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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国 太湖の水質汚染で無錫の水道停止

2007-06-19 15:22:57 | 国際情勢



今月に入って中国太湖の水質汚染のニュースを目にします。
太湖は上海も程近いエリアにある中国で3番目に大きい湖で、琵琶湖の3.5倍の広さがあります。

観光的にも有名なこの湖で有毒藻が大量発生して、沿岸の無錫(むしゃく)では水道の使用が停止されたとか。
無錫は昔の演歌“無錫旅情”で「上海蘇州と 汽車に乗り太湖のほとり 無錫の街へ・・・」とも歌われた町ですが、市区人口でも223万人という大都会です。
アパートの中庭に洗面器やたらいを並べて雨水を集める様子、ミネラルウォーターに殺到する住民の姿なども報道されています。

もっとも、被害の範囲・期間はよくわかりません。
本当に200万都市全市の水道が長期間ストップしたら国家的緊急事態になると思われますので・・・。

有毒藻の大量発生は数日間に突然起こったとの報道もありますが、太湖の水質汚染自体は以前から問題視されていたところで、水道の水が臭う、ごはんを炊くと色が着くなどの苦情はあったようです。
昨年9月にflickrに投降された太湖水質汚染の写真です。(By tingting8420)



汚染源は付近の工場排水と見られており、政府当局は太湖付近の地方自治体に対し、汚染源の工場をすべて閉鎖し、2008年6月末までに新しい排水基準を満たすよう命じているそうです。
また、温家宝首相は12日、太湖の有毒藻の発生は汚染に対する「警鐘」だと述べ、早急な対応を求めたとも伝えられています。
更に、関係地方政府幹部数人が責任を果たさなかったと懲戒免職されたとのこと。
政府当局は現在、揚子江から太湖へ水流を追加供給して藻の異常発生を引き起こした汚染要因を押し流しそうとしているそうです。

ただ、このような環境破壊の背景には基本的には国民一般を含めた意識の問題があるとも思われますので、今後も類似の問題が続出する事態が懸念されます。
私は無錫は行ったことはありませんが、お隣の水郷として有名な蘇州を16,7年前旅行したことがあります。
水路にかかる風情のある橋などはよく写真でも見るところですが、実際川面に近づくと生活排水で汚れ、いろんな物が浮かんでおりやや興ざめした記憶があります。
中国に限ったことではありませんが、シンガポール以外のアジアの国ではゴミをあたりに捨てるのはさほど珍しい光景ではありません。(シンガポールの潔癖性は、それはそれで息苦しい感じがしますが・・・)
中国の新疆方面を列車で旅行した際、席がなく車両と車両の連結部にうずくまって一晩過ごしたことがあります。
連結の隙間からゴミは捨てるは、子供のおしっこはさせるは、ゴミ溜めとトイレを一緒にしたよう状態で心底まいりました。
今となってはなつかしい思い出でもありますが。

そのような「ごみを捨てるのはあたり前」的な社会(近年改善はされてきているとは思いますが・・・)で急激な経済成長・工業化が進んでいるのが現状。
人間の意識・価値観という最も基本的な社会的基盤・枠組みが追いつかないところから、環境破壊・極端な利益第一主義・安全性の軽視、「儲かれば何をしてもいい」的な風潮が生まれて来ていると思われます。

そういう意識レベルの問題とは別に、技術面に限れば、今後中国が必要に迫られるのは環境保全・省エネの技術であり、まさに日本がアドバンテージを持つ分野です。
今後このカードを有効に活用することが日本の安全保障を含めた将来に非常に重要なポイントになるのではないかと思います。
その意味で、さらにこのカードを有効にするための環境保全・省エネに関する技術開発については、防衛システムなどより現実的な国家の命運をかけたプロジェクトとしてその進展を支援すべきだと思っているのですが・・・・。

冒頭写真は、風光明媚な太湖 “flickr”より(By Kos Live)

