10月16日のLPSA金曜サロン、夜は松尾香織女流初段の担当だった。
松尾女流初段には、9月11日、10月2日のサイン勝負で連敗している。9月の将棋は中盤でこちらが大優勢になったのを落としたもので、この敗戦が今さらながら、返すがえすも悔やまれる。今回も負けるようだと、藤田麻衣子女流1級戦以来の3連敗となってしまう。中井広恵天河、石橋幸緒女流王位相手にも、3連敗はないのだ。プロ相手にアマが吠えるのも不孫だが、サイン勝負も含め、あらゆる意味で本局は、絶対に負けられぬ一戦であった。
対局開始。私が「サイン勝負」をコールすると、2週間前も教えていただいたばかりなので、
「この前も当たったのに、ワタシばかりサイン勝負なんて、不利よねー」
と、松尾女流初段が不満をもらす。しかしこれは余裕の言葉であろう。
▲2六歩△3四歩▲7六歩△4四歩▲4八銀△4二銀▲5六歩。
この辺りで松尾女流初段が、
「前回は何(の戦法)でしたっけ」
と言う。前局は△3四歩~△4四歩~△4二銀から松尾女流初段が△6二銀と上がり、居飛車を明示、相矢倉となった。松尾女流初段は、前局とは違う戦法を指すことでサービスしたかったようだが、角道を止めての振り飛車(中飛車)はお気に召さないようで、「まあいいか」と、またも相矢倉となった。
むろん私も、リベンジの矢倉は望むところである。今回も、▲6八玉から▲7八玉と、早囲いを目指す。すると松尾女流初段も、△3一角から△7五歩と、前局と同じ手できた。私も▲同歩△同角に▲6五歩と、前局と同じ手順で進める。
こちらにも意地がある。手順こそ違うが、▲4六角とのぞいた手や、△7四銀にあてて▲7八飛と廻ったところも、前局を踏襲していた。
ただしこの▲7八飛では、▲7三歩も有力だった。上手は△5三角・△9二飛型だから、次の歩成りが部分的には受からない。私は△7一歩の辛抱を警戒したのだが、プロがこんな利かされを甘受するわけがないし、仮にそう打ってくれるなら、そこで▲7八飛の銀取りがより効果的となる。
本譜は▲7八飛△7五歩を利かしたあと▲7三歩と打ったが、上手は△4四角と好所にのぞき、やむない▲9八玉に、悠然と△9四歩。以下▲7二歩成△同飛▲9一角成と香得を果たし、私はまずまずの成果を挙げたと思った。
しかし中盤、銀取りに▲4五桂とハネたのが疑問手だった。手順に△2六角と出られ角成りを見せられては、一遍に忙しくなった。しかも▲3三桂成は△同金寄で、△4二飛が△4七飛成を見せて幸便となり、肝心の銀も取れなくなってしまったのだ。
そこで私は▲2七歩と催促したが、やはりこの手は感触がわるく、以下、松尾女流初段の巧妙な攻めと、私の諦めムードも手伝って、またも惨敗となってしまった。
藤田女流1級に続いて、ついに松尾女流初段にも、屈辱の3連敗である。9月の将棋を勝っていたら…渡部愛ツアー女子プロが所定の位置にサインをしてくれていたら…との思いが脳裏をよぎる。
あまりやりたくない感想戦に入る。中盤、私が▲9一角成とした局面は自信があったと言うと、松尾女流初段も、それは☖7三桂と跳んでこちらも自信があった、と言う。前回に続いて、またも両者の大局観に違いが見られたが、実戦はこちらの馬が以後1手も動かなかったし、事実負かされたのだから、グゥの音も出ない。下手の陣形もバラバラだったし…とも指摘されたが、私だって現実の香得は大きいと見ていたし、どこかで▲7九香と打ち、▲7二歩成からじっくりと指せば、こちらも十分指せていたと思う。
しかし、負けたらダメなのだ、負けたら。負けたら、相手の言うことに頷くしかないのだ。
「そもそも早囲いをするなら、▲7九角から▲4六角は、あまり得になってないんじゃありませんか?」
と松尾女流初段が、私の顔色を窺いながら、遠慮気味に追い打ちをかける。たしかに仰るとおりなのだろう、たしかに。しかしどうも、イライラする。これではいけないと思いつつも、イライラする。トドメに
「ワタシ、矢倉もいけるのかなあ」
とつぶやかれ、感想戦はお開きとなった。
以前もちょっと記したことがあったが、女流棋士の中で、私のココロの師匠は藤田女流1級だが、姉弟子は松尾女流初段と思っている。まあ私もここでは憎まれ口を叩いているが、松尾女流初段は実際強いと思う。今回も実力の差が如実に表れたということだ。
そういえばこの日の対局中に松尾女流初段が、
「どうもワタシ、一公さんと指すと闘志が湧いてきちゃうのよねぇ…」
と、藤田女流1級と同じようなことをつぶやいていたが、本気で指していただける環境を、ありがたいと感謝するべきなのだろう。
とは言ったものの、次こそ松尾女流初段からは、勝ってサインを頂戴するつもりである。もっともそのときは、サイン扇子も4本目に入っているかもしれないけど。
