孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

新型コロナ  感染予防一辺倒からウイルスとの共存へ向けてバランスのとれた対応を

2020-04-24 22:34:59 | 疾病・保健衛生

(米ニューヨーク市で23日、新型コロナウイルスの検査を受けるために並ぶマスク姿の親子【4月24日 朝日】)

【NY抗体検査 感染率21% 致死率は0.5%】
今日、各メディアが一斉に報じているのがアメリカでの抗体検査の結果に関する話題。
今後の新型コロナ対策の方向性に大きくかかわる問題と思われます。

****米NY市住民の5人に1人が新型コロナ感染か、抗体検査で*****
米ニューヨーク州で新型コロナウイルスの抗体検査を無作為抽出で行ったところ、ニューヨーク市の住民の5人に1人以上が感染している可能性があることが分かった。同州のアンドルー・クオモ知事が23日、明らかにした。

実際の感染者数が公式発表を大幅に上回ることを示唆している。
 
米国各州で実施されている外出制限令を解除し、経済活動を再開するためには、抗体検査を含む検査の拡大が重要な手掛かりになると考えられている。
 
抗体を持っている人はすでに新型ウイルスに感染しており、免疫を獲得している可能性がある。つまり、抗体がある人は再び罹患(りかん)することはなく、仕事に復帰することができる可能性がある。
 
クオモ氏によると、抗体検査は今週、州内各地のスーパーの顧客3000人を無作為に選び、行われた。その結果、約14%が陽性反応を示し、ニューヨーク市内ではその割合が21%に上ったという。
 
この結果に基づくと、州全体で約260万人、ニューヨーク市内で約170万人が新型コロナウイルスにすでに感染した計算になる。
 
この試算は、州の公式発表の感染者数26万3460人を大幅に上回る。米国の感染の中心地である同州では、新型ウイルスで1万5500人以上が死亡している。
 
今回の抗体検査の精度は不確かで、検査人数も少ない。しかし、クオモ氏は、このデータを州全体に当てはめると、同州での新型コロナウイルス感染症の致死率はわずか0.5%になると指摘した。【4月24日 AFP】
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上記記事にもあるように、抗体検査自体の精度がまだ不十分で、どこまでこの数字を信用していいかという問題はあります。

また、“検査は19郡の40カ所で実施。スーパーなど小売店を訪れる客を対象に行われた。外出中の人が対象のため、州民全体から無作為に選んだとは言えない側面がある”【4月24日 時事】という問題も。

更に“免疫を獲得している可能性”“仕事に復帰することができる可能性”に関しては、そもそもこのウイルスについてはまだ分かっていないことが多く、抗体獲得がどこまで免疫に結びつくのはわかっていないという問題もあります。

抗体検査に関しては“米科学誌サイエンスによると、抗体検査はマサチューセッツ州やカリフォルニア州、ドイツの一部などで試験的に行われており、感染率は人口の2〜30%に上るとの各推計が出ている。日本では加藤勝信厚生労働相が24日、検査に向けてキットの性能評価を始めた、と発表した。”【4月24日 朝日】とも。

なお、欧州での動きなどについては、「免疫パスポート」という話と併せて、昨日(4月23日)ブログ“感染者と未感染者の立場が逆転する「免疫パスポート」 欧州ではすでに始動”で取り上げました。

また、抗体保有者拡大で「集団免疫」を目指すという方向性については、一昨日(4月22日)ブログ“スウェーデン 集団免疫獲得か、「命がけの危険なギャンブル」か 緩やかな措置を支える「大人の対応」”で取り上げました。

先述のように、留保すべき問題は多々あるにしても、今日明らかになったアメリカ・NYの抗体検査結果は、
感染がこれまで考えられているよりはるかに多くの人々にすでに広がっていること。
それらの者全員を隔離して治療云々は、もはや不可能な段階にあること。
無症状・軽症で済む者が非常に多く、致死率は1%を切るような低い数字に収まっている可能性があること。
などを示しています。

【ウイルスとの共存に向けて】
これらのことは、昨日・一昨日とりあげた「集団免疫」「免疫パスポート」という方向を後押しするものに思われます。

症状が出ない段階で感染が拡大するとあっては、この感染拡大を阻止することは不可能に近いと思われます。
唯一の方策は、厳格なロックダウンを継続し、皆が自宅に引きこもることですが、それでは医療は守れても、社会が、人々の生活・生存が崩壊します。