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新シルクロード キルギスからウズベキスタン

2007-06-18 17:37:16 | 身辺雑記・その他


昨夜TVで新シルクロード「新シルクロード・・・激動の大地を行く 第3集オアシスの道は険し」(NHK)を観ました。

かつて二十数年前に放映された石坂浩二のナレーションと喜多郎の音楽で始まる旧“シルクロード”シリーズは今でも鮮烈な印象を残しています。
その後実際に西安、敦煌、トルファン、カシュガルなどを旅行する機会もありましたが、あの音楽を聴くとなぜか胸を締め付けられるような、息苦しくなるような“旅への誘い”を感じます。

そんなことから2年ほど前からスタートした“新”シリーズにも期待したのですが、あまり旅情を感じるものではなく番組とも疎遠になっていました。

しかし、たまたまチャンネルを合わせたときに目にした昨夜の同番組は、なかなかに興味深い、「行ってみようかな・・・」という気にさせる内容でした。
観たのは途中からでしたが、ざっと放映内容を列記すると

【キルギス】
・中国との国境に出来た住居代わりの貨車を並べた街
・積荷作業の賃金 1日1000円(トッラク運転手は3倍)
・ソ連崩壊、キルギスは自由経済路線をとるが、経済回復は遅れ失業がまだ多いこと
・流入する大量の中国製品
・その中国製品を旧式トラックに積んで、悪路を命がけで走る若者、心配で迎えに待つ母親
・物資の集散地オシュにできた新興の巨大市場(およそ2万店舗)
・かつてはキルギス人とウズベク人の紛争もあった土地
・今共同経営に励む両民族のふたり

【ウズベキスタン】
・政府統制経済を残したシステム
・綿花が最大産業、国営で綿花摘みに労働者を他地域から動員
・摘んだ綿花の重量に応じて賃金(1日500円)
・民族舞踊による慰問団
・古都ブハラではイスラムが復権、モスクの数はかつての20倍
・以前から多数のユダヤ人が住んでおり、ムスリムと共存してきた歴史
・今ではイスラエル・アメリカへの移住が増加して激減している(イスラエルは旅費支給)
・背景にはソ連崩壊後の経済混乱、ユダヤ人社会の崩壊で現地では仕事がみつからないことがある
・イスラエルに移住した場合息子が軍隊に徴兵されることを心配する母親

もちろん、この番組で紹介されているのは万華鏡のように様々の様相を見せながら変化・絡み合う現実のわずかな一断面にすぎないでしょう。
しかし、中央アジアの国々の今の姿を伝える情報はあまり目にすることもなかったこと、ウズベキスタンへの旅行(ブハラ、サマルカンドといった定番コースですが)を先日検討していたことなどもあって、「ふーん、こんな感じかね・・・」と画面に見入ってしまいました。
いつの世でも、どこでも、経済・社会の混乱期には時流に乗る者、時流から取り残される者がいます。
かつては絹、今は安価な中国製品が西へ流れていきます。
長い歴史を経てこの地にたどり着き生活していたユダヤの人々が、今イスラエルへ戻りつつあるという現実も興味深く感じました。

ちょっとネットで調べると、中国側からキルギスへの国境を越える面白い旅行記がありました。
http://silkroad.rash.jp/travel/note/kyrgyz1.html

また、キルギス・ウズベキスタン国境周辺はタジキスタンも絡んで、イスラム過激派、麻薬密輸など相当にリスクが高いエリアで、国境には地雷も埋められているとか。(当然「渡航延期」勧告が出されています。)
平成11年の小渕内閣当時、邦人4人を含む7人が誘拐され、中央アジア各国と日本の間で大騒動があったところでもあり「ああ、そういえばそんな事件が・・・」と思い出しました。

ウズベキスタンへの旅行は、今回は日程等が合わず難しい情勢ですが、キルギスも含めまた機会があればなんとか・・・と考えています。

写真は“flickr”より キルギスの草原(By crimsworth46)
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懸念されるガザ地区住民の暮らし

2007-06-17 11:57:00 | 国際情勢


パレスチナのガザ地区をイスラム原理主義勢力ハマスが支配するかたちになったことで、ヨルダン川西岸地域は比較的穏健なファタハ、ガザ地区はイスラエル敵視政策を堅持するハマスが抑える分断統治の様相になってきました。
反イスラエル・反米傾向が強いハマスはスンニ派ながらシーア派のイランから支援を受けているとかで、アメリカ・イスラエルはこの勢力をガザ地区に封じ込める今の事態を歓迎しているとも伝えられます。
今後はファタハのヨルダン西岸には援助を再開してこれを支援してアメリカ・イスラエルと共存できる穏健な政権を確立し、ガザ地区に関しては援助を抑え、イスラエルの検問も強化して物資の流入を止める“封じ込め”が行われることが予想されます。

