13日(金)は、宮古島ユースホステルに旅装を解いたあと、繁華街近くの軽食喫茶「果樹園」に夕食を摂りに向かった。ここは夫婦で切り盛りしている店で、焼肉定食(600円)がボリュームがあって美味い。しかしお店に着くと、店名が変わっていたうえに、お店も休み。毎年ここの焼肉定食を食すのを楽しみにしていただけに、ショックだった。
月見栞が表紙のAV情報誌を買った本屋も休み。昨年は7月上旬に訪れたからどちらも通常営業だったが、いまはお盆だから、休みなのだろう。
ユースに戻っても談話室には誰もおらず、やることがないから、もう寝るしかなかった。
明けて14日(土)。ここの朝食はトーストにコーヒー、それに洋風のおかずがつく。ユースの美人ペアレント(オーナー)さんを近くに見ながら食べる朝食はゆったりしていて、日ごろの喧騒を忘れさせてくれる。
女性のホステラーがふたり、慌ただしく朝食を摂り、チェックアウトした。大神島へ行くと言う。そのあと若い男性が下りてきた。彼は私と一緒のテーブルで朝食。
さらに若い女性と6歳のぼうやが来た。4人で黙々と朝食を摂り終えると、なんとなく雑談となった。話の中心は、彼女と私である。
まず私が、14日の予定を述べた。
「きのうは吉野海岸へ行ったんで、きょうは11時のバスで新城海岸へ行こうと思うんですよ」
新城は吉野の隣のバス停で、どちらの海岸へも20分程度かかる。この日はベスト電器宮古島店で、ヒガリノ(本名・比嘉梨乃)の握手会&撮影会のイベントがあるのだが、撮影会の時間がハッキリしないので、さすがにこれは見送ることにした。これがもし室谷由紀女流1級の指導対局だったら、どうしていたか分からない。
ちょっと気が強そうな、長谷川真弓似の美人が、ああそうですか、と応えた。
「でも私うっかりしてまして、その1本前のバスの9時20分発のバスでも、吉野や新城に行けることが分かったんですよ。しかもそれが分かったのが、去年ですよ! もう何年も宮古島に来てるのに、まったくどこを見てるんだか。本当に貴重な時間をムダにしました」
私はそう言って、宮古協栄バスの詳細な時刻表を、彼女に見せた。
「あらあ…でもこれは、新城と吉野を通らずに、保良に着いてしまいますけど」
「そうなんです。でも、そのバスが引き返すときに、今度は吉野と新城を通るんですよ! 簡単に言えば、途中から輪っかのように、11時発とは逆のルートで走るわけなんです」
「ああ、そうですね! 吉野まで30分で着いてしまうんですね。
でもこれ…保良から吉野のバス停まででも近そうですけど」
「鋭い! これも近いんです! でも私これもウッカリしてまして、保良から吉野までは8キロあると勝手に勘違いしてたんですよ」
「……」
長谷川真弓似の女性の顔には、(あなたバカじゃないの?)と書いてある。悔しいがそのとおりであって、私も自分の迂闊さを嗤うしかない。
「まあもっとも、11時までにはいろいろやることがありまして…A&Wってご存知ですか?」
「いえ」
「マクドナルドみたいな沖縄のファーストフードの店です。そこに行ったり、図書館で本を読んだりして、けっこういい具合に時間をつぶせてたんでけどね」
「図書館…は、ここから遠いんですか?」
なんで図書館の在り処なんて訊くのだろう。私は
「ここからだと港の近くになりますね」
と応える。
「そこまでは歩きですか?」
「まあ…。私は歩くのが好きですから、苦にならないんです」
「ああ…じゃあきょうはとにかく、9時20分のバスに乗るんですね」
「いえそれが、ブログとか書かなくちゃならいんで…。港近くのネットカフェに行って書こうかと…」
「ええっ? でもあなたがバスの時間を勘違いしていたのは去年まででしょう? ブログなんて帰ってきてから書けばいいじゃないですか! 9時20分のバスでも新城や吉野に行けることが分かったんだから、絶対そのバスに乗るべきだと思います」
「ああ…そうか、そうですよね」
言われてみれば確かにそうだ。まず新城に行って時間が余るようなら、それこそ15時台のバスに乗って、平良へ帰ってくればいいのだ。私は彼女の強い勧めに同調し、平良営業所9時20分発、保良経由新城行きのバスに乗ることにしたのだった。
それにしても彼女は、見かけより芯の強い、かなりしっかりした女性だと思った。LPSAの女流棋士でいえば、中倉彰子女流初段が、案外似たタイプかもしれない。
その後は彼女の話を聞く番である。彼女は名古屋に住んでおり、7月26日からここ宮古に滞在していて、8月下旬まで沖縄にいるという。
宮古島に来たころ天気がわるく、晴れたのはここ3、4日だという。旅行に悪天候は大敵だ。私も昨年の沖縄旅行では、たいへんな目に遭ったことを思い出した。
