2009年、英国ロンドンの北西にある町で
77歳の女性が自宅で遺体となって
発見されました。
彼女は無類の買い物好きだったようで
長年の買い物で高く積み上げられていた
商品が崩れて下敷きになったことが
原因のようです。
依存症には、「物質依存」「人間関係の依存」
「行為・プロセスの依存」の3つがあります。
「行為・プロセス依存」は、
ある行為をする過程で得られる刺激を求めて、
その行為を止めようと思わなかったり、
止めようと思っても止められない状態に陥ることで、
買い物依存症もその一つです。
買い物依存症の状態にある人は、
買い物をするという行為によって
生き辛さやストレスを紛らわそうとします。
物質欲を満たすための行為であるなら、
望む物質を手に入れることが喜びであり、
望む物質が手に入れば
欲求が満たされ心の衝動は治まります。
しかし、
買い物依存症と言われる状態にある人は、
何か素晴らしい品物を手に入れたとしても
欲求衝動は治まることはありません。
物質を求めているのではなく
買い物をすることを
心が求めているからです。
しかし、
何か買い物をすることで得られる快感によって
心の中で常に感じる漠然とした苦痛、渇望感は、
紛れはしますが一時的なものにしかなりません。
限られた収入で
買い物を際限なく行うことが出来ませんから、
借金をするようになります。
借りられるだけ借金をしてでも
次々と買い物を続けてしまうことで
やがて限界を迎えます。
依存症の要因として大きなものとして
養育環境の影響と考えられていて、
幼少期に十分に
「抱っこをする」「暖かい声をかける」
「スキンシップをする」「甘えさせてあげる。」等、
子供が両親から暖かい関心を持たれていると
感じられるような体験が十分でないと、
心の中に安全な場所、母港のような場所が持てず、
安全、安心な感覚を十分に持てなくなります。
対人関係では
過剰に相手に依存したり、逆に人を遠ざけたり、
自分で全てを抱え込んだり、
他人を一切信用しなくなる等の影響が出ます。
それらは、
「自分は自分らしく存在しても良い。」
「自分は誰かから求められたり必要とされる存在だ。」
と言うような感覚が弱い状態です。
と言っても、
心の中の安全な場所、母港が育たず
本人の心の中に無い訳ではなく
十分でないかも知れませんが自然と育っていて
それらを見失っている状態だと、
私は、考えています。
その安全、安心感の欠如からくる
不安感や不全感や苦痛を
買い物という行為で得られる快感で
必死に紛らわせようとしているのが
買い物依存症の状態です。
また、成長して職場や家庭での環境の変化や
何か大きなショックを受ける出来後を体験することで
買い物依存症を引き起こすことがあります。
買い物依存症を克服するための
第一歩は、自分が買い物依存症の状態であることを
しっかりと自覚することになります。
これが簡単なようで簡単ではありません。
多くの場合、周りの他人(両親、夫や妻)が
本人を連れて相談に来て頂きますが、
元々自己評価(自己愛、自己受容)が
低いことが大きな要因なので
本人が買い物依存症であることを認めることは、
本人の心の穴をさらに大きくしてしまうような
不安や怖れ。
長く目を背けていた
本当の悲しみを直視することへの不安や怖れから
両親や家族の手前、施療に通うことに賛成しても
その施療への取り組みは、
表面的なものになることがあります。
逆に言うと、
本人が買い物依存症の状態であることを
しっかりと認めることが出来れば、
施療行程の半分以上は、
完了したと言っても良いかも知れません。