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Fashionと中国のせめぎ合い

2021-03-28 20:08:38 | ビジネス

中国政府によるウイグル自治区の問題が、意外なところでも問題となっている。
それはファッション業界だ。
しかも日本のメーカーやブランドではなく、海外のブランドとの間で問題になっているのだ。
その一つが、H&Mに対する中国政府の猛反発だ。
WWDJapan:「H&M」に中国が猛反発、大手ECサイトらが取り扱い中止 ウイグル問題をめぐって

中国側が猛反発の動きを見せる半年ほど前、H&Mが「新疆ウイグル自治区拠点の縫製工場と協業しない」と発表したコトによる中国側の報復措置と考えたほうが良いだ
このウイグル自治区の問題に対しては、H&M以外の企業でも同様の動きが出ている。
例えば、アウトドアウェアとしてだけではなく、サスティナブル企業としても人気のある米国の「パタゴニア」もウイグル自治区からの素材調達を昨年ストップさせた。

日本の企業特にファストファッション企業では、このような発表をしていないこともあり、ファストファッションブランドであるユニクロや通販、ECサイトなどでは「made in China」を見る事が多い。
ご存じのように、この「made in China」の表示は、「中国で製造しています」ということを表しているのだが、実は日本でも「中国離れ」がゆっくりと進んでいる。
実は、カンボジアやベトナムなどで作られるアパレル商品が、徐々に増えているのだ。
その理由の多くは、中国での人件費の高騰だと思われるのだが、それ以外にも「縫製の丁寧さ」という点では、ベトナムなどの新興国のほうが良いという方もいらっしゃる。
そう考えると、日本でも「中国離れ」が進んでいきそうな気がするのだが、「H&M」や「パタゴニア」との大きな違いは、政治的な理由ではない、という点だろう。

だが現実には、日本でも「政治的問題」として、取り上げられる可能性があるようだ。
それは「新疆綿」と呼ばれるウイグル自治区で生産されている、コットンの中でも繊維が長くしなやかな素材が、SDGsの問題などと絡んで輸入されにくくなるかもしれない、という点だ。
WWDjapan :「新疆綿」の大きすぎる存在感 不使用ならアパレル生産は大混乱か

SDGsに関しては、今世界中で取り組みが進んでいることはご存じの通りだ。
企業によっては「SDGs」のピンバッチを社員に着けさせ、「環境と人権問題に積極的に取り組んでいる企業」というアピールをしているはずだ(アピールだけで終わりがちなところが、残念だが)。
SDGsの範囲は、環境問題だけではなく、人権などについても含まれている。
そのためSDGsを推進しようとすれば、当然「人権問題」にも向き合わなくてはならない。
その「人権問題」の中でも、現在中国政府による「新疆ウイグル自治区」に対する対応は、世界から批難を浴びるような残酷なものだ。
それは、かつてチベット問題よりも厳しい問題として認識されているかもしれない(中国政府が行っていることは、全く同じなのだが)。
その理由の一つが、「ウイグルの問題」には「中国経済」との関連があるからだろう。
WWDの記事にあるように、「新疆ウイグル自治区」での主な産業は「新疆綿」と呼ばれる綿花の生産とコットン製品の製造だ。
そして「新疆綿」というブランドは、既に確固たる世界的なブランドになっている。
そのためアパレル産業側としては「新疆綿」製品を扱いたいが、中国政府の「ウイグル自治区における政治的弾圧」は、SDGsを掲げれば企業として避けなければいけない問題となってしまう。
そのジレンマを「新疆綿」という素材は持っているのだ。

果たして「新疆綿」をめぐる世界のファッションブランドと中国政府のせめぎ合いは、ファッション産業全体に大きな影響を及ぼすことは違いないだろう。
とすれば、日本で生産される綿花の多くが、短い繊維であるため「新疆綿」のようなしなやかで光沢のある素材にはならない、と言われている「綿花」だが、品種改良などにより「新疆綿」に代わるような「綿花栽培」ができれば、日本にとっては大きなチャンスになるのでは?
かつて「綿花栽培」が盛んだった地域では、若い世代を中心に「日本の綿花とコットンの復活」という動きが、出ているのだから。




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