(【2021年4月18日 東京】)
【米CIA長官「習主席が2027年までに台湾侵攻の準備を指示」】
中国の台湾侵攻があるのか? あるとしたらいつなのか?・・・については多くの議論がなされ、「〇〇年までに・・・」といった話も出回っています。
下記もその一つですが、米CIA長官の発言ということで、全くの推測とかガセネタという訳でもないでしょう。
****「習主席が2027年までに台湾侵攻の準備を指示」との情報把握 米CIA長官****
中国による台湾侵攻の可能性をめぐり、CIA=アメリカ中央情報局のバーンズ長官は、習近平国家主席が軍に対して2027年までに侵攻の準備を整えるよう指示したとの情報を把握していると明らかにしました。
アメリカ CIA バーンズ長官 「習近平主席が、台湾侵攻を成功させるための準備を2027年までに整えるよう、人民解放軍に対して指示したことをインテリジェンスの情報として把握している」
ワシントンのジョージタウン大学で講演したCIAのバーンズ長官は「中国が2027年に侵攻を行うことを決定したという意味ではない」としながらも、「習近平の台湾への野望を過小評価するつもりはない」と強調しました。
2027年は習主席の3期目の任期が終わる年にあたり、アメリカのインド太平洋軍の前の司令官も先月、同様の見方を示しています。
また、バーンズ氏はウクライナ侵攻を続けるロシア軍が苦戦していることに中国が「動揺している可能性がある」と指摘するとともに、ウクライナ情勢をめぐっては「次の6か月が決定的に重要な時期となる」としています。【2月3日 TBS NEWS DIG】
アメリカ CIA バーンズ長官 「習近平主席が、台湾侵攻を成功させるための準備を2027年までに整えるよう、人民解放軍に対して指示したことをインテリジェンスの情報として把握している」
ワシントンのジョージタウン大学で講演したCIAのバーンズ長官は「中国が2027年に侵攻を行うことを決定したという意味ではない」としながらも、「習近平の台湾への野望を過小評価するつもりはない」と強調しました。
2027年は習主席の3期目の任期が終わる年にあたり、アメリカのインド太平洋軍の前の司令官も先月、同様の見方を示しています。
また、バーンズ氏はウクライナ侵攻を続けるロシア軍が苦戦していることに中国が「動揺している可能性がある」と指摘するとともに、ウクライナ情勢をめぐっては「次の6か月が決定的に重要な時期となる」としています。【2月3日 TBS NEWS DIG】
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米CIA長官が言うのですから、それなりの情報に基づくものでしょう。
ただ、長官自身が「中国が2027年に侵攻を行うことを決定したという意味ではない」と発言しているように、どういう趣旨で習近平主席が2027年までに侵攻の準備を整えるように指示したのかは不明です。
不明と言うより、習近平主席自身も今の段階で侵攻時期について確定した考えがある訳でなく、「もし侵攻が適当と思われる状況になったら、すみやかに対応できるように準備しておくように」といったところでしょう。台湾侵攻は中国にとっても国家樹立以来の「悲願」であると同時に、政権の命運をかけた大勝負になりますので、軽々に決定はできません。
【台湾侵攻シュミレーションの意味するところは?】
もし、中国が台湾に軍事進攻したら、どういう結果になるのか? 圧倒的軍事力で短期に台湾を制圧するのか? あるいはアメリカが応戦して中国の侵攻は失敗に終わるのか? 台湾の防衛力はウクライナのように持ちこたえることができるのか? 中国はウクライナでのロシアの二の舞になるのか? 実際のところ、アメリカはどこまで関与するのか?・・・・等々の軍事シュミレーションについても様々な議論があります。
「やってみないとわからない」といった感もありますが、比較的最近では、米政策研究機関「戦略国際問題研究所」(CSIS)の机上演習が話題になりました。
****中国の台湾上陸作戦、米政策研究機関が机上演習…自衛隊の損失は航空機112機・艦艇26隻****
米政策研究機関「戦略国際問題研究所」(CSIS)は9日、中国軍が2026年に台湾への上陸作戦を実施した場合を想定した机上演習の結果をまとめた報告書を公表した。ほとんどのシナリオで中国軍は台湾の早期制圧に失敗するものの、米軍や自衛隊も大きな損失を被るとの結果になった。
机上演習は米軍の元高官や軍事専門家らが参加して計24回行った。米軍が参戦するタイミングや台湾軍の対応能力など様々な条件を変え、中国の軍事作戦開始から3〜4週間を想定した。
CSISが最も可能性が高いとしたシナリオで行った3回の机上演習では、中国軍は台湾の主要都市を占拠できないか、台湾南部・台南の港を一時制圧するにとどまった。いずれの場合でも中国軍は揚陸艦の9割を失う結果となった。
一方、米軍の損失も大きく、空母2隻とその他の主要艦7〜20隻、航空機168〜372機を失った。3回のうち2回で中国軍は在日米軍や自衛隊の基地を攻撃した。自衛隊の損失は3回の平均で航空機112機、艦艇26隻となった。
米軍の介入が遅れたり、自衛隊の関与が限定的だったりする「悲観的シナリオ」の19回の演習でも、中国軍が台北を制圧できた例はなかった。報告書は、在日米軍基地の使用や台湾軍による抵抗が前提条件になるとし、日本や台湾との安全保障関係の強化を提言した。【1月10日 読売】
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アメリカが「空母2隻を失う」ような中国との戦争に実際に参加するのか?
