4月22日(金)~24日(日)と、「信濃わらび山荘将棋合宿」に行ってきた。同合宿は、蕨市教育委員を務める中井広恵女流六段(LPSA所属)が発起人となり、蕨市が経営する施設に宿泊して将棋三昧に浸るというもの。昨年秋に第1回が行われ、好評のうちに終了したため、勢いに乗っての第2回開催である。第1回は1泊2日だったが、今回はスケールアップして、2泊3日となった。
信濃わらび山荘へはクルマで向かう。22日午前10時、埼玉県K駅とA駅の2箇所に集合。私が乗るK駅に中井カーが到着し、朝の中井女流六段に挨拶をする。水色のいでたちがさわやかだ。ほんのりといい香りがする。合宿の参加メンバーは、おもに旧LPSA金曜サロンの会員で構成されているが、だからといって、誰でも参加できるというわけではない。今回は私も招んでもらえたわけだが、ありがたいことだと、改めて思った瞬間だった。
中井カーには中井女流六段、植山悦行七段、大野八一雄七段。WカーにはW氏、Is氏。HonカーにはHon氏、R氏、Hak氏、私の計9人が乗車した。なお今回は、蕨市役所の将棋部4人も参加する。また23日からはKun氏、Y氏、Kub氏、Kaz氏の4人が、鉄路で信濃入りする予定である。
いまにも泣きだしそうな空だったが、昨年はドシャ降りの雨だったから、それから比べれば天地の差だ。私たちは意気高く信濃わらび山荘に向かった。
前回は関越自動車道の利用だったが、今回は中央自動車道の利用。私は高速道路に疎いのだが、列車にたとえれば前回が上越線、今回が中央本線の利用、ということになろうか。
12時すぎに談合坂パーキングエリアに(PA)到着。ここで昼食を摂る。前回は上里PAに寄る前にお茶タイムを設けてしまい、これが大きなロスタイムになった。今回は無駄な時間を省き、将棋の時間を極力取るよう配慮している。
ここで乗車メンバーをシャッフル。私は中井カーに乗った。飛ばし屋・中井女流六段は快調に高速道路を吹っ飛ばす。須玉で高速を降り、大型スーパーで飲料とお菓子の買い出しをして、午後3時少し前、一行は信濃わらび山荘に到着した。それでも予定より1時間遅れである。
荷物を各部屋に置き、食堂に集合。先に到着していた蕨市の将棋部員氏と、ここで合流した。
中井女流六段から、合宿のしおりをいただく。中井女流六段お手製で、全6頁のフルカラーである。スケジュールを見ると、ここから24日の昼すぎまで、将棋、将棋の将棋三昧である。もう、ワクワクしてしまう。
まずは各自の自己紹介。蕨市役所将棋部員は、初日は3名。いずれも有段の猛者揃いだ。他流試合の趣もあり、おのずと気分が引き締まる。
3時から、参加棋士のミニ講座が始まった。大野七段は「端攻め講座」。端歩の位置の違いで、玉を詰めるのに必要な駒が変化するというもので、端攻めをすることで攻撃力の不足を補える、という内容だった。
続いては植山七段の「内弟子時代の話」。これのどこが将棋の上達になるのか分からなかったが、話自体はおもしろかった。
中井女流六段は「大局観講座」。苦しい将棋を逆転する方法、をメインテーマにした。
「ボンヤリした手を指すと逆転しやすい」
「強い手を指すと相手も強い手で返してくるので、かえって局面がハッキリしてしまう」
「少し弱い。だけどマイナスにならない手を指す」
と、一連の金言はとても参考になった。
4時からは、宿泊棟のラウンジに場所を移して、実戦である。各部屋に机と椅子(2脚)が備えつけられているので、それらをすべてラウンジに出す。これで即席対局上の出来上がりだ。
今回は日程に余裕があるので、各自参加者全員と指すのを目標とする。しおりにはリーグ表も書かれてあり、そこに勝敗を書きこむ。
まずは中井女流六段に、指導を受けることになった。
☗7六歩☖8四歩☗7八飛。これに中井女流六段が☖3四歩だったので、私は☗7五歩と石田流を目指した。中井女流六段は角を換わり、☖3二銀と、左美濃を目指す。中井女流六段は、対振り飛車の場合、持久戦が多いようだ。
