孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

タイ前首相の資産凍結 旅行者には見えない世界

2007-06-12 16:04:31 | 身辺雑記・その他


タイの前首相タクシン氏の国内資産凍結のニュースを目にし、その金額に正直驚きました。
21銀行口座で529億バーツ(約1850億円)だそうです。

1850億円という資産は日本でもとんでもない大金ですが、タイの物価水準・所得水準を考えれば、タイ国内では1兆円に近い金額のイメージではないでしょうか?
タクシン前首相が昨年9月の軍部クーデターで追放されたことは知っていましたが、こんなお金持ちであることは知りませんでした。

この資産はタイ最大の通信グループ株を売却して得た利益約2560億円の“一部”だそうで、この売却益に対する課税が約8700万円しかなされなかったことが国民の批判を浴び、その後の議会解散、総選挙、野党の選挙ボイコットなどの政治的混乱そしてクーデターへと展開するところとなりました。

改めてタクシン氏についてネットで少し調べてみると、もともとは警察官出身(この警察との関係がその後随分生かされたみたいです。)ですが、アメリカに留学して刑事司法博士を取得しています。
以前からの副職で巨額の富を稼ぎますが、その後不動産事業、警察向けコンピュータ貸出事業で巨額の負債を抱えます。
しかし、携帯電話事業が大当たり。タイ一番の富豪になったそうです。
なおこの間、身分はずっと警察官のまま。警察を辞めたのはほんの20年ぐらい前です。
警察官の副職で大富豪になってしまうこと、何回かの失敗にもめげず立ち直るところはやはりただ者ではないと言うべきでしょうか。

彼の政治は、医療制度改革(誰でも1回30バーツの低額で病院受診できる制度)や一村一製品運動、麻薬・風俗店取締り強化など地方・低所得者層には非常に受け入れられたようです。
失脚直前でもバンコクなど都市部の比較的裕福な層からの批判にもかかわらず、地方の農民等には支持されていたようです。
昨年2006年の1月にチェンマイを旅行しましたが、チェンマイはタクシン氏の地元です。
「いい道だね」とガイドに言うと「タクシンのおかげだ。」と答えていました。
有力政治家の地元の道路が良くなるあたり、日本もタイも同じだね・・・なんて感じました。

一方で、2003年には麻薬一掃作戦と称して、ブラックリスト掲載者を軍隊・警察により強制逮捕・処刑したそうです。
逮捕者は9万人以上、民間人の死者は2500人以上だったそうです。
タイには3回ほど旅行したことがありますが、そんな強権的な政治が行われているとは全く感じられませんでした。
昨年のクーデターにしても、「ヘー、あのタイでねー・・・」なんてピンとこない感じがしたものです。

数日程度の物見遊山の観光客の印象なんて所詮その程度のものです。
通常の観光では社会の抱える問題等に触れることは殆どありません。
ただ、そんな観光旅行でも何らかの馴染みができると、今回のような「タクシン氏の資産凍結」といった片隅の記事、多くの方が気にもとめない記事にふと目がとまったりすることもあります。

写真は2006年正月に旅行したタイ・チェンマイの古寺“ワット・チェディ・ルアン”です。
http://4travel.jp/traveler/azianokaze/album/10049191/

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