松尾女流初段には、9月11日、10月2日のサイン勝負で連敗している。9月の将棋は中盤でこちらが大優勢になったのを落としたもので、この敗戦が今さらながら、返すがえすも悔やまれる。今回も負けるようだと、藤田麻衣子女流1級戦以来の3連敗となってしまう。中井広恵天河、石橋幸緒女流王位相手にも、3連敗はないのだ。プロ相手にアマが吠えるのも不孫だが、サイン勝負も含め、あらゆる意味で本局は、絶対に負けられぬ一戦であった。
対局開始。私が「サイン勝負」をコールすると、2週間前も教えていただいたばかりなので、
「この前も当たったのに、ワタシばかりサイン勝負なんて、不利よねー」
と、松尾女流初段が不満をもらす。しかしこれは余裕の言葉であろう。
▲2六歩△3四歩▲7六歩△4四歩▲4八銀△4二銀▲5六歩。
この辺りで松尾女流初段が、
「前回は何(の戦法)でしたっけ」
と言う。前局は△3四歩~△4四歩~△4二銀から松尾女流初段が△6二銀と上がり、居飛車を明示、相矢倉となった。松尾女流初段は、前局とは違う戦法を指すことでサービスしたかったようだが、角道を止めての振り飛車(中飛車)はお気に召さないようで、「まあいいか」と、またも相矢倉となった。
むろん私も、リベンジの矢倉は望むところである。今回も、▲6八玉から▲7八玉と、早囲いを目指す。すると松尾女流初段も、△3一角から△7五歩と、前局と同じ手できた。私も▲同歩△同角に▲6五歩と、前局と同じ手順で進める。
こちらにも意地がある。手順こそ違うが、▲4六角とのぞいた手や、△7四銀にあてて▲7八飛と廻ったところも、前局を踏襲していた。
ただしこの▲7八飛では、▲7三歩も有力だった。上手は△5三角・△9二飛型だから、次の歩成りが部分的には受からない。私は△7一歩の辛抱を警戒したのだが、プロがこんな利かされを甘受するわけがないし、仮にそう打ってくれるなら、そこで▲7八飛の銀取りがより効果的となる。
本譜は▲7八飛△7五歩を利かしたあと▲7三歩と打ったが、上手は△4四角と好所にのぞき、やむない▲9八玉に、悠然と△9四歩。以下▲7二歩成△同飛▲9一角成と香得を果たし、私はまずまずの成果を挙げたと思った。
しかし中盤、銀取りに▲4五桂とハネたのが疑問手だった。手順に△2六角と出られ角成りを見せられては、一遍に忙しくなった。しかも▲3三桂成は△同金寄で、△4二飛が△4七飛成を見せて幸便となり、肝心の銀も取れなくなってしまったのだ。
そこで私は▲2七歩と催促したが、やはりこの手は感触がわるく、以下、松尾女流初段の巧妙な攻めと、私の諦めムードも手伝って、またも惨敗となってしまった。
藤田女流1級に続いて、ついに松尾女流初段にも、屈辱の3連敗である。9月の将棋を勝っていたら…渡部愛ツアー女子プロが所定の位置にサインをしてくれていたら…との思いが脳裏をよぎる。
あまりやりたくない感想戦に入る。中盤、私が▲9一角成とした局面は自信があったと言うと、松尾女流初段も、それは☖7三桂と跳んでこちらも自信があった、と言う。前回に続いて、またも両者の大局観に違いが見られたが、実戦はこちらの馬が以後1手も動かなかったし、事実負かされたのだから、グゥの音も出ない。下手の陣形もバラバラだったし…とも指摘されたが、私だって現実の香得は大きいと見ていたし、どこかで▲7九香と打ち、▲7二歩成からじっくりと指せば、こちらも十分指せていたと思う。
しかし、負けたらダメなのだ、負けたら。負けたら、相手の言うことに頷くしかないのだ。
「そもそも早囲いをするなら、▲7九角から▲4六角は、あまり得になってないんじゃありませんか?」
と松尾女流初段が、私の顔色を窺いながら、遠慮気味に追い打ちをかける。たしかに仰るとおりなのだろう、たしかに。しかしどうも、イライラする。これではいけないと思いつつも、イライラする。トドメに
「ワタシ、矢倉もいけるのかなあ」
とつぶやかれ、感想戦はお開きとなった。
以前もちょっと記したことがあったが、女流棋士の中で、私のココロの師匠は藤田女流1級だが、姉弟子は松尾女流初段と思っている。まあ私もここでは憎まれ口を叩いているが、松尾女流初段は実際強いと思う。今回も実力の差が如実に表れたということだ。
そういえばこの日の対局中に松尾女流初段が、
「どうもワタシ、一公さんと指すと闘志が湧いてきちゃうのよねぇ…」
と、藤田女流1級と同じようなことをつぶやいていたが、本気で指していただける環境を、ありがたいと感謝するべきなのだろう。
とは言ったものの、次こそ松尾女流初段からは、勝ってサインを頂戴するつもりである。もっともそのときは、サイン扇子も4本目に入っているかもしれないけど。