日本の自衛隊はどこまで関与するのか?
・・・等々、不確定要素がありますが、米軍参戦なら在日米軍基地の使用が前提になり、それに伴って中国の日本に対する攻撃もかなりの確度で現実のものになるでしょう。
****米研究機関の台湾有事シミュレーションが描いた「日本にとって最悪のシナリオ」****
青山学院大学客員教授でキヤノングローバル戦略研究所主任研究員の峯村健司が1月23日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。CSISが公表した台湾有事のシミュレーションについて解説した。
アメリカの研究機関が台湾有事のシミュレーションを公表 〜日本の報道はピントがズレている
アメリカの有力シンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)が1月9日、中国の台湾侵攻を想定した台湾有事のシミュレーション結果を公表した。想定した大半の条件下では、アメリカや日本の支援を受けた台湾が中国軍を撃退する一方で、「高い代償を伴う」と指摘した。
飯田)公表は9日ですから、2週間あまり前の話ですが、メディアやワイドショーなどでも取り上げられています。日本で報道されているのは「大きな代償を払うけれど、勝つ」というようなところですが。
峯村)勝つというところばかりがフォームアップされていますが、まったく違う。「ピントがズレている報道ばかりだな」というのが私の印象です。
シミュレーションの3つのポイント
峯村)今回、最大のポイントは大きく言うと3つあります。1つは、このゲームの前提条件がある「日本にある米軍基地を使える状況である」ということです。(中略)
2つ目としては、米軍が台湾救援のためにきちんと参戦すること。3つ目は、米軍の参戦まで台湾が自力で領土を防衛することです。
台湾有事がリアルに起きたとき、空母を2隻失う前提で「台湾を助けるために参戦しろ」と大統領が本当に言えるのか 〜シミュレーションでそう決断できる人はまずいないのが現状
(中略)
飯田)アメリカの空母2隻を失う可能性。
峯村)空母を1隻建造するだけでも、1兆円と少し掛かります。乗組員は平時でも約5000人、有事ではさらに多くなります。2隻やられるということは、2兆円余りがパーになる。さらには、2万人以上の兵士が命を失うということです。(中略)
峯村)台湾有事のポイントは、こうした前提条件があっても、アメリカの大統領が「行け」と、「台湾を助けるために参戦しろ」と言えるかどうか。これがすべてなのです。(中略)空母を派遣すると即決できる大統領にはお会いしたことがほぼありません。(中略)
日本が中国の脅しに屈し、日本の米軍基地を米軍が使えない。また、米大統領が決断できずに参戦しない 〜24のうちの負ける2パターン
峯村)では、対日本はどう見るのか。先ほど言った2つ目の前提条件である「日本の米軍基地が使用できるか」に着目するでしょう。中国から見れば、在日米軍基地を使用できないようにしたらいいのです。心理戦、法律戦など、さまざまな嫌がらせや圧力を掛ける。(中略)
1つの脅しとして、日本に対し、「もし米軍基地をアメリカに使わせたら、日本人を100人捕まえるぞ」と。(中略)
「核ミサイルを落とすぞ」と脅すこともありうる。そこで日本の総理大臣が「構わない。私の政治判断で米軍基地を自由に使ってくれ」と言えますか? ということです。そうした有事の際には「検討する」では済まされません。(中略)
峯村)実は24パターンあるシミュレーションのうち、「2パターン」がポイントなのです。22パターンで勝っているのですが。(中略)
「負ける」2パターンになる可能性が最も高い
峯村)負けている2パターンが問題です。負けている2パターンの1つが、日本が中国の脅しに屈してしまい、米軍が日本にある米軍基地を使えなかったパターンです。(中略)
もう1つが、先ほど申し上げましたが、「やはり空母を2隻失ったらまずいよね」ということで、米軍が参戦しなかったパターンです。(中略)
台湾が単独で中国軍と戦い、ボロ負けしたと。この2つなのですが、これは24分の2ではありません。私はいままでいろいろな研究をしたり、シミュレーションに参加したりした結果、この2パターンになる可能性が最も高いと思っています。(後略)【1月25日 ニッポン放送NEWS ONLINE】
