一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

「石垣島ラー油」を買う

2010-08-19 20:34:15 | 旅行記・沖縄編
15日(日)の夕方、八洲旅館ユースホステルにチェックインし、私は外出した。石垣島に来ると必ず寄る軽食喫茶「パピヨン」があり、何はともあれ夕食を摂ればよかったのだが、先にネットカフェへ入ったのがマズかった。店を出たのが午後9時すぎで、「パピヨン」に向かったら閉店したところだった。残念。
ユースに戻ると、この日の宿泊客があらかた集っていた。2歳の子供を連れた夫婦、その嫁さんの妹、東京から来た青年氏、大阪在住の常連氏、それに私の合計7名。ヘルパーは香港出身の青年、中井広恵女流六段の遠い親戚のような顔のサトコさんの2名。途中から、近所のTシャツ専門店のデザイナー氏が加わった。
もう夜も更けたから、ゆんたくの時間が始まっている。テーブルの上には、八重泉、請福の泡盛に混じって、「泡波」がふつうに置かれている。
「泡波」とは波照間島で製造されている泡盛で、その稀少性から、一部では「幻の泡盛」と呼ばれている。ペアレントさん(82歳のおばあ)の知り合いが波照間島にいて、何本か贈ってきたらしい。左党のホステラーには堪らないラベルだろうが、下戸の私には猫に小判で、あまり有難味を感じない。しかし話のタネにと、一口味わう。……。まあ、こんなものだろう。
さて16日(月)からは、宿の近くにある辺銀(ペンギン)食堂で、「石垣島ラー油」を買わなければならない。「石垣島ラー油」はあらためて説明するまでもないだろう。全国的なラー油ブームの火付け役となった、八重山郵便局前の「ゆいロード」の並びに居を構える、中華料理店「辺銀食堂」が販売するラー油である。1日の発売が200個だか300個だか、限定販売のうえ、1人1回1個のみの購入なので、すこぶる入手がむずかしい。
昨年夏、船戸陽子女流二段との雑談で、ここのラー油の話が出た。船戸女流二段は辛いもの好きで、どんな料理にも香辛料をふりかける(らしい)から、彼女のファンの私は、株を上げるチャンスとばかり、8月に石垣島を訪れたとき、毎朝辺銀食堂に通っては、しこしことラー油を入手したのだった。
けっきょくそれは○個にのぼり、私は全てを船戸女流二段に差し上げた。その何ヶ月かあと、某中井広恵女流六段にその話をしたところ、某中井女流六段は目をくわっ、と大きく開き、
「私だってギョーザ作りますけど!」
とマジギレしたので、私はビビった。
(な、中井先生、先生は料理なんて作らないでしょ?)
某中井女流六段の旦那さま(某植山悦行七段)の情報では、某中井女流六段は当時、代表理事の業務で多忙をきわめ、ここ何年かは手料理を作ったことがない、とのことだった。つまり絶対に、ギョーザを作るわけがないのだ。某中井女流六段に限らず、どうして女性は負けず嫌いなのだろう。
なかんずく、今年正月のLPSA新年会で、「LPSA18人に聞きました」という企画があり、その中に「あなたの得意料理は?」という設問があった。「餃子」という回答者は2名いたのだが、そのうちのひとりはやはり某中井女流六段であった。
これが私への無言のメッセージに思え、
(こりゃあ今年は中井先生にもラー油を買っていかねばなんねーな…」
と、私は観念したのだった。
そして話は15日のゆんたくに戻る。
私が石垣島ラー油の話をすると、八重山にやたら詳しい大阪氏が、現在辺銀食堂でラー油を求めるには、整理券をもらわなければいけない、と言うので驚いた。ちなみに彼とは去年もこの場でいっしょになっているが、話はしなかった。
「ええっ? 開店時間(午前9時)から並んだ順に買えるんじゃなかったんですか?」
「いえ、いまは7時半ごろから整理券を配って、9時以降にその整理券を持っている人だけが、ラー油を買える仕組みになっています」
