昨日28日(土)は、蕨市の市民体育館で、「蕨市市制施行50周年記念・ふれあい将棋まつり」が行われた。主催はもちろん蕨市、主幹はLPSAである。
出場棋士は、蕨市教育委員を務める中井広恵天河(女流六段)、中井女流六段の旦那様である植山悦行七段、さらにLPSA女流棋士は石橋幸緒女流四段、船戸陽子女流二段、藤田麻衣子女流1級の3名。日本将棋連盟からは野月浩貴七段が特別参加した。
将棋まつりの主なプログラムは、「一般参加の将棋大会」「プロ棋士5人による指導対局50面指し」「中井女流六段と石橋女流四段の席上対局」の3本である。
「将棋大会」は棋力別に5つに分かれている。大会の趣旨からいえば、こうしたまつりは地元の人が優先的に参加すべきと思うが、「市外の人にも蕨の良さを感じてもらいたい」(中井女流六段)という見方をすれば、私たちが参加することにも意義がある。
私は申し込み締切日(20日)ギリギリまで待ったが、Aクラス(三段以上)にまだ空きがあるということだったので、エントリーを済ませていた。
午前10時。蕨市長や中井女流六段の挨拶のあと、早速将棋大会の開始である。32名によるトーナメント戦だから、優勝するためには5局戦う。持ち時間は15分、秒読みは30秒。よって勝ち進んでいる間は、午後1時から行われる50面指導対局(無料)は受けられない。
私は甘いマスクの青年氏と対局することになった。駒を振ってもらい、私の先手。
☗2六歩☖3四歩☗7六歩に後手氏が☖8四歩と突いてきたので、いきおい相掛かり戦となった。横歩を取り、後手の中座飛車に、私は新山崎流の布陣。後手が早めに☖7四歩と突いたので、私も☗3五歩と伸ばす。これを☖3五同飛と取ると☗3三角成☖同桂☗4六角のスジがあるので、ちょっと取りづらい。以下は後手に☖2三歩や☖4二角などの弱気な手が出て、少しずつこちらの形勢が良くなっていったようだ。
中盤、後手の陣形が3三銀、4一王、4二角、4三歩、4四銀、6一金。私の攻め駒が5四飛、8八角で、持駒に桂と歩。ここで☗3四歩☖同銀☗4四角☖同歩☗5三桂の攻めが決まり、この将棋はイケるのではないかと思った。
さらに進んで最終盤の局面を記す。
先手・一公:1七歩、1九香、2六歩、3七銀、4三角、4七歩、4九金、5七歩、5九玉、6三成銀、6七歩、7八金、7九銀、8七歩、9七歩、9九香 持駒:金、銀、歩
後手:1一香、1三歩、2四歩、3一王、3二桂、3四金、3五歩、3六桂、4二角、4四歩、4五桂、5四歩、6五歩、7四歩、7六桂、8一飛、8四歩、9一香、9三歩 持駒:飛、歩
私が4六の桂で3四銀を取り、☖同金☗4三角の詰めろに、後手が☖3二桂と受けたところである。盤に並べていただければ分かるが、これは私の必勝形である。後手氏はすでに秒読み、私のほうも秒読みに入っていた。そしてこのあと、とんでもないドラマが起きる。例によってそのスットコドッコイな指し手を記してみよう。
☗3四角成☖3七桂不成☗3九金☖4八銀☗同金☖同桂成☗同玉☖4九飛☗3七玉☖3九飛成☗2七玉☖3六竜☗1六玉☖1五金 まで、後手氏の勝ち。
将棋に限らず、勝負事は下駄をはくまで分からない。指し始め図での第一感は、☗2三銀だった。これに☖3三金なら☗2二金で詰み。しかし☗2三銀に☖2二飛の強防が気になり(実際は受けになっていない)、私は☗3四角成と金を取った。これも☗2二銀☖同王☗2三歩☖3一王☗2二金☖4一王☗5二成銀までの詰めろである。だからそう指したのだが、☖3七桂不成と開き直られたとき、上記手順の☗2三歩が、二歩で打てないことに気づき愕然とした。
さりとて☗2二銀☖同王☗2三金☖3一王☗3二金は、持駒が金と桂ではまったく詰まず、おろおろしている間にも秒はどんどん減っていき、私は頭が混乱したまま、残り3秒になって、咄嗟に4九の金を横にすべらせた(☗3九金)。
