(【5月26日 日経】 オーストラリアが危機感を募らせるのも当然でしょう・・・)
【中国 南太平洋の10か国に対し警察活動、安全保障、データ通信の協力を盛り込んだ包括協定を提案】
旧日本軍の激戦地ガダルカナル島を含むソロモン諸島に影響力を強める中国と、これに反発する米・豪の争いについては、5月4日ブログ“ソロモン諸島 米中つばぜり合いの舞台に 中国による軍事基地化を懸念する米豪”でも取り上げました。
中国の進出は更に拡大して、太平洋島しょ国地域の多くの国と警察活動、安全保障、データ通信の協力を盛り込んだ包括合意を求める計画とされています。
****中国、南太平洋10か国に安保・経済協定を提案****
中国が南太平洋の10か国に対し、安全保障や経済面での協力を大幅に拡大する計画を提案したことが25日、AFPが入手した文書で明らかになった。当該国の首脳からは、中国の影響力拡大を懸念する声も上がっている。
入手した文書は、「包括的発展の展望」と題された協定の草案と5か年計画。中国の王毅外相が26日に開始する太平洋諸国歴訪で各国と協議し、30日にフィジーで開く外相会合での承認を目指すとみられる。
中国は10か国に対し、数百万ドル(数億円)規模の援助、自由貿易協定の展望、14億人を抱える中国市場への参入機会提供を提案。見返りとして、各国の警察の訓練、サイバー安全保障への関与、政治的関係の拡大、海洋地図の作成、天然資源の利用拡大を求めている。
南太平洋は1900年代から米国が強い影響力を有しているが、近年は米中の覇権争いが激化。中国は軍事的、政治的、経済的な足がかりの強化を目指しているものの、大きな進展には至っていない。
今回明らかになった一連の協定について、南太平洋諸国では警戒感が広まっている。ミクロネシア連邦のデービッド・パニュエロ大統領は他の当事国首脳に宛てた書簡で、中国側の提案は一見すると魅力的だが、中国に対し「われわれの地域への参入と支配」を許すものだと警告。提案は「不誠実」であり、中国による政治介入、主要産業の支配、通話や電子メールの大量監視が可能になると指摘した。
ミクロネシア連邦は米国と自由連合盟約(コンパクト)を締結しており、南太平洋諸国の中でも米国と特に緊密な関係にある。一方で他の国々は、中国の提案を有益と見なす可能性もある。
10か国のうち、ソロモン諸島はすでに中国との安全保障協定締約に向けた交渉を秘密裏に進めていたことが明らかになっている。流出した協定の草案には、オーストラリアから2000キロ足らずのソロモン諸島での中国海軍駐留につながる可能性もある条項も含まれていた。
中国による今回の提案は、ソロモン諸島との安保協定の主要要素を他の9か国に事実上拡大するもので、米国、オーストラリア、ニュージーランドの懸念を生むことは必至だ。 【5月26日 AFP】
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中国を警戒するミクロネシア連邦については、いかのようにも。
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ロイターが確認した太平洋地域指導者21人に宛てた書簡の中で、ミクロネシア連邦のパニュエロ大統領は、中国と西側の間で新たな「冷戦」を引き起こす恐れがあるため、「事前に決められた共同声明」を拒否すべきと主張するとしている。
パニュエロ氏は、台湾を巡る米中の緊張が高まる中、太平洋島しょ国が地政学的な対立に巻き込まれる危険性を強調。「中国がわれわれの通信インフラ、海洋領土と資源、安全保障の面で支配することによる具体的な影響は、主権への影響とは別に、中国がオーストラリア、日本、米国、ニュージーランドと対立する可能性を高めることだ」とした。【5月25日 ロイター】
ロイターが確認した太平洋地域指導者21人に宛てた書簡の中で、ミクロネシア連邦のパニュエロ大統領は、中国と西側の間で新たな「冷戦」を引き起こす恐れがあるため、「事前に決められた共同声明」を拒否すべきと主張するとしている。