一昨日ブログで書いたように、新型コロナの致死率は、インフルエンザの0.1%というレベルに比べれば憂慮すべきレベルですが、今後治療薬の研究で急速に低下していくことが期待できます。

犠牲者を“一定範囲”に押さえ得ながら、広く蔓延した感染状態を前提にした対策をとっていくことが望まれます。
一言で言えば、ウイルスとの共存でしょう。すでに多くのウイルス(インフルエンザや通常の風邪など)と共存しているように。

報道の在り方も「志村さんが亡くなった」「岡江さんも」「怖い!怖い!」「次は自分かも、あなたかも。愛する人かも」といった不安を煽るような方向ではなく(亡くなれた方々のご冥福をお祈りします)、一定の犠牲は不可避なものの、多くの疾病と同様に共存も可能であること、あるいは人々の現実の生活は、そういったもろもろの疾病・禍との共存で成り立っていることを踏まえた冷静なものであって欲しいと考えています。

****コロナ禍での大規模な「抗体検査」は医療・経済崩壊の救世主になるか****
新型コロナウイルス感染の検査方法として、現在はPCR検査が主流だが、より簡単な方法である抗体検査の開発が進みつつある。

大規模な抗体検査を行って、免疫(抗体)を持つ人を探し出せば、パンデミックが終息する以前でも、積極的に働いてもらえるという考え方が欧米にはあるようだ。

大規模抗体検査の意義や問題点について、医師(日本内科学会総合内科専門医)であり、かつビジネススクールで医療経営を教える筆者が、解説する。(中央大学大学院戦略経営研究科教授、医師 真野俊樹)

緊急事態宣言はいつ解除するかが難しい
(中略)何が言いたいかというと、「一度、規制をしたら、それを解除するのは非常に難しい」ということだ。
 
その理由は、新型コロナウイルスの特徴に求められる。新型コロナウイルスは不顕性感染、つまり症状が出ない感染者が多く、かつ症状が出ないのに他人にうつす可能性があるといった、極めて厄介な特徴を持つ。

なので、人と人との距離をとって感染を防ぐこと。つまり、緊急事態宣言といった強い外出自粛要請により、ソーシャルディタンス(Social Distance)を取るしか、当面、感染が広がるのを防ぐ方法がないのである。
 
しかし、繰り返しになるが、緊急事態宣言は一度始めてしまうといつ止めるのかの判断が非常に難しい。
 
それは、感染拡大がいち早く終息したとされ、武漢などの都市封鎖を解除し始めている中国を見ても明らかだ。「第2波」とでもいうべき、外国からの帰国者に起因する感染の危険性も取りざたされており、感染拡大の終息宣言までには至っていない。
 
米国ニューヨーク州でも、クオモ州知事が3月13日の記者会見で「ピーク期を迎えた可能性がある」と発言する一方で、自粛措置解除については慎重な姿勢を示している。
 
欧州も、新規感染者数が減ってきたということで、外出規制を緩和しようとしているが、これは、まだ危険だろう。

ワクチンや治療薬の開発はすぐに終息宣言には結びつかない
感染者が大幅に減少すること以外に「緊急事態宣言の終わりを判断する条件」には何があるだろうか。
 
一つはインフルエンザのようにワクチンができたとき、という意見があるだろう。しかし、ワクチンを開発するのはなかなか難しく、今までにいくつかの発表がなされているが、治験も含めると、おそらく年単位の時間がかかってしまうであろう。また、完成したとしても、100%効果があるとも言いにくい。
 
治療薬の開発もしかり。(中略)しかし、C型肝炎ウイルスの特効薬であるハーボニーなどのようにウイルス自体をほぼ完全に除去してしまう薬は別だが、これら既存の薬剤には予防効果がないか、あったとしても、保険適応などの問題で予防目的では使用しにくい。

このため、現在、議論されている薬剤が新型コロナの治療薬として承認されたからといっても、皆がウイルスを気にせずに自由に出歩けるようになるかといえば、そうでもない。
 
つまり、現在のところ、「新たな感染者が減り、感染して発症している人の数も明確に減った」という状況を一定期間確認する方法しか、緊急事態宣言や外出要請を解く判断はできないのである。

外出自粛が長引けば、景気はますます悪くなる。既に企業からは悲鳴が上がっている。だらだら緊急事態宣言を続けていると、企業の倒産が続出してしまうかもしれない。ただでさえ人手が足りない医療や介護の現場も、ますます厳しくなるだろう。
 