ハマスが先の選挙で大勝したのは、対イスラエル姿勢だけでなく、長く実権を握ってきたファタハの腐敗、ハマスの地道な住民福祉サービス(もちろん支持拡大をにらんだものでしょうが)があったと言われています。
しかし、個人的にはやはり“原理主義的”なかたくなさには相容れないものを感じます。
イスラエル・アメリカの存在という現実と“妥協”しない限り、住民が安心して暮らせる状況はつくれないのではないかと単純に思っています。
過去どのような経緯があったにせよ、今更イスラエルという国家を地図から消してしまうことはできませんから。
(政権についたハマスは一時妥協的になったが、これを追い詰めたのはアメリカの策略だという意見もあるみたい。このあたりになってくると藪の中でよくわかりません。)

そんなことでハマスにはあまり共感するものは感じませんが、ガザ地区への援助停止、物資流入制限という封じ込め策は、それが実効をあげるものであればあるだけ、この地区で暮らす住民を苦しめることになります。
すでにガザ地区を出る住民も出始めているようですが、イスラエル軍管理下にあってはそれもままならないのではと推察します。
おそらく事態が急迫すれば、力を持つ勢力が無力な住民から物資を強奪するようなことが地区内部でおきることも想像されます。

非常に乱暴な考えですが、兵糧攻めみたいなかたちで実質的に住民に苦しみをおわせるくらいなら、いっそのこと短期的に武力で支配勢力を一掃するほうがいいのではないかと思ったりもします。
もっとも、そうしたら先月来のレバノンのスンニ派武装組織ファタハ・イスラムがろう城する難民キャンプへのレバノン国軍の攻撃のように、当然ながら住民に多数の死傷者を出すことになるわけで・・・どうしたらいいのやら・・・。

今回の事態はハマスが勝利した先の選挙(ハマスの台頭を警戒して実施を先延ばししたいファタハ政権・イスラエルに対し、アメリカが速やかな実施を要求したとも言われています。)から起因したものですが、民主化と安定が往々にして相反する事例のように思えます。
そのような混乱を経て膿(ファタハ政権の腐敗など)をださないと真の民主化は達成されないと言えばそうなのでしょうが。
イラクといい、パレスチナといい、アメリカの“民主化政策”は多大の混乱を惹起しているようにも見えます。

写真はflickr”より(By Jaume d'Urgell)
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職業としての武装闘争

2007-06-16 15:18:16 | 国際情勢


パレスチナではハマスがガザ地区を事実上支配し、ファタハとの対立が決定的になったとか。
パレスチナ問題にコメントするような見識は何も持ち合わせていません。

TVで自動小銃を景気づけで空に向かって連射しているハマスのメンバーを見ながら思ったこと素朴な感想。
「この人達は和平とか停戦とかなるときっと困るんだろうな・・・失業だもんな・・・」

“世に争い人の種は尽きまじ”という訳で、パレスチナに限らず世界中で紛争・闘争だらけ。
アジアでもフィリピン、インドネシア、ミャンマー、ネパール、パキスタン、スリランカ・・・。
しかもどの紛争も長引き解決の糸口がみつかりません。
紛争が長引くと、その参加者には“若い頃から武闘一筋”という者も多くなるかと思います。
そんなメンバーはもし和平などで闘争が停止すると“失業”で、大した産業・雇用もない国々で「今更何をして食っていけばいいのか・・・」と路頭に迷うことになるでしょう。
経済的問題もさることながら、闘争の停止で、戦いの場では明確だった自分の存在意義が定かでなくなるということも大きな問題でしょう。

そんなことを考慮すると上記のような感想になり、また、そのような背景が世の闘争・紛争がなかなか解決しないひとつの理由ではないかと思います。
このような紛争を停止させるためには、力による対決だけでなく、投降・停戦後の経済的・社会的身分保障が必要なのでは・・・なんて思ったりします。