しかしこれではダメだ。☖4八銀と打たれて詰みである。それでも投げ切れずに指していると、☗3九金では☗2二銀☖同王☗2三金☖3一王「☗2二金打」以下後手王が簡単に詰んでいることに気づき、私は再び愕然とした。
☖1五金と迂回手順で詰められ、茫然自失で投了。私は完全に頭に血が上っていた。
おりよく植山七段と石橋女流四段がいらしたので、私は相手の立場も考えず、「聞いてくださいよお!!」と、先ほど逃した詰め手順をまくしたてる。
石橋女流四段は苦笑しながらも、隣の将棋が秒読みですから…と私をなだめる。しかし、ああ~、なんてこった!! 序盤から自分の構想通りにうまく指し、後手王に簡単な詰みまであったのに、まったく見えなかった。ふだんは早指しなのに、どうして秒読みだと、こうも慌ててしまうのか。これではLPSA金曜サロン棋友・W氏の終盤の弱さを笑っていられない。私のほうこそグダグダだ。
1回戦の敗者にはセカンドトーナメント(敗者慰安戦)があるが、とても参加する気になれない。しかし船戸女流二段に先ほどの悔しさをぶつけている間に自動的にセッティングされてしまい、今度は敗者戦を指すことになった。
前局が尾を引いたまま指した将棋は、後手四間飛車。対して先手氏は糸谷流右玉の採用であった。
先手氏は前局が私の隣だったので、局面をチラ見したが、そのときも右玉だった。相手の作戦にかかわらず、先手氏は右玉を得意としていたようだ。
そんなわけだから経験値の差が如実に現れ、中盤に☗2四歩☖同角☗1六桂☖3三角☗2三飛成と指されて、攻防ともに見込みがなくなった。以下先手氏の力強い指し手になす術なく、はやばやと投了に追い込まれた。
ここで昼食の時間。蕨の街をぶらぶら歩き、中華料理屋があったので入り、タンメンを食す。ここのタンメンはボリュームもあり、私が通常の状態なら、相当な美味に感じたことだろう。しかしこのときは私が風邪気味だったからか、それとも必勝の将棋を負けたからか、ほとんど味を感じなかった。
ところが失意のなか体育館に戻ると、金曜サロン棋友のI氏から、まったく予想もしない情報を知らされた。
(つづく)
出場棋士は、蕨市教育委員を務める中井広恵天河(女流六段)、中井女流六段の旦那様である植山悦行七段、さらにLPSA女流棋士は石橋幸緒女流四段、船戸陽子女流二段、藤田麻衣子女流1級の3名。日本将棋連盟からは野月浩貴七段が特別参加した。
将棋まつりの主なプログラムは、「一般参加の将棋大会」「プロ棋士5人による指導対局50面指し」「中井女流六段と石橋女流四段の席上対局」の3本である。
「将棋大会」は棋力別に5つに分かれている。大会の趣旨からいえば、こうしたまつりは地元の人が優先的に参加すべきと思うが、「市外の人にも蕨の良さを感じてもらいたい」(中井女流六段)という見方をすれば、私たちが参加することにも意義がある。
私は申し込み締切日(20日)ギリギリまで待ったが、Aクラス(三段以上)にまだ空きがあるということだったので、エントリーを済ませていた。
午前10時。蕨市長や中井女流六段の挨拶のあと、早速将棋大会の開始である。32名によるトーナメント戦だから、優勝するためには5局戦う。持ち時間は15分、秒読みは30秒。よって勝ち進んでいる間は、午後1時から行われる50面指導対局(無料)は受けられない。
私は甘いマスクの青年氏と対局することになった。駒を振ってもらい、私の先手。
☗2六歩☖3四歩☗7六歩に後手氏が☖8四歩と突いてきたので、いきおい相掛かり戦となった。横歩を取り、後手の中座飛車に、私は新山崎流の布陣。後手が早めに☖7四歩と突いたので、私も☗3五歩と伸ばす。これを☖3五同飛と取ると☗3三角成☖同桂☗4六角のスジがあるので、ちょっと取りづらい。以下は後手に☖2三歩や☖4二角などの弱気な手が出て、少しずつこちらの形勢が良くなっていったようだ。
中盤、後手の陣形が3三銀、4一王、4二角、4三歩、4四銀、6一金。私の攻め駒が5四飛、8八角で、持駒に桂と歩。ここで☗3四歩☖同銀☗4四角☖同歩☗5三桂の攻めが決まり、この将棋はイケるのではないかと思った。