パニュエロ氏は、台湾を巡る米中の緊張が高まる中、太平洋島しょ国が地政学的な対立に巻き込まれる危険性を強調。「中国がわれわれの通信インフラ、海洋領土と資源、安全保障の面で支配することによる具体的な影響は、主権への影響とは別に、中国がオーストラリア、日本、米国、ニュージーランドと対立する可能性を高めることだ」とした。【5月25日 ロイター】
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【モデルはソロモン諸島との協定】
逆に中国との関係強化の推進役となるのがソロモン諸島。中国としてはソロモン諸島との関係をモデルケースとして太平洋島しょ国地域全体に拡大したい意向です。
****中国とソロモン諸島の関係、太平洋島しょ国の手本にしたい=中国外相****
中国の王毅外相は26日、中国とソロモン諸島との関係が他の太平洋島しょ国の手本となることを期待すると語った。
王氏は26日から10日間の日程で、中国が外交関係を持つ太平洋島しょ国8カ国を歴訪する。この日は最初の訪問国のソロモン諸島に到着した。
外務省ウェブサイトに掲載された声明によると、王氏は、ソロモン諸島は中国と外交関係を樹立することで「誠実で信頼できるパートナー」を得たとの考えを示した。ソロモン諸島は2019年に台湾と断交し中国と国交を結んでいる。
ロイターが確認した文書によると、中国は王外相主催の会議を来週フィジーで開催する際、警察活動、安全保障、データ通信の協力を盛り込んだ太平洋島しょ国地域全体の包括合意を求める見通しだ。【5月26日 ロイター】
王氏は26日から10日間の日程で、中国が外交関係を持つ太平洋島しょ国8カ国を歴訪する。この日は最初の訪問国のソロモン諸島に到着した。
外務省ウェブサイトに掲載された声明によると、王氏は、ソロモン諸島は中国と外交関係を樹立することで「誠実で信頼できるパートナー」を得たとの考えを示した。ソロモン諸島は2019年に台湾と断交し中国と国交を結んでいる。
ロイターが確認した文書によると、中国は王外相主催の会議を来週フィジーで開催する際、警察活動、安全保障、データ通信の協力を盛り込んだ太平洋島しょ国地域全体の包括合意を求める見通しだ。【5月26日 ロイター】
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王毅外相は26日にソロモン諸島の首都ホニアラでマネレ外相と会談し、「両国関係を高い水準へ引き上げたい」と強調。マネレ氏は「両国間協力の前途に期待する」と歓迎しています。
王毅外相はソロモン諸島を皮切りに、6月4日までの日程でソロモン、キリバス、サモア、フィジー、トンガ、バヌアツ、パプアニューギニア、東ティモールの8カ国を公式訪問します。
【日本・米豪は軍事基地建設を懸念 中国は否定】
こうした中国の動きに、先日東京で開催されたクアッドの首脳会議でも強い懸念が出されています。
****“経済支援”で影響強める中国 南太平洋・ソロモン諸島では…****
(中略)
こうした中国の行動に対抗することを念頭に、クアッドの4か国は連携の強化を目指しています。
岸田総理 「東シナ海・南シナ海における一方的な現状変更の試みへの深刻な懸念を含め、地域情勢について率直な意見交換を行った」
共同声明では「太平洋島しょ国との協力をさらに強化する」と明記したうえで、岸田総理は「海洋安全保障の分野では地域諸国間の情報共有を促進する。海洋状況把握の新たなイニシアチブを4首脳で歓迎しました」と述べました。
インド太平洋地域の漁業や船の往来の安全を確保するため、人工衛星などを使い海洋状況を監視するシステムを今後5年間かけて構築することを明らかにしました。
この決定に対し、中国外務省の報道官は「小さなグループをつくり、対立を作ることこそ、海洋の平和や安定をおびやかしている」と強く反発しました。【5月24日 日テレNEWS24】
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日本や米豪の、中国はこの地域に軍事基地を建設するのでは・・・との懸念に対し、中国はこれを否定しています。
