日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

地産地消から地産地商へ

2012-04-19 20:09:09 | ビジネス
数日間のお休みを頂きました。

漫画・ビックコミックスピリッツに長く掲載されている「美味しんぼ」に、島根県の食材が取り上げられている。
私にとっては本籍地である島根県というコトもあり、久しぶりに読んだ。
その内容云々については、実際読んでいただくことして、ここで取り上げられているテーマの一つがとても興味深い。
というのも、島根県に限らず日本には「その地域限定食材」といわれる食材が、数多くあるからだ。

島根県の食材として取り上げられていたのは、「横田小蕎麦」と呼ばれる奥出雲の在来種の蕎麦、旧平田市周辺で栽培されている「出西生姜(しゅっさいしょうが)と生姜糖」(リンク先は、生姜糖を作っている「來間屋生姜糖本舗」)隠岐のあらめ(昆布の一種)などが紹介されていた。
いずれも生産量が少なく、全国的に有名な食材とは言いがたい(ただし「來間屋生姜糖本舗」の生姜糖は、最近では様々な雑誌の「お取り寄せ品」として取り上げられるようになってきた)。
そのため多くの食材は、地元で消費されることがほとんどだった。
いわゆる「地産地消」だ。

それが、高度成長期を経て地元の特産物を東京や大阪などで販売する、という動きが生まれてきた。
もちろん、都市部に提供されることによって全国区的に知れ渡り、人気商品となる農・海産物も数多く生まれた。
ただ残念なことに、今回「美味しんぼ」が取り上げた島根の食材は、他の地域での栽培などが難しいこともあり全国区になることもなく、地元でひっそり(?)と作られ続けてきたものばかり。
おそらく、全国にはこのような全国区になるコト無く地元で限定的に作られ、消費されている農・海産物が数多くあるのではないだろうか?

上述したとおり、20年ほど前であれば積極的に都市部を中心に全国に出荷する、という考えが主流だったと思う。
そのためにも高速道路や空港の整備が重要だ、という考え方もあったことは事実なのだ。
それは島根県に限ったことではないと思う。

しかし考えてみれば、確かに特産品ではあるかも知れないが、都市部に提供された時、その特産品の価値をどれだけの人が理解出来ただろうか?
高速代やガソリン代が加味された価格となる特産品だが、都市部の人から見れば単なる蕎麦や生姜にしか見えない可能性のほうが高かったはずなのだ。
むしろ、そのような特産品でその地域に人を誘導したほうが、同じ高速道路や空港を使うにしても、地域の産業としてはプラスになったように思う。

ここ10年近く「地元で取れた農水産物を地元で消費」という考えが、定着しつつある。
これからは「地元で取れた農水産物は地元で売る(=商売をする)」という考えに、変わっていくのではないだろうか?
そのためには、むしろ生産量が限られ、他の地域へ出荷することが出来ない特産品のほうが優位だと思う。
なぜなら「その場所に行かなくては味わえない食材」だからだ。