になってしまいがちです。
中国では価値基準として本来共産主義的理念があるはずです。
やはり昨日、北京の水不足を伝えるレポートも観ました。
生活水準の向上、オリンピックに向けた工事で今北京は水不足が問題になっているとか。
工場などの水を多量に消費する施設を監視し、市民に節水を呼びかける水務局の女性職員の奮闘振りがメインでしたが、一番印象に残ったのは貯水量が減少したダム周辺の農村の問題。
農民が農業用水を多量に必要とするスイカの栽培などのためにダムの水を使えるように村長に掛け合います。
村長は「ダメだ。首都北京の水を確保するためには、我々の小さな犠牲は我慢しよう。みんなでオリンピックを成功させよう。」、カメラが回っているその場で反対する者はいませんが、多分納得していない農民も多かったのでは。
その一方で北京では、豪華なマンションを購入した住民が2箇所あるバスルームを誇らしげにカメラに紹介しています。庭の木々には大量の水が。
ダムの水利用の問題にしても、昨今よく伝えられる土地収用に関する住民とのトラブルにしても、共産主義というよりはご都合主義的な国家権力の行使みたいな気もします。
最近地方幹部の間で風水師をお抱えにして、自己の出世や政敵の失脚を画策することに夢中になる者が多いとか。
さすがに党中央は、「一部党員、幹部の中には党に対する精神が揺らぎ、マルクス・レーニンを信じず鬼神を信じている」と批判しているそうですが。
とにかく隣人、それも図体のでかい隣人ですから、うまくつきあっていける国になってほしいものです。
まあ、日本もやれ社保庁とかコムスンとか嘆かわしい話にはことかかない訳で、えらそうなことを言っても「目くそ、鼻くそ」の類である自戒の念は必要でしょう。
そう言う話は別にして、北京は大昔ツアーでまわったのと、最近ではトランジットを利用してちょっと覗いただけ。
今年か来年にでもきちんと旅行してようかな・・・。
写真はご存知上海。
外灘対岸の浦東地区は昔は建設中の何もないところでしたが、今はごらんのとおりの未来都市というか何と言うか様変わりです。
あまりいい趣味には思えませんが、好みの問題でしょう。
http://4travel.jp/traveler/azianokaze/album/10022073/