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「新疆綿」は、今やファッションだけの問題ではなくなった

2021-04-11 20:09:37 | ビジネス

Yahoo!のトピックスなどでも取り上げられている、H&Mの中国だけではなくベトナムでの「不買運動」。

朝日新聞:「H&M」不買、ベトナムでも HPの地図修正に反発

この記事を読んで「何故?」と、思われた方もいらっしゃるかもしれない。
しばらく前から、中国とベトナムの間では「国境問題」が起きている。
政治的には、中国とベトナムは「友好関係」であったはずだが、それぞれの経済的事情の変化により、かつてはベトナムから中国へ、ベトナム人が密流出していたが、現在では中国人が中国からベトナムへと密流出するような事態へと発展している。
元々、中国とベトナムとの国境そのものがあやふやであったことや、問題となっている地域が少数民族の居住地域で古来より自由に行き来をしていたなどの理由で、国境そのものが定まらなかった、という事情もあったようだ。

アジアの中でも経済発展が著しいベトナムとしては、いち早く中国からの支配(というと大げさだが)から独立したい、という意思があるはずだ。そのコトに対して「現在のアジアの覇権国」として自信をつけてきた中国としては、我慢ならないという部分があるのでは?と、考えている。
そのような微妙な関係を持つ両国でビジネスを展開する、というのは「あちらを立てれべこちらが立たず」というような状況を生みやすい、ということを今回のH&Mの不買運動は示しているように感じている。

このような問題とは別に、今世界のグローバルカンパニーと呼ばれる企業を揺るがしている問題というのが「新疆ウイグル自治区」における、中国政府の暴挙の数々だろう。
先週には、国際的人権団体が「中国ウイグル自治区での企業活動について」という質問状に対して、日本の企業がどのような回答をしたのか?ということが、話題になったばかりだ。
その中で(悪い意味で)注目を浴びてしまったのが、ユニクロを展開しているファーストリテイリングだろう。
ファーストリテイリング:新疆ウイグル自治区に関連する報道

「ウイグル問題に関して逃げた」という印象を与えてしまったことは、グローバルマーケットで事業展開をしているファーストリテイリングとしては、失敗だったという指摘がされる理由は「現在の状況の確認、今後この問題にどう対応していくのか?というヴィジョン」が無かったからだろう。
質問状を送ったのは、国際的なNGOであったコトを考えれば、その影響はファーストリテイリングが事業展開をしている国々の生活者にまで影響を及ぼす可能性も高いからだ。

今企業に求められているコトの一つは「SDGs」だが、それとは別に「ESG問題」ということにも積極的に取り組まなくてはならないからだ。
「SDGs」が社会に向けての活動だとすれば、「ESG」は投資家などに対する活動だ。
投資家などに対して、「企業がどれだけ社会・人権・環境に関して公平であるのか?具体的にはどのような活動をしているのか?」という説明責任が企業側に求められるコトだからだ。

と考えると「新疆綿」をめぐる問題は、既にファッション業界だけの問題ではなく、あらゆる企業が考え・慎重に対応しなくてはならない問題となっている、ということがわかる。
この問題が、今後の企業活動の転換点となるような気がしている。