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「高額医療費」と「延命治療」

2025-02-22 17:48:59 | アラカルト

今週、母の墓参りの為に実家のある鳥取県米子市に帰省していた。
「大寒波到来」ということで、天気予報をチェックしながら帰省をしていた為、今日の大寒波前に名古屋へ戻ってくるコトができた。

さて、私が帰省する前から話題になっていた「高額医療費の引き上げ」という問題。
多くの人たちが、反対の声を上げている。
私も15年前の乳がん治療と昨年の大けがで、この「高額医療」を利用した一人だ。
だからこそ、「高額医療」という制度の恩恵は、大きなものだと感じている。
もちろん、引き上げに関しては反対だ。
というのも、現在長期的治療を必要としている患者さんの多くが、新薬と言われる「高額な薬剤」によって、命が救われている、という点があるからだ。
私が罹患した「乳がん」や「甲状腺がん」等は、比較的病気の進行が遅い、と言われている。
逆に、進行が遅いがんだからこそ、長期的治療を要するともいえるのだ。
他にもノーベル賞を受賞した、本庶佑博士の「オプジーボ」のような新薬の薬価はとても高額なため、「高額医療」によって治療を受けることができた、という患者さんも少なくないはずだ。

忘れてはいけないのは、「オプジーボ」のような新薬は、何万という新薬研究の中から選ばれ、認められた薬剤である、という点だ。
効果が認められ、患者さんに使われるようになった薬剤の影には、効果が認められずに終わった研究が山のようにある、ということなのだ。
そのような研究の山を越え、認められれば、大きな利益を製薬会社にもたらすことができるし、当然治療を諦めていた患者さんの命を救うことができる。

そのような背景がある、ということを十分理解して「高額医療費の引き上げ」を政府が言っているのか?と言えば、そのような印象は受けない。
では、「高額医療費の引き上げ」の財務省の目的はどこにあるのか?という点を考える必要があるのでは?
何となくだが、「延命治療」による「高額医療費削減」を、考えているような気がしている。
本来の「高額医療」という制度の目的は、上述したような「長期にわたる治療を円滑に受けることによって、助けられる命をつなぐ」ということが目的なのだが、その目的とは別に「延命治療」もまた、「高額医療」の対象となっているはずだからだ。

私の母は、くも膜下出血で亡くなったのだが、救急で運ばれた病院の担当医から「このままでは、意識が戻ることはありません。延命という方法もありますが、どうしますか?」と、父の尋ねたのだ。
判断に困った父は、私たち子どもに連絡を入れ、最終的には「延命措置をしない」という判断をしたのだった。
もしこの時「延命措置をお願いします」と言えば、母の命は2~3ヶ月は伸びていたかもしれないが、その間の医療費の負担は家族としてはそれ相当だっただろうと思っているし、相当額の「高額医療費」を受けることになっただろう。
とすれば、財務省の試算による「高額医療費引き上げ」の根拠の意味は、大きく違ってくるはずだ。
「延命治療」の為に支払われている「高額医療費」と、治療の為の「高額医療費」は、その目的が全く違うからだ。
確かに、新薬の登場により以前は治療がかなわなかった病気が、完治(がんの場合は寛解)できるようになってきている。
その反面「治療後の期待がほとんどできない延命治療」を続けることで起きる、「公的医療費負担増」は切り離して考えるべきなのではないだろうか?

「延命治療」については、様々な意見があるということは、理解しているつもりだが、「延命治療」を選択したのち、どのような状況になっても、家族の判断で「延命措置」を中止させることができない、ということが問題なのではないだろうか?
少なくとも、家族からの申し出で「延命治療の中止」をすることができる方が、よほど効果的な気がするのだ。

とすればこの「高額医療費引き上げ」を考えついた財務省は、「高額医療費」の利用分析ができておらず、単純な財政見直しによる考えであった、ということなのではないだろうか?



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