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カズヒロさんの「日本国籍を捨てた」発言は、今の日本の閉塞社会の問題点を表している

2020-02-11 21:29:42 | アラカルト

昨日発表があった、米国アカデミー賞。
商業映画における、世界最高の賞と言っても過言ではないと思う。
そのアカデミー賞が、今回異変が起きた。
韓国映画「パラサイト」が主要4部門を獲得したのだ。

数年前なら、考えられなかったアジア発の商業映画の受賞というのは、アカデミー賞選考を行うアカデミー会員の構成メンバーが大きく変わりつつある、ということを表しているのかもしれない。
というのも、数年前まではアカデミー賞選考メンバーの8割は白人男性、と言われ問題となったからだ。
アカデミー賞に限らず先日発表があったグラミー賞でも、受賞楽曲などを見ると選考会員の構成メンバーが変わったのでは?と、感じる部分は多々あり、主要部門を独占したビリー・アイリッシュの受賞は、その象徴だったかもしれない。

その中でメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞したのは、カズ・ヒロさんだった。
2019年に米国国籍を取得された理由を、授賞式後あるインタビューで応えている。
nobicom:カズ・ヒロの国籍なぜアメリカ?辻一弘が日本を捨てた理由に納得の声

「日本を捨てた」という表現は、やや過激な気がしない訳ではないが、米国国籍を取得した理由を知ると、どこかで納得できる。
何故なら、今日本の社会を覆いつくしている閉塞感の要因のいくつかは、カズ・ヒロさんが理由として挙げている事柄のような気がしているからだ。

例えば、「失敗を許さない」ような社会的雰囲気があり、それが「再チャレンジ」の機会を奪っている、という指摘は再三されていながら、まったく変わっていないからだ。
その背景には、日本企業の多くが「減点主義」と呼ばれる、人事考課があると指摘されている。
一度失敗をすると、会社人生のコースから外れるだけではなく、復帰することすらできない。
だからこそ、無難な前例主義を踏襲することで、会社人生のコースを外さないようにするのが、精いっぱいになっている、というのが現状だろう。
だからこそ「自分で考える」のではなく、HOW TOのほうが優先されるのだ。
カズ・ヒロさんのようなクリエイティブな仕事は、常に「自分で考える」ことが要求されるし、手垢がついたような陳腐なHOW TOなどは評価の対象にすらならないのが、ハリウッドだろう。

他にも、ハリウッドで活躍されているカズ・ヒロさんからすれば、「日本人である」ということよりも、「ハリウッドにいる、一人のメイクアップ&ヘアーアーティスト」ということの方が重要であり、日本国籍で仕事をしているわけではない、という自負もあったはずだ。
にもかかわらず、「ハリウッドで活躍し、アカデミー賞まで受賞した日本人の誇り」という枠にはめ込み、縁もゆかりもないのに、カズ・ヒロさんの活躍を「自分の活躍」のような錯覚をしてしまう(少なくとも、そのような報道がされてしまう)ということも嫌気がさしていたのだろう。

自分が努力によって得た賞賛を、「日本人の活躍!」という文字で様々なメディアが報じるのは、オリンピックをはじめとする、スポーツの場面だろう。
最近では「日本の為」ではなく、「自分の為」という言葉を使う選手が随分増えてきたと思うのだが、それでも「自分の為」という言葉に抵抗感を感じる人達は多いはずだ。
まして「試合を楽しみたい」等とインタビューで応えたりしたら、「試合を楽しむとは、何事!」と言われ反感を買うことになることもしばしばあった。
最近特にこのような「日本の為」という圧力は、今いたるところで感じるのは私だけだろうか?
このような「国の為」という社会の圧力(=「ナショナリズム」と言って良いと思う)を利用したのは、あのヒットラーであったということを忘れてはいけないと思う。

縁もゆかりもないのに、日本人というだけで親しげにされるのに、逆の状況になった時「蟻の子を散らす」様に去っていくという、都合の良い関心の持ち方しかされていない、ということを実感されていたのかもしれない。
そのような息苦しさや自分勝手な都合のよさを、カズ・ヒロさんはハリウッドという場所にいながら、感じていたのではないだろうか?
それは日本の多くの人がどこかで感じている「息苦しさ」と通じるモノがあるような気がするのだ。




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