ドラマを見ない自分が毎週録画をして、見ている番組がNHKTVの「火花」。又吉直樹の芥川賞受賞作品。小説も読まない自分が珍しく読んだ話題作品で、どのようなドラマになっているかが知りたかったのだが、リアリティに富んだものになっていることに驚く。破天荒な神谷に惹かれるまともな徳永の心を微細な動きを画面で素直に描き出している。人は誰もが努力して生きようとするが、結果は出ずに、焦り自暴自棄になり、また必死で這い上がろうとする。芸人の世界だからそれがまともに現れる。そこを表面上は荒っぽく、かつ秘められた繊細さで表現する技術は登場する役者俳優の演技としてみるべきものを感じる。漫才コンビの練習が日常の会話そのものであり、その掛け合いテンポの心地良さに驚く。神谷が酔っぱらって歌う「太鼓の太鼓のお兄さん、真っ赤な帽子のお兄さん」が耳にこびりついて、離れない。生きている現実に耐え切れず、今すぐに、大いにはじけたいけれど、それもできずに耐えながら、コツコツと小さな努力をしているのが人間だなと思う。世界情勢や国内事情に複雑で多大な問題が発生しているが、一人一人の心の中にも小さいけれど、奥深い葛藤を抱きながら生きているものであると感じた。