さらに進んで最終盤の局面を記す。
先手・一公:1七歩、1九香、2六歩、3七銀、4三角、4七歩、4九金、5七歩、5九玉、6三成銀、6七歩、7八金、7九銀、8七歩、9七歩、9九香 持駒:金、銀、歩
後手:1一香、1三歩、2四歩、3一王、3二桂、3四金、3五歩、3六桂、4二角、4四歩、4五桂、5四歩、6五歩、7四歩、7六桂、8一飛、8四歩、9一香、9三歩 持駒:飛、歩
私が4六の桂で3四銀を取り、☖同金☗4三角の詰めろに、後手が☖3二桂と受けたところである。盤に並べていただければ分かるが、これは私の必勝形である。後手氏はすでに秒読み、私のほうも秒読みに入っていた。そしてこのあと、とんでもないドラマが起きる。例によってそのスットコドッコイな指し手を記してみよう。
☗3四角成☖3七桂不成☗3九金☖4八銀☗同金☖同桂成☗同玉☖4九飛☗3七玉☖3九飛成☗2七玉☖3六竜☗1六玉☖1五金 まで、後手氏の勝ち。
将棋に限らず、勝負事は下駄をはくまで分からない。指し始め図での第一感は、☗2三銀だった。これに☖3三金なら☗2二金で詰み。しかし☗2三銀に☖2二飛の強防が気になり(実際は受けになっていない)、私は☗3四角成と金を取った。これも☗2二銀☖同王☗2三歩☖3一王☗2二金☖4一王☗5二成銀までの詰めろである。だからそう指したのだが、☖3七桂不成と開き直られたとき、上記手順の☗2三歩が、二歩で打てないことに気づき愕然とした。
さりとて☗2二銀☖同王☗2三金☖3一王☗3二金は、持駒が金と桂ではまったく詰まず、おろおろしている間にも秒はどんどん減っていき、私は頭が混乱したまま、残り3秒になって、咄嗟に4九の金を横にすべらせた(☗3九金)。
しかしこれではダメだ。☖4八銀と打たれて詰みである。それでも投げ切れずに指していると、☗3九金では☗2二銀☖同王☗2三金☖3一王「☗2二金打」以下後手王が簡単に詰んでいることに気づき、私は再び愕然とした。
☖1五金と迂回手順で詰められ、茫然自失で投了。私は完全に頭に血が上っていた。
おりよく植山七段と石橋女流四段がいらしたので、私は相手の立場も考えず、「聞いてくださいよお!!」と、先ほど逃した詰め手順をまくしたてる。
石橋女流四段は苦笑しながらも、隣の将棋が秒読みですから…と私をなだめる。しかし、ああ~、なんてこった!! 序盤から自分の構想通りにうまく指し、後手王に簡単な詰みまであったのに、まったく見えなかった。ふだんは早指しなのに、どうして秒読みだと、こうも慌ててしまうのか。これではLPSA金曜サロン棋友・W氏の終盤の弱さを笑っていられない。私のほうこそグダグダだ。
1回戦の敗者にはセカンドトーナメント(敗者慰安戦)があるが、とても参加する気になれない。しかし船戸女流二段に先ほどの悔しさをぶつけている間に自動的にセッティングされてしまい、今度は敗者戦を指すことになった。
前局が尾を引いたまま指した将棋は、後手四間飛車。対して先手氏は糸谷流右玉の採用であった。
先手氏は前局が私の隣だったので、局面をチラ見したが、そのときも右玉だった。相手の作戦にかかわらず、先手氏は右玉を得意としていたようだ。
そんなわけだから経験値の差が如実に現れ、中盤に☗2四歩☖同角☗1六桂☖3三角☗2三飛成と指されて、攻防ともに見込みがなくなった。以下先手氏の力強い指し手になす術なく、はやばやと投了に追い込まれた。
ここで昼食の時間。蕨の街をぶらぶら歩き、中華料理屋があったので入り、タンメンを食す。ここのタンメンはボリュームもあり、私が通常の状態なら、相当な美味に感じたことだろう。しかしこのときは私が風邪気味だったからか、それとも必勝の将棋を負けたからか、ほとんど味を感じなかった。
ところが失意のなか体育館に戻ると、金曜サロン棋友のI氏から、まったく予想もしない情報を知らされた。
(つづく)