昨年11月26日(金)のLPSA芝浦サロンは2人制。前半(午後2時~5時)が多田佳子女流四段、後半(6時~9時)が石橋幸緒天河の担当だった。
多田女流四段は女流棋界の草創期に活躍した女流棋士のおひとり。あれはずいぶん前の鹿島杯の一戦。多田女流四段は中盤のむずかしい局面で、じっと☗3五歩と突いた。これが解説の豊川孝弘七段も絶賛した、善悪を越えた一手。私も「なんだかよく分からないが、さすがはプロだ!」と感嘆したのを憶えている。
多田女流四段のサロン担当は珍しく、LPSA駒込サロンの初期には何度か担当があったが、私が通い始めてからは、指導を乞う機会がなかった。よって今回はしっかりと2時に予約を取り、芝浦サロンへ向かった。
ドアを開けると、Kur氏が来ていた。聞くと、多田女流四段には何度か指導を受けていて、痛い目に遭ったらしい。多田女流四段は引退してから久しいが、腕に衰えはないようだ。定刻になり、まずは彼と私が入って、2面指しでの指導となった。私はもちろん扇子サイン勝負である。
私の☗7六歩に多田女流四段は王道の☖8四歩だったので、私は☗6八銀から相矢倉を目指す。しかし多田女流四段は☖6四歩から☖6三銀と急戦の構えだ。一目、若い、と思った。先手番なのに受けるのはシャクなので☗3七銀と上がったが、これはバランスが悪かった。
多田女流四段は☖8五桂と跳ね、総攻撃に出る。しかし私も馬を作って丁寧に受け、なんとかその場を凌ぐ。この局面は下手が有利だと思った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/67/8e/b057bbb7d96999c4cba10abb20be7a0f.png)
しかし図の局面で、形とばかり☗7八玉と上がったのが疑問手。すかさず☖7七歩と打たれ、☗同桂☖同桂成☗同馬☖4五桂、と打たれてはヨリが戻ってしまった。
☗7八玉では☗5九馬と引き、次に☗8六歩から桂を取りにいけば、こちらの完封将棋だった。
本譜はめまぐるしい駒のやりとりが続き、迎えた局面が下のごとくである。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/29/b8/5bc62dda85a106ea53273320395d8d7f.png)
多田女流四段は歩切れ。どう指すのだろうと見ていると、多田女流四段は☖6五桂!と打った。これが打たれてみればナルホドという手。持ち駒に歩があれば☖6五歩は誰でも打つが、桂を打つ手はちょっと思いつかない。さすがに女流プロだと思った。以下は☗6五同歩☖7七角成☗同金(☗同玉は☖5九角)☖6五飛☗6六歩☖2五飛と回られた。蟄居気味の☖6一飛が、桂の投資で2五まで捌けたのだから、これは上手も満足の進行だったろう。
ここで私は☗3九金と受け、さらにむずかしい中盤戦が続いた。いまは会員がひとり加わり3面指しになっており多田女流四段も大変だが、指し手にブレはない。
☖2九竜にあてて私は☗4七角と打つ。対して横へは逃げづらいから引くだろうが、何となく2五へ引くような気がした。果たして多田女流四段は☖2五竜。しかしこれは4七の角でタダだ。しかしプロのプライドとして待ったはできまい。私もサインが欲しいので、一言断ってから竜をいただく。
しかし私が無理に入玉をしようとしたので、☖5四銀と王手馬取りに打たれ、ここから泥仕合の様相を呈してきた。
時刻は3時半を過ぎ、この回から入ることになっているR氏が待っている。将棋は3局とも続いているが、さすがに4面指しはきつく、R氏が入ることは叶わない。
それでも私は7三に玉を逃げて不敗の態勢…と思いきや、☖7五飛と王手角取りに打たれ、飛び上がった。これでまた形勢混沌である。ひたすら入玉を目指す私。捉えようとする多田女流四段。傍らでは後半担当の石橋天河がこの戦況を見ている。
私は☗6一玉と潜り、多田女流四段は☖5三飛と回る。次に☖5一飛までの詰めろだから、私は☗6三桂と受ける。駒がゴチャッゴチャしているが、これでどうやら逃げ切ったと思った。
ところが、ここで石橋天河の中断コールが入った。もうだいぶ時間が経ち、次の回の人も待っているから、ここでドローにしてはどうかというのである。
時刻は4時。対局開始から2時間が経過している。しかし私の玉に寄りはなく、私の勝ちに見える。そう私も主張したいが、たしかに2時間は長い。
「(ここまで対局を長引かせたのは)これは大沢さんに責任があります」
と、石橋天河が笑いながら畳みかける。
う~、そう言われればそうなのだが、しかし…。う~、う~。
「これは私の負けですね」
と多田女流四段。
しかしこの言葉を受け取るわけにはいかない。記念すべき多田女流四段との指導対局、言われてみれば、白黒つけずに指しかけで終わらせたほうが、味がいいように思った。
サインはもらいたいが、仕方ない。というわけで、多田女流四段との初対局は、まさかの引き分けで終わったのだった。いまも、これでよかったと思う。
念のため、終了の局面を、以下に掲げておこう。