****ソロモン諸島に基地建設の「意図ない」 中国外相****
中国の王毅外相は26日、訪問先の南太平洋のソロモン諸島で、中国がソロモン諸島に軍事基地を建設する「意図は全くない」と明言した。両国は先月、安全保障協定を締結しており、その目的をめぐって臆測が広がっていた。
王氏は、両国の安保協定は「誠心誠意を込めた公明正大な」ものであり、国際社会の懸念には当たらないと述べた。 【5月26日 AFP】
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何をもって“軍事基地建設”とするかにもよるでしょう。前出【AFP】にあるように、公開されていないソロモン諸島との協定では(リークされた草稿では)中国海軍駐留につながる可能性もある条項も含まれていると指摘されています。
【中国に対抗する豪新政権】
この中国の影響力拡大の直接的影響を受けるのがオーストラリア。
先の総選挙でも争点となり、政権側は「中国の進出を許した」として批判を受け、与党敗北、政権交代の一因ともなりました。
新たに首相となったアルバニージー氏は太平洋島しょ国への支援を強化する方針を表明しています。
また、中国・王毅外相に対抗して、アルバニージー首相はフィジーを訪問しています。
****豪首相、太平洋島しょ国支援強化を表明 中国の攻勢に対抗****
オーストラリアのアルバニージー首相は26日、中国が影響力拡大を図る太平洋島しょ国への支援を強化する方針を表明した。
ロイターは、中国が太平洋島しょ国10カ国との間で警察活動、安全保障、貿易、海洋、データ通信分野の合意を求めるとする共同声明草案を報じた。
アルバニージー氏は「これに対応する必要がある」と言明。スカイに対し、「前政権のように(島しょ国支援を)後退させるのではなく、強化する必要がある」と述べ、労働党による新政権が海洋安全保障などで島しょ国支援強化を公約したことに触れた。
ウォン豪外相は26日にフィジーを訪問し、同国首相と会談する。23日の就任以来初の太平洋島しょ国訪問となる。
一方、中国の王毅外相は、太平洋島しょ国8カ国歴訪の最初の訪問地であるソロモン諸島に到着。来週にはフィジーで太平洋地域外相会議を主催し、5年間の行動計画について合意を求める方針だ。
フィジーのバイニマラマ首相は26日のツイッター投稿で、27日にウォン氏、30日に王氏と会談すると明らかにし、「どの交渉のテーブルでも、最も重要なのはわが国民と地球、そして国際法の尊重だ」とした。【5月26日 ロイター】
ロイターは、中国が太平洋島しょ国10カ国との間で警察活動、安全保障、貿易、海洋、データ通信分野の合意を求めるとする共同声明草案を報じた。
アルバニージー氏は「これに対応する必要がある」と言明。スカイに対し、「前政権のように(島しょ国支援を)後退させるのではなく、強化する必要がある」と述べ、労働党による新政権が海洋安全保障などで島しょ国支援強化を公約したことに触れた。
ウォン豪外相は26日にフィジーを訪問し、同国首相と会談する。23日の就任以来初の太平洋島しょ国訪問となる。
一方、中国の王毅外相は、太平洋島しょ国8カ国歴訪の最初の訪問地であるソロモン諸島に到着。来週にはフィジーで太平洋地域外相会議を主催し、5年間の行動計画について合意を求める方針だ。
フィジーのバイニマラマ首相は26日のツイッター投稿で、27日にウォン氏、30日に王氏と会談すると明らかにし、「どの交渉のテーブルでも、最も重要なのはわが国民と地球、そして国際法の尊重だ」とした。【5月26日 ロイター】
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またオーストラリアは中国を念頭に、ひも付きではないパートナーになると表明しています。
****豪外相、太平洋諸島のひも付きパートナーを否定 中国けん制****
フィジーを訪問しているウォン豪外相は26日、気候変動に関する「世界的な議論をリード」している太平洋島しょ国の声に耳を傾け、ひも付きではないパートナーになると表明した。