写真は“flickr”より(By Rusty Stewart )

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奄美、空梅雨そしてヤスデ

2007-06-15 20:56:21 | 身辺雑記・その他


奄美は今日、とてもいい天気で夏空が広がっています。
先月26日に平年より16日遅く梅雨入りしましたが、その後もまとまった雨は殆ど降っていません。
6月の降水量を調べると、昨年15日までの半月で600mmだったのに対し、今年は160mmと4分の一程度です。
昨年7回あった“大雨”の日も今年はまだ1回。

今晩から天気は崩れてここ4日ほどは梅雨空が続くみたいですが、その後は比較的いい天気の予想になっています。
そうなると例年6月28日の梅雨明けは8~9日ほど早くなるかも。
農業だとかは降るべきときに降らないと大変困るのですが、私個人的には雨が少ないほうが助かります。
毎日屋根付き三輪スクーターで通勤しているのですが、屋根があるとは言っても大雨は大変ですから。

それから梅雨で一番イヤなのは“ヤスデ”。
ムカデを小さくした奴で、体長は1.5~4cm程度でしょうか。
梅雨時と12月頃、年2回ウジャウジャ出没します。
奄美固有種ではなく数年前沖縄から木材などについて入ってきたもののようです。

住んでいる場所が山の崖下のため、最盛期には無尽蔵に出てきて、家の壁はヤスデ模様に染まります。
朝、歩くと足の下で“シャリ、シャリ”とヤスデの死骸が潰れる音がするようなときも。
ムカデと違って刺したりすることはないとは言っても、ヤスデには悪いですが、気持ち悪くて大変不快です。
なかにはトイレの通気孔から部屋の中に入ってきたりするやつもいて、精神衛生上よくありません。
部屋のドアをあけて外にでるときは、通路の天井から降ってこないかビクビク確かめながら出るといった具合です。
殆どホラー映画の世界です。

今年の梅雨も一時小さいヤスデが現れて「ああ、また今年もこいつらの季節か・・・」とうんざりしたのですが、雨が少ないせいかその後パッタリ見なくなりました。
おかげで毎日の生活がとても楽になって助かっています。
梅雨時少なければ、その影響が続いて冬場も少ないかも・・・。そうだといいんだけど。
近年は鹿児島本土でも出没するとか聞きます。
“いい気味”です。
不幸は等しく分かち合うべきです。

写真は今日お昼頃の仕事場近くの海です。
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熱い! パキスタン

2007-06-14 20:04:12 | 国際情勢


先日、パキスタン南部で52℃という暑さ(熱さ?)を記録して、熱中症などで12人以上が死亡したニュースが流れました。
52℃というのは想像できません。
以前一番熱い5月にミャンマーを旅行したとき、バガンで昼過ぎ自転車を漕いでいて暑さとお昼に食べた料理のせいでフラフラになったことがありますが、そのときでも四十数度ではなかったかと思います。

ニュースでは「夜は省エネのため停電になるので冷房が使えず・・・」とありました。
昼間はちゃんと電気が使えるなら、ミャンマーやバングラデシュよりまだましかも・・・と思い、ネットのサイトでパキスタンの様子を紹介されている首都カラチ在住の方に訊いてみたところ、「とんでもない。真昼も毎日何時間も停電します。」とのこと。
そうでしょうね・・・。

停電の多い国ではジェネレーター(自家発電機)が必需品ですが、燃料費の問題があって入居者の少ないアパートでは使ってもらえないこともあるみたいです。
ミャンマーの安宿をデイユースで昼間使用したときも、窓のない部屋は真っ暗、ドライヤーも使えない・・・ということもありました。

パキスタンというと先月12日前後、ムシャラフ大統領と対立して解任されたチョードリー最高裁長官の問題で死傷者も多数でて騒然としていましたが、その後はどうなたのでしょうか・・・。
公共の場での5人以上の集会が禁止されたという話は聞きましたが、その後の続報が入らないところをみると、ムシャラフ大統領側が押さえ込んでいる状況でしょうか。
まあ、52℃にもなってくるとデモもできませんから、その意味ではムシャラフ政権には好都合でしょうか。

