日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

安心を買う消費を考えよう

2012-04-01 19:11:09 | ビジネス
先日朝日新聞の「オピニオン」に、デフレ理論の第一人者である小野善康さんがとても興味のあるコトが書かれていた。
それは今の経済的不振の理由は、「(不安だから)お金を溜め込みすぎている」というコト。
この指摘は多くの人がされていることだが、このコラムの視点が違ったのは「将来の不安があるから」というのではなく、バブル期に起きた不動産などへの過剰な信頼が、お金に移っただけでその本質は、20年以上経っても何も変わっていない、という指摘だった。

もちろん「将来の不安」というコトはよく理解できる。
「100年安心プラン」と時の与党が胸を張った年金プランは数年で崩壊し、先月問題が表面化したAIJのように、「何を信用したら老後の経済的安心を得られるのか?」というのが、今の状況なのだと思う。
だからこそ、「たんす貯金でも良いからお金を貯め込む」というのも分からないわけではない。

だが視点を変えると、とにかく経済が動かなくては雇用も生まれないし、税収も増えてこない。
税収が増えることで、消費税の税率が上がることも抑えられる可能性も無いわけではない。
消費税に関しては、食品など日常生活に最低限必要なモノとブランド品のようなモノと同じ税率でよいのか?という議論もされる必要もあると思う。
ただ、年金崩壊で一番困るのはおそらく「お金を貯め込むことが出来ない人」で、「お金を貯め込める人」というのは、その実、さほど心配しなくても老後が安泰という方たちなのではないだろうか?

面白いデータがある。
2年ほど前に米国のプリンストン大学が「年収と幸福感について」という調査だ。
ITメディアニュースより「お金があるほど幸福」ではない
最近では、ブータンの「幸福度」という点も注目されているのは、ご存知のとおりだ。
むしろ、ある一定額以上の収入(と言っても「億」という単位だが)があると、財産が減ることが怖くなる、というデータもあるようだ。

とすれば、せっせとお金を溜め込んでいる人たちに対して「安心できる消費」という提案をしていく必要があると思う。
「安心できる消費」と言っても様々だが、例えば住宅リフォームなどがある。
阪神淡路大震災以前に建てられた住宅は、耐震面などで建替えが迫られている。
であれば、バリアフリーの住宅にして「生活の安心」を確保するという考えもあるだろう。
安心・安全・おいしいを謳う食材宅配の利用なども「生活の安心」かも知れない。
同じ「生活の安心」でも、人によっては「健康」という方もいらっしゃるだろう。
ならばサプリメントなどではなく、スポーツクラブや定期的な人間ドッグの活用という方法もある。
「病気になたら」と不安になってお金を貯めるよりも、検診を積極的に受け早期発見・早期治療をすれば、充実した老後を十分楽しめる、という安心を得られる、
他にも、健康のための旅行もあるはずだ。
どうしてもお金を使いたくない!というのであれば、若い事業家たちの支援に使いながら、その企業の商品・サービスを積極的に利用する、という方法もある。

少なくとも、「貯める(本当は「溜める」かも知れない)だけのお金」では、経済や社会の血液・血管であるお金にとっては「健康な状態」ではないはずだ。
「上手なお金の使い方」こそ、成熟した社会ではとても大切なことなのかも知れない。
なぜなら、残念なことに「貯めたお金は墓場に持って行けない」のだから。