現在レンブラントと並び称される17世紀のオランダ人画家、ヨハネス・フェルメール Johannes Vermeer の特別展が、オランダはデンハーグの王立マウリッツハイス Mauritshuis 美術館で開催中で、このイースター休暇中の4月7日に行ってきました。
寡作だったフェルメールの現存作品35点のうち、欧米7ケ国から集めた23点を一挙に展示しています。 今後数百年間はこれだけの数が一堂に展示される事はないだろうと(これを特別展と呼ばねば他に特別展と呼べるものは無いだろうとも)言われる程の「超」特別展です。
更に、欧州美術界ではこれまた超異例の、何と入場「日時」指定の前売り券35(一説には50)万枚が早々と完売。 同美術館は小さい為、隣接の臨時パビリオン(入退場口、食堂、ミュージアムショップ、荷物/コート預り場、等に使用)を建てたり、普段は午後5時までの開館時間を午後11時まで延長する日を設定したりと、日時指定の前売り券の完売で日(時)によっては当日券が無い場合もあるという異例ずくめの特別展です。
個人的には、フェルメールの現存作品中欧州にある22点のうち、英国エリザベス女王所有の1点とアイルランドとロンドン郊外にある各1点を除く19点は既に各地の美術館で観ていたのですが、ロンドン郊外にある1点を除く未鑑賞の欧州の2点と今回アメリカから来た7点を中心に、全23点を文字通りの意味で「気合いを入れて真剣に」2時間半かけて観てきました!
少し専門的になりますが、正確な透視画法でも有名なフェルメールは、画面内の消失点にピンを差しピンにつけた糸を使って正確な線を引いて描いた事が今回の特別展に向けた調査(X線写真)で13作品の消失点に残っているピン穴痕で新しく確認されたり、画面外にある両側の距離点が年代を経る毎に次第に遠くなり、画面上の視角が初期の作品の約53度から晩年の作品の約22度へと小さくなって遠近効果がよリー層明確になっている事、更に2点しか存在しない風景画の一つ「デルフト眺望」ではレンガの粗い質感を出す為に絵の具にレンガの粉を混ぜた事が今回の特別展に向けた修復作業で確認された事、など技術的にも新発見があり、その意味でも横並びで比較できた本当に感慨深い特別展でした。
同美術館所有のレンブラントの出世作「トゥルプ博士の解剖学講義」など、その存在がかすんでしまう程の、本当に掛け値なしに充実した特別な一日でした。
ちなみに、入場料は22.5fl (ギルダー≒80円 ←1996年当時)、特別展専用カタログ(英語版あり)57.5fl、展示作品の絵葉書1.5fl/枚、ポスター15fl/枚、など。
尚、私的余談ですが、その夜は入場券が手に入つた幸運と作品への感激/興奮が続いて、更にあまりに見つめ過ぎて眼が痛くて(?!)眠れない夜を過ごしました。
私が観ていない残り7点中6点はアメリカにありますので、いずれはアメリカヘ観に行きたいものだと愚妻と話合っています。
<注意>
会期は6月2日までですが、上述の事情から当日券が無い日時もありますので、無駄足になるかも知れない事を覚悟して行って下さい。 (もう既に当日券のみの販売で、例えば今日行って明日/明後日の入場券を入手する事はできません。 当日行ってともかく行列に並んでみるしか道はありません) 私の場合は時間延長の日だった幸運もあって、4月7日の午後12時半頃窓口に行って4時間程行列に並び、何とかその日の午後7時入場の当日券が入手できました。
デンハーグの近くには、キューケンホフのチューリップ公園、キンデルダイクの風車、市内にあるミニチュアの町マドローダム、デルフトのデルフトブルー陶器、などの観光/買物スポットがありますので、全くの無駄足にはならないと思いますが・・・。 ともかく、行かれる方の幸運を祈っています!
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(※ある団体の会報誌に掲載。 1996年4月12日記。 個人情報が判別できる箇所は修正/削除)