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アメリカにとって中国との戦争に参戦するというのは難しい判断ですが、さりとて、台湾を見捨て中国勝利を座視するというのも、西側世界のリーダーとしての地位を捨てることにもなり容易ならざる決断です。おそらく、そうした事態にならないよう、外交的に最大限、中国を抑制するというところでしょうが。
【中国側にも軍事的に深刻な問題があるとの指摘も ただ、そこは台湾側も・・・】
台湾にとっては米軍の参戦が最大関心事でしょうし、日本の対応も重要・・・・とはいえ、先ずは自国の防衛力が大前提になります。
戦争というのは、実際にやってみると多くの「想定外」が出てくるものでしょう。ウクライナを簡単に制圧するつもりだったロシアが長期戦で苦しんでいるように。
****現地緊急レポート 台湾は中国を撃退できるのか?****
いま、台湾が危ない。
中国の習近平国家主席は昨年秋の共産党大会で「決して武力行使の選択肢を排除しない」と強調し、台湾周辺海域での軍事演習を立て続けにおこなっている。昨年8月、アメリカのナンシー・ペロシ下院議長が訪台した時は、大量のミサイルを台湾に向けて発射し、そのうち5発は日本の排他的経済水域に落下した。
はたして台湾はこのまま中国に呑み込まれてしまうのだろうか? 中国に詳しいルポライターの安田峰俊氏は、このたび台湾軍の軍事演習「春節加強戦備」のプレスツアーに、日本人として唯一参加。さらに台湾の著名な軍事研究者たちにインタビューを重ね、「文藝春秋」3月号にレポートを発表した。
「米軍の海兵隊と変わらない」
今回公開された台湾陸軍の演習は、台湾の都市部にヘリボーン(ヘリコプターを用いた部隊展開)強襲をかけた人民解放軍を迎え撃つ対処訓練だった。 (中略)
米軍の『星条旗新聞』のアメリカ人記者が、「米軍の海兵隊と変わらない」と練度を盛んに褒めていたのが印象的だった。〉
「手を出すと面倒だ」と中国に思わせる戦略
しかし、中国は軍事費を毎年2桁のペースで増額しており、質量ともに強化が著しい。そんな中国に、台湾はどう対抗するのか?
人民解放軍研究の第一人者である淡江大学国際事務・戦略研究所助教の林穎佑(リン・インヨウ)の談話を紹介しよう。
(中略)「民進党の陳水扁政権(2000~2008)は「有效嚇阻、防衛固守」(有効な抑止力と専守防衛)を唱え、この方針は多少の手直しはあれど、現在の蔡英文政権まで続いています。
すなわち、たとえ台湾の軍事力は人民解放軍より弱いとしても、戦えば相当な被害が発生すると、北京のリーダーたちに認識させる。あちら側に「手を出すと面倒だ」と感じさせる。それこそが、われわれにとっての勝利ということになります。」
ミサイルの3分の1がまともに稼働しなかった
林氏によると、昨年のペロシ訪台後の大演習からは、中国人民解放軍の“弱点”が窺えるという。
(中略)「本来は(ミサイル)16発を撃つはずだったものが、なんらかの不具合によって5発が不発になったとみられます。予定したミサイルの3分の1がまともに稼働しなかったとすれば、これは軍事的にはかなり深刻な問題です。」
それはつまり、ウクライナ戦争におけるロシア軍と同じような問題が、中国人民解放軍にもあるということになる。
「そもそも、中国の兵器や戦術はロシア(ソ連)から取り入れたものが多い。ロシア軍が持つ弱点は、人民解放軍も共通して抱えている可能性が高いと考えられます」(後略)【2月9日 文春オンライン】
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上記記事は中国側のミサイルを問題にしていますが、台湾側の装備についても、多くの戦車がまともに動かない状況にあるといった「実際に戦えるような状態ではない」といった記事を以前紹介したような記憶があります。
中台双方が戦闘を差し迫った現実問題とせず、そうした「実際に戦えるような状態ではない」状況にあり続けることができたら一番いいのですが・・・。冒頭習近平主席の「2027年までに・・・」云々は、現在の状況を「実際に戦える状態」に持っていけ・・・ということでしょう。
【対中国強硬派の頼清徳氏が与党民進党トップに 野党国民党は中国との関係を強化】
周知のように、台湾与野党の最大の対立軸は中国との距離感です。「ひとつの中国」を拒否し、一部には独立を支持する勢力をも含む与党「民進党」に対し、野党「国民党」は中国との関係を重視しています。
このところ支持率が低迷し、昨年11月の統一地方選で最大野党・国民党に大敗した政権与党・民進党の新たなトップに副総統の頼清徳氏が選ばれました。来年の総統選では党の公認候補となることが有力視されています。
