「石垣島ラー油」を買うようになってから、離島めぐりは日帰りが主になってしまった。ラー油を1本買えば2本目が欲しくなり、2本目を買えば3本目が欲しくなる。石垣にいる限り、この欲求は変わらない。もっとも石垣の宿に荷物を置いてあっちこっち訪ねるほうが、身軽ではある。16日(月)は、黒島を日帰りすることにした。
午前9時30分、石垣港ターミナルに着く。黒島行きの高速船は、安栄観光の9時30分発があった。以前は10時00分発だったが、ダイヤが変わったのだろう。いまから乗船はできないので、次の11時00分発まで待つ。むかしはもっと乗船時間に敏感だったが、最近はガツガツ移動しなくなってきた。これを旅慣れてきたと見るか、歳を取ったと見るか。
大阪氏によると、黒島・仲本海岸は昼までが満潮で、4時ごろが干潮だという。だから多少の遅れは構わない。11時00分発の高速船に乗り、11時25分、黒島着。
と、黒島港前から出ていた、仲本海岸行きの乗合バスが廃止されていたので驚いた。その代わりレンタサイクルに乗れ、ということらしい。たしかに乗合バスは、ワゴン車の維持費、人件費など、意外とおカネがかかる。その点自転車なら、1台買えば数十回のレンタルで元が取れる。島に泊まる人は港まで送迎車が来ているし、小さい島なので徒歩でも回れないこともない。前日の竹富島のバスのオジサンは、観光客が少なくなった、とこぼしていたが、黒島もそうなのかもしれない。などといろいろ考えると、バスの廃止も頷けるところがあった。
私は島の中心部へ徒歩で向かう。もうここから、ほかの観光客と移動手段が違う。
どこまでいっても真っ直ぐな一本の道と、その両脇に青々と繁る木々。太陽が高い。黒島の人口より多いといわれている牛が、建物の陰でグターッとしている。竹富島のバスの運転手が、
「東京は日陰に入っても暑いけど、沖縄は日陰に入れば涼しい」
と言っていたが、なるほどそうかと思う。
黒島郵便局が見えてきた。ここで816円を貯金する。そこからは一路仲本海岸へ向かう。さっきから太陽の光を直接浴びているが、遮るものがない。肌の露出しているところに、せっせと日焼け止めクリームを塗り、麦わら帽子を目深にかぶるのみである。
午後1時少し前に、仲本海岸に着いた。八重山諸島の中で、私が好きな海岸ベスト3に入る、自慢のスポットである。とにかく海がきれい、熱帯魚はいっぱい泳いでいる、サンゴも見られる、潮が引けばリーフも歩ける、水着のおねーちゃんもカラフルな…なによりシャワー室やトイレがしっかりした建物なのがよい。これは無料で、そこが高得点の理由でもある。しかしこの日はお盆すぎの平日。驚くくらい、人が少なかった。
まだ海水が高いが、魚とサンゴは間近で見られる。海に浸かっては出、一休みしたら海に入る。それを繰り返し、何度目かの入水のときだった。
クン、とシュノーケルマスクの留めヒモが外れた。よく見ると、マスクの付け根の輪っかの部分が切れてしまったのだ…!! これでは海に潜れない。
突然の終了、というやつである。
反射的に時計を見る。2時59分だ。これは微妙な時間だった。というのは、帰りの高速船は16時00分と18時00分。いまからなら着替えを済ませて20分、帰りを徒歩で40分と、ピッタリ16時00分の高速船に間に合う。しかし私は黒島ビレッジセンターの近くにある「パームツリー」で、ケーキセットを食すのを楽しみにしていたのだ。去年は満員で入れなかったから、今年こそと意気込んでいたのに、これじゃあパームツリーに入った後の、時間の潰し方がむずかしい。
熟考のすえ、私は16時00分の高速船で石垣に戻ることにした。帰り道、パームツリーの前を通った。くそっ、きょうは閑散としているのに、その店を横目にその場を通り過ぎなければならないとは…!! まあいい。ケーキセットは来年のお楽しみだ。
石垣島に戻って、替えのシュノーケルセットを買いに行く。とはいっても港周辺や「あやぱにモール」ではなく、空港近くのサンエーとMax Valueへ向かう。
どちらも大型スーパーマーケットで、少しでもシュノーケルセット安く入手するための涙ぐましい努力だが、そのためにバス代はかかる。しかし川平公園などを往復できて5日間1,000円という、東バスの企画チケットがあるので、それを買った。
そこまで気合を入れたのに、上のスーパーに目的の品物はなく、港へ戻った。そこの土産物屋でいろいろ探したら、1,575円のセットが売られていた。チッ、最初から港付近を調べるのだった。
「パピヨン」で夕食を摂ったあと、半分不貞腐れて、ユースへ戻る。この日の宿泊客は前日よりだいぶ減って、前日の家族が一足早く帰り、残った妹さんと、私のふたり。新規の客はいないから、それだけだ。ヘルパーさんは、香港の彼が旅立って、サトコさんひとりとなった。つまり女性ふたり、男性ひとりのゆんたくである。
この状況を、私は喜ぶべきなのだろうか。まあふだん女性と接する機会はほとんどないし、邪魔な男性客もいないから、やはりラッキーというべきなのだろう。
