『少年H』は、妹尾河童の自伝的小説。
1997年(平成9年)に『週刊こどもニュース』でアニメ化、1999年(平成11年)と2001年(平成13年)にスペシャルドラマ化、2013年(平成25年)に映画化されている。
累計発行部数360万部を記録し、朝日新聞はじめマスコミが絶賛。高校、大学の入試問題にまで利用されている。
ところが、その内容が、山中恒氏によって「当時としては考えられられない、ありえない言動、事実ではない箇所が何百か所もある」と指摘されて問題になっている。私も映画を観たが、疑問だらけの内容だった。中学で「実弾射撃演習」なんか無かったのだ。
同世代で児童文学作家の山中恒は、「作中に夥しい数の事実誤認や歴史的齟齬がみられること」や、「主人公やその家族の視点が当時の一般的な日本人の感覚から大きく乖離していること」、「戦後になるまで誰も知らなかったはずの事実をまるで未来からでも来たかのように予言していること」、さらに「自身が編纂に関わった書物の記述がその誤りの部分も含めてまるごと引用されている点」などを自著『間違いだらけの少年H』で指摘し、『少年H』は妹尾の自伝でもなんでもなく、戦後的な価値観や思想に基づいて初めから結論ありきで描かれた作品であると看破し、「年表と新聞の縮刷版をふくらませて作り上げたような作品」「戦争体験者の酒の席での与太話を小説風にまとめただけのもの」と酷評した[4]。さらに、2001年(平成13年)に山中は『「少年H」の盲点』という批判書を出版した[5]。
帝国議会での斉藤隆夫の反軍演説である。その演説内容については、戦後斉藤が亡くなった後に始めて明らかにされたにもかかわらず、作中ではHの父親の盛夫が知っていて、それをHに説明している。独ソ不可侵条約でポ-ランド分割占領の秘密議定書も、つい最近になってわかったことなのに、何故か隆夫は知っていて、それを聞いたHは、「ドイツは狡い!」と作中で述べる。間違いの多くは、『昭和二万日の全記録5巻・一億の「新体制」』(講談社)の記述に促した所が目立つという。戦後になって判明したことでも、こういった本では記述されているから、当時の了解事項との間に当然違いが出てくる。それに気づかずに参考にしたところが間 違いのもとになっているのだが、各種の年表の記述間違いも多いので、年表を参考にして描かれたところは、間違いをそのまま映し出している。