「サカナクション」というバンドをご存じだろうか?
その「サカナクション」のリーダーである、山口一郎さんがYahoo!のオリジナル特集のインタビューに答えている。
Yahoo!ニュースオリジナル特集: 「今こそ、インターネット上での音楽表現を見つけるべき」‐サカナクション・山口一郎が考えるコロナ以降のロックバンド
以前から、山口さんは様々なインタビューで、これまでのミュージシャンが語らなかったような内容を話されることが多かった。
例えば「ミュージシャンにとって、サブスクとCDとではどちらが儲かるのですか?」などといった、ミュージシャンとしては答えにくいような話も過去されていた。
そのようなインタビューを拝読する度に、「ミュージシャンといえども、自分たちの音楽に対する収益などを考えているのだな~」と驚くと共に、優れビジネスパーソンでもあるのだな~、と感じることがあった。
そして今回のインタビューを拝読し、確信へと変わっていった。
例えば、サカナクションのヒット曲「宝島」は、リリースから随分時間が経っている楽曲だが、今でもコンスタントにサブスクを通して聞かれている、という。
一般的に、ヒット曲はリリース直後に爆発的にヒットし、その後次第に聞かれなくなる、というパターンだ。
それが、サブスクによって「宝島」を何度も聞き続ける人がいる、という。
その中には、何等かのきっかけで「宝島」という楽曲を知った、という新しいリスナーも含まれているだろう。
長期的に何度も聴く人+新規リスナーによって、長い間サブスクで聞かれ続けている、ということになるのだ。
これは、一般企業で言うところの「ロングセラー商品」と同じだ。
音楽における「ロングセラー商品」を作り出す一つの方法が、サブスクという方法だと考えるコトができる。
企業における「ロングセラー商品」の重要性については、経験の長いマーケティング担当者であれば、よくご存じだろう。
「ロングセラー商品」というのは、企業にとって新しく広告宣伝などに費用をかける必要がなく、生活者を掴んでいる(このようなことを「インテマシー・ロック・オン」という)。
「生活者を掴んでいる」のは、その商品やサービスが良い(あるいは、自分と(感性的に)あっている)、というだけではない。
子どもの頃から慣れ親しんだ日用品を通して、子どもの頃を思いださせたりすることができる。
「生活者を掴む」コトで、その商品やサービスの顧客は、2代・3代と受け継がれていく、というメリットがあるのだ。
何故そのようなコトになるのか?といえば、「子どもの頃から使っている」という安心感だけではなく、「子ども時代の思い出」もまた、それらの商品やサービスを通して感じられるからだ。
それは企業側にとっては「利益の下支え」となる商品ということにもつながっていく。
下支えできる商品があるコトで、上述したように「膨大な広告宣伝費を使う必要がない」ということでもある。
その分を商品研究開発に振り当てるコトができる、ということにもなる。
それが企業にとって、大きなメリットということになる。
そのようなコトを山口さんは、十分理解をされているのでは?ということなのだ。
「コロナ禍」後についても、これまでのような「ライブやフェス」によって、新規のファンを獲得する、というだけではなく映画やテレビ番組などとのタイアップによって、ヒット曲が作られてきた。
それらの「ライブやフェス」が、「コロナ禍」によって軒並み中止となり、ライブの裏方関係者だけではなく、ミュージシャン自身も苦境に立たされるという状況になった。
「ミュージシャンが何故?」と思われるかもしれないが、「(野外)フェス」という場所は、有名無名関係なく演奏する場となっている。
新人のミュージシャン(だけではなく最近は、アイドルも出演することがある)によって、有名ミュージシャンが出演するフェスに参加するということは、自分たちを知らない観客に知ってもらえる大きなチャンスでもあるのだ。
そのような場を失ったコトで、活動そのものを停止せざる得ないという状況に追い込まれた、ミュージシャンもいたのではないだろうか?
サブスクのような新しいサービスを熟知すること、SNSでどのように自分たちの情報を発信すればよいのか?等々、音楽に関連するビジネスについて、ミュージシャンが知るコトで、自分たちの音楽制作を自由にすることができる、という感覚を山口さんは持っているようだ。
そしてこのような感覚は、一般企業に勤めるビジネスパーソンも必要なのでは?という気がするのだ。