しかしこの日のゆんたくがあんなに凄まじいものになるとは、このときの私に予想できるはずもなかった。
午前9時30分、石垣港ターミナルに着く。黒島行きの高速船は、安栄観光の9時30分発があった。以前は10時00分発だったが、ダイヤが変わったのだろう。いまから乗船はできないので、次の11時00分発まで待つ。むかしはもっと乗船時間に敏感だったが、最近はガツガツ移動しなくなってきた。これを旅慣れてきたと見るか、歳を取ったと見るか。
大阪氏によると、黒島・仲本海岸は昼までが満潮で、4時ごろが干潮だという。だから多少の遅れは構わない。11時00分発の高速船に乗り、11時25分、黒島着。
と、黒島港前から出ていた、仲本海岸行きの乗合バスが廃止されていたので驚いた。その代わりレンタサイクルに乗れ、ということらしい。たしかに乗合バスは、ワゴン車の維持費、人件費など、意外とおカネがかかる。その点自転車なら、1台買えば数十回のレンタルで元が取れる。島に泊まる人は港まで送迎車が来ているし、小さい島なので徒歩でも回れないこともない。前日の竹富島のバスのオジサンは、観光客が少なくなった、とこぼしていたが、黒島もそうなのかもしれない。などといろいろ考えると、バスの廃止も頷けるところがあった。
私は島の中心部へ徒歩で向かう。もうここから、ほかの観光客と移動手段が違う。
どこまでいっても真っ直ぐな一本の道と、その両脇に青々と繁る木々。太陽が高い。黒島の人口より多いといわれている牛が、建物の陰でグターッとしている。竹富島のバスの運転手が、
「東京は日陰に入っても暑いけど、沖縄は日陰に入れば涼しい」
と言っていたが、なるほどそうかと思う。
黒島郵便局が見えてきた。ここで816円を貯金する。そこからは一路仲本海岸へ向かう。さっきから太陽の光を直接浴びているが、遮るものがない。肌の露出しているところに、せっせと日焼け止めクリームを塗り、麦わら帽子を目深にかぶるのみである。
午後1時少し前に、仲本海岸に着いた。八重山諸島の中で、私が好きな海岸ベスト3に入る、自慢のスポットである。とにかく海がきれい、熱帯魚はいっぱい泳いでいる、サンゴも見られる、潮が引けばリーフも歩ける、水着のおねーちゃんもカラフルな…なによりシャワー室やトイレがしっかりした建物なのがよい。これは無料で、そこが高得点の理由でもある。しかしこの日はお盆すぎの平日。驚くくらい、人が少なかった。
まだ海水が高いが、魚とサンゴは間近で見られる。海に浸かっては出、一休みしたら海に入る。それを繰り返し、何度目かの入水のときだった。
クン、とシュノーケルマスクの留めヒモが外れた。よく見ると、マスクの付け根の輪っかの部分が切れてしまったのだ…!! これでは海に潜れない。
突然の終了、というやつである。
反射的に時計を見る。2時59分だ。これは微妙な時間だった。というのは、帰りの高速船は16時00分と18時00分。いまからなら着替えを済ませて20分、帰りを徒歩で40分と、ピッタリ16時00分の高速船に間に合う。しかし私は黒島ビレッジセンターの近くにある「パームツリー」で、ケーキセットを食すのを楽しみにしていたのだ。去年は満員で入れなかったから、今年こそと意気込んでいたのに、これじゃあパームツリーに入った後の、時間の潰し方がむずかしい。
熟考のすえ、私は16時00分の高速船で石垣に戻ることにした。帰り道、パームツリーの前を通った。くそっ、きょうは閑散としているのに、その店を横目にその場を通り過ぎなければならないとは…!! まあいい。ケーキセットは来年のお楽しみだ。
石垣島に戻って、替えのシュノーケルセットを買いに行く。とはいっても港周辺や「あやぱにモール」ではなく、空港近くのサンエーとMax Valueへ向かう。
どちらも大型スーパーマーケットで、少しでもシュノーケルセット安く入手するための涙ぐましい努力だが、そのためにバス代はかかる。しかし川平公園などを往復できて5日間1,000円という、東バスの企画チケットがあるので、それを買った。
そこまで気合を入れたのに、上のスーパーに目的の品物はなく、港へ戻った。そこの土産物屋でいろいろ探したら、1,575円のセットが売られていた。チッ、最初から港付近を調べるのだった。
「パピヨン」で夕食を摂ったあと、半分不貞腐れて、ユースへ戻る。この日の宿泊客は前日よりだいぶ減って、前日の家族が一足早く帰り、残った妹さんと、私のふたり。新規の客はいないから、それだけだ。ヘルパーさんは、香港の彼が旅立って、サトコさんひとりとなった。つまり女性ふたり、男性ひとりのゆんたくである。
この状況を、私は喜ぶべきなのだろうか。まあふだん女性と接する機会はほとんどないし、邪魔な男性客もいないから、やはりラッキーというべきなのだろう。
しかしこの日のゆんたくがあんなに凄まじいものになるとは、このときの私に予想できるはずもなかった。