ムシャラフ大統領は確かに強権的な軍事政権ですが、一方で民族間の対立、イスラム勢力なども存在する国で今彼がいなくなると・・・という懸念もあります。
安定と民主化の問題は多くの国で悩ましい問題です。

写真は前記のカラチ在住の方が、チョードリー最高裁長官の問題で荒れる様子を放映する現地のテレビを撮影してネットに掲載したものの一部です。
詳しくはhttp://4travel.jp/traveler/tougarashibaba/album/10147459/ でご覧ください。

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スーダンのダルフール紛争 虐殺への国際対応

2007-06-13 22:12:24 | 国際情勢


今朝、朝の支度をしながらTVのニュースを横目で観ていたら、「スーダンがダルフール紛争に関連して、国連とアフリカ連合の平和維持活動作戦部隊を受け入れる」云々とあったような気がします。
(ちらっと見ただけなので、勘違いかも。)
ネットではそのニュースはまだ確認できませんが、先日アメリカが「もし受入れなければ、ダルフール地域上空を飛行禁止地域にする国連制裁を進める」と迫っていたことへの反応でしょうか。

日本ではあまり話題になることは多くありませんが、アフリカのスーダンでは、いわゆるアフリカ系住民(フール人)が多いダルフール地方で、アラブ系住民の民兵組織が殺人・レイプ等の“虐殺”を行っており、アラブ系が実権を握る政府がこの虐殺を支援していると言われています。
死者は数万人から20万人、難民は百数十万人から二百数十万人とも言われていますが、その被害実態はよくわかりません。

問題の背景には、砂漠化の進行による牧草地の減少が農業を中心とするアフリカ系フール人と遊牧民であるアラブ系住民の対立を招いたこと、更に遡ればかつての宗主国イギリスの地元民族同士を争わせる分割統治の影響等もあろうかと思います。
現在の状況は抵抗する側も組織が複数存在し、互いに争う複雑な事態になっているようです。

この事態に対し、スーダン政府は国連の介入を拒否してきました。
「紛争は隣国の挑発者によるもので、スーダンは被害者である。国連PKFがスーダンに侵入したら、武力攻撃する」と主張してきました。
国連にかえてアフリカ連合の平和維持活動が介入したものの、財政難等により実効があがっていませんでした。
2006年にはアフリカ連合と抵抗組織一部およびスーダン政府との間で“ダルフール合意”が成立しましたが、その後も被害は収まらず、この合意を認めない組織とアフリカ連合が対立するといった更に複雑な状況を生んでいます。

同じアフリカの“虐殺”というと、1994年のルワンダのジェノサイド(約80万人が虐殺されたとも、1日で国民の10人に一人が殺されたともいわれますが、こちらもその実態はよくわからないところがあります。)を思い出しますが、ルワンダでは「(介入が義務付けられた)“ジェノサイド”ではなく“ジェノサイド的行為”だ。」として国連の介入に反対したアメリカは、スーダンでは積極姿勢に転じたようです。
ルワンダには何も資源がなく、スーダンには石油があるため・・・という意見もあるようですが。
実際、中国はスーダンにおける石油権益保護のため一貫してスーダン政府寄りの姿勢をとっており、国際社会の統一行動を著しく難しくしています。

いろんな思惑があるにせよ、いろんな主張があるにせよ、先ずは十万人単位の住民が殺され、レイプされ、土地を追われる現在の事態を一旦緊急に止める必要があります。
ルワンダでは虐殺される人々を見殺しにした国際社会ですが、同じ過ちはしてほしくないと考えます。
国際社会では「スーダン政府=虐殺者」的なイメージが定着していますが、彼らにも言い分があるのであれば、一旦事態を止めたうえで意見・利害を調整すべきかと思います。
喧嘩の仲裁としては、今現在馬乗りになって殴りかかっている者を先ず止める、必要なら1・2発殴ってでも止めることが必要でしょう。
話はその後です。