そこで、注目されているのが、検査で感染リスクの少ない人を探しだし、そのような人に積極的に外出を許し、経済活動や医療現場のサポートをしてもらおうという動きである。
 
その検査方法として期待されているのが、大規模な抗体検査である。

免疫(抗体)を持つ人を探し出す
(中略)先に述べた「検査して、感染リスクの少ない人」というのは、ズバリ、新型コロナウイルスに対し過去に感染して、抗体がある人という意味である。
 
というのも、風疹や麻疹などの通常のウイルス感染症では、通常1回でも感染すれば免疫(抗体)ができて、通常は同じウイルス感染症は発症しない。
 
もっとも、新型コロナウイルスの場合、一度感染した人が再び感染したという報告もある。なので、抗体があれば100%この病気を防ぐことができるかどうかは、現在のところ、まだわからない。

つまり、技術的な問題、すなわち抗体がどこかで、またなくなってしまう可能性、あるいは抗体をどの程度持っていればコロナウイルスに感染しないかの確認、といった問題がある。
 
しかし、それは技術やデータの蓄積によって解決すると思う。また、インフルエンザワクチンで経験済みのように、一度感染した人は、100%感染しなくならないまでも、それなりにある程度の免疫を獲得するという説は有力である。
 
実際に、英国では「抗体検査を行って抗体がある場合には、免疫証明書の発行をする」と言っている。
またドイツでは、少人数の検査ではあるが、ボン大学が、Gangelt という町の1000人の住人に検査を行い、15%が抗体を持っていたというデータを出した。さらに大規模な調査もなされているようだ。

またアメリカでは、3月20日からニューヨーク州が大規模な抗体検査を始めたほか、カリフォルニア州でも米スタンフォード大学などの研究チームが実施しており、ウイルスに感染した人は4月初めの時点で調査対象地域の人口の推計2.5~4.2%を占めており、公式に確認されている感染者の50~85倍に及んでいる可能性があると公表している。こうした大規模抗体検査は、全米に広げたいという考えがあるようだ。
 
こうした調査は、少なくとも「抗体を持っている人はある程度の免疫を持っている」ということを前提としている。

パンデミックが続けば大規模な抗体検査の意義は増すが…
抗体検査は、集団免疫が達成できているかどうかの調査を行う際にも有効である。
 
詳細な説明は専門家に譲るが、集団免疫とは、全国民の6割や7割という多数が感染(あるいはワクチン接種)により抗体を持っていれば、それ以上は感染が広がりにくいという考えだ。
 
もっとも現時点では、集団免疫が獲得できているわけではない。アメリカやヨーロッパの国の多くが「大規模な抗体検査をする」と言っているのは、国民の集団免疫の割合を知るためではなく、どちらかといえば、前述したように「積極的に動ける人を見つけよう」という意味合いが強いようだ。
 
簡単にいえば、抗体を持っている人は街を出歩いてよし、抗体を持ってない人は感染のリスクがあるので家にとどまり続けなさいということである。つまり、抗体を持っている人は積極的に外出し、働くなど、日常生活ができるということを意味する。
 
こうした人たちを効率的に見つけ出せば、積極的に経済活動や医療活動を担ってもらえるし、社会の維持に役立てることができる。
 
そういった側面では、パンデミックが長引いた場合には、大規模な抗体検査の意義や重要性は増すことになる。
 
もっとも、大規模な抗体検査によって、積極的に外出し、働ける人を見つけて、「選び出す」という行為は、新たな「格差」や「不公平感」を生む恐れもあるので、運用には注意する必要があるだろう。【4月22日 真野俊樹氏 DIAMONDonline】
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【感染予防一辺倒が招く膨大な犠牲者 飢餓 コロナ以外の疾病対策の後退】
新型コロナ退治だを優先させたロックダウンなどの施策が、世界各地で深刻な失業や生活破壊をもたらしていることは、これまでも再三取り上げてきたところです。

特に、アフリカ諸国や途上国の「すでに糸につかまっているような状態」の人々にとっては死活的問題となります。

****世界各地で最大2億5000万人が飢える恐れ 国連が警告****
国連は21日、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)により、世界各地で「大規模な」飢きんが発生する可能性があると警告した。世界食糧計画(WFP)のデイヴィッド・ビーズリー局長は、大災害を回避するために喫緊の対策を講じる必要があると指摘している。

