朝9時半頃、始発停および終点となる某駅で… 10名ほどのお年寄りが乗った。バスに乗らずに、バス停の時刻表を見ていたお爺さんが「これは… ○○停に行かんよねぇ?」と言ったので、私は「いいえ、行きますよ」と答えた。
お爺さんが「そりゃありがたい。乗せてもらうわ」と言いながら乗ってきたのだが、小刻みに震える右手には“コーヒーの紙コップ”が… お爺さんは約10分後の★★駅行きのバスに乗って○○停へ行くつもりで、まさか私のバスでも行けるとは思っていなかったようで… コーヒーは紙コップ一杯に入っていた。
私は「頼むから、こぼさないでねぇ~ 紙コップの飲み物は、ちょっとした揺れでもこぼれることがあるから…」と思いながら、発車時刻までの約2分間… 私の目はお爺さんのコーヒーに釘付けだった。
お爺さんは、遥か遠くの空中を見つめたまま、熱いコーヒーを少しずつ… かつ急いで飲んでいるようだった。私は「発車時刻まであと1分… それまでに飲み干すのは無理だろうなぁ~」と思っていたのだが…
発車時刻になり、私が前扉を閉めた時には、すでに紙コップが45°以上に傾けられていたので、私は「おぉ~ そこまで飲んでくれれば、そう簡単にはこぼれないだろう」と安心してバスを発車させた。そして、2つ目の○○停に到着すると、お爺さんは“空になった紙コップ”を手に、「ありがとう」と言いながら降りて行った… 男だねぇ~! ハハハ…