こういう話になると、やはり日本の国際紛争における立場が悩ましくなります。
数十万人が虐殺されていると思われるとき、緊急・唯一の手段は実力行使だけしかない・・・というような情勢で、自衛隊の武力行使は認めないという立場がいかがなものか・・・。
他の国が行うのを支援する・・・とは言っても、何故日本自身が実力行使して事態の打開に寄与しないのか・・・手を上げる国がなければずっと傍観しつづけるのか・・・という疑問はやはり残ります。

国連のお墨付きを得た介入というのは、今回もそうですが、なかなか実現できない・・・という現実問題はありますが、仮に国連合意がある場合は紛争停止の緊急介入として自衛隊の武力行使も必要になるのではないか・・・ルワンダでの国際社会の見殺しの件以来、そんな気がしています。
なんだか、イラクへ侵攻したアメリカと同じような理屈にもなってくるようで自分でも釈然とはしませんが、さりとて現実に存在する虐殺の不条理・理不尽を「グルメ料理がどうした・・・、セレブな生活がどうした・・・」なんて言いながら見過ごしていいものか?

関連:http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/m/200707
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タイ前首相の資産凍結 旅行者には見えない世界

2007-06-12 16:04:31 | 身辺雑記・その他


タイの前首相タクシン氏の国内資産凍結のニュースを目にし、その金額に正直驚きました。
21銀行口座で529億バーツ(約1850億円)だそうです。

1850億円という資産は日本でもとんでもない大金ですが、タイの物価水準・所得水準を考えれば、タイ国内では1兆円に近い金額のイメージではないでしょうか?
タクシン前首相が昨年9月の軍部クーデターで追放されたことは知っていましたが、こんなお金持ちであることは知りませんでした。

この資産はタイ最大の通信グループ株を売却して得た利益約2560億円の“一部”だそうで、この売却益に対する課税が約8700万円しかなされなかったことが国民の批判を浴び、その後の議会解散、総選挙、野党の選挙ボイコットなどの政治的混乱そしてクーデターへと展開するところとなりました。

改めてタクシン氏についてネットで少し調べてみると、もともとは警察官出身(この警察との関係がその後随分生かされたみたいです。)ですが、アメリカに留学して刑事司法博士を取得しています。
以前からの副職で巨額の富を稼ぎますが、その後不動産事業、警察向けコンピュータ貸出事業で巨額の負債を抱えます。
しかし、携帯電話事業が大当たり。タイ一番の富豪になったそうです。
なおこの間、身分はずっと警察官のまま。警察を辞めたのはほんの20年ぐらい前です。
警察官の副職で大富豪になってしまうこと、何回かの失敗にもめげず立ち直るところはやはりただ者ではないと言うべきでしょうか。

彼の政治は、医療制度改革(誰でも1回30バーツの低額で病院受診できる制度)や一村一製品運動、麻薬・風俗店取締り強化など地方・低所得者層には非常に受け入れられたようです。
失脚直前でもバンコクなど都市部の比較的裕福な層からの批判にもかかわらず、地方の農民等には支持されていたようです。
昨年2006年の1月にチェンマイを旅行しましたが、チェンマイはタクシン氏の地元です。
「いい道だね」とガイドに言うと「タクシンのおかげだ。」と答えていました。
有力政治家の地元の道路が良くなるあたり、日本もタイも同じだね・・・なんて感じました。

一方で、2003年には麻薬一掃作戦と称して、ブラックリスト掲載者を軍隊・警察により強制逮捕・処刑したそうです。
逮捕者は9万人以上、民間人の死者は2500人以上だったそうです。
タイには3回ほど旅行したことがありますが、そんな強権的な政治が行われているとは全く感じられませんでした。
昨年のクーデターにしても、「ヘー、あのタイでねー・・・」なんてピンとこない感じがしたものです。

数日程度の物見遊山の観光客の印象なんて所詮その程度のものです。
通常の観光では社会の抱える問題等に触れることは殆どありません。
ただ、そんな観光旅行でも何らかの馴染みができると、今回のような「タクシン氏の資産凍結」といった片隅の記事、多くの方が気にもとめない記事にふと目がとまったりすることもあります。

写真は2006年正月に旅行したタイ・チェンマイの古寺“ワット・チェディ・ルアン”です。
http://4travel.jp/traveler/azianokaze/album/10049191/
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中国社会の闇 最近の話題から