「いや、だって私は去年だって買ったんですよ! そのときは9時少し前に店の前に並んで、余裕で買えてたんですよ!」
「いやいやいまは人気が出ちゃって、ラー油を買うための整理券が必要になったんです。だから7時前には行列ができてますワ」
「あらー、たった1年で、そんな事態になっちゃったんですか!!」
ここのラー油がどのくらい旨いか知らないが、たかだかラー油を買うために朝の7時前から並び、しかも整理券をもらうだけで、再び出直して9時以降に買う。なんと面倒くさいシステムか。
私は「待つ」のはいいが、「待たされる」のはイヤだ。私が唸っていると、大阪氏はさらに情報をつけ加える。
「あとは昼の時間に780円以上の飲食をすると整理券がもらえて、1本ラー油が買えるんですワ。夜は2,000円以上の飲食で1本」
はあ…。なるほど、朝に買い損ねた客への敗者復活戦も用意されているわけだ。しかしそれにしたって、やっぱり人が並ぶのではないか? いや~、こんな思いをしてまで、ラー油を買う価値があるのだろうか。
しかし某中井女流六段がラー油を手にして、
「大沢さん、ありがとう」
とこぼれるような笑顔を想像すると、こんなバカバカしい行為も堪えられそうな気がするのだ。
この日は午後11時すぎに就寝。
翌16日(月)は、午前6時45分に起床した。朝食にはまだ早いが、ヘルパーのサトコさんがおにぎりを作ってくれたので、それをほおばり、辺銀食堂へ向かう。
お店の前に着いたのは7時12分。もう11人ほど並んでいる。これで整理券をもらえるのは確実だが、しかし噂どおり、本当に並んでいた。大阪氏の言うことはウソではなかったのだ。
壁際に掛けてあった「辺銀食堂からのお知らせ」を手に取る。現在の販売方法では近所のみなさんの迷惑になるため、その解消のために整理券の配布に踏み切った旨の説明がなされている。ただしこのシステムは繁忙期のみだ。その下には、大阪氏が言っていた「ランチタイム780円以上、ディナータイム2,000円以上は…」が書かれていた。
私のうしろに、一人旅と思しき男性がついた。
「このシステム知ってました? まったく恐ろしいことになったもんですよねぇ…」
と、私は話しかける。彼も、本当にそうですねぇ…という顔だ。
7時30分。うしろに行列はできているが、そんなに長くはない。これは早く来過ぎたか? しかしその10分後に振り返ると、行列が大通りの角近くまで伸びていた。いきなり人が増えた感じだ。やはり早い時間に並んでいてよかったと思う。
自転車に乗った地元の小学生たちが、「(あの人たちは)ラー油を買うんだよ」とか言って去ってゆく。彼らには私たちが滑稽に見えるだろう。そしてそれは正しい。
先頭のおじいさんが
「ワシは6時半から並んどった」
とか言っている。誰かが道の反対側に飛び出し、私たちを撮影している。この行列を撮るためだ。14日夜は「南の島の星まつり」と題して、午後8時30分から9時30分まで石垣島全島をライトダウンし、島民や旅行客みんなで星空を楽しんだそうだ。辺銀食堂でラー油を買うことも、石垣島イベントのひとつといえばいえる。
7時54分、ついに整理券が配られ始めた。いただいた整理券は、ナンバリングはされていないが、「2010.8.16」の日付が押してある。とりあえずは、ラー油の購入権は得た。これで某中井女流六段に堂々とラー油を渡せる。
私は一旦ユースに戻り、この日の仕度を始めた。八洲旅館ユースには、3連泊するつもりである。9時すぎ、宿を出た。まったくバカバカしいが、再び辺銀食堂に行き、そこの2階で、石垣島ラー油を手に入れた。800円。
ずいぶん長い道のりだった。と、そのとき、某中井女流六段の笑顔が、再び脳裏に浮かんだ。
コメント (2)
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