頼清徳氏は対中国政策では強硬派として知られています。行政院長在任中は「私は台湾独立を主張する政治家だ」と表明したことがあります。
****台湾与党の新主席に頼清徳氏…1年後に総統選、世論の支持29%から伸ばせるか****
台湾の与党・民進党は15日、主席(党首)選挙を行い、唯一立候補を届け出ていた頼清徳ライチンドォー副総統(63)が、新主席に選出された。1年後の次期総統選でも党の有力候補と目されるが、世論調査では支持は伸びておらず、政権維持に向けて危機感を強めている。
主席選は、昨年11月の統一地方選で最大野党・国民党に大敗し、蔡英文ツァイインウェン総統が党主席を引責辞任したことを受け、実施された。(中略)
医師出身の頼氏は、台南市長や行政院長(首相)などを歴任した実力派だ。蔡氏は次期総統選を巡り、昨年末の記者会見で、後継候補として頼氏を挙げた。党内では「頼氏のほかに適任者はいない」との声が強まり、総統選の党公認候補となる公算が大きい。
しかし、統一地方選の大敗が尾を引き、総統選に勝てるかどうかは楽観できない。台湾民意基金会が昨年12月に行った世論調査で、次期総統に頼氏を望んだ人は29%にとどまり、国民党の侯友宜ホウヨウイー・新北市長の38・7%を下回った。政党支持率も民進党と国民党がほぼ並んだ。国民党の公認候補選びの結果によっては、激しい選挙戦になる可能性がある。
民進党が統一地方選で敗れた背景には、若者や中間層の支持離れがあった。頼氏は7日の若手党員との対話で、「若者の選択を誠実に受け止め、改革の契機としたい」と述べた。不満の源である低賃金、少子化などの対策や、党を団結に導けるかが課題となる。焦点の対中関係では、現状維持の蔡氏の路線を引き継ぎ、支持を集めたい考えだ。【1月15日 読売】
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一方、野党「国民党」は夏立言副主席が訪中し、9日、中国政府で台湾政策を主管する国務院台湾事務弁公室のトップ、宋濤主任と会談しました。
****台湾の野党副主席、訪中に波紋 与党批判「統一工作に迎合」****
訪中した台湾の最大野党、中国国民党の夏立言副主席が9日、中国政府で台湾政策を主管する国務院台湾事務弁公室のトップ、宋濤主任と会談した。
夏氏が会談で「台湾独立に反対する立場を確認し、交流を強化していくことで一致した」としたことを巡り、与党、民主進歩党は「中国の統一工作に迎合し、台湾を矮小(わいしょう)化した」と厳しく批判している。
中国国営新華社通信などによると、夏氏は9日夜、北京で宋氏と会談。双方が台湾独立に反対する立場を確認した上で、宋氏は習近平国家主席が示した対台湾工作に関する「全体方針」を「徹底して実行する」と強調した。
習氏は昨年秋の中国共産党大会で「台湾に対する武力の放棄を約束しない」ことが盛り込まれた政治報告を発表していた。
宋氏はそのうえで「われわれは国民党との交流を強化し、両岸(中台)関係を促進したい」とも述べた。これに対し夏氏は「対話を強化することによって信頼を築き、平和と発展を確保できる」と応じた。
昨年11月の統一地方選挙で勝利した国民党がこの時期に夏氏を北京に派遣したのは、「国民党は中国当局と対話できる政党」であることを内外にアピールし、来年1月の総統選挙につなげる思惑がある。
しかし、中国軍機が台湾海峡付近で挑発行為を繰り返す中、台湾の要人が中国側と会談することは、中国の対外宣伝に利用され「『台湾が中国の圧力に屈した』という誤ったメッセージを国際社会に送りかねない」と民進党が批判している。
台湾で対中国政策を主管する大陸委員会は、夏氏との会談で、宋氏が述べた内容について「われわれの主権と尊厳を傷つけた」とし、「台湾に対する威圧的な考えに反対する」との声明を発表した。【2月10日 産経】
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中国が台湾への関与を強めれば強めるほど、台湾の世論は中国を警戒し、選挙では民進党に流れるというのがこれまでの構図のように思えます。
しかしながら、中国との対立が経済に及ぶと台湾経済は立ち行かない・・・というのも現実。
中国に呑み込まれる脅威と、経済的依存の両者の間で揺れ動くという現実が続いています。
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