私は☗7七銀と出たあと、☗6八銀から☗7七桂と繰り替える。☗6八銀では、☗6六銀から☗5五銀と出て上手の出方を見る手も考えたが、指し切れなかった。しかし局後中井女流六段は、その順を考えていたとのことだった。先の大局観講座にあった、「ボンヤリした手」だ。
局面は中盤の難所を迎えている。ふと顔を上げると、正面に中井女流六段の凛とした貌がある。平日の明るいうちに、長野県の避暑地で女流棋士の大家と将棋。世の将棋ファンにとって、これ以上の贅沢があろうか。
中井女流六段、☖3七歩成から☖2五桂とハネる。この局面の駒の配置を、以下に記そう。
上手・中井女流六段:1一香、1四歩、2二王、2三銀、2四歩、2五桂、3二金、4三金、4四歩、5四歩、6二飛、7三桂、8四歩、9一香、9三歩 持駒:角、桂、歩2
下手・一公:1六歩、1九香、2七歩、2八玉、2九桂、3七銀、4七歩、4九金、5六銀、5七歩、6六歩、7四飛、7八金、8七歩、9五歩、9九香 持駒:角、銀、歩3
ここで私は☗3八歩と受けたが、弱気だった。中井女流六段に、☗3七銀を取らずにじっと☖7二歩と受けられ、形勢を損ねた。
局後の検討では、☗3八歩では強く☗7三飛成と突っ込むべき、となった。以下☖3七桂成☗同玉☖6四角の王手竜があるが、☗同竜☖同飛☗3五桂で下手も指せる。
私は☖6四角で下手悪いと読みを打ち切っていたのだが、中井女流六段はその先を読んでいたのだ。☗3五桂以下も、中井女流六段は☖3六桂!を考えていたとのこと。これだけ読みの量に差があっては、とても勝てない。
実戦も、中井女流六段に気持ち良く攻められ、完敗。力の差を感じた一局だった。
2局目はIs氏と。Is氏の3手目☗7七角戦法に、私は弱気の☖4四歩。以下むずかしい将棋となったが、何とか勝つことができた。
ここで夕食の時間。夕食は800円メニューと1,500円メニューがあるが、宿泊料は2泊3日で2,000円と廉価なので、私たちは食事代を奮発し、1,500円メニューをオーダーしている。おかずは食べきれないほどあり、信州の山の幸を大いに堪能したのだった。
(つづく)
信濃わらび山荘へはクルマで向かう。22日午前10時、埼玉県K駅とA駅の2箇所に集合。私が乗るK駅に中井カーが到着し、朝の中井女流六段に挨拶をする。水色のいでたちがさわやかだ。ほんのりといい香りがする。合宿の参加メンバーは、おもに旧LPSA金曜サロンの会員で構成されているが、だからといって、誰でも参加できるというわけではない。今回は私も招んでもらえたわけだが、ありがたいことだと、改めて思った瞬間だった。
中井カーには中井女流六段、植山悦行七段、大野八一雄七段。WカーにはW氏、Is氏。HonカーにはHon氏、R氏、Hak氏、私の計9人が乗車した。なお今回は、蕨市役所の将棋部4人も参加する。また23日からはKun氏、Y氏、Kub氏、Kaz氏の4人が、鉄路で信濃入りする予定である。
いまにも泣きだしそうな空だったが、昨年はドシャ降りの雨だったから、それから比べれば天地の差だ。私たちは意気高く信濃わらび山荘に向かった。
前回は関越自動車道の利用だったが、今回は中央自動車道の利用。私は高速道路に疎いのだが、列車にたとえれば前回が上越線、今回が中央本線の利用、ということになろうか。
12時すぎに談合坂パーキングエリアに(PA)到着。ここで昼食を摂る。前回は上里PAに寄る前にお茶タイムを設けてしまい、これが大きなロスタイムになった。今回は無駄な時間を省き、将棋の時間を極力取るよう配慮している。
ここで乗車メンバーをシャッフル。私は中井カーに乗った。飛ばし屋・中井女流六段は快調に高速道路を吹っ飛ばす。須玉で高速を降り、大型スーパーで飲料とお菓子の買い出しをして、午後3時少し前、一行は信濃わらび山荘に到着した。それでも予定より1時間遅れである。
