テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

― 暗渠の燈火 ―

2018-05-18 22:30:46 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでス!
 うわわァ、おどろきィ~でスゥ!」
「がるる!ぐっるるるるる!」(←訳:虎です!カッコいいねえ!)

 こんにちは、ネーさです。
 先日のこと、JR八王子駅の連絡通路ですれちがったのは、
 プロバスケットリーグ《八王子トレインズ》所属の選手さんたちでした。
 なんたる身長!なんたる筋肉!手足の長いこと!
 NBLの選手さんもあんな感じなのかしら~♪と二度見いたしましたが、
 そう、駅とは不思議な出会いがある場所です。
 本日の読書タイムも、
 《駅》が軽からぬ意味を持つ物語を、さあ、どうぞ~!

  



           ―― おもかげ ――



 著者は浅田次郎(あさだ・じろう)さん、2017年11月に発行されました。
 井筒啓之さんによる鮮やかなブルーの表紙画は、
 いったいどこを描いたものか、
 御本を手にすれば判る、でしょうか――

「これはァ……ちかてつゥ?」
「ぐるるるがーるるる?」(←訳:メトロのホームかな?)

   国鉄はJRに変わっても馴染めたが、
   東京メトロはいつまでたっても『チカテツ』だ。

 と、胸の内で呟くのは、
 竹脇正一(たけわき・まさかず)さん。

 その日その時、
 メトロの車両内で竹脇さんが
 ピカイチに目立ちまくっていたのは間違いありません。
 上等なスーツに、
 腕には大きな花束。

「ふァいッ! めだちィまス!」
「がるぐるるぅがる!」(←訳:でも捨てちゃダメ!)

 ええ、お花を捨てるなど思いもせず、
 電車に揺られていた竹脇さんだったのですが。

 ふっと、立っていられなくなりました。
 バーを握ったまま、身体はずるずると下方へ――

「おじさんッ、しッかりィ!」
「ぐるがぅる!」(←訳:車掌さぁん!)

 居合わせた周囲の人びとに援けられ、
 意識を失った竹脇さんは救急搬送されます。
 集中治療室に運ばれて、
 奥さまに付き添われ、
 家族、友人、知人さんたちが
 彼の枕元を訪れては、涙、また涙。

「びょういんッ、だもんねェ~…」
「がるるぅるるる~…」(←訳:泣いちゃうよね~…)

 一方、そのころ。
 竹脇さんの意識は、というと。

 かろやかに病室を離れ、旅の途にありました。

「うゥッ?」
「ぐるる?」(←訳:まさか?)

 黄泉路への旅か、天国への旅路か――
 ってことではなくて。

 はるかな過去へ、なつかしい過去へ。
 重苦しくも、苦々しくも、
 忘れたふりをしていてもやっぱり忘れられない、
 ついそこの昨日、遠い昨日へ。

「ちょッとォ、おじさんッ!」
「がるるるぐるる~!」(←訳:かろやか過ぎる~!)

 一見マジメな文芸作品を装いながら、
 それはあくまで仮の姿。

 羊の皮をかぶった狼のように、
 第二章以降の展開は
 ほとんどSF路線を走ります。
 いえ、突っ走ってます。

「ぼうそうゥ、しないでねッ、おじさんッ!」
「ぐるるるがるるる!」(←訳:のんびり行こうよ!)

 竹脇さんの意識――魂は、
 旅の車窓にどんな風景を見、
 何を想うのか。

 彼の乗っている列車は、どこへ着くのか。

 じっくりゆっくり読みたいけれど、
 いつの間にか
 猛スピードで読みふけっているのに気付かされる
 極上の“ものがたり”、
 全活字マニアさんにおすすめです。
 ぜひ、一読を♪


 
コメント
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