ところで彼女の旦那さんは? 子供連れでこんな長期旅行をして、ご主人は何も言わないの? …などとヤボなことを訊いてはいけない。彼女は道端カレンと同じように、シングルマザーである可能性が高い。家族構成には触れないのがマナーというものだ。しかし翌日の朝食後、彼女が私の想像を越えた人物であることを、私は知ることになるのである。
月見栞が表紙のAV情報誌を買った本屋も休み。昨年は7月上旬に訪れたからどちらも通常営業だったが、いまはお盆だから、休みなのだろう。
ユースに戻っても談話室には誰もおらず、やることがないから、もう寝るしかなかった。
明けて14日(土)。ここの朝食はトーストにコーヒー、それに洋風のおかずがつく。ユースの美人ペアレント(オーナー)さんを近くに見ながら食べる朝食はゆったりしていて、日ごろの喧騒を忘れさせてくれる。
女性のホステラーがふたり、慌ただしく朝食を摂り、チェックアウトした。大神島へ行くと言う。そのあと若い男性が下りてきた。彼は私と一緒のテーブルで朝食。
さらに若い女性と6歳のぼうやが来た。4人で黙々と朝食を摂り終えると、なんとなく雑談となった。話の中心は、彼女と私である。
まず私が、14日の予定を述べた。
「きのうは吉野海岸へ行ったんで、きょうは11時のバスで新城海岸へ行こうと思うんですよ」
新城は吉野の隣のバス停で、どちらの海岸へも20分程度かかる。この日はベスト電器宮古島店で、ヒガリノ(本名・比嘉梨乃)の握手会&撮影会のイベントがあるのだが、撮影会の時間がハッキリしないので、さすがにこれは見送ることにした。これがもし室谷由紀女流1級の指導対局だったら、どうしていたか分からない。
ちょっと気が強そうな、長谷川真弓似の美人が、ああそうですか、と応えた。
「でも私うっかりしてまして、その1本前のバスの9時20分発のバスでも、吉野や新城に行けることが分かったんですよ。しかもそれが分かったのが、去年ですよ! もう何年も宮古島に来てるのに、まったくどこを見てるんだか。本当に貴重な時間をムダにしました」
私はそう言って、宮古協栄バスの詳細な時刻表を、彼女に見せた。
「あらあ…でもこれは、新城と吉野を通らずに、保良に着いてしまいますけど」
「そうなんです。でも、そのバスが引き返すときに、今度は吉野と新城を通るんですよ! 簡単に言えば、途中から輪っかのように、11時発とは逆のルートで走るわけなんです」
「ああ、そうですね! 吉野まで30分で着いてしまうんですね。
でもこれ…保良から吉野のバス停まででも近そうですけど」
「鋭い! これも近いんです! でも私これもウッカリしてまして、保良から吉野までは8キロあると勝手に勘違いしてたんですよ」
「……」
長谷川真弓似の女性の顔には、(あなたバカじゃないの?)と書いてある。悔しいがそのとおりであって、私も自分の迂闊さを嗤うしかない。
「まあもっとも、11時までにはいろいろやることがありまして…A&Wってご存知ですか?」
「いえ」
「マクドナルドみたいな沖縄のファーストフードの店です。そこに行ったり、図書館で本を読んだりして、けっこういい具合に時間をつぶせてたんでけどね」
「図書館…は、ここから遠いんですか?」
なんで図書館の在り処なんて訊くのだろう。私は
「ここからだと港の近くになりますね」
と応える。
「そこまでは歩きですか?」
「まあ…。私は歩くのが好きですから、苦にならないんです」
「ああ…じゃあきょうはとにかく、9時20分のバスに乗るんですね」
「いえそれが、ブログとか書かなくちゃならいんで…。港近くのネットカフェに行って書こうかと…」
「ええっ? でもあなたがバスの時間を勘違いしていたのは去年まででしょう? ブログなんて帰ってきてから書けばいいじゃないですか! 9時20分のバスでも新城や吉野に行けることが分かったんだから、絶対そのバスに乗るべきだと思います」
「ああ…そうか、そうですよね」
言われてみれば確かにそうだ。まず新城に行って時間が余るようなら、それこそ15時台のバスに乗って、平良へ帰ってくればいいのだ。私は彼女の強い勧めに同調し、平良営業所9時20分発、保良経由新城行きのバスに乗ることにしたのだった。
それにしても彼女は、見かけより芯の強い、かなりしっかりした女性だと思った。LPSAの女流棋士でいえば、中倉彰子女流初段が、案外似たタイプかもしれない。
その後は彼女の話を聞く番である。彼女は名古屋に住んでおり、7月26日からここ宮古に滞在していて、8月下旬まで沖縄にいるという。
宮古島に来たころ天気がわるく、晴れたのはここ3、4日だという。旅行に悪天候は大敵だ。私も昨年の沖縄旅行では、たいへんな目に遭ったことを思い出した。
ところで彼女の旦那さんは? 子供連れでこんな長期旅行をして、ご主人は何も言わないの? …などとヤボなことを訊いてはいけない。彼女は道端カレンと同じように、シングルマザーである可能性が高い。家族構成には触れないのがマナーというものだ。しかし翌日の朝食後、彼女が私の想像を越えた人物であることを、私は知ることになるのである。