荷物を各部屋に置き、食堂に集合。先に到着していた蕨市の将棋部員氏と、ここで合流した。
中井女流六段から、合宿のしおりをいただく。中井女流六段お手製で、全6頁のフルカラーである。スケジュールを見ると、ここから24日の昼すぎまで、将棋、将棋の将棋三昧である。もう、ワクワクしてしまう。
まずは各自の自己紹介。蕨市役所将棋部員は、初日は3名。いずれも有段の猛者揃いだ。他流試合の趣もあり、おのずと気分が引き締まる。
3時から、参加棋士のミニ講座が始まった。大野七段は「端攻め講座」。端歩の位置の違いで、玉を詰めるのに必要な駒が変化するというもので、端攻めをすることで攻撃力の不足を補える、という内容だった。
続いては植山七段の「内弟子時代の話」。これのどこが将棋の上達になるのか分からなかったが、話自体はおもしろかった。
中井女流六段は「大局観講座」。苦しい将棋を逆転する方法、をメインテーマにした。
「ボンヤリした手を指すと逆転しやすい」
「強い手を指すと相手も強い手で返してくるので、かえって局面がハッキリしてしまう」
「少し弱い。だけどマイナスにならない手を指す」
と、一連の金言はとても参考になった。
4時からは、宿泊棟のラウンジに場所を移して、実戦である。各部屋に机と椅子(2脚)が備えつけられているので、それらをすべてラウンジに出す。これで即席対局上の出来上がりだ。
今回は日程に余裕があるので、各自参加者全員と指すのを目標とする。しおりにはリーグ表も書かれてあり、そこに勝敗を書きこむ。
まずは中井女流六段に、指導を受けることになった。
☗7六歩☖8四歩☗7八飛。これに中井女流六段が☖3四歩だったので、私は☗7五歩と石田流を目指した。中井女流六段は角を換わり、☖3二銀と、左美濃を目指す。中井女流六段は、対振り飛車の場合、持久戦が多いようだ。
私は☗7七銀と出たあと、☗6八銀から☗7七桂と繰り替える。☗6八銀では、☗6六銀から☗5五銀と出て上手の出方を見る手も考えたが、指し切れなかった。しかし局後中井女流六段は、その順を考えていたとのことだった。先の大局観講座にあった、「ボンヤリした手」だ。
局面は中盤の難所を迎えている。ふと顔を上げると、正面に中井女流六段の凛とした貌がある。平日の明るいうちに、長野県の避暑地で女流棋士の大家と将棋。世の将棋ファンにとって、これ以上の贅沢があろうか。
中井女流六段、☖3七歩成から☖2五桂とハネる。この局面の駒の配置を、以下に記そう。
上手・中井女流六段:1一香、1四歩、2二王、2三銀、2四歩、2五桂、3二金、4三金、4四歩、5四歩、6二飛、7三桂、8四歩、9一香、9三歩 持駒:角、桂、歩2
下手・一公:1六歩、1九香、2七歩、2八玉、2九桂、3七銀、4七歩、4九金、5六銀、5七歩、6六歩、7四飛、7八金、8七歩、9五歩、9九香 持駒:角、銀、歩3
ここで私は☗3八歩と受けたが、弱気だった。中井女流六段に、☗3七銀を取らずにじっと☖7二歩と受けられ、形勢を損ねた。
局後の検討では、☗3八歩では強く☗7三飛成と突っ込むべき、となった。以下☖3七桂成☗同玉☖6四角の王手竜があるが、☗同竜☖同飛☗3五桂で下手も指せる。
私は☖6四角で下手悪いと読みを打ち切っていたのだが、中井女流六段はその先を読んでいたのだ。☗3五桂以下も、中井女流六段は☖3六桂!を考えていたとのこと。これだけ読みの量に差があっては、とても勝てない。
実戦も、中井女流六段に気持ち良く攻められ、完敗。力の差を感じた一局だった。
2局目はIs氏と。Is氏の3手目☗7七角戦法に、私は弱気の☖4四歩。以下むずかしい将棋となったが、何とか勝つことができた。
ここで夕食の時間。夕食は800円メニューと1,500円メニューがあるが、宿泊料は2泊3日で2,000円と廉価なので、私たちは食事代を奮発し、1,500円メニューをオーダーしている。おかずは食べきれないほどあり、信州の山の幸を大いに堪能したのだった。
(つづく)