多田女流四段は女流棋界の草創期に活躍した女流棋士のおひとり。あれはずいぶん前の鹿島杯の一戦。多田女流四段は中盤のむずかしい局面で、じっと☗3五歩と突いた。これが解説の豊川孝弘七段も絶賛した、善悪を越えた一手。私も「なんだかよく分からないが、さすがはプロだ!」と感嘆したのを憶えている。
多田女流四段のサロン担当は珍しく、LPSA駒込サロンの初期には何度か担当があったが、私が通い始めてからは、指導を乞う機会がなかった。よって今回はしっかりと2時に予約を取り、芝浦サロンへ向かった。
ドアを開けると、Kur氏が来ていた。聞くと、多田女流四段には何度か指導を受けていて、痛い目に遭ったらしい。多田女流四段は引退してから久しいが、腕に衰えはないようだ。定刻になり、まずは彼と私が入って、2面指しでの指導となった。私はもちろん扇子サイン勝負である。
私の☗7六歩に多田女流四段は王道の☖8四歩だったので、私は☗6八銀から相矢倉を目指す。しかし多田女流四段は☖6四歩から☖6三銀と急戦の構えだ。一目、若い、と思った。先手番なのに受けるのはシャクなので☗3七銀と上がったが、これはバランスが悪かった。
多田女流四段は☖8五桂と跳ね、総攻撃に出る。しかし私も馬を作って丁寧に受け、なんとかその場を凌ぐ。この局面は下手が有利だと思った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/67/8e/b057bbb7d96999c4cba10abb20be7a0f.png)
しかし図の局面で、形とばかり☗7八玉と上がったのが疑問手。すかさず☖7七歩と打たれ、☗同桂☖同桂成☗同馬☖4五桂、と打たれてはヨリが戻ってしまった。
☗7八玉では☗5九馬と引き、次に☗8六歩から桂を取りにいけば、こちらの完封将棋だった。
本譜はめまぐるしい駒のやりとりが続き、迎えた局面が下のごとくである。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/29/b8/5bc62dda85a106ea53273320395d8d7f.png)
多田女流四段は歩切れ。どう指すのだろうと見ていると、多田女流四段は☖6五桂!と打った。これが打たれてみればナルホドという手。持ち駒に歩があれば☖6五歩は誰でも打つが、桂を打つ手はちょっと思いつかない。さすがに女流プロだと思った。以下は☗6五同歩☖7七角成☗同金(☗同玉は☖5九角)☖6五飛☗6六歩☖2五飛と回られた。蟄居気味の☖6一飛が、桂の投資で2五まで捌けたのだから、これは上手も満足の進行だったろう。
ここで私は☗3九金と受け、さらにむずかしい中盤戦が続いた。いまは会員がひとり加わり3面指しになっており多田女流四段も大変だが、指し手にブレはない。
☖2九竜にあてて私は☗4七角と打つ。対して横へは逃げづらいから引くだろうが、何となく2五へ引くような気がした。果たして多田女流四段は☖2五竜。しかしこれは4七の角でタダだ。しかしプロのプライドとして待ったはできまい。私もサインが欲しいので、一言断ってから竜をいただく。
しかし私が無理に入玉をしようとしたので、☖5四銀と王手馬取りに打たれ、ここから泥仕合の様相を呈してきた。
時刻は3時半を過ぎ、この回から入ることになっているR氏が待っている。将棋は3局とも続いているが、さすがに4面指しはきつく、R氏が入ることは叶わない。
それでも私は7三に玉を逃げて不敗の態勢…と思いきや、☖7五飛と王手角取りに打たれ、飛び上がった。これでまた形勢混沌である。ひたすら入玉を目指す私。捉えようとする多田女流四段。傍らでは後半担当の石橋天河がこの戦況を見ている。
私は☗6一玉と潜り、多田女流四段は☖5三飛と回る。次に☖5一飛までの詰めろだから、私は☗6三桂と受ける。駒がゴチャッゴチャしているが、これでどうやら逃げ切ったと思った。
ところが、ここで石橋天河の中断コールが入った。もうだいぶ時間が経ち、次の回の人も待っているから、ここでドローにしてはどうかというのである。
時刻は4時。対局開始から2時間が経過している。しかし私の玉に寄りはなく、私の勝ちに見える。そう私も主張したいが、たしかに2時間は長い。
「(ここまで対局を長引かせたのは)これは大沢さんに責任があります」
と、石橋天河が笑いながら畳みかける。
う~、そう言われればそうなのだが、しかし…。う~、う~。
「これは私の負けですね」
と多田女流四段。
しかしこの言葉を受け取るわけにはいかない。記念すべき多田女流四段との指導対局、言われてみれば、白黒つけずに指しかけで終わらせたほうが、味がいいように思った。
サインはもらいたいが、仕方ない。というわけで、多田女流四段との初対局は、まさかの引き分けで終わったのだった。いまも、これでよかったと思う。
念のため、終了の局面を、以下に掲げておこう。
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