一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

九州旅行8・再会

2012-05-12 10:42:33 | 旅行記・G.W.編
頭が…てっぺんが…髪の毛が…薄くなっている!!
これ…明らかに頭皮が見えてるよな…。頭の薄さに気が付いたのは数か月前だったが、それからさらに、ハゲが進行したようだ。
男性棋士の中にも髪の毛がさびしい人がいるが、皆さん何事もないように、毎日をしっかり生きている。
しかし自分がその立場になってみると、とても平常心でいられないことが分かる。この世の終わりだと思う。ああ…髪の毛が薄くなって、平然としていられる男性が信じられない。絶望感はないのだろうか。叫びたくならないのだろうか。私は目の前が暗くなった。ああ…彼らの鉄の心臓が羨ましい。
私はドライヤーで髪を乾かし、少しでもボリュームを復活させる。しかし冷静に見ると、やはり薄毛が目立つ。軽いめまいがする。終わりだ…。もう、終わった。何もかも。
温泉センターを出て、再びご主人のクルマに乗り、宿に戻った。
広い和風の家に、宿泊者は私ひとり。暇つぶしにテレビを観ることもできるが、その気は起きない。
ベッドの上に横になるが、頭の中は、頭のことでいっぱいだった。
老いることは哀しいことだ。絶望感が渦巻いたまま、布団にもぐったのは、午前1時近かった。

翌6日(日)は、午前7時少し前に起きた。表に出ると、ご主人がすでに起きていた。
きょうはバスを乗り継ぎ、指宿の砂むし温泉に入る予定である。博多どんたく、吹上浜砂の祭典、そして砂むし温泉。ここ数年のゴールデンウイークの、三大観光である。
またもやユースホステルの主人に日置バス停まで送っていただく。バスが来るまで世間話をする。来年もこのユースにお世話になりたいが、大阪のご夫婦は、もう鹿児島には来ない雰囲気だ。何というか、植山悦行手合い係がいないLPSA駒込サロンみたいなものだ。来年はどうしようか。
8時09分、定刻どおり、枕崎行きのバスが来た。待っているおばあちゃんが、「珍しく時間どおり来た」といった。
車内は、日曜なのに、高校生が数人乗車していた。私は美山の缶コーヒーを飲む。それにスナック菓子の袋を開ける。これがきょうの朝食である。
9時35分、枕崎着。空はきょうも雲ひとつない快晴である。バス停のすぐ前に観光案内所があるので、指宿行きの時間を聞こうと思う。しかし受付の女性は電話中だ。
室内に時刻表が貼ってあったので確認する。すると、10分の待ち合わせで、指宿行きがあった。これは接続がいい。しかしまだ時間があるので、私は近くにあるブティック「歩揺(ほよう)」に向かった。
すぐ近くにJR枕崎駅のホームが見えるが、そこは6年前まで、立派な駅舎があった。しかし駅前再開発の波にのまれ、駅舎は撤去。本土最南端の終着駅は、ホームと線路が1本残るだけの、さびしいものになってしまった。
6年前、そのさびしくなった駅跡を嘆いていた私の近くにいたのが歩揺の女主人で、たちまち私たちは意気投合した。私は女主人の誘いでお店に上がり、お茶をごちそうになったのだった。
以来、私は枕崎に来るたび、歩揺に顔を出す、というのが定番になった。そう、これも九州旅行の大きな目的のひとつなのだった。そして2年前は、ついに女主人の実家にまでお邪魔し、私は身の上話を延々と、涙ながらに話したのだった。
しかし今年、歩揺はシャッターを下ろしていた。昨年も会えなかったから、これはつらかった。
まあ、仕方ない。私は枕崎駅ホームに上がる。毎年のことだが、思えば遠くへ来たものだと思う。
そろそろ9時45分である。私はバス停に戻る。しかし東大川行きのバスは来たが、肝心の指宿行きのバスが来ない。東大川行きのバスは行ってしまった。指宿行きは…? 私は改めて、バス停の時刻表を見る。と、「枕崎-東大川乗り継ぎ-指宿」とあるではないか!!
「ひがしおおかわのりつぎ??」
あれっ!? じゃあ、たったいま出て行ったバスに乗らなくちゃいけないんじゃないか!!
そうだ、そうだった!! 前もそんなルートで、指宿まで行ったことがあった!
何をやってんだ何をー!! 私はよほどバスを追いかけようかと思ったが、いかにも滑稽なので、やめた。
次の東大川-指宿行きは、11時30分である。1時間45分のロス…。連休の最終日だというのに、何てこった…。
しかし時間を無駄にするわけにはいかない。10時ちょうど発の泊循環線というのがある。市内のどこかを一周して戻ってくるやつだ。一周53分だから、時間をつぶすにはちょうどいい。「SUN Qパス」もあるので、おカネの心配もない。
ところが、10時の便は休日運休とあった。むむむー。私は先ほどの観光案内所に入る。しかし先ほどの女性はまだ電話中である。……。私は無言で案内所を出る。と、その女性が私を追いかけてきた。しかし私は無視した。
案内所前の看板に書かれていた、北側の小高い丘にある、「枕崎市文化資料センター・南溟館」に向かう。よく分からぬが、1時間ぐらい時間をつぶせそうである。
きょうは加藤勝海展というのをやっていた。入場料は200円。街の自然や猫、ウサギなどの油絵が多数展示されていた。それなりに見ごたえはあったが、短時間でそこを出た。
しかしまだ時間は余っている。大道路に出たら、「手打ちそば」「コーヒー」の幟が見えたので、そこに入る。どこかのデパートのロビーみたいな雰囲気で、店内には地元の高校の書道部の作品、画家の絵画などが飾ってあった。コミュニティースペースの趣だ。
店はおばちゃんがひとりで切り盛りしていた。私はそば(小)とおにぎりのセットを頼む。
レジの向こうのこよみに、「苦難を耐えてこそ事態は好転する」とある。果たしてそうだろうか。
出されたそばはたしかに手打ちで、香りも高かった。何よりおつゆが美味く、鰹のダシがよく利いている。枕崎は鰹節の生産日本一だが、その名に恥じない味だった。これで300円はお値打ちだった。
大いに気分をよくして、枕崎バス停に向かう。と、右手に歩揺が見えてきた。この道に通じていたのか。店は開いているようだ。
ちょっと覗いてみると、女主人がいた。
「あら」
「ご無沙汰しています」
「やっぱり今年も来たんだ」
女主人はお元気そうだった。「ご立派になって…」
グッ…。それは私が肥えたことを暗にいっているのだ。旅行が終わったら、本気でダイエットをしなければいかんと思う。
私たちは2年振りの再会を懐かしみ、近況などを話した。それが一段落すると女主人が、やっぱり聞いちゃおうかしら、という感じで、
「あの女性とはどうなりました?」
といった。
(つづく)
コメント (3)
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