オーストラリアも加盟する太平洋諸島フォーラム(PIF)の事務局で演説し、豪州はこれまで気候変動や海面上昇と闘う太平洋島しょ国を軽視してきたと指摘。
オーストラリアも加盟する太平洋諸島フォーラム(PIF)の事務局で演説し、豪州はこれまで気候変動や海面上昇と闘う太平洋島しょ国を軽視してきたと指摘。
しかし、労働党による新政権は気候変動対策インフラへの資金のほか、太平洋地域市民に対する豪州への移住や就労の道を提供するなどの取り組みを強化すると述べた。
また、中国を念頭に「オーストラリアはひも付きで持続不可能な財政負担を強いることのないパートナーになる」と語った。
PIFのヘンリー・プナ事務局長は、豪新政権の特に気候変動に関するコミットメントを歓迎。太平洋地域への豪外交政策に期待を示した。【5月26日 ロイター】
また、中国を念頭に「オーストラリアはひも付きで持続不可能な財政負担を強いることのないパートナーになる」と語った。
PIFのヘンリー・プナ事務局長は、豪新政権の特に気候変動に関するコミットメントを歓迎。太平洋地域への豪外交政策に期待を示した。【5月26日 ロイター】
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キリバスなど海面上昇による水没の危機にある国も含まれていますので、気候変動対策は大きなポイントとなるでしょう。
【豪新政権発足直後に先手を打つ中国】
今回の中国の動きは、オーストラリアの新政権発足に先手を打つ形にもなっています。
****中国、南太平洋で外交攻勢****
外相が8カ国訪問、関与強める 豪州抑え込みで新政権に先手
中国が南太平洋島しょ国での影響力拡大に向けた動きを加速させる。中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は26日から10日間かけ、島しょ国7カ国と東ティモールを訪問する。地域で米豪と中国の対立が先鋭化する中、オーストラリアの新政権発足直後に中国は先手を打って地域への関与強化を打ち出した。(中略)
豪州では21日に総選挙が実施され、政権交代が決まった。「中国が太平洋でより強い影響力を行使しようとしている」。労働党政権のアルバニージー新首相は24日に出席した日米豪印4カ国の「Quad(クアッド)」首脳会議後、こう警戒を示したばかりだった。
選挙戦を通じ、労働党は中国とソロモンの安保協定締結を許したモリソン政権を批判し、地域への関与を深める方針を示してきた。習近平(シー・ジンピン)指導部はこうした動きを警戒。クアッド出席などアルバニージー氏が慌ただしく外交日程をこなす中、豪新政権の機先を制して王氏を派遣する。
王氏はキリバスやトンガも回る。太平洋島しょ国14カ国のうち中国と国交を持つのは10カ国だ。そのうち7カ国を訪問する長期訪問となる。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)はソロモンに加え「キリバスともう1カ国」が中国と安保協定に向けた交渉をしていると報じた。
王氏がこのタイミングで訪問するのは、日米豪印の首脳が24日に中国を念頭に海洋監視を強める方針を確認し、警戒心を強めているためだ。米国との長期対立をにらむ習指導部は西太平洋への影響力拡大を目指している。米同盟国の豪州を抑え込む上で、南太平洋の島しょ国との連携は不可欠とみている。
王氏は東南アジアの東ティモールも訪れる。中国企業が多く進出する同国では中国が年々影響力を強めている。南太平洋の島しょ国と合わせて押さえることで、豪州北部のダーウィンにある豪軍基地に東西からにらみを利かせることができると判断している。
地域の動きに詳しい豪シンクタンク、ロウイー研究所のミハイ・ソラ氏は「王氏の訪問は、この地域での中国の影響力拡大に歯止めをかけたい豪州の動きを阻む目的もある」と指摘する。一方、豪外相のウォン氏は25日、フィジーを26日に訪問し、バイニマラマ首相と会談すると発表した。地域での米豪と中国の勢力争いは今後、激しさを増しそうだ。【5月26日 日経】
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