ケイの読書日記

個人が書く書評

宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」

2020-09-04 14:34:43 | その他
 こんな有名な童話なのに、私は初めて読んだ。あまりにも有名なので、だいたいのストーリーは分かってるから、読んだような気になってたけど、こんな切ないお話なんだ。

 ジョバンニは(イタリア風の名前だが、イタリアが舞台という訳ではない。どこか架空の町。西洋と東洋がごちゃ混ぜになっている。宮沢賢治はそういう作品が多いと思う)子どもだが、父親が漁に出て帰って来ず生死が分からないので、家計を助けるために、活版所で働いている。だから友達と遊べなくなってしまったし、意地悪なクラスメート・ザネリはジョバンニに嫌がらせをしてくる。
 幼馴染のカムパネルラは、それを見ると悲しそうな顔をして決して同調しないけど、たしなめることもしない。
 でもジョバンニは、そんなカムパネルラが心の支えになっている。
 現代の教育現場では、カムパネルラみたいにイジメに同調しなくても、積極的に注意しない子は、イジメの同調者と言われるみたいだが、注意なんてなかなかできないよ。そのザネリとも付き合いがあるんだもの。

 このジョバンニが、本当に道徳の教科書に載るくらい健気な子なんだ。父親が不在、母親は病気、お姉ちゃんはお母さんの代わりに料理を作ったり家事全般をやっている。ジョバンニはお給料をもらうと、パンと角砂糖を買う。病気のお母さんに飲ませる牛乳に角砂糖を入れて甘くする。ほんの少しの贅沢。

 星祭りの日、ジョバンニは学校が終わってから働きに行ったが、他のクラスメートは川へ灯火を流しに行った。そこで水難事故が起こり、カムパネルラはザネリを助けようとして自分が溺れてしまう。
 その話を後から聞いたジョバンニは、どうにも悲しくて、おっかさんの待っている家には帰らず丘の頂に来てしまう。そこでジョバンニは死んだはずのカンパネルラと小さな列車に乗っていたのだ。いつの間にか。そして…。

 宮沢賢治の宗教観や生死感が色濃く反映されている話だと思うが、私はそれよりも、この幼馴染の2人の間柄というか関係性に強く心を惹かれる。後から列車に込んできた女の子とカンパネルラが仲良く話していると、ジョバンニは拗ねちゃうのだ。かわいいね。
コメント
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