10月25日(日)の社団戦最終日のあと、わが「LPSA星組」は、選手6人で飲みに行った。私も含めた5人は「金曜サロン」の常連だが、最も年配のように見える紳士氏は「水曜サークル」に通っているとのことだった。
紳士氏は寺下紀子女流四段と旧知の仲で、それが縁で通い始めたらしい。水曜サークルはどちらかというと初心者向け教室というイメージがあったので、有段者の紳士氏では物足りない部分もあるのではと推測したが、蛸島彰子女流五段ら講師陣の指導は懇切丁寧で、なんの不満もないとのことだった。
さらに聞くと、なんと紳士氏は日本将棋連盟公認の普及指導員であった。
全国に500名いるといわれる普及指導員だが(もっといるかもしれない)、実際になるのはむずかしい。アマ三段の実力を持たなければならないうえに、免状を申請、取得しなければならぬ。連盟には年間にいくらかの会費を払わなければならないし(いただくのではない)、中には会費をつき返されるケースもある。
とにかく普及指導員とお話をする機会はなかなかないので、ここでいろいろな話を聞いた。
それらを総合すると、現在紳士氏は週末になると近くの公民館を借りて、おもに近所の子供たちに将棋を教えているらしい。普及指導員になると、カード型の「棋力認定証」を進呈できる特典があって、紳士氏によれば、子供たちにその認定証を手渡すとき、子供たちが見せる笑顔が、普及活動の最大の励みになっているという。
素晴らしいことだと思った。私だったら、大事な週末をボランティアみたいなもので費やさない。棋力向上よりも、女流棋士とお近づきになりたいとサロンに通っている私と紳士氏とでは、将棋に対する姿勢が違うのである。
ただ「普及」という点では、紳士氏も壁にぶつかっているという。現在公民館などへ定期的に通っている子供たちは、まあこれからも将棋を趣味にしていくだろう。しかしそれ以外、まったく将棋に触れる機会のない地域での普及をどうするか、それに頭を悩ませているという。
実はそれ、私も考えたことがある。たとえば金曜サロンやマンデーレッスンに通っている将棋ファンは、ほっといても将棋は続けるから、普及の必要はない。真の普及とは、将棋を知らない人へのアプローチではあるまいか。
紳士氏は、いまそれをやろうとしている。あまり将棋が浸透していない地域で、新たな将棋ファンを開拓しようとしているのだ。
しかしそれには、マンパワーが足りない。指導員さえ不案内な地で、将棋教室を行う場所の手配をし、参加する初心者を募り、テキストを作り、必要ならば別の講師にもお越し願わねばならない。なにしろ企画会社がやるような仕事を、素人がひとりで興そうとしているのだ。その熱意には、ただただ頭が下がる思いである。
では私にできることは何か。探せばあるのだろうが、前述したように、やる気は起こらない。私の将棋に対する情熱なんて、しょせんその程度のものである。
あとは、普及指導員の横の繋がりを密にすることであろう。500人も普及指導員がいれば、普及したい地域の近くに、指導員が在住しているのではないか。必要ならば、LPSA事務局に相談してみるのもいいだろう。
酒の席だったが、紳士氏の地道な活動が実を結ぶことを、私は願わずにはいられなかった。
紳士氏は寺下紀子女流四段と旧知の仲で、それが縁で通い始めたらしい。水曜サークルはどちらかというと初心者向け教室というイメージがあったので、有段者の紳士氏では物足りない部分もあるのではと推測したが、蛸島彰子女流五段ら講師陣の指導は懇切丁寧で、なんの不満もないとのことだった。
さらに聞くと、なんと紳士氏は日本将棋連盟公認の普及指導員であった。
全国に500名いるといわれる普及指導員だが(もっといるかもしれない)、実際になるのはむずかしい。アマ三段の実力を持たなければならないうえに、免状を申請、取得しなければならぬ。連盟には年間にいくらかの会費を払わなければならないし(いただくのではない)、中には会費をつき返されるケースもある。
とにかく普及指導員とお話をする機会はなかなかないので、ここでいろいろな話を聞いた。
それらを総合すると、現在紳士氏は週末になると近くの公民館を借りて、おもに近所の子供たちに将棋を教えているらしい。普及指導員になると、カード型の「棋力認定証」を進呈できる特典があって、紳士氏によれば、子供たちにその認定証を手渡すとき、子供たちが見せる笑顔が、普及活動の最大の励みになっているという。
素晴らしいことだと思った。私だったら、大事な週末をボランティアみたいなもので費やさない。棋力向上よりも、女流棋士とお近づきになりたいとサロンに通っている私と紳士氏とでは、将棋に対する姿勢が違うのである。
ただ「普及」という点では、紳士氏も壁にぶつかっているという。現在公民館などへ定期的に通っている子供たちは、まあこれからも将棋を趣味にしていくだろう。しかしそれ以外、まったく将棋に触れる機会のない地域での普及をどうするか、それに頭を悩ませているという。
実はそれ、私も考えたことがある。たとえば金曜サロンやマンデーレッスンに通っている将棋ファンは、ほっといても将棋は続けるから、普及の必要はない。真の普及とは、将棋を知らない人へのアプローチではあるまいか。
紳士氏は、いまそれをやろうとしている。あまり将棋が浸透していない地域で、新たな将棋ファンを開拓しようとしているのだ。
しかしそれには、マンパワーが足りない。指導員さえ不案内な地で、将棋教室を行う場所の手配をし、参加する初心者を募り、テキストを作り、必要ならば別の講師にもお越し願わねばならない。なにしろ企画会社がやるような仕事を、素人がひとりで興そうとしているのだ。その熱意には、ただただ頭が下がる思いである。
では私にできることは何か。探せばあるのだろうが、前述したように、やる気は起こらない。私の将棋に対する情熱なんて、しょせんその程度のものである。
あとは、普及指導員の横の繋がりを密にすることであろう。500人も普及指導員がいれば、普及したい地域の近くに、指導員が在住しているのではないか。必要ならば、LPSA事務局に相談してみるのもいいだろう。
酒の席だったが、紳士氏の地道な活動が実を結ぶことを、私は願わずにはいられなかった。