2007-06-11 21:34:48 | 国際情勢


昨日TVで中国の一人っ子政策のひずみを取り上げた番組をやっていました。
地域によっては、特に農村部においては、生まれる子供の男女が女1に対し男が1.3を超える異常な数値になっているとか。
地方では男の“跡取り”を希望する風習が根強く、出産前に女とわかると中絶してしまう、生まれてからでも“捨ててしまう”といったようなことが横行している結果だそうです。
女性の人権というか生存権の問題ですが、このような男女比のアンバランスは一方で成人後は今度は男性にとっては嫁不足をもたらし、人身売買や誘拐で女性をよそから連れてくるといった事態にもつながるようです。
中国政府は女性しか子供がいない場合、親を扶養する負担を援助するなどの措置もとっているようですが、農村部・地方ではなかなか事態は好転しないようです。

一人っ子政策については、いびつな人口構造がもたらす将来の深刻な高齢化社会の問題、一人っ子が甘やかされて育つ“小皇帝”の問題、二人目以降を戸籍にいれず隠れて育てる“黒孩子”(闇っ子)の問題等が以前から指摘されています。

広西チワン族自治区で起こった一人っ子政策にからむ暴動も広く伝えられているところです。
それまであまり一人っ子政策が厳しく行われてこなかったこの地域で、上層部からの指摘もあり地方政府が強権的・暴力的に女性の不妊手術、年収を大きく超えるような違反金の取立てを住民に迫ったそうです。
不妊手術のために力づくで女性を連れ去る。
罰金が払えないときは家財道具・家畜を持っていくようなことも日常茶飯事だったそうです。
これを怒った住民数千人が役所を包囲し、放火するなどの騒ぎになり、またこの鎮圧に武装警察部隊が出動し住民を殴打しているなど・・・。

一人っ子政策とは関係ありませんが、重慶で花を売っていた夫婦を立ち退かそうと市職員がスコップで夫の頭を殴り、これがきっかけになって数千人規模の住民と警官隊の衝突があったことも昨日新聞に掲載されていました。

政策云々の以前に、まるで三国志か水滸伝の世界みたいで溜息が出ます。
長い歴史的視野で眺めれば、専制国家の圧政、外国列強の侵略、軍閥の割拠、全土を覆う戦乱等の困難のもとで長く食うや食わずの生活を余儀なくされていた中国の民衆が、現在の国家体制になって、大躍進政策や文化大革命といった問題を経験しつつも、とにもかくにも十数億の民が食べられるようになったこと、都市部・沿岸地域では日本などと遜色ない消費文化が見られるようにまでなったことは評価すべきかと思います。
しかし、急速な経済発展の裏では深刻な闇がまだ多く残されていると思わずにはいられません。

中国は何回か旅行したり立寄ったりしていますが、公共道徳とかサービスの精神とか、確かに以前に比べれば改善されてきたように感じます。
しかし、最近報道された医薬品・食品の安全性の問題や、いわゆる拝金主義的風潮の広まり、今回のような地方での騒乱などを見ると、経済・社会の発展に伴うべき精神的なモラルみたいな面が欠けているように感じられます。

日本で言えば仏教の教える慈悲の心、儒教的な秩序など、さらには物質的なものに対する無常感、恥や名誉を重んじる風潮など、西洋世界で言えばキリスト教の影響・・・でしょうか。
社会の一人ひとりの行動を規律するなんらかの価値観・規範が存在しないと、経済的発展・社会の変化は「自分さえよければ」「拝金主義」「弱肉強食」といった世界になってしまいがちです。

中国では価値基準として本来共産主義的理念があるはずです。
やはり昨日、北京の水不足を伝えるレポートも観ました。
生活水準の向上、オリンピックに向けた工事で今北京は水不足が問題になっているとか。
工場などの水を多量に消費する施設を監視し、市民に節水を呼びかける水務局の女性職員の奮闘振りがメインでしたが、一番印象に残ったのは貯水量が減少したダム周辺の農村の問題。
農民が農業用水を多量に必要とするスイカの栽培などのためにダムの水を使えるように村長に掛け合います。
村長は「ダメだ。首都北京の水を確保するためには、我々の小さな犠牲は我慢しよう。みんなでオリンピックを成功させよう。」、カメラが回っているその場で反対する者はいませんが、多分納得していない農民も多かったのでは。
その一方で北京では、豪華なマンションを購入した住民が2箇所あるバスルームを誇らしげにカメラに紹介しています。庭の木々には大量の水が。