WFPが発表した「世界食糧危機報告」によると、1億3500万人から2億5000万人が飢餓(きが)状態に陥る可能性があるという。

最も影響を受けるのは紛争や経済危機、気候変動の影響を受けている国々で、WFPは特にイエメン、コンゴ、アフガニスタン、ヴェネズエラ、エチオピア、南スーダン、スーダン、シリア、ナイジェリア、ハイチの10カ国の名前を挙げた。

南スーダンではすでに昨年、政情不安を受けて人口の61%が食糧難に見舞われたという。

新型ウイルスの影響を受ける以前から、東アフリカや南アジアでは干ばつや、バッタなどが農作物を食べつくす蝗害(こうがい)によって深刻な食糧危機が起こっている。

国連安全保障理事会のビデオ会議に参加したビーズリー氏は、「賢く、迅速に動く必要がある」と訴えた。
「ほんの数月のうちに複数の大規模な飢きんが起こる可能性がある。もう時間がない」

理事国に行動を呼びかける中でビーズリー氏は、「我々の専門知識とパートナーシップがあれば、COVID-19のパンデミックを食糧危機の大災害にしないために必要なチームとプロラムを策定することができるだろう」と話した。

「すでに糸につかまっているような状態」
WFPでシニア・エコノミストを務めるアリフ・フサイン氏は、パンデミックによる経済的打撃は、「すでに糸につかまっているような状態」の数百万人もの人々にとって大災害になる可能性があると指摘した。

「賃金を稼がないと食べるものが買えないような何百万もの人たちにとって、これは大打撃だ」
「ロックダウン(都市封鎖)や世界的な景気後退はすでに、巣の中の卵を殺している。COVID-19のようなショックひとつで、卵は転がり落ちてしまう。一丸となってこの世界的な大惨事による被害を最小限にする必要がある」(後略)【4月22日 BBC】
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また、新型コロナ以外にも我々が取り組べき課題は多々あり、そちらに“しわ寄せくる”状態も回避する必要があります。下記記事のタイトル冒頭“コロナ禍”というのは、正確には“コロナ禍対応のしわ寄せで”と書くべきでしょう。

****コロナ禍、支援なければ貧困国で甚大被害も 医療リソース不足で子ども120万人死亡の恐れ****
世界銀行や先進国が主導的役割を担って立ち上げられた女性や子どもの健康改善を支援する資金調達プラットフォーム「グローバル・ファイナンシング・ファシリティ」は23日、途上国で新型コロナウイルスへの対応に限られた医療リソースが割かれた場合、子どもと母親の死亡率が年内に45%増加する可能性があると警告した。
 
学術誌ランセット・グローバル・ヘルスが査読中の研究論文によると、アフリカ・アジア・中南米の貧困国が医薬品、人工呼吸器、防護用品の支給や現場支援を早急に受けられなければ、これらの国々では今後6か月で子ども120万人、母親5万7000人が死亡する可能性があるという。
 
世界銀行の保健・栄養・人口グローバルディレクターで、グローバル・ファイナンシング・ファシリティのディレクターを務めるムハンマド・アリ・パテ氏は、新型コロナウイルスの流行が「数十年の進展を帳消しにしてしまう」恐れがあると指摘している。
 
さらに貧困国へのワクチン供与を行っている国際機関「Gaviワクチンアライアンス」のセス・バークレー事務局長 は、新型コロナウイルス感染症対応時でも「命を救う定期的な予防接種プログラムを守る」ことを一つの大きな目標にしなければならないと強調し、はしか、おたふくかぜ、腸チフス、ジフテリアなどの予防可能な病気への対応を呼び掛けている。
 
また、貧困状態にある女性やその家族は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)から派生する不況に影響を受ける可能性も高く、研究によると、一人当たりの国内総生産が1%減ると乳児の死亡率が約0.3%増加し、女児の死亡率は男児の少なくとも2倍になるという。
 
世界保健機関は23日、パンデミックがアフリカのサハラ以南の地域でマラリア予防用の蚊帳と薬の流通に深刻な影響を及ぼしていると発表した。同地域は世界全体のマラリア感染者の95%を占めており、WHOはサハラ以南地域の各国に対し、新型コロナウイルスへの対応で手一杯になる前にマラリアの予防・治療用品を今すぐ配布すべきだと呼び掛けた。
 
WHOによると、殺虫仕様の蚊帳を配布する取り組みがすべて止まり、抗マラリア薬の入手機会が75%減少するという最悪の事態に陥った場合、サハラ以南でのマラリアによる死者は推定76万9000人に上るという。 【4月24日 AFP】
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なにごとにも「バランス」が必要です。

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