ダムの水利用の問題にしても、昨今よく伝えられる土地収用に関する住民とのトラブルにしても、共産主義というよりはご都合主義的な国家権力の行使みたいな気もします。
最近地方幹部の間で風水師をお抱えにして、自己の出世や政敵の失脚を画策することに夢中になる者が多いとか。
さすがに党中央は、「一部党員、幹部の中には党に対する精神が揺らぎ、マルクス・レーニンを信じず鬼神を信じている」と批判しているそうですが。

とにかく隣人、それも図体のでかい隣人ですから、うまくつきあっていける国になってほしいものです。
まあ、日本もやれ社保庁とかコムスンとか嘆かわしい話にはことかかない訳で、えらそうなことを言っても「目くそ、鼻くそ」の類である自戒の念は必要でしょう。

そう言う話は別にして、北京は大昔ツアーでまわったのと、最近ではトランジットを利用してちょっと覗いただけ。
今年か来年にでもきちんと旅行してようかな・・・。
写真はご存知上海。
外灘対岸の浦東地区は昔は建設中の何もないところでしたが、今はごらんのとおりの未来都市というか何と言うか様変わりです。
あまりいい趣味には思えませんが、好みの問題でしょう。
http://4travel.jp/traveler/azianokaze/album/10022073/
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“官”と“民” 「カイカクするのは、ココロです」“県庁の星”

2007-06-10 13:29:44 | 身辺雑記・その他


社保庁に代表されるように、公務員の“お役所仕事”的な責任感の欠如は“今更・・・”の状態。
一方、民間はと言えばコムスンのように“利益のためなら何でもあり”があたりまえ。
これでは“民間活力”“構造改革”と言っても行きつく先は弱肉強食の“ジャングルの掟”が支配する社会にしかなりません。

昨夜TVで“県庁の星”とういう映画をやっていました。
形式主義・書類第一主義・“「前向きに検討します・・」というのは何もやらないという意味”というそんな県庁でひたすら上を目指すエリート職員が織田祐二。
彼が大規模企画に関連する「民間の知恵を学ぶための」官民交流人事の一環として研修に出されたのが地方の傾きかけたスーパー。
やる気のない店員、儲け第一、食品安全なんて・・・という世界。
スーパー店員としては全く使えない彼を指導するのがパートの若い女性、柴咲コウ。
悪戦苦闘、挫折などのなかでやがてスーパーも変わり、自分も変わり、やがて県庁にもどり・・・という映画。

“官”も“民”もだめという現実世界の状況を反映して、偶然ですがタイムリーな放映でした。
もちろんエンターテインメント(かなり地味な)ですから、シリアスなことを言ってもお門違いでしょう。
映画としての評価は他に譲ります。
いまどきこんな地味な映画をお金をかけてつくるというのは、ある意味大変勇気あることかと思います。

作品の終盤で、意識改革した主人公の織田君は「組織や制度をいくら変えてもダメです。その中で働く人間の意識を変えないと」「改革するのはココロです」みたいなことを言っています。
まったくもってそのとおり。
でもなかなか人間は変わりません。

作品でもスーパーが変わるきっかけになったのは消防・保健所の監査。
変わらないと存続できないという危機感でした。
県庁にもどり議会議長や知事に迫る際は、「このままではマスコミの批判は地方の官民癒着に必ず及びます」という脅し。

やはり意識改革を促すものは第一に“理念から逸脱する行為を許さない”明確なルール。
そしてそれを監視するチェック機構。
最終的なチェック者である国民がチェック可能なようにする情報開示。
更に言えば、単にチェック・批判するだけではなく、努力しているものには評価を与える仕組み。
(民間なら、消費者が“供給者の姿勢”を選ぶ方向への誘導など)

意識変革のためにはそういった枠組みが必要かな・・・なんて織田君・柴咲さんを見ながら思った次第です。

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